マッサージを副業にする|必要な資格と働き方の選び方


この記事のポイント
- ✓マッサージ副業を考えている方へ
- ✓国家資格と民間資格の違い
- ✓資格がなくてもできる範囲の線引き
「人の体をほぐすのが好きで、それを副業にできないかと思っているんです」。こういうご相談、本当によくあります。マッサージ副業を考えている方の多くは、まず資格のことで立ち止まります。国家資格が必要なのか、民間の講座で足りるのか、そもそも無資格で人に触れていいのか。この記事では、その線引きを最初に整理してから、働き方の選び方、収入の目安、開業のときに必要な手続き、そして体を痛めずに続けるための工夫まで順にお話しします。大丈夫ですよ。順番に見ていけば、自分に合う形が見えてきます。
最初に押さえたいこと。名乗れる言葉は資格で決まります
いちばん大事な話を先にします。
「マッサージ」という言葉を使って仕事をするには、国家資格が必要です。根拠は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」です。この法律は、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを業として行う人は、厚生労働大臣の免許を受けなければならないと定めています。
つまり、免許を持たない人が「マッサージ師です」と名乗って施術を仕事にすることはできません。看板やチラシ、予約サイトの説明文に「マッサージ」と書くこともできません。ここを知らずに始めてしまう方が、実はとても多いんです。
では、街にあるリラクゼーションサロンやもみほぐしのお店はどうなっているのか。あそこで働いている方が全員国家資格を持っているわけではありません。多くのお店は「リラクゼーション」「もみほぐし」「ボディケア」「トリートメント」といった言葉を使い、医療的な効果をうたわない形で営業しています。名称と説明の仕方を分けることで、法律の枠の中に収めているわけです。
ただ、言葉を変えれば何でもできるという話ではありません。同じ法律には、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務を禁じる趣旨の規定があります。骨をならすような強い刺激、痛みのある部位への無理な圧、体調がすぐれない方への施術。こうしたものは、言葉の選び方とは別の問題として避けるべきです。
制度の詳しい内容は厚生労働省の案内で確認できます。※開業や広告の表現について迷ったときは、必ずお住まいの地域の保健所に確認してください。地域によって運用の細かさが違うことがあります。
国家資格と民間資格は、目的が違います
資格を2つに分けて整理します。
国家資格は3つあります。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師。それぞれ養成施設で学び、国家試験に合格して免許を受ける形です。ほかに柔道整復師という資格もあります。
国家資格の道は、時間と費用がかかります。養成施設には3年以上通う必要があり、学費は学校によって幅がありますが、総額で300万円を超えることが一般的です。副業として始めるためにこの道を選ぶ方は、あまりいません。将来の本業として考えている方の選択肢になります。
民間資格は、団体や学校が独自に認定するものです。リンパケア、アロマトリートメント、リフレクソロジー、ボディケア、整体系の講座などがあります。学ぶ期間は数か月から1年程度、費用は数万円から30万円台まで、内容によって大きく変わります。
ここで誤解を解いておきます。民間資格は、それを持っていれば「マッサージ」と名乗れるようになるものではありません。民間資格の役割は2つです。1つは、技術と知識を体系的に学べること。もう1つは、お客様やお店に対して「学んだ」ことを示せることです。
副業としてお店に勤める場合、採用の条件に民間資格が必須とされるケースはそれほど多くありません。研修を用意しているお店もあります。それでも学ぶ価値があるのは、体の構造を理解しないまま施術すると、自分の手首や腰を痛めるからです。相手を傷つけない知識と、自分を守る知識。この2つのために学ぶと考えると、納得しやすいと思います。
在宅でできる仕事の資格と比べて検討したい方は在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるも見てみてください。体を使う仕事と、パソコンで完結する仕事では、続け方がまったく違います。両方を並べて見ると、自分に合うほうが見えてきます。
資格がなくても始められる範囲
では、今すぐ始められる範囲はどこまでか。3つに分けます。
第1に、お店に勤めて研修を受けながら施術する形です。リラクゼーションのお店では、未経験から入れる募集が出ています。実際の募集の様子は、こう紹介されています。
整体院やリラクゼーションサロンなどの店舗で働く場合、求人サイトや企業のサイトで募集情報を探してみましょう。「未経験OK」や「週1からの勤務OK」、「研修制度あり」といった求人もあるため、初めてマッサージの仕事をする場合も、副業として始めやすいです。 出典: brush-up.jp
週1日から入れるお店があるのは、副業として現実的です。研修で型を教えてもらえるので、自己流の癖がつきません。最初の一歩としては、いちばん安全だと思います。
第2に、自分で小さくサロンを始める形です。自宅の一室、レンタルサロン、貸しスペース。この場合、施術の内容と名称に気をつけながら、自分で料金と時間を決められます。自由度は高いのですが、集客を自分でやる必要があります。
第3に、施術を伴わない形です。セルフケアの指導、ストレッチの伝え方、姿勢のアドバイス。オンラインで行う場合、体に直接触れないので、施術とは別の枠になります。ただし「治る」「効果がある」といった医療的な表現は避けてください。表現の線引きは、思っているより厳しく見られます。
線引きの原則は、シンプルです。医療的な効果をうたわない。強い刺激を与えない。体調の不安がある方には施術しない。この3つを守れる範囲が、資格がない状態で動ける範囲です。
働き方は4つ。それぞれの向き不向き
副業としての形を4つに分けて比べます。
お店に勤める
時給または歩合で働きます。時給の目安は1,100円から1,500円程度、指名が入ると歩合が加わるお店もあります。集客をお店がやってくれるので、施術だけに集中できます。副業で始めるなら、最初はここが無理がありません。
向いているのは、まず技術を身につけたい方。向いていないのは、平日の夜や週末の時間が読めない方です。シフトを入れた日は動かせません。
自宅サロン
自宅の一室を使って施術します。家賃が増えないので、料金の設定に余裕が生まれます。60分で3,000円から6,000円あたりが個人サロンの目安になります。
気をつけたいのは3つ。家族の生活と時間が重なること、住所を公開する不安があること、そして集合住宅では規約で商用利用が制限されている場合があることです。始める前に、賃貸契約や管理規約を確かめてください。
出張・訪問
お客様のところへ伺う形です。場所を借りる費用がかからない代わりに、移動時間が発生します。60分の施術に移動が往復60分かかるなら、実際には2時間の仕事です。料金を決めるときは、この時間を入れて考えてください。
また、一人で知らない場所へ伺う形は、安全面の配慮が必要です。初回は公共の施設や貸しスペースを使う、紹介のある方から受ける、といった工夫をしている方が多いです。
オンラインでのセルフケア指導
画面越しに、ストレッチや姿勢の整え方を伝える形です。体に触れないので施術とは別の枠になり、場所も選びません。副業として時間の融通がいちばん利きます。
必要になるのは、安定した通信環境です。映像が止まると指導になりません。回線の選び方は在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方に整理されているので、契約の前に目を通しておくと失敗が減ります。
収入は「1時間あたり」で考えてください
金額の話をします。ここを感覚で決めると、あとで苦しくなります。
考え方は1つだけ。料金を、拘束される全部の時間で割ることです。
たとえば60分の施術を5,000円で受けたとします。ここに、準備と片づけで20分、予約のやりとりで10分が加わると、実際の拘束は90分です。1時間あたりは3,300円台になります。
出張ならここに移動が乗ります。往復60分なら、拘束は150分。1時間あたりは2,000円になります。同じ5,000円でも、残るものがずいぶん違います。
もう1つ、体力の上限も計算に入れてください。この仕事は、時間を増やせば収入が増える構造に見えますが、実際には手と腕と腰の限界が先に来ます。1日に受けられるのは3件から4件までという方が多いです。本業がある副業なら、週末に2件から3件が現実的なところだと思います。
だから、施術の件数だけで収入を伸ばす設計にしないほうがいいんです。単価を上げる、指名で戻ってきてもらう、セルフケアの指導を組み合わせる。この3つを混ぜるほうが、体を壊さずに続きます。
1年続けたとき、手元にいくら残るかを出しておく
1時間あたりで考える話を、そのまま1年に伸ばしてみます。税を引いたあとの数字まで出しておくと、続ける形を決めやすくなります。
売上と経費を並べる
自宅の一室で、60分5,000円の施術を週末に月8件受ける形を置きます。売上は月40,000円、年480,000円です。
出ていくものも具体的に置きます。施術ベッドが39,800円、オイルとタオルなどの消耗品が年36,000円、賠償責任保険料が年6,000円、予約サイト経由の手数料が年18,000円、水道光熱費のうち施術に使った分の按分が年12,000円。合計111,800円です。売上から引くと、所得は368,200円になります。
税を引いたあとに残る額
給与を1か所から受けて年末調整を受けている方の場合、給与以外の所得が20万円を超えるので確定申告が必要です。所得税の速算表で、課税される所得金額が1,950,000円から3,299,000円までの帯にいる方なら税率は10%です(国税庁タックスアンサーNo.2260、令和8年4月1日現在法令等)。所得税が約36,800円、そこに復興特別所得税が基準所得税額の2.1%で乗り、住民税がおおむね10%で約36,800円。合わせておよそ7万4千円が出ていき、残るのは約29万4千円、月あたり約24,500円になります。
この数字を拘束時間で割ると、見え方がはっきりします。1件の拘束が準備と片づけを入れて90分なら、月8件で12時間、年144時間です。294,000円を144で割ると、時間あたり約2,040円。5,000円という料金の数字とは、ずいぶん違う景色になります。
落ち込む数字ではありません。ここが分かっていれば、どこを動かせば変わるかも分かります。移動のない自宅サロンにする、準備の時間を短くする、手数料のかからない経路で予約を受ける。手数料0%で直接やりとりできる場に意味があるのは、こういう細い差が1年分積み上がるからです。どの税率の帯に入るかは本業の給与と所得控除で変わるので、自分の源泉徴収票を当てはめて確かめてください。税額そのものの判断が必要なときは税務署に相談します。
未経験から始める5つの手順
順番にお話しします。
第1に、自分が「誰の何を楽にしたいのか」を決めます。デスクワークの肩と首、立ち仕事の脚、育児中の腰、運動後のケア。決めると、学ぶ内容も、伝える言葉も絞れます。何でもできますという入り方は、実は選ばれにくいです。
第2に、受けに行きます。自分が受けたことのない施術は、人に提供できません。3軒ほど違うお店で受けて、説明の仕方、力の入れ方、会話の量を観察してください。学びとしていちばん安く、いちばん濃い時間です。
第3に、学ぶ場を決めます。お店の研修を使うか、講座に通うか。副業として試したい段階なら、お店の研修から入るほうが金銭的な負担が小さいです。
第4に、練習の相手を作ります。家族や友人に協力してもらい、10回ほど同じ流れを繰り返します。ここで手順を体に入れておくと、最初のお客様の前で慌てません。
第5に、小さく始めます。いきなりお店を借りたり、機材を揃えたりしないでください。週1日のシフト、レンタルサロンの1回利用、知り合いからの1件。回収できる規模から始めれば、合わなかったときに引き返せます。
予約のやりとりや案内文の書き方で迷う方も多いです。お客様に送る確認の文面や、料金とキャンセルの説明は、型を持っておくと落ち着いて対応できます。文書の基本的な整え方はビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。個人で仕事を受けると、施術以外のやりとりが意外と多いんです。
開業するときの手続きと、忘れがちな保険
自分で始める場合の手続きを整理します。
まず、国家資格を持つ方が施術所を開く場合は、法律で定められた開設の届出が必要です。出張のみで業務を行う場合も届出が求められます。いずれも保健所が窓口になります。
国家資格を持たずにリラクゼーションのサロンを開く場合、この届出の対象にはなりません。ただ、地域によって指導の運用が違うことがあるので、開業の前に一度保健所へ相談しておくと安心です。「聞いてから始める」が、いちばん安全な順番です。
税金の面では、事業として継続的に行うなら開業の届出を出す形が基本になります。給与所得のある方が副業で得た所得が年20万円を超える場合は確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要になるため、売上と経費の記録は最初から残してください。要件は国税庁の案内が一次情報になります。
そして、忘れられがちなのが保険です。施術中にお客様が体調を崩した、備品を壊した、施術後に痛みが出たと言われた。こうした場合に備える賠償責任保険があります。団体や協会が会員向けに用意しているものもあります。副業だから要らない、ということはありません。むしろ、件数が少ないうちほど1件のトラブルの影響が大きいので、先に入っておくほうが落ち着いて仕事ができます。
順番として、税金より先に勤務先の就業規則を確かめてください。副業の届出が必要な会社は少なくありません。あとから問題になるほうが、はるかに面倒です。
事業として届け出るか、雑所得のままにするか
税務署に出す書類の話を、もう少し具体的にします。ここは迷う方が多いところです。
開業の届出と青色申告の申請には別の期限がある
個人事業の開廃業等届出書の提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです。青色申告の承認を受けたい場合は別に申請が要り、原則はその年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始等の日から2か月以内です。2つは別の書類で、期限も別に走ります。まとめて出すつもりでいると、青色申告のほうだけ間に合わないことがあります。期限の一覧は国税庁タックスアンサーNo.2090にあります。
青色申告には控除があります。青色申告特別控除は、所得金額から55万円、一定の要件を満たす場合は65万円、または10万円を控除する仕組みです。55万円の控除を受けるには、事業所得などを生ずべき事業を営んでいること、取引を正規の簿記の原則により記帳していること、その記帳に基づく貸借対照表と損益計算書などを確定申告書に添付して期限内に提出することが要件です。65万円になるのは、これに加えて仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存を行っているか、確定申告書と貸借対照表などを期限までにe-Taxで送信した場合です。要件に届かない青色申告者は10万円の控除になります。
先ほどの所得368,200円の例でいえば、55万円の控除が使える状態なら、そもそも課税される所得が残りません。ただし、副業で月8件という規模で事業所得として扱えるかどうかは、帳簿の備え付けや継続の程度を含めて判断されます。自分で決めきらず、税務署に事情を話して確かめてください。
雑所得のままだと何が違うか
事業として届け出ずに雑所得として申告する場合、青色申告特別控除は使えません。加えて、雑所得の計算上生じた損失は他の所得と損益通算できません。施術ベッドや講座の費用が先に出て初年度が赤字になっても、給与から引かれた所得税が戻る形にはならないということです。
経費として並べる科目
科目を決めておくと、毎年の作業が写すだけになります。消耗品費としてオイル、タオル、使い捨てのシーツ。支払手数料として予約サイトの手数料。保険料として賠償責任保険。地代家賃としてレンタルサロンの利用料。旅費交通費として出張の移動費。水道光熱費と通信費は按分します。
按分できるのは、家事上の経費に関連する費用のうち、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合の、その部分に相当する金額です。自宅の一室を使うなら、使っている面積の割合や、施術に使った時間の割合で数えます。数え方を先に決めて1年通すことが大事で、年の途中で割合を変えると説明が崩れます。
体と心を守りながら続けるために
ここは、カウンセリングの現場で何度も話してきたことです。
この仕事を始めた方が最初に痛めるのは、手首と親指です。力で押そうとすると、指先に全部かかります。体重を乗せる、肘を使う、腕の重さを落とす。この3つを教わる前に親指を痛めて、2週間ほど練習を休むことになった方もいます。技術の問題ではなく、体の使い方の問題でした。
それから、心の負担のことも。人の体に触れる仕事は、相手の話をたくさん聞くことになります。悩みや疲れを抱えた方が来られるからです。聞いているうちに、こちらが重くなることがあります。
こういうご相談も、よくあります。「お客様の話を引き受けすぎて、帰ってから疲れて動けない」と。
これは優しさの問題ではなくて、距離の取り方の問題です。相手の話を受け止めることと、相手の感情を持ち帰ることは別のことなんです。施術が終わったら、手を洗う、外の空気を吸う、短いメモに書き出して置いていく。こういう小さな区切りをひとつ作るだけで、持ち帰る量がずいぶん減ります。
もうひとつ。副業でこの仕事をする方は、本業の疲れの上に施術を重ねることになります。予約を詰めたい気持ちは分かりますが、1日3件までにしておく、施術の間に30分空ける、といった線を先に引いておいてください。あなたの体は、道具ではなく資本です。
集中と休息のつくり方については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックも参考になります。パソコン作業向けの内容ですが、休みを工程として組み込む考え方は共通しています。
集客のこと。ここでつまずく方がいちばん多い
自分で始める形を選んだ場合、いちばんの壁は技術ではなく集客です。
現実的な経路は3つです。1つめは、紹介です。最初のお客様は、ほぼ知り合いか、その知り合いです。2つめは、予約サイトへの掲載です。手数料がかかりますが、探している人に届きます。3つめは、自分で発信する形です。
3つめについて、ひとつだけお伝えしたいことがあります。毎日投稿しなくていいです。続かない方法は、続かないので意味がありません。それより、伝える相手を1人に決めて、その人に向けた説明を丁寧に書くほうが届きます。「デスクワークで夕方に肩が上がらなくなる方へ」という書き方のほうが、「肩こり改善します」より強いです。
集客の仕組みそのものを学んで、別の在宅の仕事として請ける道もあります。どんな仕事があるかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で分野別に並んでいます。施術と集客の支援を組み合わせている方も、実際にいらっしゃいます。
なお、広告の表現には注意してください。「治る」「必ず改善」「医師も推奨」といった書き方は、根拠がなければ書けません。誠実な言葉のほうが、長く読まれます。
料金の見せ方についても一言だけ。安くすれば人が来る、という考え方は、この仕事ではあまり効きません。60分2,000円にすると、たしかに予約は入りますが、1日に4件受けても手元に残るのは8,000円で、体は相応に消耗します。しかも、安さで来た方は、より安い場所が見つかれば移っていきます。
それよりも、時間を短く区切ったお試しの枠を用意するほうが、負担が少なく伝わります。30分の枠を作り、そこで体の状態を見て、必要なケアを伝える。この形なら、初めての方も入りやすく、こちらの消耗も小さく済みます。予約の管理は、無料で使える予約ツールで十分です。最初から有料の仕組みを入れる必要はありません。
勘違いしやすい5つ
ご相談のなかで繰り返し出てくる思い違いを、まとめて置いておきます。
第1に、民間資格を取れば「マッサージ」と名乗れるようになる、という思い違いです。名乗れるかどうかを決めるのは国家資格の有無で、民間資格を重ねても変わりません。民間資格は技術を学び、学んだことを示すためのものです。
第2に、言葉を言い換えれば何をしてもいい、という思い違いです。名称を「もみほぐし」にしても、骨をならすような強い刺激や、痛みのある部位への無理な圧が許されるわけではありません。名称の問題と、行為の問題は別に見られます。
第3に、無資格で始めるなら保健所は関係ない、という思い違いです。届出の対象にならない場合でも、広告の表現や施術の範囲について運用が地域で違うことがあります。始める前に一度相談しておくと、あとで直す手間がなくなります。
第4に、20万円以下なら何もしなくていい、という思い違いです。給与以外の所得が20万円以下のときに要らないのは所得税の確定申告書の提出で、住民税の申告は原則として別に必要です。売上と経費の記録は、金額の大小にかかわらず最初の月から残してください。
第5に、赤字なら税金が戻る、という思い違いです。雑所得として申告する場合、その損失は他の所得と損益通算できません。初年度に道具をそろえて赤字になっても、給与の所得税が戻る仕組みにはなっていません。道具は、売上の見通しが立ってから増やすほうが安全です。
どれも、金額や働き方によって結論が変わる部分があります。自分の場合にどうなるかは、税のことは税務署、施術と広告のことは保健所、勤務との兼ね合いは勤務先に確かめてください。
向いている方と、無理が出やすい方
相談を受けていて、はっきり分かれると感じるところをお話しします。優劣の話ではありません。合う形が違うだけです。
向いているのは、まず人の話を聞くのが苦にならない方です。この仕事は、施術の時間の半分が会話になることがあります。黙っていてほしいお客様もいらっしゃいますが、その見分けも含めて、相手に合わせることを面白いと感じられる方は続きます。
次に、同じ手順を繰り返すことが平気な方です。施術の流れは基本的に毎回同じです。毎回違う刺激を求める方には、退屈に感じられるかもしれません。
そして、体のことを学ぶのが好きな方。筋肉の名前、関節の動き、姿勢と痛みの関係。ここに興味が持てると、技術の伸び方が変わります。
無理が出やすいのは、本業がすでに体力の限界まで来ている方です。立ち仕事や介護のお仕事をされている方が、休日にさらに体を使う副業を重ねると、どちらも続かなくなります。こういうご相談も実際にあります。そういうときは、施術ではなくオンラインでのセルフケア指導から入る形をお伝えしています。伝える仕事なら、体の消耗が少ないからです。
もう1つ、断るのが苦手な方も気をつけてください。予約を詰められたとき、時間を延ばしてほしいと言われたとき、料金を下げてほしいと言われたとき。ここで毎回引き受けてしまうと、続けるほど疲れが溜まります。料金とキャンセルの規定を紙にしておくと、断る場面で自分を守れます。人柄で断るのではなく、決めごとで断る。この形にしておくと、気持ちの負担がずっと軽くなります。
在宅ワーク市場のデータから見える、続く方の共通点
在宅や副業の仕事を仲介する場を長く運営してきた立場から見ると、体を使う仕事も、パソコンで完結する仕事も、続く方の共通点は同じでした。
技術の高さではないんです。共通していたのは、次に来てもらう工夫を淡々と続けていたことです。施術の最後に、自宅でできるケアを1つだけ伝える。次に会うまでに気をつける姿勢を紙に書いて渡す。前回どこが辛かったかを覚えておいて、今回はそこから聞く。この3つでした。
20年この市場を見てきた立場から言えば、長く続く方ほど、1回ごとの作業ではなく「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。新しいお客様を探し続ける働き方は、いつまでも初対面の説明から始めることになります。戻ってきてくださる方が10人いれば、集客にかける時間はぐっと減ります。
手取りの構造にも少し触れます。仲介の手数料が乗る形では、お客様が払った10万円のうち、施術する側に届くのは8万円台になることがあります。中間のマージンが乗らない直接のやりとりでは、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。どちらかが損をする話ではなく、両方が得をする構造です。手数料0%でやりとりできる場に意味があるのは、金額の大小ではなく、同じ時間から何が残るかという質の違いにあります。運営者として見てきた限りでは、最初は紹介や掲載で人に出会い、関係ができたら直接のやりとりに移す方が、無理なく続いています。
最後に。マッサージ副業は、資格の線引きを知り、体を守る使い方を覚え、小さく始めれば、長く続けられる仕事です。焦らなくて大丈夫です。今日できることは、自分が誰を楽にしたいのかを決めて、一度どこかで施術を受けてみることだけです。そこから始めてください。
よくある質問
Q. 資格がなくてもマッサージの副業はできますか?
「マッサージ」と名乗って業として行うには国家資格が必要です。ただしリラクゼーションやボディケアとして、医療的な効果をうたわず、強い刺激を与えない範囲であれば、無資格でも働けるお店の募集があります。名称と説明の仕方に線引きがあるので、開業や広告の表現は事前に保健所へ確認してください。
Q. 国家資格と民間資格はどう違いますか?
あん摩マッサージ指圧師などの国家資格は養成施設に3年以上通い、学費は総額で300万円を超えることが一般的です。民間資格は数か月から1年、費用は数万円から30万円台が目安で、技術を体系的に学ぶためのものです。民間資格を取っても「マッサージ」と名乗れるようになるわけではありません。
Q. 収入はどのくらいが目安ですか?
店舗勤務なら時給1,100円から1,500円程度に歩合が加わる形、個人のサロンなら60分3,000円から6,000円あたりが目安です。ただし準備や移動を含めた拘束時間で割って考えてください。体力の上限があるため、副業なら週末に2件から3件が現実的な範囲になります。
Q. 開業するときに必要な手続きは何ですか?
国家資格を持つ方が施術所を開く場合や出張のみで業務を行う場合は、保健所への届出が必要です。無資格でリラクゼーションのサロンを開く場合は対象外ですが、運用が地域で異なるため事前相談をおすすめします。加えて、開業の届出と賠償責任保険の加入、勤務先の就業規則の確認も忘れないでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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