【1枚で足りる】在宅電子書籍の表紙デザインの職務経歴書に書く順

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
【1枚で足りる】在宅電子書籍の表紙デザインの職務経歴書に書く順

この記事のポイント

  • ✓電子書籍の表紙デザインの在宅案件で職務経歴書を求められたとき
  • ✓何をどの順で書けば通るのか
  • ✓実績が少ない場合の埋め方

電子書籍の表紙デザインの在宅案件に応募したら、職務経歴書の提出を求められた。何を書けばいいのか分からず手が止まっている。そういう状態でこの記事にたどり着いた人が多いはずです。結論から言うと、A4で1枚で足ります。それ以上長くしても読まれませんし、長くしたことで落ちるケースのほうが多い。

理由は明快で、業務委託の選考は採用選考ではないからです。読み手が判断したいのは「この案件を、この納期で、この予算で任せられるか」の一点であり、あなたの職業人生の全体像ではありません。ところが職務経歴書という言葉に引きずられて、転職用のフォーマットをそのまま出してしまう人が非常に多い。正直なところ、これはかなりもったいないです。

この記事では、在宅の表紙デザイン案件で職務経歴書が求められる場面、落ちる書き方の共通点、1枚に収める場合の書く順、実績が少ないときの埋め方、そして需要と税金まわりの確認先までを扱います。

在宅の表紙デザインで職務経歴書を求められる場面

全案件で求められるわけではない

まず前提を整理します。電子書籍の表紙デザインの募集で、職務経歴書の提出を求められるのは全体の一部です。個人著者が単発で表紙を1点依頼する場合、提出物はポートフォリオのURLだけというケースが大半になります。

職務経歴書が出てくるのは、発注側に組織がある場合です。具体的には出版代行会社、編集プロダクション、シリーズ物を継続的に出しているコンテンツ事業者など。この層は社内の承認プロセスがあり、外注先の情報を記録として残す必要があります。だから書式のある書類を求めます。

つまり、職務経歴書を求められた時点で、その案件は単発ではなく継続の可能性がある案件だということです。ここは重要で、書き方の方針が変わります。単発案件なら「この1点をどう作るか」だけ書けばいいのですが、継続前提の案件では「安定して回せるか」を示す必要があります。

求められる3つのパターン

実際に提出を求められる場面は、大きく3つに分かれます。

1つ目は、募集要項に最初から「職務経歴書をご提出ください」と明記されているパターン。この場合は選考書類として使われるので、応募時点で完成度を上げる必要があります。

2つ目は、一次のやり取りが進んだあとで「社内共有用に経歴をいただけますか」と言われるパターン。これは実質的に決定済みで、社内の記録用です。この場合は簡潔さのほうが重要で、盛る必要はありません。

3つ目は、業務委託契約を結ぶ段階で、契約書の添付資料として求められるパターン。これは形式要件なので、事実を正確に書けば十分です。

この3つを区別せずに、全部同じ気合いで書いてしまう人がいます。1つ目以外は、時間をかける意味がほとんどありません。

発注側が実際に確認している項目

組織として外注先を選ぶ場合、確認される項目は決まっています。順に並べるとこうなります。

確認項目 判断していること
表紙・装丁の制作点数 実務として回した経験があるか
扱ったジャンルの内訳 自社の本と近い領域か
使用ツールと書き出し形式 入稿でトラブルが起きないか
稼働可能な時間帯と曜日 進行が止まらないか
過去の継続取引の有無 途中で消えないか
屋号や開業届の有無 支払いと経理の処理が可能か

この6項目に答えていれば、書類としては合格です。逆に、この6項目に答えていない書類は、どれだけ長くても通りません。

落ちる職務経歴書の共通点

時系列で全部書いてある

もっとも多いのがこれです。新卒からの職歴を年月順に全部書き、各社の業務内容を箇条書きにしている。転職の書類としては正しいのですが、業務委託では逆効果になります。

読み手は、表紙デザインに関係する情報だけを探しています。そこに小売店の販売職や、コールセンターのオペレーター経験が混ざっていると、探す作業が発生します。読み手に探させる書類は、それだけで評価が下がる。

対処は単純で、関係のある職歴を先頭に置き、関係のない職歴は年月と社名と職種だけの1行にまとめます。空白期間を隠す必要はありませんが、詳細を書く必要もありません。

表紙と関係ない業務が半分を占める

似ていますが別の問題です。デザイン職の経験がある人ほど、Webサイト制作やバナー広告、名刺やチラシといった実績を全部書きます。デザイン経験としては正しいのですが、表紙デザインとは要求されるものが違う。

表紙デザインで問われるのは、縮小表示時の可読性、文字組み、ジャンル慣習への理解の3つです。Webバナーの経験は縮小耐性という点で接続できますが、名刺のデザイン経験は直接には効きません。書くなら、接続する説明を添える必要があります。

「名刺・パンフレット制作200点」とだけ書いてあるのと、「印刷物中心に200点。文字組みと級数調整を日常的に扱っていたため、書籍タイトルの字詰めに直結します」と書いてあるのとでは、読まれ方がまったく違います。

ツール名の羅列で終わっている

「Photoshop、Illustrator、Figma、Canva、Procreate」と並べただけの書類をよく見ます。これは情報としてほぼゼロです。何ができるかが分からないからです。

発注側が知りたいのは、ツール名ではなく、そのツールで何を完結させられるかです。表紙デザインの文脈なら、こう書きます。

「Photoshop(合成・レタッチ・書き出し)、Illustrator(文字組み・ロゴ調整・アウトライン化)。KDPの推奨サイズ1600×2560ピクセルでの書き出し、およびペーパーバック用の塗り足し込みPDF入稿に対応。」

同じツール名でも、括弧の中と入稿仕様への言及があるだけで、実務経験の有無が伝わります。

成果が「担当しました」で止まっている

「書籍カバーのデザインを担当しました」という書き方は、担当した事実しか伝えていません。

代わりに、数えられるものを書きます。点数、ジャンル、継続期間、修正の平均回数、初回提案までの標準日数。この5つのうち書けるものを書けば、それが実務の解像度になります。「ビジネス書と実用書を中心に、3年間で表紙60点。初回3案提案までの標準日数は4日、確定後の修正は平均2回」というほうが、担当しましたの100倍情報があります。

1枚に収める場合の書く順

全体の構成は5ブロック

A4で1枚に収める場合、構成はこうなります。上から順に読まれるので、順番が重要です。

  1. 冒頭サマリー(3行)
  2. 表紙・装丁の制作実績(点数と内訳)
  3. 使用ツールと入稿対応
  4. 稼働条件と進行の型
  5. 関連職歴(各1行)

この順にする理由は、読み手が上から3行で「読み進めるか」を決めるからです。転職用の書類は「職務要約」を冒頭に置きますが、あれは職歴の要約です。業務委託では、職歴の要約ではなく、提供できるものの要約を置きます。

冒頭サマリーの書き方

3行で書く内容は決まっています。何を、どれだけ、どういう条件で提供できるか。

「電子書籍を中心とした表紙デザインを担当。ビジネス書・実用書・小説の3ジャンルで累計60点。初回3案提案まで4営業日、平日夜間および土日稼働。KDP縦横比とペーパーバック入稿の両方に対応。」

これで3行です。ここまで読めば、発注側は自分の案件に合うかどうかを判断できます。この3行が弱いと、以降を読まれません。

実績が少ない場合でも、書ける事実を並べます。「表紙デザインは自主制作を含めて8点。うち商業案件は2点。」と正直に書いたほうが、曖昧に盛るよりも通ります。盛った書類は、初回のやり取りで必ずばれます。

制作実績はジャンル別に分ける

点数だけを書くのは不十分です。ジャンル別の内訳を出します。

理由は、表紙デザインがジャンル慣習に強く支配されているからです。ビジネス書の表紙と、恋愛小説の表紙と、実用書の表紙は、それぞれ別の文法で作られています。ビジネス書は帯要素とキャッチコピーの階層設計が中心、恋愛小説はイラストと書体の情緒設計が中心、実用書は情報の一覧性が中心。この違いを理解しているかどうかが、実務経験の核心です。

だから内訳を書くと、それだけで「この人はジャンルの違いを認識している」と伝わります。

「ビジネス書24点、実用書18点、小説(現代・恋愛)12点、技術書6点」

この4行があるだけで、書類の説得力が変わります。

ツールと入稿仕様は必ずセットで書く

前述の通り、ツール名だけでは意味がありません。入稿仕様とセットにします。

書くべき項目は、使用ツール、書き出し形式、対応解像度、カラープロファイル、そして電子書籍固有のサイズ要件です。電子書籍のストア表示は縦長比率が基本で、サムネイル時の可読性がすべてを決めます。この要件に触れているかどうかで、経験の有無がはっきり分かれます。

紙の書籍も扱えるなら、塗り足しと背幅計算への言及を足します。ペーパーバック展開を検討している発注者にとっては、ここが決め手になります。

稼働条件を正直に書く

在宅の業務委託でもっとも揉めるのが、稼働時間の認識違いです。発注側は平日日中に連絡が取れる前提で動き、受け手は本業の後に作業している。この食い違いが、進行の遅れとして表面化します。

だから、職務経歴書の段階で書きます。「平日は19時以降に稼働。チャットの返信は当日中、遅くとも翌営業日の午前中。土日は日中も対応可能。」

これを書くと不利になると思う人がいますが、実際は逆です。条件が明示されている相手のほうが、発注側は計画を立てられます。曖昧なまま受注して遅延するより、最初に条件で落ちたほうが双方の損失が小さい。

関連職歴は各1行で足りる

最後のブロックです。表紙デザイン以外の職歴は、社名(または業種)、在籍期間、職種の3要素を1行で書きます。詳細な業務内容は不要です。

例外は、その職歴が表紙制作に接続する場合だけです。出版社の編集部にいた、印刷会社で入稿を扱っていた、書店で棚を作っていた。この3つは表紙制作に直結するので、1行足して接続を説明します。書店員の経験は、実は表紙デザインでかなり強い材料になります。何が手に取られるかを実地で見ているからです。

実績がほとんどない場合の埋め方

商業実績と自主制作を分けて書く

実績ゼロの状態で応募する人は多いです。この場合、嘘を書くのは論外として、書き方には工夫の余地があります。

やるべきなのは、商業実績と自主制作を明確に分けて、両方書くことです。分けずに混ぜると信用を失いますが、分けて書けば自主制作にも意味が出ます。

「商業案件2点。自主制作として、既刊のリデザイン案を6点(ビジネス書3点、小説3点)。」

自主制作というのは、既に出版されている本の表紙を自分なりに作り直したものです。実際の本があるので、比較対象が明確になり、判断がしやすい。発注側からすると、ゼロから作った架空の表紙より、既刊のリデザインのほうが評価しやすいです。

「まだやっていない」を「これから何日で出せる」に置き換える

実績が少ないことを埋める方法として有効なのが、スピードと手順を明示することです。

実績がない人が持っている唯一の優位性は、時間が空いていることです。だから「初回3案を2営業日でお出しします」と書けます。実績豊富な人ほど稼働が埋まっているので、ここは実際に差がつく部分です。

ただし、書いた納期は必ず守ってください。ここで一度遅れると、実績がない状態からの信用回復は難しいです。

数えられるものを全部数える

書けることがないと感じている人でも、数えられるものは意外にあります。

・作成した表紙の総点数(自主制作を含む) ・扱ったジャンルの数 ・使用できるツールごとの操作年数 ・在宅で作業できる時間の週合計 ・チャットツールの対応可能種類

これらは全部、書類上は情報になります。特に週の稼働可能時間は、発注側が進行計画を立てるうえで直接使う数字なので、書いておくと評価されます。

案件の探し方と、募集要項の読み方

募集要項に書かれていることの意味

表紙デザインの募集は、クラウドソーシングのプラットフォームに多く出ています。募集要項の書き方を見ると、発注側の習熟度が分かります。

ビジネス書のKindle電子書籍の表紙デザインと挿入イラストに関する仕事・募集案件ページです。クラウドソーシングのランサーズで、装丁・ブックデザインに関する最適な外注/発注先をお探しの方、副業案件・求人をお探しのフリーランスの方はまず会員登録がおすすめです。 出典: lancers.jp

こうした案件ページには、表紙単体ではなく挿入イラストまで含まれるものがあります。要件の範囲がどこまでかを最初に確認しないと、後で作業量が膨らみます。

読むべきポイントは4つです。納品形式の指定があるか、修正回数の上限が書かれているか、著作権の扱いに触れているか、そして参考にしてほしい既刊が提示されているか。この4つがすべて書かれている募集は、発注側が慣れています。逆に「かっこいい感じでお願いします」しか書かれていない募集は、ヒアリングの負荷を全部こちらが引き受けることになります。

手数料の構造を理解しておく

クラウドソーシングのプラットフォームを使う場合、システム手数料が引かれます。主要なサービスでは報酬額に対して16.5%から20%程度が一般的です。表紙1点2万円の案件なら、手取りは1万6,000円前後になります。

これを踏まえて単価を設計しないと、時給換算で想定と大きくずれます。私自身、駆け出しの頃に手数料を計算に入れずに見積もりを出して、納品後に手取りを見て青ざめたことがあります。見積もり段階で手数料込みの逆算をする癖をつけたほうがいいです。

継続取引に移行する段階では、仲介を挟まない直接契約に切り替える選択肢もあります。その場合は請求と入金の管理を自分で持つことになるので、後述する開業まわりの整理が必要になります。

需要の方向をデータから読む

電子書籍市場と表紙需要の関係

表紙デザインの需要は、電子書籍の刊行点数に連動します。そして刊行点数を押し上げているのは、出版社ではなく個人出版です。個人が原稿から出版まで完結できる構造になった結果、表紙だけを外注する需要が生まれました。

この構造には特徴があります。1件あたりの予算が小さく、件数が多い。だから、1点10万円の高単価案件を狙う戦略は成立しにくく、1万5,000円から3万円の帯で回転数を上げるか、シリーズ物で継続を取るかの二択になります。

職務経歴書の書き方も、この構造に合わせるべきです。「1点を丁寧に作ります」より「型があるので安定して回せます」のほうが、この市場では評価されます。だから制作フローや標準納期を書類に入れることに意味があるわけです。

隣接領域への広がりを押さえておく

表紙デザインだけを続けるのは、収入の波が大きくなります。実際に長く続けている人は、隣接する領域を併走させています。

画像生成AIを制作フローに組み込む案件は増えていて、ツールの使い分けや社内への定着支援そのものが仕事になっています。この領域の実務範囲はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されていて、求められる知識と案件の性質が把握できます。制作物を集客とセットで扱う方向に広げるなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事が実際の業務範囲の参考になります。制作から実装側に踏み込みたい場合はアプリケーション開発のお仕事で、在宅で成立する開発案件の形が確認できます。

単価水準を比較検討する材料として、ソフトウェア作成者の年収・単価相場に技術職の水準が、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に文章まわりの水準がまとまっています。表紙デザインの相場と並べて見ると、どこに時間を寄せるかの判断材料になります。

書類作成そのものに苦手意識がある場合は、型を体系で押さえるのが早いです。ビジネス文書検定は文書構成と敬語運用を体系的に扱う検定で、職務経歴書だけでなく見積書や提案文にもそのまま効きます。実際に副業案件へどう接続するかはビジネス文書検定で文書作成の副業力アップ|在宅ライティング案件にまとまっています。技術方向に振るならCCNA(シスコ技術者認定)のような認定資格が、未経験領域での信用担保として機能します。

書面のチェックを在宅で担う職種の実態を知りたい場合は、法律事務所のパラリーガルの働き方|在宅・時短勤務の現状【2026年版】が参考になります。契約書を扱う仕事の相場と働き方がまとまっているので、書類仕事の市場価値をつかむのに使えます。

税金と開業まわりの確認先

開業届と屋号の扱い

職務経歴書に「屋号」の欄を設けている発注者がいます。組織として外注する場合、支払先の情報を整理する必要があるからです。

在宅で継続的に受注するなら、開業届を出しておいたほうが手続きが簡単になります。屋号名義の口座が作れますし、青色申告の選択が可能になります。ただし、開業届を出したから通りやすくなるわけではありません。あくまで経理処理の話です。

確定申告の要否や必要書類は所得の状況で変わるため、最新の要件は一次情報で確認するのが確実です。

確定申告に関する情報、各種申告書・手続の案内を掲載しています。 出典: nta.go.jp

副業として受けている場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。表紙を月に1点受けているだけでも、単価によっては簡単に超えます。年の途中で記録を取っていないと、後から集計するのが大変になるので、受注のたびに金額と日付を残す習慣をつけたほうがいいです。

経費として扱えるものの整理

在宅で表紙デザインをする場合、ツールのサブスクリプション費用、フォントのライセンス費用、素材サイトの利用料、パソコンや液晶タブレットの購入費用などが経費の対象になります。

これらを記録していないと、手取りの実態が把握できません。表紙1点2万円で受けていても、月6,000円のツール費用と素材費がかかっていれば、月2点では実質の利益が想定より小さくなります。単価設定はここまで計算してから決めるべきです。

書類を通したあとに落ちる場面

書類は通ったのに、初回のやり取りで消える

職務経歴書が通っても、そこで終わりではありません。むしろ、ここから落ちる人のほうが多いです。書類通過後の一次連絡で消えるパターンには、はっきりした型があります。

もっとも多いのが、返信が遅いことです。発注側は複数の候補と並行してやり取りしています。書類が同程度なら、返信が早いほうに話が進みます。特に個人著者は出版スケジュールを自分で組んでいるので、返信の速さがそのまま安心材料になります。

次に多いのが、質問をしないことです。「承知しました。よろしくお願いします」だけを返す人は、進行の解像度が低いと判断されます。逆に、ジャンル、想定読者、既刊の有無、納期、修正回数の5点を最初の返信で確認する人は、それだけで信頼されます。質問は疑いの表明ではなく、進行設計の一部です。

3つ目が、条件の確認を後回しにすることです。報酬額、支払い時期、著作権の扱い、ポートフォリオ掲載の可否。この4つを最初に確認しない人は、後から必ずどこかで揉めます。そして揉めた記憶は発注側にも残るので、継続にはつながりません。

テストとして1点作らされる場合の判断

書類通過後に「まず1点作ってみてください」と言われることがあります。ここは慎重に判断すべき場面です。

有償のトライアルであれば、受けて問題ありません。金額が本番より低くても、実績として書けますし、相性の確認にもなります。問題は無償の場合です。無償で完成品を求められるのは、実質的にコンペと同じ構造ですが、コンペと違って他に何人が参加しているのかも分かりません。

判断の基準は単純で、提出物が「そのまま使える完成品」かどうかです。ラフ1案であれば無償でも許容範囲ですが、文字組みまで入った完成データを無償で求められたら、断るか有償を提案したほうがいいです。ここで無償を受け続けると、同じ発注者から何度も無償の依頼が来る関係が固定されます。

私も駆け出しの頃、無償のテスト制作を3件立て続けに受けて、そのすべてが「今回は見送ります」で終わったことがあります。作業時間だけで20時間近く消えました。断る力を持つのは、わがままではなく事業判断です。

書類のテンプレを使い回すときの注意

職務経歴書を1枚作ると、次からは使い回したくなります。効率としては正しいのですが、そのまま出すと落ちます。

案件ごとに差し替えるべき箇所は2つあります。冒頭サマリーの1行目と、ジャンル別実績の並び順です。ビジネス書の案件ならビジネス書の点数を先頭に、小説の案件なら小説を先頭に置きます。読み手は上から読むので、自分の案件に関係するジャンルが最初にあるかどうかで印象が変わります。

もう1つ、稼働条件は必ず最新の状態に更新してください。前の案件のときに書いた「平日夜間対応可」が、今は他案件で埋まっているのに残っていると、受注後に破綻します。書類は自分の稼働の記録でもあります。

差し替えるのはこの3箇所だけで、残りは共通で構いません。毎回ゼロから書き直す必要はありません。

書類作成にかける時間の配分

1枚に落とすまでの標準的な手順

はじめて職務経歴書を作る場合、作業時間は3時間ほど見ておけば足ります。内訳はこうなります。

制作した表紙の棚卸しに60分。過去のデータフォルダを開いて、点数とジャンルを数えます。ここで意外に多いのが、自分の実績を過小評価していたケースです。数えてみたら想定の倍あった、という人は珍しくありません。

ツールと入稿仕様の整理に30分。過去の納品データを開いて、実際に使った書き出し設定を確認します。記憶で書くと間違えるので、必ず実データを見てください。

稼働条件の整理に30分。今後3か月の予定を見て、現実に対応できる時間帯を確定します。ここを希望的観測で書くと、後で全部崩れます。

そして本文の執筆と1枚への圧縮に60分。最初は2枚になりますが、そこから削ります。削るときの基準は「発注側がこの案件を判断するのに使うか」の一点です。使わない情報は、どれだけ自分にとって大事でも削ります。

更新は3か月に1回で足りる

一度作ったら、更新は3か月に1回で十分です。更新するのは点数と稼働条件だけです。

ただし、大きな案件が終わったタイミングでは、その場で追記してください。時間が経つと、何点作ったのか、どのジャンルだったのかを忘れます。実績の記録が曖昧な人は、実際より低く見積もる傾向があるので、都度の記録が結局は自分を守ります。

私の場合、案件が終わるたびにスプレッドシートに1行足すだけの運用にしています。日付、ジャンル、点数、単価、修正回数。この5列だけです。これがあると、書類の更新は10分で終わりますし、単価交渉のときの根拠にもなります。

選考する側を長く見てきた立場からの観察

20年この市場を運営してきた立場から言うと、職務経歴書で通る人と通らない人の差は、実績量ではありません。書類を読む相手の作業を、どれだけ減らしているかです。

発注側の担当者は、複数の応募者の書類を並べて、社内で説明する立場にいます。その人が上司や著者に「この人にお願いします」と説明するとき、書類から抜き出す情報は決まっています。点数、ジャンル、納期、単価、稼働条件。この5つが探さずに見つかる書類は、それだけで選ばれやすい。逆に、5つが本文の中に埋まっている書類は、担当者が抜き出す作業を強いられます。

もう一つ、運営者として見てきた限りで確かなことがあります。長く続いている在宅ワーカーは、単発の高単価案件を追いかけていません。同じ相手から繰り返し依頼される状態を作ることに時間を使っています。そして、その状態を作る最大の要因は、中間マージンが乗らない直接の関係に移行できているかどうかです。仲介手数料が引かれない構造では、依頼者は同じ予算でより多く頼めますし、受け手は同じ作業で手取りが厚くなる。手数料0%の意味は、金額の大小ではなく、この双方が得をする関係が続きやすいという点にあります。

職務経歴書は、その関係の入口に置かれる書類です。だから、自分の歴史を語る書類ではなく、相手の判断を代行する書類として作る。書く順を変えるだけで、同じ実績でも読まれ方が変わります。

在宅で一人で作業していると、書類が通らない理由が分からないまま消耗が積み上がります。応募と落選を繰り返す期間は、精神的な負荷が想像以上に高い。この負荷の扱い方については、在宅ワーカーのメンタルヘルスケア|孤独・燃え尽きを防ぐ5つの習慣【2026年版】に具体的な習慣がまとまっています。書類を直す前に、消耗の管理から入ったほうがいい局面もあります。

書類の話に戻すと、直すべき箇所は限られています。冒頭3行、ジャンル別の点数、入稿仕様、稼働条件。この4つを1枚に収めれば、書類としては十分です。それ以上書き足しても、通過率は上がりません。

よくある質問

Q. 電子書籍の表紙デザインの応募で、職務経歴書は必ず必要ですか?

必須ではありません。個人著者が単発で依頼する案件では、ポートフォリオのURLだけで足りることが多いです。職務経歴書が求められるのは、出版代行会社や編集プロダクションなど、社内に承認プロセスがある発注者の場合です。求められた時点で継続案件の可能性が高いと考えてよいです。

Q. 職務経歴書は何枚くらいの分量が適切ですか?

A4で1枚に収めるのが適切です。冒頭サマリー3行、ジャンル別の制作点数、使用ツールと入稿対応、稼働条件、関連職歴の5ブロックで構成します。転職用の時系列フォーマットをそのまま使うと、表紙制作に関係のない情報が半分を占めて読まれにくくなります。

Q. 表紙の制作実績がゼロでも応募して良いですか?

応募できます。その場合は商業実績と自主制作を明確に分けて両方書いてください。既刊のリデザイン案を数点作っておくと、比較対象が明確なぶん評価されやすくなります。実績が少ない人の優位性は稼働の空きなので、初回提案までの日数を短く提示するのも有効です。

Q. 表紙デザインの副業でも確定申告は必要ですか?

給与所得がある人の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。表紙1点あたりの単価が1万5,000円から3万円程度であれば、月1点の受注でも超える可能性があります。受注のたびに金額と日付を記録しておき、最新の要件は国税庁の情報で確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月27日最終更新:2026年9月15日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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