トライアルの結果で決まる、映像翻訳・字幕の案件の取り方と単価の交渉


この記事のポイント
- ✓映像翻訳・字幕の案件の取り方は
- ✓応募数ではなくトライアルの結果でほぼ決まります
- ✓トライアルで見られている評価軸
結論から書きます。映像翻訳・字幕の案件の取り方は、応募先を増やすことではなく、トライアルを通すことでほぼ決まります。そして単価は、トライアルの結果で最初の枠が決まり、その後は納品の実績でしか動きません。応募のメールをどれだけ丁寧に書いても、この構造は変わりません。
この分野には、他の在宅系の仕事と決定的に違う点があります。多くのクラウドソーシング案件は、提案文と過去の実績で選ばれます。ところが映像翻訳は、ほぼ例外なく実技試験があり、そこで一定の水準に達していなければ、経歴が立派でも通りません。逆に言えば、実務経験がなくてもトライアルさえ通れば土俵に上がれるということです。
この記事では、どこに応募するか、トライアルで何を見られているか、そして合格後にどのタイミングで単価の話を持ち出せるかを、順に整理していきます。
映像翻訳・字幕の案件は、どこから来ているのか
案件の取り方を考える前に、仕事の流れを把握しておきます。ここを理解していないと、応募先の選択を間違えます。
発注の経路は大きく三つ
第一の経路は、翻訳会社や映像制作会社への登録です。配信事業者や放送局、企業から制作会社に発注が入り、制作会社が字幕制作会社や翻訳会社に振り、そこから登録翻訳者に割り振られる。この経路が、映像翻訳の案件量としては最も大きい部分を占めます。登録の入口が、ほぼ必ずトライアルです。
第二の経路は、クラウドソーシングや業務委託のマッチングサービスです。ここには翻訳会社を通さない直接の依頼が並びます。個人の動画制作者、中小企業のプロモーション映像、海外向けの商品紹介など、規模の小さい案件が中心です。
映像翻訳・出版翻訳・メディア翻訳の仕事・案件一覧ページです。クラウドソーシング・アウトソーシングに強いランサーズでは、映像翻訳・出版翻訳・メディア翻訳の仕事情報の検索から納品、報酬の受け取りまで、すべて完結します。時間や場所にとらわれず、在宅や副業などさまざまな働き方を実現可能です。24時間365日のサポート体制をご用意しています。仕事、業務委託/副業案件、求人をお探しのフリーランスの方はまず会員登録がおすすめです。 出典: lancers.jp
第三の経路は、求人サイト経由の業務委託や在宅の募集です。ここは翻訳者としての募集と、字幕入力やチェックの作業要員としての募集が混在しています。前者は語学力を問われ、後者は基本的なPC操作ができれば入れる。応募前に、どちらなのかを見極める必要があります。
経路ごとに、単価の決まり方が違う
正直なところ、ここを混同したまま「単価が安い」と嘆いている人が多いと感じます。
翻訳会社経由の案件は、単価が会社の規定でほぼ固定されています。トライアルの評価によってランクが割り当てられ、そのランクの単価が適用される。個別の交渉余地は小さいものの、案件が継続的に流れてくるという安定性があります。
直接取引の案件は、逆に単価を自分で決められます。ただし相場観がないまま高く出せば通りませんし、安く出せば買い叩かれます。
実際に海外のクライアントと直接取引した方が、この難しさを率直に書いています。
①海外のクライアントから仕事を2つほどもらいました。単価は自分で決められますが、あまりにも高い 単価を請求したら結局NGを出されていたと思うので、交渉できて1500円くらいまでかなと思いました。素材をポーンと渡され、これを3日後までに日本語訳を付けて返してください、という感じ。字幕のルールや書式、設定などを何も指示してくれず、私が【この設定はこれで、文字数はこうで、タイムコードはこうしたらいいの?】と聞くと、【それでOK!】みたいな適当な感じだったので、納品時にはめっちゃ不安でした…。納品後、特にフィードバックもなにもなく。修正依頼もなかったので、まあ楽でしたが。 出典: note.com
単価を自分で決められる代わりに、仕様も自分で決めなければならない。フィードバックもない。これが直接取引の実像です。品質の基準を自分の中に持っていない段階でこの経路に入ると、成長の材料が得られません。
だからこそ、順番が重要になります。トライアルのある経路で評価を受けて基準を作り、それから直接取引の比率を上げていく。この順で進めた人のほうが、結果として単価が伸びています。
トライアルは何を測っているのか
では、その入口であるトライアルの話に入ります。
語学力の試験ではありません
最初に押さえるべき事実がこれです。映像翻訳のトライアルは、語学力だけを見ていません。
課題として渡されるのは、数分の映像と、場合によっては原語のスクリプト、そして字幕のガイドラインです。提出物は字幕データ。評価されるのは次の点です。
指定されたルールを守れているか。1行あたりの文字数、表示秒数、行数の上限、句読点の扱い。ここを外していると、訳文の質を見る前に落ちます。ルールを守るのは能力ではなく態度の問題だと判断されるからです。
制限の中で意味を落としていないか。話者が話した内容を、限られた文字数に収める。単に短くするのではなく、何を残して何を捨てるかの判断が問われます。ここが映像翻訳固有の技術です。
日本語として読めるか。字幕は一瞬で読まれます。二度読みが必要な語順や、耳慣れない漢語が混ざると減点されます。原文に忠実であることより、視聴者が一度で理解できることが優先されます。
調べ物をしているか。固有名詞、専門用語、作品内の設定。調べれば分かることを想像で訳していると、それだけで落ちます。採点者は、その分野の専門家であることが多く、すぐに見抜かれます。
何回受けるかは、人によって大きく違う
トライアルは一度で通るものだと思っていると、精神的に厳しくなります。実際の記録を見てみます。
ちなみに私(TOEIC950点、英語教育学修士、そのときは留学経験なし)は、7回受験。たっぷり1年かかりました。私よりずっと若くても1回目のトライアルでサクッと合格していた方もいましたし、5年くらいずっと挑戦中、という方もいらっしゃいました。自分が本当に映像翻訳者に向いているかどうかということは、スクールの課題をこなしていく段階で、自分で絶対にわかります。自分の感覚で。 出典: note.com
7回受けて1年。TOEIC950点という数字を持っていてもこうなる。つまり、語学の資格とトライアルの合否は、直接つながっていないということです。
これは落胆する話ではなく、むしろ逆です。語学の到達点で足切りされているわけではないので、字幕固有の作法を身につければ、通る可能性が上がるということになります。
落ちたときに、何を確認するか
トライアルの結果は「不合格」の一言だけで返ってくることが多く、理由は開示されません。ここで手が止まる人が多い。
対処法は二つあります。ひとつは、同じ課題を時間をかけて作り直してみること。締切に追われて出した提出物には、たいてい削り残しと確認漏れがあります。落ち着いて見直すと、自分で気づける欠点がかなりあります。
もうひとつは、別の会社のトライアルを受けること。評価基準は会社ごとに違います。ドキュメンタリーに強い会社、バラエティに強い会社、企業向け映像が中心の会社。求められる文体が違うので、一社で落ちても別の一社で通ることは珍しくありません。
未経験からでも道はある、という点については、業界側もそう説明しています。
多言語のスキルを活かしたいと考えている方にとって、映像翻訳は魅力的な仕事の一つです。未経験からでも、正しいステップを踏めばプロとして活躍できる道が開かれます。 出典: f-cross.com
「正しいステップを踏めば」という条件付きである点は、フェアに読むべきです。順番を飛ばして直接取引から入ると、基準がないまま作業することになります。
トライアル提出までの手順を、型にしておく
受けるたびに手探りだと、毎回同じところでつまずきます。提出までの手順を固定してしまうのが効率的です。
最初にやるのは、ガイドラインを読むことです。映像を見るより先に読む。1行の最大文字数、同時に表示する行数の上限、1秒あたりに表示できる文字数の目安、句読点の扱い、話者交代の示し方、数字と単位の表記。ここで指定されている項目を、チェックリストとして手元に書き出します。
次に、映像を通しで一度見ます。訳しながら見ないでください。全体の流れ、話者の関係、話の落とし所を先につかむ。ここを飛ばすと、前半で決めた訳語が後半で破綻します。
三番目に、聞き取りと下訳を進めます。この段階では文字数を気にせず、意味を落とさずに書く。制限に収める作業は後工程です。最初から短くしようとすると、削ってはいけない情報まで落ちます。
四番目が、尺合わせと圧縮です。字幕の開始点と終了点を決め、制限文字数に収める。ここが映像翻訳の中核で、評価もここに集中します。話者が言った内容のうち、映像から分かる情報は文字にしなくてよい、という判断ができるかどうかが分かれ目になります。
最後に、チェックリストで機械的に照合します。文字数、行数、表記の揺れ、固有名詞の統一。この見直しを、訳文の推敲とは別の作業として独立させてください。同時にやると、どちらも中途半端になります。
提出前に、必ず一度寝かせる
締切ぎりぎりで提出したトライアルは、通りにくいものです。理由は単純で、自分の訳文に慣れてしまい、不自然さに気づけなくなるからです。
半日でも一日でも空けてから読み返すと、二度読みが必要な箇所、耳慣れない漢語、主語がねじれた文が浮かび上がります。これらは採点者が真っ先に見る部分です。
締切から逆算して、見直しの時間を先に確保しておく。この一手間があるかどうかで、合否が変わることは実際にあります。
応募の段階で、案件の質を見分ける
トライアルを受ける前の話に戻ります。どこに応募するかで、その後の数年が変わります。
募集要項から読み取れること
チェックすべき点を挙げます。
業務範囲が明記されているか。字幕翻訳だけなのか、タイムコードの修正や用語集の作成まで含むのか。含まれる工程が多いほど、同じ単価でも実質の報酬は下がります。
対応言語と分野が具体的か。「英日翻訳」とだけ書かれた募集より、「韓日のバラエティとドラマ」のように限定された募集のほうが、実際の案件が流れている可能性が高い。
そして、通訳が混ざっていないか。映像翻訳・字幕・通訳は求人の分類上まとめられがちで、募集の本文に通訳業務が紛れていることがあります。通訳は時間の拘束が発生するため、副業として在宅で受ける場合は条件がまったく変わります。職種ごとの違いは映像翻訳・字幕・通訳のお仕事に整理されているので、応募前に確認しておくと判断が速くなります。
「翻訳者募集」と「字幕入力募集」を混同しない
求人サイトには、字幕関連の作業要員としての募集も多く出ています。
エンタメ関連の在宅データ入力のお仕事です。基本的なPC操作ができれば未経験でも挑戦でき、システム項目に沿った字幕の入力や簡単な問い合わせ対応を行います。高時給1900円から、1日6時間から勤務可能で、短期・日払いもOKです。研修も充実しており、未経験でも安心して始められます。週2日からの勤務で、勤務シフトは自由です。残業はほとんどありません。 出典: 求人ボックス
こうした募集は、字幕のルールを実地で覚える機会として価値があります。ただし、時給や作業量で計算される仕事なので、続けても翻訳者としての単価にはつながりません。両者は別のキャリアだと割り切ったうえで、入口として使うかどうかを決めてください。
応募書類で効くのは、経歴より分野の宣言
提案文や職務経歴に何を書くかについて、ひとつだけ実用的な助言をします。
汎用的な「英語が得意です」より、「この分野なら調べ物が速い」と書いたほうが刺さります。理由は単純で、発注側が困っているのは語学力の不足ではなく、専門分野の訳語が不安定なことだからです。
医療、金融、IT、機械、スポーツ、料理。前職や趣味で詳しい領域があるなら、それを前面に出す。技術系の映像を扱うなら、CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワークの基礎資格を持っていることが、用語の判断力の証明になります。日本語を短く正確に書く力を示したいなら、ビジネス文書検定のような文書作法の学習歴も材料になります。字幕は制限文字数との戦いなので、簡潔に書けることは実務の能力そのものです。
単価の交渉は、いつ、何を材料にするか
ここからが後半の本題です。
最初の案件で交渉しないほうがよい理由
登録直後、初回の案件で単価交渉を持ち出すのは、率直に言って得策ではありません。
発注側から見ると、この時点で持っている情報はトライアルの結果だけです。納期を守るか、修正が少ないか、質問の仕方が的確か。実務での挙動が何も分かっていない相手に、規定より高い単価を出す理由がありません。
逆に、3本から5本ほど納品して、修正がほとんど発生しない状態を作ったあとであれば、話は変わります。発注側にとって、あなたに頼むと確認の手間が減るという実績ができているからです。
交渉の材料になるもの、ならないもの
材料になるのは、相手のコストを下げた証拠です。
修正の回数が少ない。用語集を整えて他の翻訳者も使える形で残した。仕様の曖昧な部分を事前に質問して、後戻りを防いだ。急ぎの案件に対応した実績がある。特定分野の案件を継続して担当している。これらはすべて、あなたに依頼することの経済的な価値を示します。
材料にならないのは、こちらの事情です。生活費が上がった、他の仕事が忙しい、相場より安いと聞いた。どれも相手の判断材料になりません。相場を持ち出すなら、自分の作業内容と紐づけて説明する必要があります。
参考として、文章を扱う職種全体の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。映像翻訳と同一ではありませんが、言葉を扱う仕事の水準感を知っておくと、提示された条件が妥当かを判断しやすくなります。
単価そのものより先に、条件を整える
これは意外と見落とされている点ですが、金額を上げるより、条件を整えるほうが手取りへの影響が大きい場合があります。
修正対応の回数に上限を設ける。無制限に直させられる契約だと、実質の単価は下がり続けます。2回までを標準にし、それ以降は別途という形にできれば、それだけで実収入が変わります。
業務範囲を工程名で確定させる。用語集の作成や、他の翻訳者の原稿チェックが無償で追加されていないか確認します。
急ぎ対応の割増を設定する。通常の納期と、短納期の場合の条件を分けておく。これは相手にとっても発注の判断がしやすくなるので、受け入れられやすい提案です。
支払いの期日を明記する。2024年施行のフリーランス保護新法では、発注事業者は受領日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務を負っています。制度の詳細や相談先は公正取引委員会(https://www.jftc.go.jp/)が案内しています。2026年時点の運用は各窓口で確認してください。
単価の話をする前に、これらの条件を先に整えておくと、金額の交渉そのものが不要になることもあります。同じ1本の報酬でも、修正が無制限の契約と2回までの契約では、実際にかかる時間が倍近く違うことがあるからです。金額は目に見えますが、条件は見えにくい。見えにくいところで削られているぶんを取り戻すほうが、交渉としては通りやすく、相手にとっても納得しやすい提案になります。
交渉を切り出す文面
言い方の型を示しておきます。
「これまで担当した案件では修正がほとんど発生しておらず、用語集も整備してお渡ししています。今後も継続してお受けする前提で、次の案件から単価をご相談させていただけますでしょうか」。
ポイントは三つ。実績を先に置く。継続の意思を示す。要求ではなく相談の形にする。この形なら、断られた場合でも関係が壊れません。
そして、断られたときの引き際も決めておいてください。単価が動かないなら、その取引先は稼働時間の一部にとどめ、空いた時間を別の経路に回す。感情的に切るのではなく、配分を変えるだけです。
合格後、最初の数本で評価が固まる
トライアルに通っても、それは登録されただけです。案件が継続的に回ってくるかどうかは、最初の数本で決まります。
発注側が見ているのは、訳文の質だけではない
登録翻訳者を管理している側の立場で考えると、判断材料は三つあります。
納期を守るか。当たり前のようですが、これが最も重視されます。字幕の後には収録や配信のスケジュールが控えていることが多く、一人の遅れが全体を止めます。遅れそうなときに早く連絡できるかどうかも含めて見られています。
修正の手間がどれくらいか。チェッカーが直す量が多い翻訳者は、単価が安くても総コストが高くなります。逆に、ほとんど直しが入らない翻訳者は、多少単価が高くても発注が続きます。
質問の仕方が的確か。質問が少なすぎる人は、分からないまま進めている疑いを持たれます。多すぎる人は、手間がかかると判断されます。理想は、疑問点をまとめて一度に投げ、こちらの判断案を添えることです。「この用語はAとBの訳が考えられますが、作品全体のトーンからAを採用しました。ご指定があればお知らせください」という形にすると、相手は確認するだけで済みます。
初回で必ず確認しておくこと
初めて受ける取引先では、作業を始める前に次を確認してください。
納品形式。ファイル形式、文字コード、フレームレート、ファイル名の付け方。ここが違うと、内容が良くても差し戻されます。
参照資料の有無。過去作の字幕、用語集、登場人物の表記一覧。あるのに聞かずに進めると、表記が全部ずれます。
修正のやり取りの流れ。誰がチェックし、いつ頃連絡が来るのか。これを知っておくと、自分の予定が組みやすくなります。
こうした確認を最初にまとめて済ませておくと、二本目以降の立ち上がりが速くなります。そして立ち上がりの速さが、そのまま実質の時給に効いてきます。
案件の幅を広げるという選択肢
単価の交渉と並行して考えたいのが、隣接領域への展開です。
映像翻訳だけで稼働を埋めようとすると、繁閑の波を受けます。配信作品の納品が集中する時期と、依頼が細る時期の差が大きい。同じ在宅で完結する仕事を一つ持っておくと、この波を吸収できます。
映像制作の周辺で言えば、作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事は同じクライアントから発注が出ることもある領域です。あるいは、翻訳の技術をコンテンツの多言語対応に展開して、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事の領域に接続する道もあります。翻訳を単体の作業ではなく、コンテンツを別の市場に届ける工程として位置づけると、提案できる幅が広がります。
在宅の仕事全般で通用する資格を先に押さえておくのも有効です。在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるには、自宅で完結する職種と相性のいい資格が並んでいます。作業環境の面では、映像ファイルの扱いが回線速度に左右されるため、在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方も先に確認しておくと無駄がありません。作業のリズムをどう作るかで納期の余裕が変わるので、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックも参考になります。
この市場を見てきた側からの観察
在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、案件の取り方について二つ書いておきます。
ひとつは、案件を継続的に得ている人ほど、応募の回数が少ないという事実です。新規の応募を繰り返すより、一度つながった取引先との関係を深めることに時間を使っている。理由は明確で、発注側にとって新しい相手に頼むコストが高いからです。仕様の説明、品質の確認、やり取りの往復。この手間を省ける相手には、多少単価が高くても発注が続きます。「この人に任せると楽だ」という状態を作ることが、実質的な営業になっています。
もうひとつは、手取りの構造です。映像翻訳・字幕は、配信事業者から制作会社、制作会社から翻訳会社、翻訳会社から個人へと流れる過程で、各段階にマージンが乗ります。同じ予算でも、間に入る数が減れば、依頼側はより多くの本数を頼めるし、受け手の手取りは厚くなる。手数料0%の直接取引が持つ価値は、金額の高さではなく、同じ仕事から残る額が変わるという構造にあります。運営者として見てきた限りでは、単価が伸びている人は、トライアル経由で基準を作ったあと、直接取引の比率を少しずつ上げています。順序を逆にすると、基準のないまま安値で固定されてしまう。取る順番が、そのまま単価の上限を決めています。
よくある質問
Q. 映像翻訳・字幕のトライアルでは何が評価されますか?
語学力だけでなく、指定されたガイドラインを守れているか、限られた文字数で意味を落としていないか、一度で読める日本語になっているか、固有名詞や専門用語を調べているかが見られます。ルールを外していると訳文の質を見る前に落とされるため、まず仕様の順守を優先してください。
Q. トライアルは何回くらい受けることになりますか?
人によって大きく異なります。1回で合格する人もいれば、1年かけて7回受けたという記録もあります。語学の資格の点数と合否は直結しません。評価基準は会社ごとに違うので、一社で落ちても別の会社を受ける価値があります。
Q. 単価の交渉はいつ持ち出せばよいですか?
初回の案件では避けたほうが無難です。発注側はトライアルの結果しか情報を持っていないためです。3本から5本ほど納品して修正がほとんど出ない状態を作り、継続の意思を示したうえで相談する形にすると受け入れられやすくなります。
Q. クラウドソーシングの直接案件から始めてもよいですか?
始められますが、仕様の指定がなくフィードバックも得られないことが多く、品質の基準が自分の中にない段階では成長の材料が得られません。トライアルのある経路で評価を受けて基準を作り、その後に直接取引の比率を上げる順番が現実的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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