精神保健福祉士になるまでの道のり|必要な資格と、働きながら取る方法


この記事のポイント
- ✓精神保健福祉士の取り方を
- ✓受験資格のルート別に整理しました
- ✓一般大学卒や社会人が働きながら取る方法
「精神保健福祉士 取り方」と検索する人が最初にぶつかるのは、ルート図の複雑さです。福祉系の大学を出た人、まったく別の学部を出た人、すでに福祉の現場で働いている人、高校を出てすぐ目指す人。出発点によって必要な年数も費用も変わるため、他人の体験談がそのまま自分に当てはまりません。結論から言うと、この資格の取り方は「自分の最終学歴」と「相談援助の実務経験の有無」の2つで、ほぼ決まります。この記事では、その2つを軸にルートを整理し、働きながら取る場合に何が現実的な壁になるのかまで書きます。制度の細部は改正が入る領域なので、最終確認は公式の情報で行うという前提で読んでください。
そもそも精神保健福祉士とは、法律上どういう資格か
まず位置づけを押さえます。精神保健福祉士は、精神保健福祉士法に基づく国家資格です。精神障害のある人の社会復帰や日常生活の支援、相談援助を担う専門職として定められています。実務ではPSWという略称が長く使われてきました。
法律上の性質として重要なのは、これが「名称独占」の資格だという点です。つまり、登録を受けた人だけが精神保健福祉士と名乗れるという意味であって、その業務を有資格者しか行えないという意味ではありません。これ、知らない人が本当に多いところです。だから求人票では、相談員の募集に「社会福祉士・精神保健福祉士のいずれか」と書かれていたり、無資格でも応募できる相談業務の募集があったりします。資格がなくても似た仕事に就ける場面はある。それでも資格を取る意味はどこにあるのか、という話は後の章で扱います。
もうひとつ、法律には信用失墜行為の禁止や秘密保持義務といった義務規定が置かれています。相談援助の仕事は、人の生活歴や病歴、家族関係、経済状況といった、外に出れば取り返しのつかない情報を扱います。だから資格の枠組みの中に、守るべき義務が明記されています。資格を取るという行為は、試験に受かることだけを指すのではなく、この義務の枠に自分を入れることでもあります。
社会的な背景も押さえておきます。精神科医療は、長期入院を中心とした形から、地域で暮らしながら支援を受ける形へと方向が変わってきました。この転換は、退院後の住まい、就労、金銭管理、家族との関係といった生活面の調整を担う人を必要とします。加えて、職場のメンタルヘルス、依存症、ひきこもり、自殺対策といった領域でも、医療と生活の両方を理解して橋渡しできる人材の必要性が語られています。精神保健福祉士の活躍の場が医療機関の外に広がってきたのは、この流れの結果です。制度の現状や施策の方向性は厚生労働省が公表資料を出しているので、志望動機を固める段階で一度目を通しておくと、面接でも実習でも土台になります。
受験資格のルートは、最終学歴と実務経験で決まる
ここが本題です。精神保健福祉士の国家試験には受験資格が必要で、誰でも申し込めるわけではありません。ルートは複数あり、一見すると図が複雑ですが、分解すると次の3つの要素の組み合わせでできています。
第1に、卒業した学校の種類。福祉系の大学や短大か、一般の大学や短大か、それ以外か。第2に、そこで指定科目を履修したかどうか。第3に、相談援助の実務経験の年数。この3つを足して、足りない分を養成施設で埋める、という構造です。
福祉系の学校を出ている場合の考え方は、次の通りです。
福祉系大学の4年制大学に進学し、精神保健福祉士の国家試験に必要な指定科目を履修した場合は、卒業と同時に受験資格が得られます。3年制の短期大学の場合は、指定科目の履修に加え、相談援助実務経験が1年必要となるため、最短でも受験資格を得るためには1年かかります。また、2年制の短期大学の場合は、指定科目の履修に加え、相談援助実務経験が2年必要となるため、受験資格を得るには最短でも2年は必要となります。 出典: creatework.jp
つまり、4年制の福祉系大学で指定科目をそろえた人は、卒業と同時にスタートラインに立てます。短大の場合は、在学年数が短い分を実務経験で埋める設計になっています。3年制なら実務1年、2年制なら実務2年。学校で学んだ期間と現場で学んだ期間の合計をそろえる、という発想です。
一方、福祉と関係のない学部を出た人はこうなります。
一般の4年制大学を卒業した場合は、一般養成施設で1年以上学べば、受験資格が得られます。3年制の一般短期大学の場合は、相談援助実務を1年間経験し、一般養成施設で1年以上学ばなければならないため、最短で2年。2年制の短期大学の場合は、3年制のルートと同じですが、相談援助実務は4年必要となるため、受験資格を得るためには最短でも4年必要です。 出典: creatework.jp
社会人が最も多く通るのが、この「一般の4年制大学卒 + 一般養成施設で1年以上」のルートです。学部は問われません。法学部でも経済学部でも工学部でも、4年制大学を卒業していれば、養成施設での学びを足すことで受験資格に届きます。逆に言えば、大学を出ていても福祉系でなければ、養成施設をスキップすることはできません。
なお、福祉系の大学で指定科目ではなく基礎科目のみを履修した場合は、短期養成施設で学ぶルートが用意されています。また、社会福祉士の資格をすでに持っている人には短縮のルートがあります。自分がどこに当てはまるかは、卒業した学校のシラバスや成績証明書で「指定科目」を満たしているかを確認するところから始まります。ここは自己判断せず、養成施設の入学相談窓口や試験実施機関に照会してください。履修科目の判定を誤ると、養成施設に入ってから受験資格が足りないと分かる事態になります。
実務経験の「相談援助」の範囲にも注意が必要です。福祉施設で働いていれば何でも該当するわけではなく、職種と業務内容が定められています。介護の仕事をしていた期間がそのまま算入されるとは限りません。ここも施設に証明書を書いてもらう必要があるため、在職中に確認しておくのが安全です。
働きながら取る方法と、その現実的な壁
社会人が精神保健福祉士を目指す場合、選択肢は大きく3つです。
通信課程の一般養成施設に通う。もっとも一般的な形です。講義はテキストとレポート、スクーリング(面接授業)が組み合わされます。働きながらでも履修計画が立てられる設計になっていますが、通信は「自分で進める」課程なので、レポートの提出期限を自分で管理できるかどうかが分かれ目になります。
夜間や土日の通学課程に通う。学校が近い都市部でないと選択肢が限られます。同期と顔を合わせる機会が多いため、疑問点を解消しやすいという利点があります。
いったん現場に入ってから資格を取る。無資格で応募できる相談補助や生活支援の職に就き、実務を積みながら養成施設に通う形です。実務と学びが直結するため理解が早い一方、勤務と学業と実習が同時に走る時期が生まれます。
働きながら取る場合、最大の壁は学費でも試験でもなく、実習です。養成施設のカリキュラムには、精神科病院や障害福祉サービス事業所などでの現場実習が組み込まれています。実習は平日の日中に、連続した日数で行われるのが通例です。つまり、その期間はまとまった休みを取る必要があります。
ここで多くの人が計画に穴を開けます。年次有給休暇を使う、無給の休職扱いにしてもらう、勤務日数を一時的に減らす、いずれかの調整が要ります。有給休暇の取得は労働者の権利ですが、時季変更権との関係もあるため、前もって職場と話しておくのが現実的です。実習の時期は養成施設のスケジュールで決まるので、入学前に「実習はいつ、何日間あるのか」を必ず確認してください。ここを確認せずに申し込むと、入学後に勤務との両立が破綻します。
もうひとつ、実習の受け入れ先が自動的に決まるとは限らない点も押さえておきます。養成施設が調整する場合もあれば、自分で開拓する必要がある場合もあります。この違いは学校選びの重要な判断材料です。パンフレットに書かれていないことも多いので、説明会や個別相談で直接聞くべき項目に入ります。
費用については、養成施設ごとに設定が異なり、通信と通学、学校の運営主体によって幅があります。授業料に加えて、スクーリングの交通費と宿泊費、実習にかかる費用、テキスト代、国家試験の受験手数料と登録手数料が必要です。総額の見積もりは、必ず志望する学校の募集要項で確認してください。金額を他人のブログの数字で見積もると、後から差額に苦しみます。教育訓練給付の対象になっている講座もあるため、対象かどうかは制度の窓口とハローワークで確認する価値があります。
資格がなくても働けるのに、なぜ取るのか
先に書いた通り、精神保健福祉士は名称独占の資格です。相談援助の仕事そのものは、無資格の職員が担当している現場もあります。それなら取る必要はないのか、という疑問は当然出てきます。取る意味は、次の4つに整理できます。
第1に、応募できる求人の範囲が変わります。求人票の資格欄が「必須」になっている募集は、有資格者以外は書類の段階で対象外です。医療機関の相談室、行政の専門職枠、相談支援専門員につながる職種など、資格が入口の条件になっている領域があります。無資格で入れる職場と、資格が必須の職場とでは、扱う相談の質も、任される裁量も違います。
第2に、待遇に反映されます。資格手当の有無、基本給のテーブル、常勤登用の条件。同じ職場でも、資格の有無で条件が分かれている例は珍しくありません。ただし、パートや非常勤には資格手当を付けない運用の職場もあるため、待遇の反映のされ方は求人票と労働条件通知書で個別に確認する必要があります。
第3に、他職種との関係が変わります。医師、看護師、作業療法士、公認心理師、ケアマネジャーといった専門職が集まる場で、共通の資格体系の中にいるかどうかは、発言の受け取られ方に影響します。国家資格は、その人の力量を保証するものではありませんが、「一定の教育課程と実習を経ている」という前提を共有できます。会議で最初から説明せずに済むという意味で、実務のコストが下がります。
第4に、自分の判断を検証する枠組みが手に入ります。相談援助は正解が1つに決まらない仕事です。何が根拠だったのかを説明できないまま経験だけを積むと、判断が独りよがりになります。養成課程で理論と倫理を学び、実習で他者の指導を受ける過程は、この独りよがりを防ぐための仕組みです。試験勉強そのものより、この過程に価値があります。
逆に、取らないほうがよい場合もあります。今の仕事に必要がなく、生活を圧迫してまで通う理由が「なんとなく不安だから」であるなら、いったん保留する判断もありです。養成施設は1年以上の課程で、実習を含みます。動機が曖昧なまま入ると、実習の時期に必ず折れます。取る前に、資格を使って何をしたいのかを一文で書けるかどうか、自分に確かめてください。書けないうちは、現場を見学したり、その領域で働く人の話を聞いたりする段階に時間を使うほうが、結果的に近道になります。
高校生や在学中から目指す場合の学校選び
これから進学する人は、選択肢が広い分だけ迷いも大きくなります。判断の軸を挙げます。
もっとも短い道は、福祉系の4年制大学で指定科目を履修することです。卒業と同時に受験資格が得られるため、実務経験を挟む必要がありません。学校を選ぶときに確認すべきは、精神保健福祉士の指定科目が履修できるカリキュラムになっているかという点です。社会福祉士の課程はあるが精神保健福祉士の指定科目は選択制、という大学もあります。募集要項とカリキュラム表で、科目名まで確認してください。
社会福祉士との同時受験を考えるかどうかも、早い段階で決めておく価値があります。共通科目があるため、両方の指定科目を履修できる大学なら、同じ年に両方を受験する設計が可能です。ただし履修負担は増え、実習も両方必要になります。二兎を追って両方が中途半端になる例もあるので、在学中に教員と相談して決めるべきです。
短期大学や専門学校を検討している場合は、卒業後に必要な実務経験の年数を先に確認します。3年制なら卒業後に相談援助の実務1年、2年制なら2年が必要です。この期間に就ける職場が通学圏内にあるかどうかまで見ておかないと、卒業後に足踏みします。
実習先の確保がどうなっているかも、学校選びの重要な指標です。長く課程を運営している学校は、地域の精神科病院や事業所との関係が積み上がっています。実習は学びの質を決める部分なので、パンフレットの写真ではなく、実習先の種類と調整方法をオープンキャンパスで直接聞いてください。
国家試験の中身と、難易度をどう捉えるか
受験資格が得られたら国家試験です。試験は年に1回、例年1月から2月にかけて実施されます。出題は精神疾患とその治療、精神保健福祉の制度とサービス、ソーシャルワークの理論と方法、社会保障、権利擁護など、広い範囲に及びます。社会福祉士との共通科目があるため、両方を目指す人はその設計を利用して学習計画を組めます。
難易度をどう見るかについて、参考になる比較があります。近い領域の国家資格である社会福祉士については、次のように整理されています。
社会福祉士国家試験の合格率は、直近は50%台となっていますが、例年は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどであり、試験の難易度は高いと言えます。難易度が高い理由としては、出題範囲が広いことや、受験資格を得るために実務経験や福祉関連の学校を卒業する必要があることが挙げられます。 出典: u-can.co.jp
この記述で注目したいのは、難易度の理由として挙げられている2点です。出題範囲の広さと、受験資格を得るまでの過程。試験そのものの正答率だけを見て難易度を語るのは、実は正確ではありません。受験資格を得る段階で、養成施設の課程を修了し、実習をやり切った人だけが受験しているからです。母集団が絞られた状態での合格率だ、という前提を忘れると、数字の意味を読み違えます。
精神保健福祉士の試験は、社会福祉士より合格率が高い年が続いていると言われますが、年度によって変動があります。最新の実施状況と合格基準は、試験を実施している機関の公表資料で確認してください。前年の数字を根拠に「受かりやすい」と判断するのは危険です。
学習の進め方について、実務的な助言を3つ挙げます。第1に、共通科目から始めること。社会保障や権利擁護は範囲が広く、後回しにすると間に合いません。第2に、過去問を早い段階で解くこと。テキストを最後まで読んでから過去問に移るという順番は、範囲の広い試験では機能しません。第3に、制度の科目は「なぜその制度ができたか」の流れで覚えること。精神保健福祉法の改正の経緯、入院形態の種類、自立支援医療、障害者総合支援法のサービス体系。これらは丸暗記より、制度が何を解決しようとしたかという文脈で捉えるほうが定着します。実務に出てからも、この文脈の理解が判断の速さに直結します。
働きながらの学習スケジュールを、どう組むか
社会人の受験勉強でつまずく原因は、能力ではなく設計にあります。仕事、家庭、養成施設の課題、実習が同じ時期に重なるため、行き当たりばったりで進めると必ずどこかが破綻します。
組み方の基本は、逆算です。試験は例年1月から2月に実施されます。そこから逆算すると、直前の2か月は模擬問題と苦手科目の詰めに充てたい期間になります。その前の数か月は過去問を回す期間、さらにその前がテキストで全体像をつかむ期間です。養成施設のレポート提出と実習は、この学習計画とは別に走ります。つまり、養成施設の課程を修了することと、試験に受かることは、別々に管理すべき2つの計画です。ここを一緒くたにして「学校の課題をこなしていれば受かるだろう」と考えると、修了はできても試験の準備が足りない、という状態になります。
日々の学習時間の確保について、実務的な方法を挙げます。第1に、まとまった時間を待たないこと。休日にまとめて勉強する計画は、家庭の予定が入った時点で崩れます。通勤時間や昼休みのような細切れの時間に、一問一答や過去問の1問だけを入れる。継続の単位を小さくするほど、途切れにくくなります。第2に、記録を残すこと。どの科目をいつやったかを簡単に記録しておくと、手を付けていない科目が可視化されます。範囲の広い試験では、得意科目ばかり回してしまう偏りが最大の敵です。第3に、共通科目を先に固めること。社会保障、権利擁護、地域福祉といった科目は暗記量が多く、直前に詰め込むには重すぎます。
実習期間中は、学習が止まると考えて計画を立ててください。実習は日中の勤務に加えて記録の作成があり、体力的にも消耗します。この期間に予定していた学習量は、前後の期間に振り分けておくのが現実的です。
独学で足りるかどうかについては、人によります。養成施設の教材と過去問だけで合格する人もいれば、模擬試験や対策講座を使う人もいます。判断の目安は、過去問を解いたときに「なぜその選択肢が誤りなのか」を自分の言葉で説明できるかどうかです。答えが合っていても理由を説明できないなら、暗記で乗り切ろうとしているサインなので、解説の厚い教材か講座を足す価値があります。
合格した後、名乗れるようになるまでの手続き
試験に合格しただけでは、まだ精神保健福祉士を名乗れません。登録手続きが必要です。指定された登録機関に申請し、登録簿に記載されて登録証が交付されて、初めて名称を使えます。
この手続きには申請書類と登録免許税、登録手数料が必要で、交付まで一定の期間がかかります。4月からの就職に間に合わせたい人は、合格発表から登録証が届くまでの期間を見込んでスケジュールを組む必要があります。就職先によっては、登録証の写しの提出を採用の条件にしているところもあります。「合格見込み」で内定が出ていても、書類は別途求められると考えておくのが安全です。
登録が済んだ後も、専門職としての手続きは続きます。職能団体への加入は任意ですが、研修や事例検討の機会、制度改正の情報が得られる場として使っている人が多い領域です。加入するかどうかは費用と得られる情報を見比べて判断すればよく、資格の維持そのものに更新は課されていません。ただし、更新がないということは、知識を古いまま放置しても資格は残るという意味でもあります。制度が改正されても登録は取り消されません。だからこそ、情報を追う仕組みを自分で持つ必要があります。
また、氏名や本籍地が変わった場合は変更の届出が要ります。結婚などで姓が変わったまま放置すると、後の手続きで照合できずに手間が増えます。細かい話に見えますが、専門職としての登録は身分証明と同じ性質を持つので、記載事項は正確に保っておくべきです。
資格を取った後、どこで働き、どう伸びるのか
活躍の場は、医療、福祉、行政、教育、司法、産業と、想像より広い領域に及びます。
医療分野では、精神科病院や精神科クリニックの相談室で、入退院の調整、受診の相談、経済的な問題の調整、退院後の生活設計を担当します。制度の知識がそのまま武器になる領域です。
福祉分野では、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センター、グループホーム、相談支援事業所などで、生活と就労の支援にあたります。利用者との距離が近く、日々の変化に伴走する仕事です。
行政分野では、保健所や精神保健福祉センター、市区町村の障害福祉担当などで、相談窓口や地域の体制づくりに関わります。会計年度任用職員としての採用も一定数あり、募集は年度替わりに集中します。
それぞれの領域で求められる力にも違いがあります。医療分野は制度の正確さとスピードが問われ、退院支援では期限のある調整を並行して進めます。福祉分野は関係の継続性が中心で、数か月から数年の単位で変化を見ます。行政分野は公平性と手続きの厳密さが重視され、記録の書き方も様式に沿った形が求められます。どこが自分に合うかは、実習で複数の現場を見た段階でようやく分かることが多く、入学前に決め切る必要はありません。
このほか、司法領域では医療観察制度に関わる職務、教育領域ではスクールソーシャルワーカー、産業領域では企業のメンタルヘルス支援や復職支援といった関わり方があります。産業領域は、働く人のメンタル不調が経営課題として扱われるようになったことで、需要が語られる場面が増えました。
将来性について、冷静に見ておくべき点もあります。地域移行が進むということは、病院という単一の職場に依存しない働き方が増える一方で、事業所の規模が小さくなり、雇用条件が事業所ごとにばらつくということでもあります。制度に基づく報酬で運営されている事業所が多いため、報酬改定の影響を直接受けます。資格を取れば安泰、という話ではありません。むしろ、どの領域で経験を積むかによって、その後の選択肢の広さが大きく変わります。
伸ばすべきスキルとして、実務の観点から3つ挙げます。第1に、記録を書く力。相談援助の記録は、支援の根拠であり、同時に法的な証拠にもなります。読み手が誰かを意識して、事実と評価を分けて書けるかどうかは、経験年数より訓練の量で差が付きます。第2に、制度の最新情報を追う習慣。改正のたびに運用が変わるため、情報源を決めて定期的に確認する仕組みを自分で持つこと。第3に、契約や権利の基礎知識です。利用者の契約トラブル、金銭管理、成年後見、労働問題。専門外だからと避けていると、目の前の相談に対応できません。自分で判断せず、弁護士や司法書士、法テラスなど適切な窓口につなぐ判断ができることが、専門職としての力量になります。
資格の外側にある、働き方の選択肢
ここからは、市場を長く見てきた立場からの観察を書きます。20年この市場を見てきた限りでは、専門資格を持つ人の働き方は、この10年でかなり変わりました。かつては「資格を取って組織に所属する」がほぼ唯一の形でしたが、現在は組織に属しながら、別の形で専門性を出す人が増えています。研修の講師、事例検討のファシリテーター、記事や資料の監修、オンラインでの相談対応。いずれも資格と現場経験がそのまま説得力になる仕事です。
そして、こうした仕事を続けられる人と続かない人の差は、専門性の高さではなく関係の作り方に出ます。単発の依頼を受け続ける人は毎回ゼロから信頼を積み直すことになり、消耗します。長く続く人は「この人に頼むと確認の手間が減る」という状態を早い段階で作り、その後は指名で仕事が来る形に持っていきます。相談援助で培った、相手の状況を先回りして整理する力は、この関係づくりにそのまま効きます。
金額ではなく手取りの話もしておきます。仲介が何段も入る取引では、依頼者が払った金額と受け手が受け取る金額の差が大きくなります。同じ予算でも、中間マージンが乗らない直接の取引なら、依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%で直接つながる仕組みが意味を持つのは、単価が高いからではなく、同じ仕事に対して残る金額が変わるからです。運営者として見てきた限りでは、この差は1件ごとには小さく見えても、年単位では働き方の選択肢そのものを変えます。
在宅で完結する仕事の相場を知っておくと、資格取得の学費を計画する段階でも判断が早くなります。文章を扱う仕事は、記録を書き慣れた人と相性が良い領域です。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、この職種の収入水準と単価の考え方がまとまっており、執筆や編集の仕事がどの水準で動いているかを把握できます。専門性の高い職種で単価がどう決まるかを比較したい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。資格や実務経験が単価にどう反映されるかという構造は、職種が違っても共通しています。
在宅の仕事の中身を具体的に知りたい人には、職種別のガイドがあります。アプリケーション開発のお仕事は開発案件の進み方と求められる関わり方を、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事は需要が伸びている領域の仕事内容を整理したページです。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は、専門知識を持つ人が助言する形で関わる働き方の解説で、現場の実務を知っている人が価値を出しやすい形の例として読めます。
学習中に身につけた書く力を可視化したい人には、ビジネス文書検定の解説が使えます。文書作成の基礎を体系的に確認できる資格で、記録や報告書を日常的に書く福祉職にとっては、すでにある力を形にする手段になります。まったく別方向の技術系に興味があるなら、CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク資格のガイドもあり、未経験から積み上げる場合の道筋が分かります。
養成施設のスクーリングや実習の打ち合わせ、就職後の会議まで、オンラインでのやりとりは避けて通れません。Zoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】では主要なオンライン会議ツールの違いを比較しており、どのツールがどの場面に向くかを知っておくと、学習中も就職後も役に立ちます。
最後に、取り方を検討している段階の人へ、確認すべき順序を整理します。自分の最終学歴で指定科目を満たしているかを証明書で確認する。満たしていなければ、どの養成施設のどの課程が該当するかを学校の相談窓口に照会する。実習の時期と日数、受け入れ先の調整方法を確認する。勤務先と休みの取り方を相談する。費用の総額を募集要項で確認し、給付制度の対象かを窓口で確かめる。この順で進めれば、途中で計画が崩れる確率は大きく下がります。制度の要件は改正が入るため、ここに書いた内容も含めて、最終的な判断は必ず公式の情報と各機関への照会で確定させてください。手続きの正確さは、専門職として働き始めた後の自分を守ることにつながります。
よくある質問
Q. 福祉系ではない大学を出ていても精神保健福祉士は目指せますか?
目指せます。一般の4年制大学を卒業している場合、一般養成施設で1年以上学べば受験資格が得られます。学部は問われません。3年制の一般短期大学の場合は相談援助実務1年に加えて養成施設で1年以上、2年制の場合は実務4年に加えて養成施設が必要となり、最短でも4年かかります。自分がどのルートに該当するかは、養成施設の入学相談窓口で確認してください。
Q. 働きながら取る場合、いちばんの障害は何ですか?
実習です。養成施設のカリキュラムには現場実習が組み込まれており、平日の日中に連続した日数で行われるのが通例です。有給休暇や勤務日数の調整が必要になるため、入学前に実習の時期と日数、受け入れ先を養成施設が調整してくれるのかを必ず確認してください。学費や試験より、この日程調整で計画が崩れる人が多い部分です。
Q. 国家試験の難易度はどのくらいですか?
出題範囲が広く、精神疾患と治療、制度とサービス、ソーシャルワークの理論、社会保障、権利擁護までが対象になります。近い領域の社会福祉士では、直近は50%台、例年は福祉系国家資格の中で最も低い30%ほどの合格率と説明されています。ただし受験資格を得た人だけが受ける試験なので、合格率の数字だけで難易度を判断しないでください。最新の実施状況は試験実施機関の公表資料で確認を。
Q. 試験に合格すればすぐ精神保健福祉士と名乗れますか?
名乗れません。合格後に登録機関へ申請し、登録簿に記載されて登録証が交付されて初めて名称を使えます。申請には書類と登録免許税、登録手数料が必要で、交付までに一定の期間がかかります。4月入職に合わせたい場合は、合格発表から登録証が届くまでの期間を見込んでスケジュールを組んでください。就職先から登録証の写しを求められることもあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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