内視鏡室へ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手


この記事のポイント
- ✓内視鏡室への転職を考える看護師へ
- ✓手術室から移ったときに感じやすい生活と収入
- ✓仕事の覚え方の落差を整理し
内視鏡室への転職を考えているけれど、今の職場を離れて本当に大丈夫なのか。そんな迷いを抱えていませんか。
夜勤がつらくなった。子どもとの時間を増やしたい。病棟の慌ただしさに疲れた。理由は人それぞれですが、どの理由も自然なものです。そして、転職を迷うのは慎重に考えている証拠でもあります。
この記事では、内視鏡室へ転職した人が前の職場との間で感じやすい「落差」を、生活、患者さんとの関わり、仕事の中身の3つに分けて整理します。そのうえで、あなたにとっての決め手をどう見つけるかを一緒に考えていきます。
内視鏡室への転職を考える人に多い背景
こういう相談がよくあります。
「病棟の仕事は好きだった。でも、夜勤明けに子どもの顔を見ても笑えなくなって、このままでいいのか分からなくなった」
内視鏡室への転職を考える看護師の背景には、いくつかの共通したパターンがあります。
1つ目は、夜勤を続けることの難しさです。
年齢を重ねると、夜勤明けの回復に時間がかかるようになります。若い頃は1日寝れば戻っていた体が、2日たっても重いまま。睡眠のリズムが乱れることで、気持ちの落ち込みやすさにもつながります。内視鏡室は日勤が中心なので、生活のリズムを整えたい人にとって大きな選択肢になります。
2つ目は、家庭の事情の変化です。
子育て、親の介護、自分自身の体調。生活の中で優先したいことが変わったとき、夜勤や不規則な勤務を続けるのが難しくなります。土日が休みの内視鏡室や、午前中だけのパートの募集がある内視鏡室は、こうした事情を持つ人の受け皿になっています。
3つ目は、多重課題からの疲れです。
病棟では、ナースコールに応えながら、点滴を交換し、入院の受け入れをして、家族からの電話にも対応する。いくつもの仕事を同時に抱えることが当たり前です。その状態が長く続くと、心がいつも張りつめたままになります。「1つのことに集中して、丁寧に仕事をしたい」という気持ちから、内視鏡室を選ぶ人もいます。
4つ目は、専門性を身につけたいという思いです。
内視鏡の件数は検診の広がりとともに増えており、経験を持つ看護師はさまざまな職場で求められています。「どこへ行っても通用する技術を持っておきたい」という前向きな理由で内視鏡室を目指す人も少なくありません。
5つ目は、年齢を重ねてからの働き方の見直しです。
40代、50代になって、体力的に病棟の勤務を続けるのは難しいけれど、看護師の仕事は続けたい。そう考えて内視鏡室を選ぶ人もいます。内視鏡室は日勤中心で、経験を重ねた看護師の観察力や落ち着きが生きる職場です。一方で、立ち仕事が続くことや、新しく覚えることの多さもあるため、自分の体と相談しながら職場の種類を選ぶことが大切になります。
どの背景も、転職を考える理由として十分です。大切なのは、自分がどの理由をいちばん大事にしているかを、自分の言葉で分かっておくことです。それが、この後の「決め手」を考えるときの軸になります。
前の職場との落差1:生活のリズムと収入
内視鏡室に移って、多くの人がまず実感するのが生活の変化です。
朝は8時台に出勤し、夕方には仕事が終わる。夜は家で眠れる。週末は休める職場も多い。この変化は、想像以上に心と体を楽にしてくれます。「夜にちゃんと眠れるだけで、こんなに気持ちが安定するとは思わなかった」と話す人は本当に多いのです。
一方で、多くの人がもう1つ直面するのが、収入の変化です。
求人サイトに掲載されている情報を参考にすると、内視鏡室で働く看護師の平均年収は約350万〜400万円です。 看護師全体の平均年収は524.7万円となっており、比較すると内視鏡室看護師の年収は低い傾向にあります。 これは、内視鏡で勤務する場合、夜勤や残業がないことが一つの要因です。 出典: co-medical.com
数字は求人の情報をもとにした目安で、施設や地域、経験年数によって幅があります。ただ、夜勤がなくなることで収入が下がる傾向は、多くの職場に共通しています。
どのくらい変わるのかを、少し具体的に考えてみましょう。夜勤手当は施設によって違いますが、2交代制の夜勤1回あたり1万円前後が1つの目安とされています。月に4回夜勤に入っていた人なら、手当だけで月に4万円前後、年間では50万円近くの差になります。ここに、夜勤に伴う時間外の手当が加わっていた人は、差がさらに広がります。
収入が下がることを、転職の前にどう受け止めるか。ここは、気持ちの整理が必要なところです。
・今の生活で、毎月いくらあれば暮らしが回るのかを書き出す ・収入の差を、睡眠や家族との時間、体調の安定と並べて考えてみる ・オンコール手当や資格手当など、内視鏡室でも得られる手当がないかを確認する ・数年後に常勤の条件が変わる可能性(パートから常勤へ、など)も視野に入れる
収入が下がることに、罪悪感や不安を感じる人もいます。けれど、体と心を守るために働き方を変えるのは、立派な選択です。雇用形態ごとの看護師の年収の水準は看護師の年収・単価相場にまとまっているので、提示された金額が相場のどのあたりにあるかを確かめると、冷静に判断しやすくなります。
前の職場との落差2:患者さんとの関わり方
生活の変化の次に、じわじわと感じるのが、患者さんとの関わり方の違いです。
病棟では、入院から退院までの数日から数週間、同じ患者さんと関わります。少しずつ回復していく姿を見届け、退院のときに「ありがとう」と声をかけてもらう。その積み重ねが、看護師としてのやりがいを支えていた人も多いはずです。
内視鏡室では、1人の患者さんと関わる時間は、長くても1〜2時間ほどです。検査の前の不安を受け止め、検査中は呼吸や血圧を見守り、検査の後は回復を確認して見送る。そこで関わりは終わります。鎮静を使う検査では、患者さんは検査中のことを覚えていないことも多く、看護師の顔を記憶に残さないまま帰っていきます。
この違いを、「物足りない」と感じる人がいます。
「病棟では患者さんの人生に関わっている感覚があった。内視鏡室では、流れ作業の一部になった気がする」
こうした気持ちになるのは、あなたが患者さんとの関わりを大切にしてきた看護師だからです。その感覚は、間違っていません。
ただ、内視鏡室には、内視鏡室ならではの関わり方があります。
検査を受ける患者さんの多くは、強い不安を抱えています。「がんが見つかったらどうしよう」「苦しかったらどうしよう」。検査の前のわずかな時間に、その不安をどう受け止めるかで、患者さんの体験は大きく変わります。
「前回の検査がつらかったと伺ったので、今日は鎮静を少し使っていきますね。途中で苦しかったら、手を少し上げてください」
こうした短い声かけで、患者さんの肩の力が抜けるのが分かる瞬間があります。関わる時間は短くても、その時間の密度はとても濃いのです。
また、検診で早期のがんが見つかり、治療につながった患者さんが、後日「あのとき検査を受けてよかった」と話してくれることもあります。直接の感謝の言葉は少なくても、自分の仕事が誰かの命を守る入口になっていると感じられる職場です。
やりがいの形が変わることを、転職の前に知っておくと、入職後に戸惑いにくくなります。
もう1つ、関わり方の違いで戸惑いやすいのが、「その後」を知らないことです。病棟では、検査の結果がどうだったか、治療がうまくいったかを、患者さんのそばで知ることができました。内視鏡室では、生検の結果が出る頃には患者さんは別の外来にいて、看護師がその結果を知る機会はほとんどありません。気になっていた患者さんのその後が分からないまま、次の検査に向かう。この区切りのつけ方に慣れるまでには、少し時間がかかります。
前の職場との落差3:仕事の中身と覚え方
3つ目の落差は、仕事の中身と、その覚え方です。
病棟では、状況に応じて判断し、優先順位をつけながら動く力が求められます。内視鏡室では、決められた手順を、毎回同じように正確に繰り返す力が求められます。
たとえば、スコープの洗浄。1本のスコープを洗うには、ベッドサイドでの一次洗浄、漏水の確認、ブラシでの洗浄、洗浄消毒機での消毒、乾燥、保管、履歴の記録と、多くの工程があります。どれか1つでも省けば、感染につながる危険があります。何十回、何百回と繰り返しても、手を抜かずに同じ工程を続ける。これが内視鏡室の仕事の土台です。
病棟から来た人の中には、この「同じことの繰り返し」に最初は戸惑う人がいます。臨機応変に動くことに慣れているほど、手順どおりに動くことが窮屈に感じられるのです。
逆に、最初の数か月は覚えることの多さに圧倒される人もいます。
・スコープの種類と、それぞれの使い分け ・生検鉗子、スネア、クリップなど、処置具の名前と準備の仕方 ・鎮静剤の種類と、投与後に気をつける変化 ・医師ごとの手技の好みと、声かけのタイミング ・洗浄機やモニターなど、機器の扱い方
病棟で何年も経験を積んできた人ほど、「新人に戻ったみたいで情けない」と感じやすくなります。
私が以前お話を聞いた方は、病棟で主任を務めていた経験を持ちながら内視鏡室へ移り、最初の3か月は毎日のように自分より若い先輩に質問をしていたそうです。「分からないことを聞くのが、こんなに勇気がいることだとは思わなかった」と話していました。けれど、半年を過ぎた頃には、病棟で身につけた急変対応の力が、鎮静中の患者さんの変化に気づく場面で何度も役に立ったと振り返っていました。
体の使い方も変わります。検査中はほとんど立ったままで、治療内視鏡では長時間になることもあります。X線透視を使う検査では、重さのある防護エプロンを着けて介助します。夜勤の疲れとは違う、日中の立ち仕事の疲れがあることも、知っておいてください。
時間の流れ方も変わります。病棟では、1日の中に自分で段取りを組める時間がありました。内視鏡室では、予約の枠に沿って検査が次々に進むため、自分のペースで休んだり作業を前後させたりする余地が少なくなります。検査が押せば昼休憩が短くなり、午後の予定も詰まっていく。流れに乗る働き方に慣れるまでは、同じ日勤でも疲れの質が違うと感じるかもしれません。
元の職場によって、感じる落差は変わる
内視鏡室への転職で感じる落差は、どこから移ってきたかによっても違います。自分に近いところを読んでみてください。
病棟から移る場合
生活のリズムの改善を最も強く感じる一方で、収入の減少と、患者さんとの関わりの短さに戸惑いやすいパターンです。急変対応や全身状態の観察の経験は、鎮静管理でそのまま生きます。多重課題に慣れているため、検査が重なる時間帯でも落ち着いて動けることが多く、職場からも頼りにされやすい経歴です。
外来から移る場合
日勤の生活リズムには慣れているので、生活面の落差は小さめです。その代わり、外来で幅広い診療科を担当していた人は、内視鏡という1つの分野に絞られることに物足りなさを感じることがあります。採血や点滴の確保に慣れているのは大きな強みで、前処置の場面で力を発揮できます。
手術室から移る場合
清潔操作や器械の準備、医師との息の合わせ方に慣れているので、治療内視鏡の介助には入りやすいパターンです。一方で、手術室では麻酔科医が全身管理を担っていたのに対し、内視鏡室では看護師が鎮静中の呼吸や循環を見守る場面が増えます。観察の責任の重さが変わることを意識しておくと安心です。
クリニックの内視鏡室から病院の内視鏡室へ移る場合
内視鏡の経験があるので即戦力として期待されますが、治療内視鏡や緊急内視鏡、多職種との連携など、クリニックでは経験しなかった仕事が加わります。「経験者なのに知らないことが多い」と感じやすいパターンですが、できる範囲とまだできない範囲を最初に伝えておくと、無理なく慣れていけます。
病院の内視鏡室からクリニックや健診センターへ移る場合
治療の場面が減り、検診中心の落ち着いた流れになる一方、少人数での運営のため、受付の補助や電話対応、在庫の管理など、看護以外の仕事が増えることがあります。人数の少なさから、人間関係の距離が近くなることも覚えておきたい点です。
透析室や化学療法室など、ほかの専門部署から移る場合
決まった手順を繰り返す働き方や、日勤中心の生活には慣れているので、落差は比較的小さいパターンです。穿刺や点滴の管理の経験は前処置の場面で生き、長く通う患者さんと関わってきた経験は、検査を繰り返し受ける患者さんへの声かけに役立ちます。
どのパターンにも、戸惑いと強みの両方があります。「前の職場で身につけたことが、どこで生きるか」を考えておくと、転職後の自信の支えになります。
求人票で、つまずきやすいところ
内視鏡室への転職で、意外とつまずきやすいのが求人票の読み方です。いくつか代表的なものを挙げます。
「外来(内視鏡含む)」という書き方
内視鏡室の求人だと思って応募したら、実際は外来全体のローテーションで、内視鏡に入るのは週に1〜2日だった。こういう行き違いは、少なくありません。外来の看護業務の中に内視鏡が含まれている募集では、化学療法室や処置室、救急外来などを交代で担当することがよくあります。内視鏡室に専任で入りたいなら、応募の前に「内視鏡室の専任配置ですか」と確認してください。
「内視鏡業務経験者」という応募条件
経験者を条件にしている求人は、パートや短時間勤務で多く見られます。午前の検査枠を即戦力で埋めたいという事情があるためです。未経験から内視鏡室を目指すなら、教育体制のある病院の常勤から入り、経験を積んでからパートや短時間の働き方を選ぶ、という順番が現実的です。
「日勤のみ」と書かれていても、オンコールがある
夜勤はなくても、緊急内視鏡のためのオンコール当番がある職場があります。オンコールは夜勤とは別の扱いで、求人票には書かれていないこともあります。「夜は必ず家にいたい」という理由で転職するなら、オンコールの有無と回数は必ず確認してください。
業務の分担が書かれていない
「内視鏡室での看護業務」とだけ書かれた求人では、洗浄や在庫の管理、受付の補助を看護師が担うのかどうかが分かりません。職場によって業務量が大きく変わる部分なので、面接や見学で確かめておきます。
求人票は、職場の良いところを中心に書かれるものです。書かれていないことは、聞いて埋める。それは失礼なことではなく、長く働くための準備です。
転職の時期
求人票そのものの話ではありませんが、応募の時期も考えておきたいところです。病院では年度の変わり目に合わせて採用や配置換えを行うことが多く、4月の入職に向けた募集は秋から冬にかけて増える傾向があります。一方で、内視鏡室は少人数のため、欠員が出たときにだけ募集が出ることも多く、時期を問わず求人が現れます。今の職場の賞与の支給時期や、退職の申し出に必要な期間(就業規則で1〜3か月前とされていることが多い)も合わせて確認し、無理のない予定を立ててください。
見学ができるかどうか
応募の前に見学を受け入れているかも、職場を知る手がかりになります。内視鏡室は検査中の患者さんがいるため、見学の時間帯が限られることはありますが、多くの施設は検査の合間や午後の時間を案内してくれます。見学では、検査室と洗浄室の距離、リカバリーのベッドに誰が付いているか、スタッフ同士の声のかけ方を見ておくと、求人票からは分からない1日の動きが見えてきます。
決め手をどう見つけるか
ここまで、落差と注意点をお伝えしてきました。ここからは、あなたにとっての決め手をどう見つけるかを考えます。
転職の決め手が見つからないとき、多くの人は条件を比べることから始めます。給与、休日、通勤時間。けれど、条件を並べるほど、どの職場も一長一短に見えて、決められなくなります。
そこでおすすめしたいのが、条件の前に、自分に3つの問いを投げかけることです。
1つ目の問い。「私がいちばん守りたいものは何か」
睡眠なのか、家族との時間なのか、収入なのか、看護師としてのやりがいなのか。全部を同時に守ることはできません。いちばんを1つ決めると、ほかのことに少し目をつぶる覚悟ができます。
2つ目の問い。「今の職場で、何がいちばんつらいのか」
夜勤そのものなのか、多重課題なのか、人間関係なのか。つらさの正体によって、内視鏡室が解決策になるかどうかが変わります。たとえば、つらさの中心が人間関係なら、少人数で距離の近い内視鏡室では、かえって苦しくなることもあります。
3つ目の問い。「3年後、どんな働き方をしていたいか」
内視鏡の技術を深めていたいのか、生活に合わせて柔軟に働いていたいのか。3年後の姿によって、選ぶべき職場の種類が変わります。
この3つの問いに、紙に書いて答えてみてください。頭の中だけで考えていると、同じところを何度も回ってしまいます。書き出すと、自分の気持ちが少し外から見えるようになります。
それでも決めきれないときは、試してみるという方法もあります。気になる内視鏡室の見学を申し込む。今の職場を辞める前に、休日にパートで働いてみる(今の職場の副業の規定を確認したうえで)。実際の空気に触れると、頭で考えていたことが一気に具体的になります。
一人で考えることに疲れたら、話を聞いてもらうのも大切です。転職や職場の悩みについて相談を受ける仕事の内容は、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。また、キャリアの相談を受ける国家資格についてはキャリアコンサルタントの解説にまとまっており、どんな支援が受けられるかを知る手がかりになります。
私自身も、働き方を大きく変えるかどうかで何か月も迷った時期があります。決め手になったのは、条件の比較ではなく、「このまま続けたら、自分の体と心が持たない」という、ごく個人的な実感でした。決め手は、誰かにとっての正解ではなく、あなた自身の実感の中にあります。
家族に相談するときは、「転職したい」という結論だけでなく、3つの問いへの答えを一緒に伝えてみてください。収入が下がることや、勤務時間が変わることは、家族の生活にも関わります。何を守るために働き方を変えたいのかが伝わると、家族も応援しやすくなります。
入職後の最初の半年に起きやすい心の揺れ
転職を決めて内視鏡室に入った後、最初の半年ほどは、気持ちが揺れやすい時期です。前もって知っておくと、揺れに飲み込まれにくくなります。
最初の1か月は、覚えることの多さに追われて、気持ちを振り返る余裕がないかもしれません。生活のリズムが整ったことに安心しながらも、毎日くたくたになって帰る時期です。
2〜3か月目になると、少し慣れてきた分、前の職場と比べる気持ちが出てきます。「病棟のほうがやりがいがあった」「前の職場なら自分は頼られていた」。この時期に、転職したことを後悔する気持ちが一時的に強くなる人は珍しくありません。
これは、心理学で「適応の途中の揺れ」と言えるものです。新しい環境に慣れていく過程では、誰でも一度は前の環境を美化して思い出します。揺れが来たら、「今はそういう時期なんだ」と受け止めてください。
4〜6か月目になると、手順が体に入り、医師の好みも分かってきて、検査の流れを先読みできるようになります。この頃に、前の職場で身につけた力が内視鏡室で生きる瞬間に出会い、「移ってよかった」と思えるようになる人が多いのです。
揺れの時期を乗り越えるために、できることを挙げておきます。
・できるようになったことを、週に1つ書き出す ・前の職場の同僚と、ときどき話す(比べるためではなく、支え合うために) ・睡眠や休日の過ごし方など、転職で得られたものを意識して味わう ・半年たっても気持ちが沈んだままなら、職場の上司や外部の専門家に相談する
新しい職場で「前の職場ではこうしていました」と言いたくなる場面も出てきます。その気持ちは、自分の経験を大切にしている証拠です。ただ、入職してすぐは、まず今の職場のやり方を覚えることを優先してください。半年ほどたって周りとの信頼ができてから、「前の職場ではこういう工夫をしていたのですが」と提案すると、あなたの経験は職場の力として受け取ってもらいやすくなります。
眠れない日が続く、食欲が落ちるといった体のサインが2週間以上続く場合は、無理をせず、産業医や心療内科などに相談してください。あなたは一人ではありません。
もし、どうしても合わないと感じたときは、元の働き方に戻ることも選択肢の1つです。病棟に戻る、別の種類の内視鏡室に移る、外来で内視鏡に一部だけ関わる。内視鏡室で過ごした時間は、たとえ短くても無駄にはなりません。鎮静管理や感染対策の知識は、どの部署に戻っても生きるからです。「一度決めたのだから続けなければ」と自分を追いつめすぎないでください。やり直しがきくと分かっているほうが、かえって落ち着いて今の職場に向き合えるものです。
運営者の視点から見た、内視鏡室への転職
最後に、医療職を含む求人と働き方を長く見てきた運営者の立場から、少し補足します。
20年この市場を見てきた立場から言えば、内視鏡室への転職で長く落ち着いている人は、転職の前に「失うもの」を具体的に言葉にしている人です。夜勤手当、病棟でのやりがい、慣れた人間関係。それを分かったうえで、それでも得たいもの(睡眠、家族との時間、専門性)を選んでいる。だからこそ、入職後の揺れの時期にも、自分の選択に立ち返ることができているように見えます。
もう1つ感じているのは、内視鏡室の経験が、その後の働き方の選択肢を広げている点です。病院の内視鏡室で経験を積んだ人が、生活の変化に合わせてクリニックや健診センターへ移ったり、午前だけの短時間勤務を選んだりと、ライフステージに合わせて働き方を組み替えています。内視鏡室への転職は、目の前のつらさから離れるための選択であると同時に、長く看護師を続けるための土台づくりにもなり得るのです。
反対に、転職の後につらくなりやすいのは、「今の職場から離れること」だけが目的になっていたケースです。夜勤から逃れたい、今の人間関係から離れたい。その気持ちはとても自然なものですが、離れた先で何を大事にしたいのかが決まっていないと、内視鏡室の中で新しく出会う大変さに、支えを見つけにくくなります。だからこそ、転職の前に「守りたいもの」を1つ決めておくことをおすすめしています。
内視鏡室は、外からは静かで落ち着いた職場に見えるかもしれません。けれど中に入ると、張りつめた検査の時間と、正確さを求められる手順の積み重ねがあります。その現実を知ったうえで選んだ人は、揺れの時期を越えた後、自分の居場所としてその部屋を大切にしていくように見えます。この記事が、あなたが自分の選択に納得するための材料の1つになればうれしいです。
また、転職の相談を受けていると、「内視鏡室は楽そうだから」という周りからの言葉に傷ついたという話を聞くことがあります。夜勤がないことだけを見て、楽な職場へ逃げたように言われる。けれど、ここまで見てきたように、内視鏡室には内視鏡室の緊張と責任があります。周りの評価ではなく、自分がその職場で何を大事にして働くのかを持っていれば、そうした言葉に揺らぐ必要はありません。
働き方を変えることは、看護師を辞めることではありません。形を変えて、看護師を続けることです。内視鏡室への転職を、その1つの形として前向きに捉えてもらえたらと思います。
よくある質問
Q. 内視鏡室に転職すると年収はどのくらい下がりますか?
夜勤手当がなくなる分、下がる傾向があります。夜勤手当は2交代の1回あたり1万円前後が目安とされ、月4回の夜勤に入っていた人なら年間で50万円近くの差になることがあります。ただし施設や地域、オンコール手当の有無で差は変わるため、転職前に提示条件と相場を比べて確認してください。
Q. 病棟経験しかなくても内視鏡室に転職できますか?
転職できます。病棟で身につけた急変対応や全身状態の観察の力は、鎮静中の患者さんの変化に気づく場面で大いに生きます。未経験者を受け入れて教育する病院の内視鏡室も多くあります。経験者を条件にしていることが多いパートより、教育体制のある常勤から入るほうが無理なく慣れやすい傾向です。
Q. 内視鏡室に移ってやりがいを感じられるか不安です?
患者さんと関わる時間が短くなるため、最初は物足りなさを感じる人もいます。一方で、検査前の不安に寄り添う短い声かけや、早期発見の入口を支える役割など、内視鏡室ならではのやりがいがあります。見学で患者さんへの関わり方を見せてもらうと、自分に合うかを具体的に想像しやすくなります。
Q. 転職後に後悔しそうになったらどうすればよいですか?
入職から2〜3か月目は、前の職場と比べて後悔が強くなりやすい時期です。できるようになったことを書き出し、転職で得たものを意識して味わうと、揺れは落ち着いていきます。半年たっても気持ちが沈んだままだったり、眠れない日が2週間以上続いたりする場合は、上司や専門家に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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