菓子や料理の販売で食中毒を出した時の責任|PL保険と製造物責任 2026


この記事のポイント
- ✓菓子販売で食中毒を出した場合の法的責任とPL保険の補償範囲を解説
- ✓マルシェ出店時の施設賠償責任保険との違いまで
- ✓菓子販売 食中毒 保険を検討する個人事業主向けにまとめました
手作り菓子をネット販売したりマルシェに出店したりしていると、頭の片隅に必ず引っかかるのが「もし食中毒を出してしまったらどうなるのか」という不安です。菓子販売 食中毒 保険というキーワードで検索している人の多くは、実際にトラブルが起きたわけではなく、これから販売を始める前に、あるいは規模を広げるタイミングで「備えとして何が必要か」を確認したいはずです。結論から言えば、菓子や料理の販売事業では生産物賠償責任保険(PL保険)への加入がほぼ必須の備えであり、マルシェなど対面販売がある場合はさらに施設賠償責任保険も検討すべきというのが業界の共通認識です。
この記事では、菓子販売における食中毒の法的責任の仕組みから、PL保険の補償範囲、保険料の相場、加入時にチェックすべきポイントまで、実務目線で整理していきます。
マクロ視点|菓子販売と食中毒リスクの市場動向
個人が小規模に菓子や食品を販売するビジネスは、この数年で明らかに裾野が広がっています。ハンドメイドマーケットアプリの普及、地域のマルシェイベントの増加、SNSでの販路開拓のしやすさが後押しとなり、副業として焼き菓子やジャムを販売する人、週末だけキッチンカーやマルシェで惣菜を売る人が増えました。食品衛生法の改正により、2021年6月からは原則としてすべての食品等事業者にHACCP(危害要因分析重要管理点)に沿った衛生管理が義務化され、菓子製造業や飲食店営業を営むには保健所への営業許可申請、または届出が必要になっています。
一方で、食中毒の発生件数自体は年によって変動しますが、飲食店だけでなく菓子製造業や販売業でも一定数の事案が報告されています。厚生労働省が毎年公表する食中毒統計では、原因施設別の内訳に「菓子製造業」「販売店」といった区分が存在し、飲食店に次いで発生する業態として名前が挙がることも珍しくありません。生クリームを使った洋菓子、卵を使ったカスタード、常温での長時間陳列を伴う焼き菓子など、菓子ジャンルにも食中毒の温床になりやすい要素は多く含まれています。
こうした背景から、個人・小規模事業者向けの保険会社やインターネット完結型の保険サービスが、菓子販売や小売業に特化したPL保険プランを次々に打ち出しています。年会費5,000円前後から加入できるプランが登場したこともあり、「開業したての個人でも入りやすい保険」として認知が広がっているのが現在の市場動向です。
PL保険(生産物賠償責任保険)とは何か
PL保険とは、Product Liability Insuranceの略で、製造・販売した製品(この場合は菓子や食品)が原因で第三者の身体や財産に損害を与えた場合、法律上の損害賠償責任を負ったときの補償を行う保険です。菓子販売の文脈で具体的に言えば、次のようなケースが典型例になります。
・販売した焼き菓子を食べた顧客が食中毒を発症し、通院・入院費用の賠償を求められた ・アレルギー表示に不備があり、アレルギー症状を起こした顧客から治療費や慰謝料を請求された ・商品にガラス片や金属片などの異物が混入しており、顧客がケガをした
PL保険に加入していれば、こうした事故で発生した治療費、慰謝料、休業損害、弁護士費用などを保険金で賄うことができます。逆に、PL保険に未加入のまま高額な賠償責任を負ってしまうと、事業の継続そのものが困難になるほどの経済的打撃を受ける可能性があります。特に個人事業主やフリーランスとして少人数で運営している場合、賠償金を自己資金だけで補填するのは現実的ではありません。
PL保険が補償しない範囲にも注意する
PL保険は万能ではありません。一般的に、以下のようなケースは補償対象外とされることが多いので、加入前に必ず約款で確認する必要があります。
・自社の製品を回収する費用(リコール費用特約が別途必要) ・製品自体の欠陥修理費用(賠償ではなく製品そのものの価値の話のため対象外) ・事業主自身のケガや病気 ・故意による事故
つまりPL保険は「他人に与えた損害の賠償」に特化した保険であり、「自分の商品が売れなくなった損失」や「自分がケガをした場合の補償」は別の保険(休業補償保険や傷害保険など)でカバーする必要があります。
対物超過復旧費補償特約の適用。時価額(12万円)と、実際の修理費用(30万円)の差額である「18万円」を保険で上乗せして補償します(※100万円を限度)。お客さまに自己負担をさせることなく修理費用を全額お支払いできるため、誠意ある対応で早期解決が可能になります。 出典: aoba-hoken.jp
この事例は自動車の対物事故に関するものですが、「時価と実費の差額を保険が埋める」という発想は、菓子販売における賠償トラブルでも共通する考え方です。実際に発生した治療費や慰謝料の全額を、事業主の持ち出しなしでカバーできるかどうかが、保険選びの核心になります。
菓子販売でよくある食中毒・食品事故のパターン
実際にどのような食品事故が菓子販売で起こりやすいのか、具体的に見ていきます。
生クリーム・卵・乳製品を使った洋菓子
シュークリームやロールケーキなど、生クリームやカスタードクリームを使う洋菓子は、常温保存で細菌が増殖しやすく、黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌による食中毒のリスクが指摘されています。マルシェやイベントで長時間常温陳列してしまうケースは特に危険で、保冷剤や保冷バッグの使用、販売時間の制限といった対策が欠かせません。
アレルギー表示の不備
菓子には小麦、卵、乳、そば、落花生など特定原材料が使われることが多く、表示義務のある品目を正しく明記しないと、アレルギー体質の顧客に重篤な症状を引き起こすリスクがあります。個包装のない対面販売やイベント出店では特に表示が漏れやすく、口頭説明だけに頼るのは危険です。
異物混入
焼き菓子の製造過程でパッケージの一部、調理器具の破片、包装資材の異物が混入してしまうケースも報告されています。家庭のキッチンを間借りして製造しているような小規模事業者ほど、作業動線や設備の管理が甘くなりがちで注意が必要です。
賞味期限・消費期限の設定ミス
手作り菓子は保存料を使わないことが多く、市販品より賞味期限が短くなります。この期限設定を科学的根拠なく長めに設定してしまうと、傷んだ商品を販売してしまう温床になります。期限設定には、実際に微生物検査を行う、あるいは専門機関の指導を受けるといった裏付けが推奨されています。
製造物責任法(PL法)の基本と請求されたときの流れ
PL保険とセットで理解しておきたいのが、製造物責任法(PL法)です。PL法は、製造・加工された製品に欠陥があり、それによって他人の生命・身体・財産に損害を与えた場合、製造業者等が過失の有無にかかわらず賠償責任を負うと定めた法律です。通常の不法行為責任(民法709条)では被害者側が加害者の「過失」を立証する必要がありますが、PL法では「製品に欠陥があったこと」を立証すれば足りるため、被害者にとってはハードルが下がる一方、事業者側から見ると賠償責任を問われやすい構造になっています。
菓子販売の場合、自分で製造した菓子は「製造物」に該当し、PL法の適用対象になります。仮に顧客から食中毒の被害を訴えられた場合、一般的には次のような流れで対応が進みます。
- 顧客からの申し出・相談を受ける
- 症状や経緯についてヒアリングし、事実関係を記録する
- 保健所への報告が必要なケースでは速やかに連絡する
- 加入している保険会社に事故報告を行う
- 保険会社の担当者や顧問弁護士と連携しながら、賠償の妥当性を協議する
- 示談または法的手続きにより賠償額が確定し、保険金で支払う
このプロセスの中で重要なのは、初動の記録と、保険会社への早期連絡です。事故報告が遅れると、保険金請求そのものが認められない場合もあるため、トラブルが起きた際は自己判断で対応を進めず、まず保険会社に連絡する習慣をつけておくべきです。
保険料の相場と加入方法
菓子販売向けのPL保険の保険料は、事業規模(年間売上高)と補償内容によって大きく変わります。個人・小規模事業者向けのプランでは、年間5,000円前後から加入できるものが増えており、以前は年間1,000円台のプランも存在しましたが、近年は最低保険料が引き上げられる傾向にあります。
⚠️2026年2月から、最低保険料が年間5,000円ほどに値上げするとのことで、動画内で紹介しているものも年間1,000円ほど→年間5,000円ほどに値上がりしました。 出典: startupkitchen-magazine.com
保険料が値上がりする背景には、食品業界全体の賠償トラブルの増加や、保険会社側のリスク評価の見直しがあると考えられます。加入を検討する際は、複数の保険会社・代理店で見積もりを取り、補償範囲と保険料のバランスを比較することが欠かせません。
この記事内の保険料は、以前確認した時点での一例としてご覧ください。実際に加入を検討する際は、必ず保険会社さんや代理店さんに現在の保険料・補償内容を確認してください。 出典: startupkitchen-magazine.com
保険料は年間売上高に応じて段階的に設定されているケースが一般的です。売上が小さいうちは最低保険料に近い金額で加入でき、売上が伸びるにつれて保険料も上がっていく仕組みが多いため、事業が軌道に乗ってから見直すという選択肢も現実的です。加入方法は、大きく分けて次の3パターンがあります。
・保険代理店を通じて個別に契約する ・食品関連の業界団体・組合が提供する共済に加入する ・インターネット完結型のオンライン保険サービスで申し込む
特に近年はWeb完結型のサービスが増えており、必要事項を入力するだけで数分で見積もりから契約まで完了するものも登場しています。開業直後で時間の余裕がない個人事業主にとっては、こうしたオンライン申し込みの利便性は大きなメリットです。
マルシェ出店・イベント販売時の注意点(施設賠償責任保険)
自宅キッチンやEC販売だけでなく、マルシェやフリーマーケット、地域イベントに出店して対面販売を行う場合は、PL保険に加えて施設賠償責任保険の検討も必要になります。施設賠償責任保険は、出店ブースの設営物が倒れて通行人にケガをさせた、テントの重りが飛んで他の出店者の商品を壊したといった「施設の管理不備による事故」を補償するものです。
PL保険が「販売した商品そのものが原因の事故」を対象にするのに対し、施設賠償責任保険は「出店場所・設備の管理に起因する事故」を対象にする点が大きな違いです。マルシェ出店では両方のリスクが同時に発生し得るため、単体のPL保険だけでは不十分なケースがあります。
イベント主催者によっては、出店条件として何らかの保険加入を義務付けている場合もあります。出店申し込みの段階で保険加入の有無を確認されることもあるため、事前に主催者へ問い合わせておくと安心です。また、1日だけの単発イベント向けに、短期契約が可能なPL保険・施設賠償責任保険を提供している保険会社もあります。年間契約を結ぶほどの出店頻度でない場合は、こうした短期プランの活用も選択肢に入ります。
保険加入前にチェックすべきポイント/選び方
数ある保険プランの中から自分に合ったものを選ぶ際、次のポイントを確認しておくと失敗が少なくなります。
補償上限額は十分か
賠償責任保険には保険金の上限(支払限度額)が設定されています。菓子販売のような小規模事業では、対人賠償で1億円程度の上限を設定しているプランが一般的です。食中毒の集団発生など被害者が多数に及ぶケースを想定すると、上限額が低すぎるプランは避けた方が無難です。
免責金額(自己負担額)の設定
保険金請求時に、一定額までは自己負担となる「免責金額」が設定されているプランがあります。免責金額が高いほど保険料は安くなりますが、小さな事故でも自己負担が発生することになります。事業規模や資金繰りに応じて、無理のない免責設定を選ぶことが大切です。
補償対象となる商品カテゴリ
菓子だけでなく惣菜やジャムなども販売している場合、保険の補償対象商品カテゴリに含まれているか必ず確認しましょう。菓子製造業専用のプランでは、想定外のジャンルの商品が補償対象外になっていることがあります。
弁護士費用特約の有無
賠償請求を受けた際、示談交渉や訴訟対応で弁護士に依頼するケースもあります。弁護士費用まで補償されるかどうかは、いざという時の経済的負担に直結するため、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。
一次観察|個人事業主の保険リスクをどう見てきたか
フリーランス・副業人材のマッチングを長く見てきた運営者の立場から言えば、菓子や食品を扱う個人事業主ほど「売上が立ってから保険を考える」傾向が強いという印象があります。開業直後は資金繰りに余裕がなく、保険料を後回しにしたくなる気持ちは理解できますが、食中毒事故は売上規模の大小に関係なく起こり得るリスクです。実際、小規模ながらも継続的に事業を伸ばしている人ほど、開業初期の段階でPL保険への加入を済ませているケースが多く見られます。
長くこの分野を見てきた立場から言えば、保険加入は単なるコスト管理ではなく、事業への信頼性を示すシグナルとしても機能します。マルシェの主催者や卸先の担当者から見て、「保険に加入している事業者かどうか」は取引継続の判断材料になり得るからです。目先の保険料を惜しむよりも、事業を継続させるための必要経費として捉える視点が、長く続けている事業者に共通しています。
菓子販売以外の収入源も考えておく|フリーランスのリスク分散
菓子販売は在庫リスクや食品事故リスクを抱えるビジネスであるため、これ一本に収入を依存するのはリスクが高いという見方もできます。実際に個人で事業を営んでいる人の中には、菓子販売と並行して別の分野の仕事を組み合わせ、収入源を分散させている人も少なくありません。
例えば、AIツールを使った業務効率化の相談に乗るAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、専門知識さえあれば在庫リスクなく始められる分野です。マーケティングやセキュリティの知見を活かすAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、プログラミングスキルを持つ人向けのアプリケーション開発のお仕事なども、菓子販売のような物理的な在庫や食品事故リスクを伴わない仕事として選択肢に入ります。
収入の目安を知りたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場といった職種別の相場データも参考になります。食品事業と組み合わせて、リスクの低い在宅ワークで収入の土台を作っておくという考え方は、個人事業主のリスクマネジメントとして理にかなっています。
保険や労務まわりの知識を体系的に身につけたい場合は、社会保険労務士のような国家資格取得を目指すのも一つの道です。事業のリスク管理に強くなれば、自分自身の保険選びにも活かせます。ITスキルの幅を広げたい人にはCCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク系資格の取得も、副業の選択肢を増やす手段として検討する価値があります。
独自データ考察|PL保険と個人向け保険の位置づけの違い
ここまで見てきたPL保険は、あくまで「事業活動によって他人に与えた損害」に備える保険です。一方で、個人事業主自身の生活を守る保険としては、生命保険や医療保険といった個人向けの保険も別途検討する必要があります。事業のリスクと個人の生活リスクは別物であり、どちらか一方だけでは不十分です。
20代でフリーランスとして活動を始めたばかりの人は、20代の生命保険おすすめ|独身・既婚で変わる選び方を参考に、まず自分に必要な保障の種類を把握しておくとよいでしょう。対面での相談に抵抗がない人ばかりではないため、オンラインで完結する保険を検討したい場合はネット生命保険おすすめ比較|対面型との違いとメリットも参考になります。保険料を抑えつつ死亡保障を確保したい場合は、掛け捨て生命保険おすすめ5選|コスパで選ぶ死亡保障のような掛け捨てタイプの保険情報も役立ちます。
事業のPL保険、施設賠償責任保険、そして個人の生命保険・医療保険。この三層を組み合わせて初めて、個人事業主としてのリスク管理は一通り揃うと言えます。特に菓子や食品を扱う事業者は、他業種に比べて賠償責任リスクが具体的にイメージしやすい分、保険への意識も高まりやすい業態です。逆に言えば、リスクが見えやすいからこそ、後回しにせず早い段階で備えを整えておくことが、長く事業を続けるための土台になります。
私自身、EC運営の支援業務で食品を扱うクライアントの相談を受けたことがあります。ハンドメイドの焼き菓子をオンラインで販売し始めたばかりのブランドで、商品ページの整備や写真撮影のディレクションを手伝う中で、アレルギー表示の項目が抜け落ちていることに気づいた経験があります。デザインや見せ方には力を入れていても、法的な表示義務や保険への意識が追いついていないケースは意外と多いというのが実感です。EC運営を支援する立場としても、こうした表示や保険の抜け漏れは早い段階で指摘しておくべき重要なチェックポイントだと考えています。
菓子や食品の販売は、対面でもオンラインでも「食べ物を扱う」という特性上、他の物販ビジネスにはないリスクが常につきまといます。PL保険や施設賠償責任保険への加入は、そのリスクを可視化し、万が一の事態から事業と生活の両方を守るための、いわば最低限の準備だと捉えておくのが妥当です。
よくある質問
Q. 菓子販売でPL保険に入らないとどうなりますか?
食中毒や異物混入などで顧客に損害を与えた場合、治療費や慰謝料などの賠償責任を全額自己負担で対応する必要があります。金額によっては事業継続が困難になるほどの負担になる可能性があります。
Q. マルシェに1日だけ出店する場合もPL保険は必要ですか?
短期間の出店でも食中毒や事故のリスクはゼロではありません。1日だけ加入できる短期型のPL保険や施設賠償責任保険を提供している保険会社もあるため、単発出店の場合はそうしたプランの活用が現実的です。
Q. PL保険の保険料はどのくらいかかりますか?
個人・小規模事業者向けのプランでは年間5,000円前後から加入できるものが増えていますが、売上規模や補償内容によって変動します。最新の保険料は複数の保険会社や代理店に見積もりを依頼して確認するのが確実です。
Q. 製造物責任法(PL法)とPL保険はどう違いますか?
PL法は製品の欠陥によって他人に損害を与えた場合の法律上の賠償責任を定めた法律です。PL保険は、そのPL法などに基づいて発生した賠償責任を金銭的にカバーするための保険商品であり、法律と保険はセットで理解する必要があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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