AI業務活用支援のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと


この記事のポイント
- ✓AI業務活用支援のポートフォリオを
- ✓発注側が実際に確認している観点から組み立てる方法をまとめました
- ✓守秘義務を守ったまま実績を書く手順
AI業務活用支援のポートフォリオを作ろうとして手が止まる理由は、たいてい二つに絞られます。一つは、支援した内容が相手の社内の話なので、そのまま書けないこと。もう一つは、成果物が画面やコードではないため、何を見せればいいのかがわからないこと。この記事は、その二つを実務の手順として解いていきます。結論を先に言うと、見る人が確認したいのは作ったものではなく、業務をどう切り出してどこまで定着させたかという判断の跡です。これは守秘義務を守ったままでも十分に書けます。
ポートフォリオは作品集ではない
デザインや開発の世界では、ポートフォリオは制作物の一覧を指します。AI業務活用支援では、この理解のまま作ると失敗します。支援の成果は画面ではなく、相手の会社の業務の中に溶けて残るからです。
見る側の立場に立つとわかりやすくなります。発注を検討している担当者が知りたいのは、「この人に自分たちの業務を渡したときに、何が起きるか」の一点です。過去に作ったプロンプトの中身を見せられても、自分たちの業務に置き換えられません。逆に、どんな業務を対象に選び、なぜその業務から手をつけたのかという判断が書いてあれば、自社の業務に当てはめて考えることができます。
見る人は成果物ではなく再現性を見ている
再現性という言葉が抽象的に聞こえるなら、こう言い換えられます。「同じことを、うちでもやってもらえるか」です。この問いに答える材料は、成果の大きさではなく、手順の明快さから生まれます。
たとえば、業務の棚卸しから始めて、対象を一つに絞り、まず小さく試してから範囲を広げた、という流れが書いてあるとします。この流れ自体は特別なものではありません。しかし、どの基準で対象を一つに絞ったのかが書かれていれば、それは判断の記録になります。件数が多い業務を選んだのか、担当者の残業が集中している業務を選んだのか、誤りが起きても影響が小さい業務を選んだのか。基準が書かれた瞬間に、読む側は自社に当てはめ始めます。
人材と業務の関係を整理する考え方は、企業側の議論でも同じ順番で扱われています。
人材ポートフォリオは、事業戦略に必要な業務ポートフォリオをイメージした上で検討することが望ましい。事業戦略から直接人材について考えると、抽象的な議論にとどまりやすいためである。業務や職務を経由することで、戦略は初めてどのようなスキル・志向・経験を持った人材がどれくらい必要かという要件に落とし込まれるのである。 出典: rosei.jp
支援者のポートフォリオも同じ構造です。スキルの一覧から書き始めると抽象的になり、業務から書き始めると具体的になります。
守秘義務があるから出せない、で止まらない
支援先の名前や数字を出せないのは当然です。ここで多くの人が「だから書けない」と結論づけてしまいますが、それは早すぎます。秘密保持契約が守るのは、相手を特定できる情報と、相手の営業上の秘密です。業務の型、判断の基準、進め方の順番は、通常その対象に含まれません。
これ、知らない人が本当に多いところです。契約書に書いてあるのは「知り得た情報を第三者に開示しない」といった条項であり、「支援したという事実を一切書いてはいけない」とまで書かれているケースは限られます。まずは自分の契約書を読み直すところから始めてください。実際に読むと、社名を出さなければ問題ない範囲が思ったより広いことがわかります。なお、条項の解釈に迷う内容や、相手から掲載を拒まれている情報については、自己判断せず弁護士や契約先に確認してください。
発注側が実際に確認していること
ここからは、見る人が何を確認しているかを具体的に並べます。この5つに答える形で書けば、体裁はどうであれ機能するポートフォリオになります。
どんな業務を、どこまで切り出したか
最初に見られるのはここです。「営業部門の業務を効率化した」では何も伝わりません。「見積書の作成のうち、過去案件からの条件の引き当て部分を対象にした」と書けば、対象の粒度が伝わります。
切り出しの粒度は、支援者の実力がもっとも出る部分です。粗く切ると成果が出ず、細かく切りすぎると効果が小さすぎて続きません。書くときは、切り出した範囲と、あえて対象外にした範囲の両方を並べます。対象外にした理由が書いてあると、判断の質が伝わります。
誰が使うものを作ったか
使う人が誰かによって、作るものの性質は変わります。専門知識のある担当者が使うのか、パートタイムの方が使うのか、部署をまたいで不特定の人が使うのか。この情報がないと、読む側は難易度を測れません。
使う人の情報には、人数や役職だけでなく、その人たちのITへの慣れ具合も含めます。慣れていない人が使う仕組みを定着させたという事実は、技術的な難しさとは別種の価値として評価されます。
定着したかどうか
作って納品した時点で終わっている実績と、その後も使われている実績とでは、重みがまったく違います。定着したかどうかは、支援が終わったあとに確認しないとわかりません。だからこそ、確認して書いてある実績は目を引きます。
定着を確認する方法は簡単です。支援が終わって数か月後に、担当者に一度連絡を入れる。「その後、使われていますか」と聞くだけです。この連絡は次の依頼にもつながるので、二重に意味があります。使われていなかった場合も、なぜ使われなくなったかを聞ければ、それ自体が貴重な記録になります。
失敗したときにどう戻したか
うまくいった話しか書いていないポートフォリオは、経験の浅さを示します。AI業務活用支援では、想定した精度が出ない、現場が使ってくれない、といったつまずきが必ず起きます。起きたときにどう対処したかが書いてあると、信頼の材料になります。
書き方は、失敗を告白する形ではなく、対処の手順として書きます。「精度が想定に届かなかったため、対象を絞り直して人の確認を挟む運用に変えた」という書き方です。読む側は、自社でも同じことが起きうると知っているので、起きたときの動き方を見ています。
引き継ぎができる形になっているか
支援者が抜けたあとに回るかどうかは、発注側にとって切実な問題です。手順書を残した、社内の担当者に操作を移した、更新のときに見る場所を決めた。こうした引き継ぎの設計が書いてあると、依存を作らない支援者だと伝わります。
守秘義務を守ったまま実績を書く手順
具体的な手順に落とします。
契約書の秘密保持条項を先に読む
対象となる情報の範囲、期間、例外規定の3点を確認します。多くの契約では、公知の情報や、相手の情報を含まない一般的な知見は対象外とされています。この例外規定が、実績を書くときの土台になります。
期間の定めがある場合は、その期間を過ぎているかも確認します。ただし期間が過ぎていても、相手の社名を出すには別途許可が要ると考えたほうが安全です。
抽象化の4段階
情報の出し方には段階があります。上から順に、社名を出す、業種と規模だけ出す、業務領域だけ出す、業務の型だけ出す、の4段階です。
社名を出せるのは、書面で許可を得た場合だけです。業種と規模は、その組み合わせで会社が特定できないかを確認します。地方の特定の業種で従業員規模まで書くと、事実上の特定になることがあります。業務領域だけなら、ほとんどの契約で問題になりません。業務の型だけにすると誰の話かはわからなくなりますが、判断の基準を書く分には十分な情報量が残ります。
迷ったら、一段下の抽象度で書きます。読む人にとっての情報量は、社名ではなく手順の具体性で決まるからです。
掲載許可の取り方
社名や具体的な数字を出したい場合は、支援の終了時に許可を取ります。終了直後は成果が共有されたばかりで、相手も前向きに検討しやすい時期です。時間が経つと担当者が異動して、誰に聞けばいいかわからなくなります。
依頼するときは、掲載する文面を作ってから渡します。「実績として掲載してよいですか」と白紙で聞くと、相手は何が書かれるかわからず判断できません。文面を見せれば、その場で修正だけして許可が出ることが多い。この一手間で通り方が変わります。
1件の実績を1ページにまとめる型
書式を決めておくと、実績が増えても運用が壊れません。1件につき、次の5項目で書きます。
課題、制約、打ち手、結果、残ったもの。この順番です。
課題には、相手が困っていた業務の状態を書きます。制約には、予算や期間ではなく、業務上の制約を書きます。既存の基幹システムを変更できない、外部にデータを出せない、担当者の稼働を増やせないといったものです。制約が書いてあると、打ち手の妥当性が評価できるようになります。
打ち手には、選択肢を検討した跡を残します。「Aを検討したが制約に合わなかったのでBにした」という一文があるだけで、判断の質が伝わります。結果には、確認できた変化を書きます。残ったものには、支援が終わったあとに相手の手元に残った仕組みや手順書を書きます。
数字の扱い
数字は強力ですが、扱いを間違えると危険です。原則は、相手が公表している数字か、相手の許可を得た数字だけを使うことです。許可のない数字は、抽象化して割合や範囲で書きます。
外部の事例を引き合いに出すのは、自分の実績の数字を出せないときの代替になります。AI活用による作業時間の圧縮は、公開されている事例でも語られています。
AI活用によってLPライティングを内製化し、従来3営業日かかっていた制作時間をわずか2時間へと短縮しました。これは実に93%以上の時間削減に相当します。 出典: a-x.inc
この種の公開事例は、市場でどの程度の変化が起きているかの目安として引用できます。ただし、自分の実績であるかのように書くのは論外です。出典を明記して、参照として使ってください。
スクリーンショットの代わりに置くもの
画面を出せない案件では、代わりに図を置きます。業務の流れを示した簡単な図で十分です。支援前の流れと支援後の流れを並べると、何が変わったかが一目で伝わります。図に社名や実データを入れないよう注意してください。
図を作るツールは何でも構いません。凝った図を作るより、支援前と支援後を並べることのほうが重要です。
図に添える説明文は、2行から3行にとどめます。図で伝わることを文章で繰り返すと、読む側は同じ情報を二度読まされることになり、他の実績まで読み進める気力が削がれます。文章で書くべきなのは、図に描けなかったこと、つまり判断の理由のほうです。なぜこの流れに変えたのか、変えるときに現場から出た反対意見をどう扱ったのか。この種の情報は図では表せません。
もう一つ、図で避けたいのが情報の詰め込みです。1枚の図に工程を全部入れると、どこが変わったのかが埋もれます。変わった部分だけを取り出した図を作り、全体像は文章で補う。読む人の目は最初に図に行くので、図が示すべきなのは結論であって網羅ではありません。
実績がまだない段階での作り方
最初の1件を取る前は、書ける実績がありません。この段階でも作れるものが3つあります。
自分の業務を題材にする
自分の請求書作成、経費の整理、資料の下書きといった業務を対象に、同じ手順で改善します。対象を選んだ基準、試した内容、うまくいかなかった点、最終的な運用を記録する。これは架空の事例ではなく実際の業務なので、堂々と実績として書けます。
自分の業務を題材にする利点は、制約が現実的なことです。時間もお金も限られている状態で何を優先したかという判断は、中小規模の依頼者にとって参考になります。
公開データを題材にする
官公庁の公開データを使って、業務の型を再現する方法もあります。統計や制度の資料を対象に、要約や分類の仕組みを作り、その過程を記録します。データの出どころが明確なので、誰でも検証できる形になります。公開資料は、e-Govや各省庁のサイトから取得できます。
検証の記録そのものを成果物にする
複数のツールを同じ業務に当てて、結果の違いを記録するという作り方もあります。この形は、ツール選定の相談を受ける立場としての実力を示せます。記録には、評価の基準を先に決めてから比較した跡を残してください。基準を後から作ると、結論ありきの比較に見えます。
最初の1本を1週間で作るステップ
作り方の全体像を、日単位の手順に落とします。完璧を目指すと着手できないので、まず1本を通しで作るのが先です。
1日目、対象を決める
自分が過去に関わった業務、または現在自分でやっている業務の中から、対象を一つ選びます。選ぶ基準は、手順を最後まで説明できるかどうかです。派手な事例より、細部まで語れる地味な事例のほうが強い。この日は書き始めず、対象を決めるだけで終えて構いません。
2日目から3日目、記録を掘り出す
当時のメール、チャット、資料を見返して、日付と出来事を時系列に並べます。この作業を先にやらないと、思い出せる範囲だけで書くことになり、内容が薄くなります。特に、途中で方針を変えた場面を探してください。方針を変えた理由は、判断の記録として一番価値があります。
4日目、5項目に整理する
課題、制約、打ち手、結果、残ったものの5項目に振り分けます。振り分けてみると、たいてい制約の欄が空きます。空いたら、当時なぜ別の方法を取らなかったのかを思い出してください。そこに制約が隠れています。
5日目、抽象化と確認
社名や数字を、許可の範囲に合わせて調整します。特定につながる情報が残っていないかを、他人の目で読み直す。可能なら、事情を知らない人に読んでもらい、どこの会社の話か推測できるかを確かめます。
6日目から7日目、体裁を整えて公開する
図を1枚作り、1ページに収めます。公開する場所は後述しますが、この時点で凝った作りにする必要はありません。1本目は完成させることが目的です。2本目以降は同じ型に流し込むだけになるので、作成の時間は大きく短くなります。
置き場所とツールの選び方
作ったものをどこに置くかで、届き方が変わります。
置き場所の第一候補は、自分で管理できるページです。無料のブログサービスやノートサービスでも構いませんが、サービスが終了したときに移せる形にしておく。文章の元データを手元に残しておけば、置き場所を変えても作り直しになりません。
第二の候補は、案件を探すサービス上のプロフィール欄です。ここには全文を載せず、1枚のまとめと、詳細ページへの案内を置きます。プロフィール欄は文字数の制限があることが多いため、要約の練習の場としても機能します。
ツールについては、文書作成と作図ができれば何でも構いません。選ぶときの基準は、更新のしやすさです。案件が終わるたびに1件足す運用を前提にすると、開くのに時間がかかるツールは続きません。凝ったデザインのテンプレートを使うと、体裁を整える手間が増えて更新が止まります。
生成AIを執筆の補助に使うのは有効です。ただし、判断の理由の部分だけは自分で書いてください。そこが実力の証明になる部分であり、生成された一般論に置き換えると、どこかで読んだような文章になります。事実の整理や、言い回しの調整に使うのが適した用途です。
転職や別の仕事に応用するときの違い
同じ材料でも、渡す相手によって組み替えが要ります。
業務委託の依頼を取るためのポートフォリオは、業務を切り出せることと、引き継ぎまで設計できることを中心に構成します。読む側は、自社の業務を渡せるかどうかを見ています。
企業への転職で使う場合は、組織の中で動けることを示す必要が出てきます。誰と調整したか、社内のどの部署を巻き込んだか、といった情報の比重が上がります。同じ実績でも、調整の場面を厚く書くことになります。
別の職種と組み合わせて仕事を広げたい場合は、その職種側の観点で書き直します。デザインの領域と組み合わせるならUI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場で扱われるスキルの整理が、どの部分を自分が担えるかを考える材料になります。
見せ方の順番と、やってはいけないこと
構成の順番は、1枚のまとめから詳細へ、が原則です。最初のページに、対応できる業務領域、支援の進め方、稼働の形を短くまとめる。その次に実績を1件1ページで並べる。最後に経歴やスキルの一覧を置きます。スキルの一覧を先頭に置く構成は、読む側が自分の業務に結びつけられないため、後ろに回します。
やってはいけないことも挙げておきます。第一に、支援先が特定できる書き方をすること。第二に、成果を誇張すること。誇張は、詳しい担当者が読めばすぐわかります。第三に、ツールの名前だけを並べること。使えるツールの一覧は、業務を切り出せることの証明にはなりません。第四に、更新を止めること。最終更新が古いポートフォリオは、動いていない支援者に見えます。第五に、他社の資料の図をそのまま流用すること。著作権の問題になります。
更新の運用は、案件が終わるたびに1件書き足すというルールにします。終わった直後は記憶が新しく、許可も取りやすい。半年ためてから書こうとすると、細部を思い出せなくなり、結局書けません。
読んだ相手から必ず聞かれること
ポートフォリオは読まれて終わりではなく、そのあとの会話の起点になります。書いた内容について何を聞かれるかを想定しておくと、記載の粒度を決めやすくなります。
どれくらいの期間でそこまで到達したか
期間は必ず聞かれます。書いておくべきなのは全体の期間ではなく、区切りごとの期間です。対象を決めるまで、最初の試行まで、現場が使い始めるまで、範囲を広げるまで。この区切りで書くと、読む側は自社に当てはめて計画を立てられます。
期間を短く見せようとして実際より縮めて書くのは避けてください。依頼が来たときに同じ期間を求められ、自分の首を絞めます。
相手側の担当者にどれくらいの負担がかかったか
これは発注を検討する側にとって切実な質問です。支援を受けるにも、社内の人の時間が要る。どの工程で、誰に、どれくらい時間を割いてもらったかが書いてあると、相手は社内の調整を先に始められます。
負担を軽く見せる必要はありません。むしろ、必要な負担を正直に書いてあるほうが、始まってからの食い違いが減ります。
うまくいかなかったのはどの部分か
この質問に即答できるかどうかで、経験の深さが判断されます。答えを用意しておくというより、書く段階でつまずきを1件は含めておくと、自然に答えられるようになります。
使ったツールが変わったらどうするか
AIの領域は変化が速いため、この質問はほぼ確実に来ます。答えの軸は、特定のツールに依存しない設計にしてあるかどうかです。業務の切り出し方と手順が言語化されていれば、道具が変わっても移せる。ポートフォリオにその考え方が書いてあると、この問いには書面の時点で答えられます。
ポートフォリオで解決できることと、できないこと
期待を正しく置いておくことも実務のうちです。
ポートフォリオが解決するのは、初回の会話の質です。何ができる人なのかを説明する時間が省け、いきなり相手の業務の話から始められます。この差は、商談の回数が増えるほど効いてきます。
一方で、ポートフォリオだけで依頼が決まることは稀です。決め手になるのは、相手の業務の話を聞いたときの反応の速さと、質問の的確さです。書面は入口を作るもので、決めるのは会話だという前提で扱ってください。
もう一つできないことがあります。実力そのものを底上げすることはできません。書けることが少ないと感じたら、それは書き方の問題ではなく、経験の記録が残っていない問題です。次の案件から記録の取り方を変えるところに戻ってください。
資格やスキルの一覧はどう扱うか
資格は、ポートフォリオの主役にはなりませんが、補助として機能します。特に、支援先の情報システム部門と話す場面では、ネットワークやセキュリティの基礎を押さえていることを示せると話が早くなります。CCNA(シスコ技術者認定)は、ネットワークの基礎知識を体系的に示せる資格の一つで、社内システムとの接続を検討する場面で共通言語になります。
もう一つ、見落とされがちなのが文書の作法です。支援の成果は手順書や報告書の形で残るため、読みやすい文書を書けるかどうかが定着の成否を分けます。ビジネス文書検定で扱われる社内文書の構成は、引き継ぎ資料を作るときの型として使えます。
資格をポートフォリオに載せるときは、取得年と、その資格が支援のどの場面で役に立つかを一文添えます。一覧だけを並べると、読む側は関連を判断できません。
仕事の広がりと、手元に残るもの
ポートフォリオが機能し始めると、依頼の入り口が変わります。条件を並べて比較される場から、この人に相談したいという場に移る。ここが分かれ目です。
支援できる領域の輪郭を確かめたいときは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理された業務の範囲が参考になります。導入設計から社内定着までの工程が並んでいるので、自分がどこを担っているのか、どこはまだ手をつけていないのかを確認できます。マーケティングやセキュリティの領域まで広げるなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事の分類が、次に足す実績の方向を決める材料になります。開発の工程まで自分で担うつもりがあるなら、アプリケーション開発のお仕事で扱われる仕事の内容を見て、外注する部分と自分でやる部分の線を引いておくといいでしょう。
職種としての市場の水準を知りたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のような職種別のデータが目安になります。ただし、そこに並ぶ金額は仲介手数料が引かれる前の数字であることが多く、実際に手元に残る額とは別物です。
20年この市場を運営してきた立場から見ていると、ポートフォリオの厚い人が必ずしも仕事を多く取っているわけではありません。取れている人に共通しているのは、実績の数ではなく、1件あたりの記録の丁寧さです。何を対象に選び、なぜそれを選び、どこでつまずいて、どう戻したか。この4点が書かれている実績は1件でも効きます。逆に、成果だけを並べた実績は、10件あっても読み飛ばされます。
もう一つ、長く見てきて確かなことがあります。中間マージンが乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼者はより多くを頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件は、額面を変えずに手元に残るものを増やすので、実績を積む初期の段階ほど効き方が大きい。ポートフォリオを整えることと、取引の経路を見直すことは、どちらも同じ「手元に何が残るか」という問いにつながっています。
よくある質問
Q. 支援先の社名を出せない場合、実績として意味がありますか?
意味はあります。読む側が判断材料にしているのは社名ではなく、対象業務の切り出し方と判断の基準だからです。業種と規模だけ、あるいは業務領域だけに抽象化しても、課題と制約と打ち手を具体的に書けば十分に機能します。社名を出したい場合は、支援の終了直後に掲載文面を作って許可を取るのが最も通りやすい方法です。
Q. まだ支援の実績がない場合、何を載せればいいですか?
自分自身の業務を題材にした改善記録が使えます。請求書の作成や資料の下書きといった業務を対象に、選んだ基準、試した内容、うまくいかなかった点、最終的な運用まで記録してください。公開されている官公庁のデータを題材にする方法や、複数のツールを同じ業務に当てて比較した記録も、実力を示す材料になります。
Q. ポートフォリオに数字は入れるべきですか?
相手が公表している数字か、掲載の許可を得た数字だけを使ってください。許可のない数字は、割合や範囲に抽象化して書きます。自分の実績の数字が出せない場合は、公開されている外部の事例を出典つきで引用し、市場でどの程度の変化が起きているかの目安として示す方法があります。自分の成果であるかのように書くのは避けてください。
Q. 1件あたりどれくらいの分量で書けばいいですか?
1件につき1ページに収めるのが目安です。課題、制約、打ち手、結果、残ったものの5項目を並べます。制約の欄には予算や期間ではなく、既存システムを変更できない、データを外部に出せないといった業務上の制約を書いてください。制約が書かれていると、打ち手が妥当だったかを読む側が評価できるようになります。
Q. ポートフォリオはどのくらいの頻度で更新すべきですか?
案件が終わるたびに1件書き足すルールにするのが現実的です。終了直後は細部の記憶が残っており、掲載の許可も取りやすい時期です。数か月ためてから書こうとすると、選択の理由やつまずいた点を思い出せなくなります。最終更新が古いままだと、動いていない支援者に見えるという副作用もあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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