70代でも続けられる在宅のストックフォト販売|安全に始めるための見分け方と続け方 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
70代でも続けられる在宅のストックフォト販売|安全に始めるための見分け方と続け方 2026

この記事のポイント

  • 70代からストックフォト販売を在宅で始めたい方へ
  • 市場の実像とロイヤリティ相場
  • そして著作権・肖像権・モデルリリースといった法的な注意点まで

先日、ある70代の男性から相談を受けました。「趣味で撮りためた写真を販売サイトに登録したら、写っていた人から連絡が来て困っている」という内容です。結論から言うと、これは肖像権の問題で、撮影時にモデルリリース(被写体の使用許諾書)を取っていなかったことが原因でした。こういうケース、実は本当に多い。

70代でストックフォト販売を在宅で始めたいと考える方は、たいてい何十年分もの写真をお持ちです。旅行先の風景、庭の草花、家族の記念日、地域の祭り。それらが収入になるなら素晴らしいことだと思います。ただ、写真の販売は「撮った人が自由に売っていい」という単純な話ではありません。著作権はあなたのものでも、写っている人や建物には別の権利があるからです。

この記事では、ストックフォト販売の仕組みとロイヤリティの相場、どんな写真に需要があるのか、そして70代の方が特に注意すべき権利関係を整理します。法律の話が中心になりますが、必ず「つまりこういうことです」と噛み砕いて書きます。法律はあなたを縛るものではなく、あなたの写真を守る道具です。

ストックフォト市場の現状と70代の立ち位置

ストックフォトとは、あらかじめ撮影された写真を素材としてデータベースに登録し、必要とする企業や個人がライセンス購入して使う仕組みです。Webサイトのバナー、企業のパンフレット、記事のアイキャッチ、広告のビジュアルなど、用途は幅広い。写真を撮る側から見れば、1枚の写真が何度でも売れる可能性がある「ストック型」の収入源になります。

市場規模は決して小さくありません。国内最大手のPIXTAだけでも登録素材数は膨大です。

PIXTAは、ピクスタ株式会社が提供する有料ストックフォトサービスで、写真の点数は1億1300万点以上にのぼります。写真は39~5,500円で販売されており、コミッション率によって報酬が変わってきます。コミッション率は、クリエイターランクなどによって変わり、22~58%です。 出典: stores.fun

ここで冷静に読み取ってほしいのは、素材点数が1億1300万点以上あるという事実です。つまり、ただ登録するだけでは埋もれます。一方で、販売価格が39円から5,500円、コミッション率が22%から58%という数字も重要です。1枚売れて手元に入るのは、安い価格帯だと10円前後にしかなりません。

70代がこの市場で持っている特有の強み

正直に言えば、機材の性能や技術力で若い世代と競うのは難しい面があります。ただ、ストックフォトで求められているのは技術的な完成度だけではありません。

第一に、撮影対象へのアクセスです。70代の方が日常的に接している場面、たとえば地域の伝統行事、農作業、家庭菜園、孫との時間、医療機関の待合、地域のサロン活動といった光景は、若い世代のクリエイターが撮ろうとしても簡単には撮れません。企業がシニア向けサービスの広告を作るとき、こうした素材は常に不足しています。

第二に、被写体としての価値です。実は70代以上の人物写真は市場で慢性的に不足しています。介護、医療、保険、年金、シニア向け旅行といったテーマの記事や広告には人物写真が必要ですが、素材が足りない。ここは需要と供給のバランスが崩れている領域です。

第三に、時間の使い方です。ストックフォト販売は撮影、選別、レタッチ、キーワード付け、審査対応という工程を繰り返す地道な作業で、まとまった時間が取れる人が有利です。現役世代が週末しか動けないのに対し、平日の朝の光で撮影できるというのは実務上かなり大きな差になります。

収入の期待値を先に共有しておく

期待値をずらしたまま始めると、ほぼ間違いなく続きません。ストックフォト販売は「ストック型」なので、最初の数か月はほとんど収入になりません。100枚程度の登録では月に数百円という水準が普通です。

収入が意味のある金額になってくるのは、登録枚数が1,000枚を超えたあたりからだと考えてください。1枚あたりの平均ダウンロード数が仮に年0.5回だとしても、1,000枚あれば年500回のダウンロードになります。単価が仮に100円なら年5万円。これが「ストック」の意味です。時間をかけて枚数を積み上げた人だけが、後から効いてくる収入を得られます。

逆に言えば、短期で結果を求める働き方には向いていません。すぐに現金が必要な状況であれば、別の在宅ワークを検討したほうが合理的です。

ストックフォトの仕組みとサービスの比較

登録先を選ぶ前に、契約の種類を理解しておく必要があります。ここが法務的に一番大事なところです。

独占契約と非独占契約の違い

ストックフォトサービスとの契約には、大きく分けて2種類あります。

独占契約は、その写真をそのサービスでしか販売できない代わりに、コミッション率が高く設定されるものです。非独占契約は、同じ写真を複数のサービスに同時登録できる代わりに、コミッション率が低くなります。

つまり、独占契約を結んだ写真を別のサービスにも登録すると、契約違反になります。これは著作権の譲渡ではなく「販売の独占権」を与える契約なので、写真そのものの権利はあなたに残ります。しかし違反すればアカウント停止や損害賠償の対象になり得ます。

70代から始める方には、最初は非独占で複数サービスに登録することを勧めます。理由は単純で、どのサービスが自分の写真と相性がいいかは、やってみないとわからないからです。独占で縛られてしまうと、後から方針転換ができません。

※ 契約書の条項に「専属」「独占」「排他的」という文言があった場合は、それが何を独占するのか(販売なのか、著作権そのものの譲渡なのか)を必ず確認してください。著作権譲渡と書かれている契約は、慎重に判断すべきです。

主要サービスの特徴

サービス 特徴 コミッションの傾向 審査の厳しさ
PIXTA 国内最大手。日本人モデル・和の素材に強い 22〜58% やや厳しい
Adobe Stock 世界規模。デザインソフトとの連携 33%前後 厳しい
Shutterstock 世界最大級。点数が多い 15〜40% 厳しい
photoAC 無料素材中心。ダウンロード課金 低単価・件数勝負 比較的緩い
iStock(Getty系) 高単価だが独占条件が絡む 15〜45% 非常に厳しい
snapmart スマートフォン写真中心 30〜60% 比較的緩い

日本国内の企業を顧客に想定するなら、国内サービスから始めるのが現実的です。海外サービスは英語でのキーワード付けが必要になり、審査基準も日本と異なります。

審査という最初の壁

多くのサービスでは、登録した写真が販売可能になるまで審査があります。落ちる理由は決まっていて、上位から順に、ピントが甘い、ノイズが多い、構図に不要なものが写り込んでいる、権利処理がされていない、既存素材と重複している、というパターンです。

実務で相談を受けていて多いのが「権利処理がされていない」による却下です。撮影者本人は問題ないと思っていても、審査側は商標、看板、キャラクター、人物の顔といった要素を厳しく見ます。この点は次の章で詳しく書きます。

権利の話:ここを間違えるとトラブルになる

この記事で最も伝えたいパートです。ストックフォト販売は、写真を「商用利用可能な素材」として提供する行為です。つまり購入者は、その写真を広告や商品パッケージに使う可能性がある。だからこそ、権利処理の水準が趣味の写真とはまったく違います。

著作権はあなたのもの、でもそれだけでは足りない

写真を撮影した時点で、その写真の著作権は撮影者に発生します。登録も申請も不要です。ここまではシンプルです。

問題は、写真の中に「他人の権利」が写り込んでいる場合です。著作権法上あなたの著作物であることと、その写真を商用販売していいことは、別の話になります。具体的には次の3種類の権利に注意が必要です。

1つ目が肖像権。人が特定できる形で写っている場合、その人の許諾が必要です。

2つ目が財産権とパブリシティ権。有名な建造物、私有地の建物、商品パッケージ、企業ロゴ、キャラクターなどが写っている場合に問題になります。

3つ目が他人の著作物。絵画、彫刻、書、写真のポスター、書籍の表紙などが写り込んでいる場合です。

モデルリリースとプロパティリリース

モデルリリースとは、被写体になった人から「この写真を商用利用してよい」という許諾を得た書面のことです。つまり、写っている人のサインをもらった同意書です。

これ、知らない人が本当に多いんです。「家族だから大丈夫」「友人だから口約束でいい」と考えて登録してしまう方がいますが、後でトラブルになるのはむしろ身内のケースです。写真がどこでどう使われるかは撮影者にもコントロールできません。孫の写真が学習塾の広告に使われた、というような状況が起きたとき、口約束では説明がつきません。

プロパティリリースは、建物や私有物の所有者から使用許諾を得る書面です。有名建築物、テーマパーク、私有地の庭園、店舗の外観などが対象になります。

主要なストックフォトサービスは、どちらも所定の書式を用意しています。自作の書面より、サービス提供の書式を使ったほうが審査が通りやすい。撮影の場でその場でサインをもらうのが原則です。後から連絡を取ってサインをもらうのは、実務上かなり難しくなります。

※ 被写体が未成年の場合は、本人ではなく親権者の署名が必要です。孫を撮影する場合、あなたが祖父母であっても親権者ではないため、お子さん夫婦の署名が要ります。ここは見落としが多い点です。

撮影しただけで問題になるケース

権利処理以前に、そもそも撮影してはいけない場所があります。神社仏閣の内部、美術館、博物館、多くの商業施設は撮影禁止または商用利用禁止を規約で定めています。「撮影OK」の表示があっても、それは私的利用の許可であって商用利用の許可ではないことがほとんどです。

道路上での撮影も、三脚を立てて長時間占有すると道路使用許可が必要になる場合があります。地域の祭りを撮る場合は、主催者に事前に確認するのが確実です。

実際にあったトラブルの類型

匿名化した実例をいくつか挙げます。いずれも相談として持ち込まれた類型です。

ある方は、地域の商店街を撮影した写真を登録しました。写真には店の看板と商標が写っていました。後日、その写真が競合他社の広告に使われ、店側から抗議を受けました。この場合、責任の所在は複雑ですが、少なくとも撮影者は商標を写り込ませたまま商用素材として提供したことになります。

別の方は、自宅で撮影した料理写真を登録しました。使った食器に有名ブランドのロゴが入っていて、審査で却下されました。これは早い段階で気づけたので実害はありませんでしたが、ブランドロゴの写り込みは想像以上に厳しく見られます。

もう1件。撮影会で撮ったポートレートを登録したところ、撮影会の主催者から「商用利用は禁止していた」と指摘されたケースです。モデル本人の許諾があっても、撮影会の参加規約が商用利用を禁じていれば、契約違反になります。つまり、許諾は被写体からだけ取れば足りるとは限らない。

※ すでにトラブルが発生している場合、法的な主張の当否は事案によって大きく変わります。相手方から金銭請求や法的措置の予告を受けている段階であれば、自己判断で返答せず弁護士に相談してください。

権利処理を簡単にする現実的な方法

ここまで読んで「難しそうだ」と感じた方に、実務的な解決策を示します。答えは「権利関係が発生しない被写体から始める」ことです。

具体的には、自然風景、空、海、山、花、植物、食材、自分で作った料理、抽象的な背景素材、テクスチャ(木目、布地、紙、石など)。これらは人も建物も商標も写らないため、権利処理が原則として不要です。

70代の方には、庭の草花や家庭菜園の野菜、季節の風景といった被写体が最も相性がいい。毎日の生活圏で撮影でき、体力的な負担も小さく、しかも権利上の問題が起きにくい。まずこの領域で登録枚数と審査通過の感覚をつかんでから、人物や街並みに広げていくのが安全な順序です。

私自身、相談業務の資料として自分で写真を撮ることがあるのですが、最初に契約書のひな型を撮影したときに、机の上に置いていた雑誌の表紙が写り込んでいて使えなかったことがあります。撮っているときは中身に集中していて、周辺に何が写っているかまで見ていない。この「周辺を見る癖」がつくまでには、それなりに失敗が必要でした。

売れる写真の傾向とキーワード設計

権利の話が済んだので、実務的な話に移ります。

需要のあるジャンル

ストックフォトで安定して売れるのは、「使う場面が具体的に想像できる写真」です。芸術性の高い作品より、説明的で汎用性のある写真のほうが売れます。

人物写真の需要については、次のように整理されています。

人物写真は、Webサイトのバナー広告やブログ記事のアイキャッチなど、視覚的にメッセージを伝えたい場面で最も重宝されます。特に「家族の団らん」「仕事に打ち込む姿」「喜怒哀楽の表情」など、ストーリー性を感じる写真は汎用性が高く人気です。 出典: stores.fun

70代の方が撮れるジャンルで需要が見込めるものを挙げます。

シニア世代の日常生活。散歩、体操、趣味の時間、家族との食事。これらは介護・医療・保険業界の広告で常に必要とされます。人物が写るのでモデルリリースは必須ですが、需要は確実にあります。

季節感のある風景。桜、紅葉、雪景色、田植え、稲刈り。日本の四季を表す素材は、カレンダー、企業の季節挨拶、旅行関連の記事で使われます。

食材と料理。旬の野菜、家庭料理、和食の盛り付け。権利処理が不要で需要が安定している、最も始めやすい領域です。

地域の行事と伝統。祭り、神事、伝統工芸の作業風景。撮影許可が必要な場合が多いものの、素材の希少性が高い分野です。

キーワード付けが売上を決める

登録した写真は、購入者が検索して初めて見つかります。つまりキーワードの設計が売上を直接左右します。ここは技術というより、購入者の立場を想像する作業です。

たとえば庭のあじさいを撮った写真に「あじさい」「花」だけを付けても、埋もれます。購入者が探すのは「梅雨」「6月」「雨」「季節」「日本」「和風」「背景」「コピースペース」といった文脈です。写真に何が写っているかではなく、その写真がどんな記事や広告に使われるかを考えてキーワードを付けます。

コピースペース(文字を入れる余白)があるかどうかも重要な情報です。バナー広告用に探している購入者は、余白のある写真を優先します。撮影の時点で意識的に余白を作っておくと、それだけで採用率が変わります。

初心者が押さえるべきコツについては、次のような整理があります。

ここでは、実際にオンラインで需要が高い写真のジャンルと、初心者の方が副業として成功させるために押さえておきたい具体的なコツを詳しく解説します。 出典: stores.fun

機材の話

高価な機材は必須ではありません。近年のストックフォトサービスは、スマートフォンで撮影した写真も受け付けています。ただし、画素数と最低解像度の条件があるため、登録前に各サービスの規定を確認してください。

70代の方には、重い一眼レフより軽量なミラーレスカメラ、あるいはスマートフォンを勧めることが多い。理由は続けやすさです。機材が重いと持ち出す頻度が下がり、撮影枚数が減ります。ストックフォトは枚数が効く世界なので、撮影のハードルを下げることが最優先になります。

「稼ぐには高級機材が必要」と言って機材や講座を売りつける情報には注意してください。30万円の機材を買っても、権利処理を知らないまま登録すれば審査で落ちます。順序が逆です。

税金と年金の扱い

ストックフォトの報酬は、税法上は雑所得または事業所得に分類されます。

年金を受給している方の場合、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。ストックフォト販売の収入が初年度から20万円を超えることは考えにくいので、多くの方は該当しないでしょう。制度の詳細は国税庁の公開情報で確認できます。

ただし、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要になる場合があります。この扱いは自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村に確認してください。

年金への影響についても触れておきます。年金額が調整される在職老齢年金の対象は厚生年金の被保険者であり、ストックフォトの報酬は雇用契約に基づくものではないため、この調整の対象にはなりません。制度の説明は日本年金機構にあります。つまり、ストックフォトの収入が理由で年金が減ることはありません。

収入が増えて事業として継続する見込みが立ったら、開業届の提出と青色申告を検討する価値があります。会計処理を簡単にするならfreeeマネーフォワードのような会計サービスを使う方法もあります。ただし、収入規模が小さいうちは無理に事業化する必要はありません。

なお、発注者と直接取引をする形態(依頼を受けて撮影する仕事)に発展した場合は、取引条件の明示義務など発注者側のルールが適用されます。取引の適正化については公正取引委員会が所管しています。報酬の支払い遅延や一方的な減額は、法律上禁止されている行為です。法律はあなたの味方です。

写真の先にある在宅ワークの選択肢

ストックフォト販売は、収益化までに時間がかかる働き方です。並行して別の在宅ワークを持っておくのは、現実的な判断だと思います。

写真を撮る過程で身につくのは、実は撮影技術だけではありません。キーワード設計は検索需要を読む作業であり、これはWebマーケティングの基礎そのものです。この感覚は他の仕事に転用できます。

たとえば文章を書く仕事です。写真に説明文とキーワードを付ける作業ができる方は、記事執筆の適性がある可能性が高い。単価の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的統計をもとに確認できます。

長年の職業経験がある方なら、その知見を相談業務に変える道もあります。シニアのコンサルティング副業|長年の業界経験を高額案件に変えるでは、業界経験を単発の業務委託に変えていく具体的な進め方を整理しています。写真の技術そのものを教える方向であれば、シニアのオンライン講座開業|Udemyやストアカで教える方法が参考になります。撮影と権利処理の知識は、それ自体が講座のテーマになります。

新しい技術に触れてみたい方には、50代の転職に役立つWebスキル|未経験でも身につくIT技術5選で紹介しているスキルセットが入口になります。事務スキルを形にしたい場合はビジネス文書検定、技術寄りの証明が欲しい場合はCCNA(シスコ技術者認定)といった資格も選択肢です。

在宅で発注されている業務の全体像は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事AIコンサル・業務活用支援のお仕事アプリケーション開発のお仕事で確認できます。技術職の報酬水準を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの仲介市場を20年以上運営してきた立場から、いくつか観察を書きます。

写真に限らず、在宅で長く収入を得ている方には共通点があります。それは、単発の成果を積み上げるより「相手にとって扱いやすい存在になる」ことに時間を使っている点です。ストックフォトで言えば、審査に落ちない品質を安定して出す、キーワードを正確に付ける、権利処理の書類を漏れなく揃える。地味な作業ですが、これができるクリエイターはサービス側からの信頼が積み上がり、結果として露出も増えます。

運営者として見てきた限り、写真から始めた方が撮影の依頼を直接受けるようになるケースは珍しくありません。地域の企業が自社サイト用の写真を必要としているとき、近くに撮れる人がいれば頼みたい。そのとき問題になるのが、仲介手数料です。仲介サービスを経由すると報酬から一定率が差し引かれ、仮に20%なら10万円の仕事で手元に残るのは8万円になります。中間マージンが乗らない直接取引であれば、同じ予算で受け手の手取りは厚くなり、依頼する側は同じ予算でより多く頼めます。手数料0%が意味を持つのは、金額の派手さではなく、この「手取りが厚い」という質の部分です。

もうひとつ。20年見てきて確実に言えるのは、権利関係を軽視した人ほど後で大きなコストを払っているということです。トラブルが起きてから対応する費用と時間は、最初にモデルリリースを1枚もらう手間とは比べ物になりません。これは写真だけでなく、文章でも音楽でもソフトウェアでも同じ構造です。

データから読み取れる70代のストックフォト参入の実像

ストックフォト市場を素材の側面から見ると、明確な偏りがあります。20代から40代の人物素材は飽和状態にある一方、70代以上の人物素材、特に「元気に活動しているシニア」の素材は不足しています。介護される側の写真はあるのに、旅行する、運動する、仕事をする、孫と遊ぶといった能動的な場面の素材が足りない。

この不足は構造的なものです。撮影する側のクリエイターの多くが若い世代で、モデルとして70代の人を手配するコストが高いためです。逆に言えば、70代の当事者自身がクリエイターになれば、この供給不足を埋められます。友人や配偶者にモデルリリースの署名をもらって撮影できる立場にあるというのは、市場から見て希少な条件です。

もっとも、この構造を過大評価すべきではありません。需要があるといっても市場全体から見れば小さな区画であり、そこで生活費を賄えるという話ではありません。ストックフォト販売は、あくまで「時間をかけて資産を積む」タイプの収入源です。数か月で成果を求める働き方ではありません。

現実的な位置づけとしては、こう整理できます。ストックフォト販売は、撮影という行為そのものが楽しめる方にとって、その楽しみに副次的な収入がつく仕組みです。収入を主目的にすると、単価の低さに耐えられずやめてしまう。一方、写真を撮る理由がもともとある方にとっては、撮りためた資産が少しずつ働いてくれる形になります。

そして、始める前に権利の知識を持っておくこと。これが70代から始める方にとって最も重要な準備です。技術は撮りながら上達しますが、権利処理の失敗は後から取り返せません。モデルリリースの様式を1枚印刷して財布に入れておく。それだけで、防げるトラブルの大半は防げます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月9日最終更新:2026年8月5日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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