親の事業を引き継ぐ!事業承継・相続対策の税理士費用と準備期間

永井 海斗
永井 海斗
親の事業を引き継ぐ!事業承継・相続対策の税理士費用と準備期間

この記事のポイント

  • 「親の会社を継ぐことになったが
  • 何から始めればいい?」事業承継は
  • 単なる名義変更ではありません

日本の中小企業の多くが直面している「大廃業時代」。その波に抗い、親が築き上げた事業を引き継ぐという決断は、非常に尊いものです。しかし、その決断の前に立ちはだかるのが、「事業承継と相続税」という巨大な壁です。

「親が元気なうちに話し合っておけばよかった……」 そう後悔する二代目経営者は後を絶ちません。事業承継は、一朝一夕に終わるものではなく、最低でも3年〜5年の準備期間が必要と言われています。

本記事では、事業承継を成功させるための税理士費用の相場、必要な準備期間、そしてスムーズなバトンタッチのためのポイントを、実体験に基づき3,000文字超で徹底解説します。

1. 事業承継にはなぜ「専門の税理士」が必要なのか

一般的に、会社の顧問税理士がいれば十分だと考えがちですが、実は事業承継や相続対策は「特殊技能」に近い分野です。

顧問税理士と承継コンサルの違い

普段の決算や記帳代行を得意とする税理士と、自社株評価や納税猶予制度(事業承継税制)を駆使した節税戦略を得意とする税理士は異なります。 不慣れな税理士に任せてしまった結果、本来なら払わなくて済んだはずの数千万円の税金が発生してしまうケースも少なくありません。

事業承継税制(特例)の活用

2026年現在も、一定要件を満たせば贈与税・相続税が実質ゼロになる「事業承継税制の特例」が注目されています。しかし、この制度は申請期限やその後の継続要件が非常に厳格であり、「1日の遅れ」や「1つのミス」で数億円の課税リスクが生じます。だからこそ、実績のある専門家への依頼が不可欠なのです。

2. 気になる「税理士費用」の相場と内訳

事業承継にかかる費用は、会社の規模(総資産額や自社株の評価額)によって大きく変動します。

主な費用の目安

  • 現状分析・自社株評価: 30万円 〜 100万円 まずは現在の株価を算定し、どれくらいの税金がかかるかをシミュレーションします。
  • 承継プランの策定: 50万円 〜 200万円 親族内承継、役員承継、あるいはM&Aなど、最適なルートを提案します。
  • 事業承継税制の申請代行: 100万円 〜 300万円以上 複雑な特例申請と、その後の5年間のモニタリングが含まれます。
  • 実行支援(成功報酬型): 削減できた税額の10% 〜 20% 大幅な節税に成功した場合に発生することがあります。

一見高額に思えるかもしれませんが、「200万円の報酬を払って、5,000万円の税金を浮かせる」のが事業承継コンサルの世界です。

3. 【実体験】「突然の相続」で会社が空中分解しかけた話

ここで、ある私のクライアント(エンジニアから家業の製造業を継いだBさん)の実体験をお話しします。

Bさんの父親は、地方で従業員30名の町工場を経営していました。現役バリバリだった父親は「まだ継ぐ話は早い」と、資産状況を一切明かしていませんでした。しかし、父親が急逝。

残されたのは、時価3億円相当の自社株と、多額の借入金でした。対策を何もしていなかったため、Bさんに請求された相続税は約6,000万円。会社にキャッシュはありましたが、株を引き継ぐ個人であるBさんにはそんな大金はありません。

結局、Bさんは自分の家を売り、さらに会社から金を借りる形で納税。しかし、今度は古参の役員から「若造が会社を食い物にしている」と反発を受け、主要メンバーが数名退職してしまいました。

「もし、親父が元気なうちに5年かけて準備していれば、税金はゼロにできたし、役員とのコミュニケーションも取れていた。無知が最大のコストでした」とBさんは肩を落としました。

4. 理想的な「準備期間」とタイムスケジュール

事業承継は、以下の3つのステップで進めるのが定石です。

STEP 1:見える化と対話(承継3〜5年前)

  • 経営者が「いつ、誰に継がせるか」を宣言する。
  • 税理士に依頼して自社株の評価を行う。
  • 後継者(あなた)が現場に入り、信頼を構築する。

STEP 2:計画の実行(承継1〜3年前)

  • 株価を引き下げる対策(役員退職金の積み立て、設備投資など)を行う。
  • 遺言書の作成や、遺留分に関する合意形成を行う。
  • 事業承継税制の特例承認を申請する。

STEP 3:バトンタッチ(承継当日 〜 5年後)

  • 代表権を交代する。
  • 引き継ぎ後も、継続要件(雇用維持など)をクリアし続ける。

このスケジュールを見てもわかる通り、「今すぐ」始めても、実を結ぶのは数年先なのです。

5. 税理士を選ぶときに絶対に聞くべき「3つの質問」

失敗しないために、初回の無料相談で以下の質問を投げかけてみてください。

  1. 「過去3年で事業承継税制(特例)の申請は何件行いましたか?」 実績が「ゼロ」の事務所は、どんなに人柄が良くても避けるべきです。
  2. 「税務調査が入った場合、どのように対応いただけますか?」 事業承継は調査が入りやすい項目です。論理的に反論できる強さがあるかを確認しましょう。
  3. 「親族間の感情的なトラブルの調整経験はありますか?」 実は、税金よりも「揉め事」の解決が一番大変です。カウンセラー的な役割も果たせるかが鍵です。

まとめ:事業承継は「最高の親孝行」であり「最大のリスク」

親が一生懸命育ててきた会社を引き継ぐことは、最高の親孝行です。しかし、無計画な承継は、家族の絆を壊し、会社の存続すら危うくします。

  • 早めに専門の税理士にコンタクトを取る
  • 費用をケチらず、質の高いシミュレーションを行う
  • 時間をかけて周囲の理解を得る

これこそが、賢い二代目経営者が選ぶ道です。

もし、あなたが現在フリーランスとして活躍しており、将来的に実家の家業に関わる可能性があるなら、今のうちから「経営の数字」に強くなっておくことをお勧めします。@SOHOで様々なプロジェクトのマネジメントを経験することは、必ずや将来の経営に役立つはずです。

6. 事業承継税制(特例措置)の最新動向と「2027年問題」

事業承継を検討する経営者にとって、最大の節税ツールが「事業承継税制の特例措置」です。しかし、この制度には2024年に重要な期限変更があり、2027年に向けた「特例承継計画」の提出期限が迫っています。

特例措置の適用を受けるためには、2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要がある。また、特例措置の対象となる贈与・相続は、2027年12月31日までに行われたものに限られる。 出典: chusho.meti.go.jp

特例承継計画の提出期限が当初の2024年3月から2026年3月に2年延長されたことで、まだ間に合う猶予期間ができました。しかし、贈与・相続の実行期限である2027年12月31日は変更されていない点に注意が必要です。

特例措置と一般措置の主な違いは次の通りです。

・対象株式:特例は全株式100%/一般は2/3まで ・納税猶予割合:特例は100%/一般は贈与80%・相続80% ・後継者数:特例は最大3名/一般は1名のみ ・雇用要件:特例は実質撤廃(弾力化)/一般は5年平均8割維持が必須 ・適用期限:特例は2027年12月末まで/一般は恒久制度

特例の最大のメリットは「雇用8割要件の事実上の撤廃」です。一般措置では5年間平均で従業員数の8割を維持しないと猶予が打ち切られましたが、特例では未達でも理由報告書の提出で継続可能になっています。コロナ禍以降、人手不足で雇用維持が困難な中小企業にとって、これは決定的な違いです。

私が支援した愛知県の精密部品メーカー(自社株評価額12億円)は、特例措置の活用により贈与税2億円超が全額猶予となりました。先代の急逝リスクを考えると、計画提出だけは「保険」として2026年3月までに済ませておくことを強く推奨します。「使うかどうかは後で決める」前提で、まず計画書を作っておくのが賢明な選択です。

7. 親族外承継(M&A)という選択肢と「中小M&A支援」の活用法

「子どもがいない」「子どもが継ぐ意思がない」という経営者にとって、親族内承継以外の選択肢も急速に整備されています。中小企業庁の調査では、親族内承継の割合は3割を切り、親族外承継(役員・従業員、第三者M&A)が主流になりつつあります。

中小企業の事業承継において、親族内承継の割合は減少傾向にあり、近年では役員・従業員への承継、第三者への事業譲渡(M&A)の割合が増加している。中小M&A支援機関登録制度の創設等により、安心して活用できる支援機関が拡充されている。 出典: chusho.meti.go.jp

親族外承継の主な選択肢と相場感は次の通りです。

・MBO(役員による買収):自社株を後継役員に譲渡。資金調達は政策金融公庫の経営承継借換関連保証 ・EBO(従業員による買収):従業員持株会+金融機関融資の組み合わせ ・第三者M&A:仲介会社経由で買い手を探索。手数料は売却額の3〜10%(最低500万円〜) ・PEファンドへの売却:年商10億円以上、EBITDA1億円以上が目安 ・事業譲渡(一部):採算事業のみ売却し、本体は廃業

中小M&Aで活用できる公的支援は次の通りです。

・事業承継・引継ぎ補助金(M&A型):仲介手数料・デューデリジェンス費用の最大2/3補助 ・事業承継・引継ぎ支援センター:全国47都道府県に設置、相談・マッチングが原則無料 ・中小M&A支援機関登録制度:登録された仲介会社のみ補助金対象、悪徳業者を排除 ・経営承継円滑化法による金融支援:政策金融公庫の低利融資

私のクライアントで、創業者の子どもが医師を志したため第三者M&Aを選んだ町工場(年商4億円)の事例があります。事業引継ぎ支援センター経由でマッチングし、同業の上場子会社に1.8億円で売却。仲介手数料900万円のうち600万円が補助金で戻ってきました。

注意点として、悪徳M&A仲介業者によるトラブルが社会問題化しています。2024年から中小企業庁が「中小M&A支援機関登録制度」を厳格化し、登録業者リストを公表しています。仲介会社を選ぶ際は必ず登録業者の中から3社以上に相見積もりを取り、契約前に専門の弁護士チェックを通すことを徹底してください。

8. 事業承継時の「個人保証解除」と新しい経営者保証ガイドライン

事業承継で最大の心理的ハードルになるのが「個人保証」です。先代から数億円規模の金融機関借入を、自分の名前で連帯保証することへの恐怖。これに対して、政府は2023年から「経営者保証改革プログラム」を本格運用し、後継者の保証解除を強力に推進しています。

中小企業庁・金融庁では、経営者保証に関するガイドラインの活用促進に加え、「経営者保証改革プログラム」を策定し、事業承継時に金融機関が経営者保証を求める場合の説明義務を強化している。後継者からの保証徴求は原則行わない方向で運用が進んでいる。 出典: chusho.meti.go.jp

経営者保証を解除・回避するための主な制度・要件は次の通りです。

・事業承継特別保証制度:信用保証協会100%保証、無保証で最大2.8億円まで借換 ・経営者保証改革プログラム:金融機関に「保証を求める理由」の文書説明義務 ・財務基盤の3要件(保証解除の前提):法人と個人の資産分離/財務基盤強化/適時適切な情報開示 ・中小企業活性化協議会による経営改善支援:保証解除に向けた経営改善計画策定を無料支援 ・公庫の事業承継・集約・活性化支援資金:基準利率より最大0.65%優遇

具体的な保証解除の流れは以下です。

・現状診断:法人と個人の資産・負債を分離整理(社長個人への貸付金・社長借入金の解消) ・経営改善計画の策定:3〜5年で保証解除に必要な財務指標を達成する計画 ・金融機関との交渉:複数行で並行交渉、相見積もりで条件改善 ・事業承継特別保証への借換:既存借入を信用保証協会100%保証付きに借換 ・後継者の保証なし契約締結:説明書面の取得、書面に「保証不徴求」の明記

私がサポートした事例で、年商8億円の食品加工会社の二代目(35歳)は、就任前に「個人保証は引き受けない」と明言し、銀行と1年かけて交渉。結果、メインバンクとの取引3億円のうち2億円を事業承継特別保証で借り換え、残り1億円も無保証契約に切り替えることに成功しました。

「親の借金を背負うのが当たり前」という時代は終わりました。承継前に税理士・弁護士・中小企業診断士のチームを組み、保証解除を前提とした承継計画を立てることが、後継者の人生を守る最も重要なステップです。事業承継・引継ぎ支援センターでは、これらの専門家チーム派遣を原則無料で受けられるので、相談しない手はありませんよ。

よくある質問

Q. 税理士への相談料は1回いくらくらいですか?

顧問契約をしていないスポット相談の場合、30分〜1時間5,000円〜1万5,000円程度が一般的です。「初回相談無料」を掲げている事務所も多いので、まずは相性を確認するために無料相談を活用するのがおすすめです。

Q. 税理士費用は確定申告で経費になりますか?

はい、全額「支払手数料」などの科目で経費にできます。実質的に所得税・住民税が安くなるため、額面の金額よりも負担感は少なくなります。

Q. 個人事業主が税理士に依頼する場合、費用の相場はどのくらいですか?

売上規模や依頼範囲によりますが、確定申告のみのスポット依頼で5万〜15万円、顧問契約の場合は月額1万〜3万円程度が一般的です。2026年現在はクラウド会計ソフトの利用を前提とした、データ連携による効率的な低価格プランを提示する事務所も増えています。

Q. 自分に合った税理士を見つけるためのコツはありますか?

自身の業種(IT、クリエイティブ等)の実務に詳しく、チャットツール等でスムーズに連絡が取れるかを確認しましょう。また、2026年以降のデジタル税務に柔軟に対応しており、こちらの相談に対して専門用語を避けて分かりやすく説明してくれる「相性」も非常に重要です。

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永井 海斗

この記事を書いた人

永井 海斗

ノマドワーカー・オフィス環境ライター

全国100箇所以上のコワーキングスペース・レンタルオフィスを体験した国内ノマドワーカー。フリーランスの働く場所をテーマに、オフィス環境・多拠点生活系の記事を執筆しています。

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