医療系のコールセンターへ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

長谷川 奈津
長谷川 奈津
医療系のコールセンターへ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

この記事のポイント

  • 病院や施設から医療系のコールセンターへ転職すると
  • チームの形が大きく変わります
  • 派遣や有期契約で確かめる法律上のポイント

医療系のコールセンターへの転職を考えている方の多くは、「体力的にも気持ちのうえでも、今の働き方は長く続けられない」と感じているのではないでしょうか。

先日、病棟で10年近く働いてきた看護師の方から相談を受けました。「電話の仕事に移りたい。でも、入ってから『こんなはずじゃなかった』と思ったらどうしよう」と。お話を聞いていくと、不安の正体は、仕事内容そのものより「前の職場との落差が想像できないこと」でした。

結論から言うと、医療系のコールセンターへの転職で後悔する方の多くは、落差を知らずに入っています。反対に、落差を先に知り、契約と手続きを確かめたうえで決めた方は、戸惑うことがあっても続けています。これ、知らない人が本当に多いんです。

この記事では、前の職場からコールセンターへ移ったときに何が変わるのか、どこでつまずきやすいのか、そして転職を決めるときに確かめておくべき契約や保険、税金の手続きを順番にお話しします。

病院から医療系のコールセンターへ移ると、何が変わるか

まず、病院などの臨床の現場から医療系のコールセンターへ移ったときに感じやすい落差を、4つに分けて整理します。

落差1:時間の流れが「分刻み」から「受付時間」へ変わる

病棟では、検温、配薬、処置、記録、ナースコール、急変対応と、予定と予定外が入り混じった時間が流れます。定時に帰れる日のほうが少ない、という方もいるでしょう。

医療系のコールセンターは、受付時間が決まっています。受付時間が終われば電話は鳴らず、残業は少ない傾向にあるとされています。一方で、受付時間の中は、電話を受けて記録し、また次の電話を受けるという一定のリズムが続きます。

つまり、「忙しさの波」が「一定の密度」に変わるんです。この変化を、楽になったと感じる方もいれば、単調で集中が続かないと感じる方もいます。

落差2:手を使わず、耳と言葉だけで判断する

2つ目の落差は、使う力の変化です。臨床の現場では、患者さんの顔色を見て、体に触れて、モニターの数値を確かめて判断します。コールセンターでは、そのどれもできません。

電話越しで適切な判断をしなくてはいけない 病院では患者様の体調を間近で確認できますが、コールセンターの場合は電話越しの会話から得た情報だけで体調を判断しなくてはならず、プレッシャーに感じる方もいらっしゃいます。 出典: saiyou.tmj.jp

臨床経験が長い方ほど、目で見て判断する習慣が身についています。その習慣が使えない状態で、声だけから緊急度を見分ける。ここに最初の戸惑いを感じる方が多いんです。

落差3:評価のされ方が変わる

病院では、看護の質は、患者さんの状態の変化や、チームの中での信頼で評価されることが多いと思います。

コールセンターでは、通話の録音を聞き返して応対の品質を確かめたり、応答の状況を数字で管理したりする仕組みがあります。経験を積むと、スーパーバイザーとして応答率などのセンターの数値管理に携わる道もあると紹介されています。

自分の応対が録音で振り返られることに、最初は抵抗を感じる方もいます。ただ、これは責めるための仕組みではなく、窓口全体の応対をそろえるための仕組みです。

落差4:チームの形が変わる

病棟のチームは、医師、看護師、看護助手、リハビリの職員など、多くの職種がその場で動きます。コールセンターは、同じ時間帯に入る少人数のメンバーで窓口を回します。

隣の席の人と、仕事中にほとんど話さない職場です。判断に迷ったときは、スーパーバイザーや、窓口によっては医師に相談しますが、病棟のように「ちょっと見てもらえますか」と気軽に声をかける場面は少なくなります。

前の職場によって、落差の感じ方は違う

同じ医療系のコールセンターへの転職でも、前にどこで働いていたかによって、感じる落差は違います。ご自身の経歴に近いところを読んでみてください。

病棟から移る場合

病棟から移る方が最も大きく感じるのは、「自分の目で確かめられない」ことの不安です。急変の対応や重症の患者さんの看護の経験は、夜間の緊急性の高い相談で大きな力になります。

一方で、病棟の感覚で「自分の判断で指示を出す」ことに慣れていると、電話で踏み込みすぎてしまうことがあります。医師法の第17条は医師でない者の医業を禁じており、電話を受ける看護師の役割は、診断ではなく、手順に沿って緊急度を見分けて受診や救急につなぐことです。この線引きに慣れるまで、少し時間がかかるかもしれません。

外来やクリニックから移る場合

外来やクリニックで電話の問い合わせや受診の案内を担当していた方は、落差を比較的小さく感じやすい傾向があります。電話で症状を聞き取り、来院の目安を伝える場面をすでに経験しているからです。

落差を感じやすいのは、相談の量と幅です。自治体から受託した健康相談や保険会社の窓口では、自分の診療科とは関係のない相談も次々に入ってきます。専門外の相談にも手順に沿って対応する力が求められます。

訪問看護から移る場合

訪問看護の経験がある方は、家族からの電話で「今すぐ訪問すべきか、朝まで様子を見てよいか」を判断してきた経験があります。これは、医療系のコールセンターの仕事にとても近い経験です。

落差を感じやすいのは、相談者との関係の違いです。訪問看護では、同じ利用者さんとご家族に長く関わります。コールセンターでは、多くの場合、一度きりの電話で関わりが終わります。その後どうなったかが分からないことに、寂しさを感じる方もいます。

介護施設から移る場合

介護施設で看護師として働いていた方は、高齢の方の転倒や体調の急な変化への対応に慣れています。24時間体制の窓口では、高齢者の転倒や急変についての相談も夜間に多いとされていて、その経験が活かせます。

一方で、施設では介護職員への指示や、嘱託医との連絡を担う立場だった方も多いと思います。コールセンターでは、スーパーバイザーの判断を仰ぐ立場になるので、立ち位置の変化に戸惑うことがあります。

医療事務や受付から移る場合

看護師の資格を持たず、クリニックの受付や医療事務から移る方もいます。この場合、入れるのは主に一次受付や予約の案内、手続きの問い合わせといった、資格を問わない役割です。

受付で患者さんからの電話に対応してきた経験は、そのまま活かせます。一方で落差を感じやすいのは、「医療的な質問に自分で答えてはいけない」という線引きの厳しさです。保健師助産師看護師法の第42条の3は、看護師でない者が看護師やこれに紛らわしい名称を使うことを禁じています。受付の立場では、症状の相談を受けたら、決められた基準で速やかに看護師へつなぐことが役割になります。医療事務の資格の内容は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)で確かめられます。

転職のメリットとデメリットを落ち着いて比べる

落差を知ったうえで、医療系のコールセンターへ転職するメリットとデメリットを比べてみます。

メリット

看護師がコールセンターで働くメリットとして、次のような点が紹介されています。

看護師がコールセンターで働くメリットには、「残業が発生しにくい」「デスクワークで身体的疲労を減らせる」「直接的なケアがないため精神的な負担が少ない」などの理由があります。 出典: kango-oshigoto.jp

これに加えて、次の点も挙げられます。

・言葉遣いや担当するサービスの知識を学ぶ研修が用意されていることが多い ・点滴や採血などの実務がないため、ブランクがあっても応募しやすい ・研修後に在宅で勤務できる窓口もある ・24時間体制の窓口では、日勤だけ、夜勤だけなど働き方を選べる場合がある

デメリット

一方で、次のようなデメリットもあります。

・電話だけで判断するプレッシャーがある ・顔が見えない相手から、強い口調の苦情を受けることがある ・給与が病院勤務より下がる場合がある ・臨床の手技を使わないため、病院に戻るときにブランクと見なされる可能性がある

最後の点は、転職を決める前に特に考えておきたいところです。コールセンターでの経験は、医薬品や医療の知識、接遇の力を育てますが、点滴や採血などの実務がないため、看護師の経歴として評価されない場合があるとされています。

つまり、「数年コールセンターで働いたあと、病院に戻りたい」と考えているなら、戻るときの手技の不安をどう埋めるかまで、転職の前に考えておく必要があるんです。

転職で身につくスキルもある

デメリットばかりに目を向ける必要はありません。医療系のコールセンターで働くと、臨床の現場では伸ばしにくいスキルが身につきます。

・専門用語を使わずに、病気や体の仕組みを分かりやすく説明する力 ・限られた情報から、質問を重ねて状況を絞り込む力 ・聞き取った内容を、第三者が読んでも分かる形で記録する力 ・強い口調の相手にも、事実と感情を分けて対応する力

これらは、企業で働く看護師や治験に関わる仕事、相談や支援の仕事など、病院の外のキャリアで評価されやすい力です。転職を「臨床から離れる」とだけ捉えるのではなく、「別の種類の力を育てる期間」と捉えると、デメリットの見え方が変わります。

年収はどう変わるか

医療系のコールセンターへの転職で、多くの方が気にするのが年収です。ここは数字で確かめておきましょう。

公開されている給与の目安

看護師の転職情報サイトでは、コールセンターで働く看護師の給与の目安を次のように紹介しています。

・正社員の月給:約20万円〜35万円程度 ・日勤の時給:約1,500円〜2,500円程度 ・夜勤の時給:約2,000円〜3,500円程度

同じサイトは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、看護師全体の給与を約36万円と紹介し、コールセンターに正社員として勤務する看護師の給料は、看護師の平均より少し低い程度だと説明しています。

別の求人サイトの記事では、コールセンターの看護師の派遣やパートの時給を、地域差はあるもののおおよそ1,600円と紹介しています。

下がりやすいのは「手当」の部分

病院からの転職で年収が下がりやすいのは、基本給よりも手当の部分です。病棟の夜勤手当や、残業代がなくなると、同じ月給の水準でも手取りは変わります。

転職を考えるときは、今の給与明細を見て、基本給と手当を分けて書き出してみてください。そのうえで、コールセンターの求人の条件と比べると、どのくらい変わるのかが具体的に分かります。病院勤務の看護師の年代や地域ごとの相場は、看護師の年収・単価相場で確かめられます。

年収だけで決めない

年収が下がることは、転職をやめる理由になるとは限りません。夜勤による体調の崩れや、残業で家族との時間が取れないことが転職の理由なら、年収と引き換えに得られるものもあります。

大切なのは、「いくら下がるか」を具体的な金額で把握したうえで、それでも移る価値があるかを決めることです。金額を知らないまま「たぶん大丈夫」と決めてしまうのが、一番後悔につながります。

雇用形態と契約で、確かめておくべきこと

ここは、法律の話を少し多めにします。医療系のコールセンターは、正社員、契約社員、派遣、パートと、いろいろな雇用形態で募集される職種です。契約の中身を確かめないまま入ると、あとで困ることがあります。

派遣が多いのには理由がある

医療系のコールセンターで派遣の求人が多いのは、制度上の理由があります。労働者派遣法の施行令では、看護師の業務の派遣が原則として禁止されるのは、病院や診療所、介護老人保健施設、利用者の居宅などで行われる場合に限られています。コールセンターはこれに当たらないため、派遣で看護師を受け入れることができます。

派遣で働く場合、雇用契約を結ぶ相手は派遣元の会社です。給与の支払いや社会保険の手続きは派遣元が行います。職場で困ったことがあったときに、誰に相談するのかを最初に確かめておきましょう。

労働条件の明示のルール

2024年4月から、労働条件の明示のルールが変わりました。厚生労働省の案内によると、労働契約を結ぶときに、就業の場所や従事する業務について、「変更の範囲」も明示することが求められています。

つまり、「研修後は在宅勤務」「将来はオフィスへの出社もあり得る」「別の窓口へ配置が変わる可能性がある」といった内容は、契約のときに書面で確かめられるということです。内定をもらったら、労働条件通知書の就業場所と業務の欄を必ず読んでください。

有期契約と、無期転換のルール

契約社員や派遣では、契約期間が決まった有期の契約が一般的です。労働契約法の第18条では、同じ使用者との有期労働契約が通算で5年を超えた労働者が申し込んだとき、期間の定めのない労働契約に転換されるルールが定められています。

医療系のコールセンターの中には、自治体から受託した相談事業のように、委託の期間が決まっている窓口もあります。窓口そのものの期間がどうなっているのか、契約の更新の判断基準は何かを、面接や内定の段階で確かめておきましょう。

※契約の更新や雇い止めについて具体的なトラブルがある場合は、都道府県労働局の相談窓口や弁護士に相談してください。

守秘義務は、どの雇用形態でも変わらない

保健師助産師看護師法の第42条の2は、看護師などが、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。看護師でなくなった後も同じです。

電話相談では、病状や家族の事情など、とても踏み込んだ情報を扱います。派遣でもパートでも、この義務は変わりません。在宅勤務になると、家族がいる空間で通話することもあるので、秘密を守れる環境を用意できるかも、転職前に考えておきたい点です。

在職中に進めておく転職活動の段取り

医療系のコールセンターへの転職は、できれば今の職場に在籍しながら進めるのがおすすめです。退職してから探し始めると、収入の空白や保険の手続きの負担が大きくなり、条件を妥協しやすくなるからです。

ステップ1:窓口の種類を知り、候補を絞る

まず、医療系のコールセンターの窓口の種類を知り、自分が関心を持てるものを絞ります。健康相談や救急相談、自宅療養者の健康観察、ワクチン接種後の相談、医薬品メーカーや医療機器メーカーの問い合わせ、保険会社のメディカルサービスなど、扱う内容はさまざまです。

病棟で急変対応の経験が多い方は救急や健康の相談、糖尿病の看護の経験がある方は医療機器メーカーの窓口、というように、自分の経験と重なる窓口から見ていくと、志望動機も作りやすくなります。

ステップ2:求人票の資格要件と勤務条件を読む

候補が決まったら、求人票で応募資格を確かめます。在宅療養患者の相談窓口や医薬品メーカーの問い合わせ窓口では、3〜5年程度の臨床経験を求められる傾向があるとされています。正看護師に限るのか、准看護師も応募できるのかも、ここで確かめます。

あわせて、勤務時間帯、夜勤の有無、在宅勤務の条件、雇用形態、契約期間を書き出しておきましょう。

ステップ3:退職の時期を逆算する

応募して内定が出るまでの期間と、今の職場の就業規則で定められた退職の申し出の時期を確かめ、退職日を逆算します。病棟では、人員の配置や夜勤の組み方の都合で、早めの申し出を求められることが多いと思います。

退職日は、次の職場の入職日との間に空白ができないように調整できると、保険と年金の手続きがずっと楽になります。空白ができる場合は、次の章でお話しする手続きを先に確かめておきましょう。

ステップ4:相談先を使う

求人を探したり、条件の交渉をしたりするときは、転職エージェントやハローワークを使う方法もあります。求職者は無料で利用できるサービスが多いので、一人で抱え込まず、複数の情報源を比べてください。

ただし、担当者が勧める求人が、あなたにとって最適とは限りません。先ほどの5つの確認のうち、契約の中身と、お金と生活の部分は、必ずご自身で書面を読んで確かめてください。

退職から入職までの、保険と税金の手続き

転職のとき、つい後回しになりがちなのが、保険と税金の手続きです。退職日と入職日の間に空白がある場合は、特に注意が必要です。

健康保険

退職日の翌日から次の職場に入るまでに期間が空く場合、健康保険の切り替えが必要になります。主な選択肢は、前の職場の健康保険を任意継続する方法と、お住まいの市区町村で国民健康保険に加入する方法、家族の扶養に入る方法です。

任意継続を選ぶ場合は期限があります。健康保険法の第37条では、任意継続被保険者になるための申出は、被保険者の資格を失った日から20日以内にしなければならないと定められています。これ、知らない人が本当に多いんです。退職の手続きをしているうちに期限が過ぎてしまった、という相談を何度も受けてきました。

どれを選ぶと保険料が安くなるかは、前年の所得や家族の状況によって違います。前の職場の健康保険の窓口と、市区町村の窓口の両方で保険料を確かめてから選んでください。

年金

会社員として厚生年金に加入していた方が、次の職場に入るまでに期間が空く場合は、国民年金への切り替えの手続きが必要になることがあります。手続きの窓口は、お住まいの市区町村や年金事務所です。

次の職場で派遣やパートとして働く場合、働く時間などの条件によって、厚生年金に加入するかどうかが変わります。求人票の「社会保険完備」の表記だけで判断せず、ご自身の働き方で加入の対象になるのかを確かめましょう。

税金

所得税は、会社員であれば年末調整で1年分が精算されます。年の途中で退職して、その年のうちに次の職場に入った場合は、前の職場の源泉徴収票を新しい職場に提出して、年末調整でまとめて精算してもらうのが一般的です。

年内に次の職場に入らなかった場合は、年末調整を受けられないため、確定申告をすることで、納めすぎた所得税が戻る場合があります。前の職場から受け取った源泉徴収票は、必ず保管しておいてください。

住民税は、前年の所得をもとに計算されます。転職で年収が下がった年でも、住民税は前の年の高い所得に基づいて請求されるので、転職した直後の家計が思ったより苦しくなることがあります。これも、落差の1つとして覚えておきましょう。

後悔しないための「決め手」の作り方

最後に、医療系のコールセンターへの転職を決めるときの決め手の作り方をお話しします。

決め手になる5つの確認

転職を決める前に、次の5つを確かめてください。すべてに答えが出たら、それが決め手になります。

  1. 窓口の種類:誰から、何のための電話を受ける場所か
  2. バックアップの体制:判断に迷ったとき、医師や上席にどう相談できるか
  3. 研修の中身:一人で電話を受けるまでに、どのような段階があるか
  4. 契約の中身:雇用形態、契約期間、更新の判断基準、就業場所の変更の範囲
  5. お金と生活:年収がいくら変わり、保険と税金の手続きをどう進めるか

相談の中で見えた「うまくいった人」の共通点

冒頭でお話しした病棟の看護師の方は、この5つを一つずつ確かめました。面接では、夜間の相談で医師に相談できる体制を具体的に聞き、内定の段階で労働条件通知書の就業場所の欄まで読みました。退職日を決めるときには、任意継続の期限と国民健康保険の保険料を比べて、手続きの順番を先に決めていました。

入職して数か月後、その方から「電話だけで判断する難しさは想像以上だった。でも、事前に聞いていた相談の流れがそのとおりにあったので、一人で抱え込まずに済んでいる」と連絡をいただきました。落差がなくなったわけではありません。落差を知っていたから、戸惑っても続けられているんです。

反対に、以前別の方から受けた相談では、「在宅で働けると思って入ったのに、契約書には在宅の記載がなかった」というものがありました。面接で口頭の説明を受けただけで、書面を確かめていなかったんです。こうしたすれ違いは、労働条件通知書を読むだけで防げたものでした。

戻る道と、広げる道

医療系のコールセンターで働いた経験は、そこで終わりではありません。経験を積んで、スーパーバイザーとして現場のまとめ役を担う道もありますし、企業で働く看護師や、治験に関わる仕事へ進む方もいると紹介されています。病院勤務から治験の仕事へ移る流れは、CRC(治験協力者)への転職ガイドで具体的に整理されています。

相談の仕事を深めたい方には、国家資格のキャリアコンサルタントという選択肢もあります。職業生活の設計や能力開発について相談に応じる専門職で、資格の内容をこのページで確かめられます。実際にどのような相談の仕事があるのかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。

運営の現場から見た、転職の成否を分けるもの

フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた運営者の視点からも、少しお話しさせてください。

運営者として見てきた限りでは、看護師の資格を活かして病院の外で働く方のうち、長く満足して働けている方は、転職の前に「何を手放して、何を得るか」を具体的に書き出しています。夜勤手当を手放して、夜に眠れる生活を得る。手技の経験を手放して、電話で多くの人の判断を支える経験を得る。この交換を自分で納得して選んだ方は、落差に出会っても揺らぎにくいんです。

これは、仲介の手数料が乗らない直接取引の仕事でも同じ構造です。直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。ただ、その関係が続くかどうかは、最初に条件を書面で確かめ、お互いの役割と範囲を明確にしているかで決まります。契約の中身を確かめることは、相手を疑うことではなく、長く働くための土台づくりです。

私自身、独立したばかりの頃に、口頭で聞いた条件を信じて書面を確かめずに仕事を引き受け、あとで範囲の認識が食い違って困った経験があります。法律の知識があっても、忙しいときほど確認を省いてしまう。だからこそ、確認の項目を先に決めておき、機械的に一つずつ確かめる習慣が大切だと、身をもって学びました。

もう1つ、長く見てきて感じるのは、転職先を「今の職場の反対」で選んだ方ほど、次の職場でも同じ悩みにぶつかりやすいということです。「人間関係がつらいから、人と話さない仕事へ」「夜勤がつらいから、夜勤のない仕事へ」。気持ちはとても分かります。でも、医療系のコールセンターにも、少人数のチームの人間関係があり、24時間体制の窓口には夜勤があります。反対を選ぶのではなく、「次の職場で何をしたいか」から選んだ方のほうが、落差を受け止めやすいんです。

病院の外へ転職する選択肢をもう少し広く比べたい方は、病院看護師からの転職先で、一般企業や保健師、訪問看護などの選択肢が整理されています。

医療系のコールセンターへの転職は、逃げでも妥協でもありません。前の職場との落差を知り、契約と手続きを確かめ、自分で決め手を作って選ぶなら、それは立派なキャリアの選択です。法律と制度は、そうやって自分で確かめる人の味方になりますよ。

よくある質問

Q. 病院から医療系のコールセンターへ転職すると年収は下がりますか?

下がる場合があります。転職情報サイトではコールセンターの看護師の正社員の月給を約20万円〜35万円程度、看護師全体の給与を約36万円と紹介しています。特に夜勤手当や残業代がなくなる分が影響しやすいので、今の給与明細で基本給と手当を分けて書き出し、求人の条件と金額で比べてから決めてください。

Q. コールセンターで働いたあと病院に戻ることはできますか?

戻ることはできますが、コールセンターでは点滴や採血などの実務がないため、看護師の経歴として評価されにくく、ブランクと見なされる可能性があります。将来病院に戻るつもりがあるなら、手技の不安をどう埋めるかを転職前に考えておき、戻るときは研修体制のある職場を選ぶと安心です。

Q. 医療系のコールセンターはなぜ派遣の求人が多いのですか?

労働者派遣法の施行令では、看護師の業務の派遣が原則として禁止されるのは、病院や診療所、介護老人保健施設、利用者の居宅などで行われる場合に限られています。コールセンターはこれに当たらないため、派遣で看護師を受け入れられます。派遣では雇用契約の相手が派遣元になるので、相談先を最初に確かめてください。

Q. 退職から入職まで期間が空くときの健康保険はどうすればいいですか?

前の職場の健康保険の任意継続、市区町村の国民健康保険、家族の扶養に入る方法があります。任意継続は、健康保険法で資格を失った日から20日以内に申し出る必要があります。保険料は前年の所得や家族の状況で変わるため、前の職場の保険の窓口と市区町村の両方で金額を確かめてから選んでください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月17日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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