フリーランスの小規模企業共済|節税しながら退職金を作る方法


この記事のポイント
- ✓フリーランスの退職金制度「小規模企業共済」を徹底解説
- ✓掛金の全額所得控除による節税効果
- ✓加入条件から申込方法まで
「フリーランスには退職金がない」
これは半分正解で、半分不正解です。たしかに会社員のように自動的に退職金が積み立てられる仕組みはありません。しかし、自分で「退職金制度」を作る方法があります。それが小規模企業共済です。
会計事務所で10年間、数百人のフリーランスの確定申告を見てきた中で、私は「加入しない理由が見当たらない」と断言できるほど優れた制度だと感じています。
小規模企業共済とは
制度の概要
小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模事業者のための積立式退職金制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営元 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 |
| 対象者 | 個人事業主、小規模企業の経営者 |
| 掛金 | 月額1,000円〜70,000円(500円単位) |
| 税制優遇 | 掛金全額が所得控除 |
| 受取方法 | 一括・分割・併用から選択 |
フリーランスが加入できる条件
- 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)
- 個人事業主本人、または共同経営者(2人まで)
ほとんどの一人親方やフリーランスが該当します。副業フリーランスの場合、開業届を提出していれば加入可能です。
節税効果のシミュレーション
掛金別の年間節税額
小規模企業共済の最大のメリットは、掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除されることです。生命保険料控除のような上限はありません。
| 月額掛金 | 年間掛金 | 課税所得400万円の場合の節税額 | 課税所得700万円の場合の節税額 |
|---|---|---|---|
| 10,000円 | 120,000円 | 約36,000円 | 約40,000円 |
| 30,000円 | 360,000円 | 約109,000円 | 約120,000円 |
| 50,000円 | 600,000円 | 約182,000円 | 約200,000円 |
| 70,000円 | 840,000円 | 約255,000円 | 約280,000円 |
※所得税+住民税の合計。復興特別所得税は含まず。
20年間積み立てた場合のトータル効果
月額30,000円を20年間積み立てた場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 積立総額 | 7,200,000円 |
| 20年間の節税効果(課税所得400万円の場合) | 約2,180,000円 |
| 共済金の受取額(共済金A) | 約8,370,000円 |
| 実質リターン | 積立額 + 節税額 + 運用益 = 約3,350,000円のプラス |
これは「ノーリスクで年利換算3〜4%のリターン」を得ているのと同等です。私が200名以上のフリーランスの方にこの制度をお伝えすると、ほぼ全員が「なぜ今まで知らなかったんだろう」とおっしゃいます。
受取時の税制優遇
一括受取の場合
一括で受け取ると「退職所得」として扱われます。退職所得は分離課税で、しかも退職所得控除があるため、受取時の税負担も大幅に軽減されます。
| 積立年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 積立年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(積立年数 − 20年) |
例:20年積立、一括受取8,370,000円の場合
- 退職所得控除:40万円 × 20年 = 800万円
- 課税退職所得:(837万円 − 800万円)× 1/2 = 18.5万円
- 税額:約28,000円
837万円受け取って、税金はわずか約28,000円。これが退職所得の威力です。
分割受取の場合
分割で受け取ると「公的年金等の雑所得」として扱われます。国民年金と合算して公的年金等控除が適用されるため、こちらも税制優遇があります。
掛金の増減・前納
柔軟な掛金設定
フリーランスは収入が不安定なこともあります。小規模企業共済は掛金の変更が可能です。
| 操作 | 条件 |
|---|---|
| 増額 | いつでも可能(翌月から反映) |
| 減額 | いつでも可能(翌月から反映) |
| 前納 | 1年分まで前納可能。前納分も当年の所得控除に算入 |
| 掛止め | 災害・疾病等の場合のみ |
年末の節税テクニック
12月に年払い(前納)することで、まとめて1年分を当年の所得控除にできます。たとえば、12月に月額70,000円の12カ月分=840,000円を一括前納すれば、その年の確定申告で全額控除されます。
※掛金は口座振替です。年払いの場合も事前の申請が必要ですのでご注意ください。
注意点とデメリット
元本割れのリスク
| 解約事由 | 受取金額 |
|---|---|
| 事業廃止(共済金A) | 元本以上 |
| 65歳以上(共済金B) | 元本以上 |
| 任意解約(12カ月未満) | 掛捨て(0円) |
| 任意解約(12カ月以上、240カ月未満) | 元本割れ |
| 任意解約(240カ月以上) | 元本相当額 |
加入後20年(240カ月)未満で任意解約すると元本割れします。長期的に継続できる掛金設定が重要です。無理のない金額から始めて、収入が安定したら増額するのが賢いやり方です。
貸付制度の活用
急な資金需要があっても、解約せずに共済の掛金を担保にした貸付制度を利用できます。利率は年0.9〜1.5%程度で、金融機関のビジネスローンより大幅に低金利です。
加入手続きの流れ
- 中小機構のWebサイトまたは金融機関の窓口で加入申込書を入手
- 必要書類(確定申告書の控え、開業届の控え等)を準備
- 金融機関の窓口で申込み
- 審査後、掛金の口座振替開始(約40日後)
※加入手続きはオンラインでも可能です。マイナンバーカードがあれば、中小機構のWebサイトから申込みできます。
iDeCoとの使い分け
フリーランスの老後資金対策として、iDeCo(個人型確定拠出年金)もよく比較されます。
| 項目 | 小規模企業共済 | iDeCo |
|---|---|---|
| 所得控除 | 全額控除 | 全額控除 |
| 月額上限 | 70,000円 | 68,000円 |
| 運用リスク | なし(予定利率で運用) | あり(自己運用) |
| 受取可能時期 | 事業廃止時・65歳以上 | 原則60歳以降 |
| 途中引出し | 貸付制度あり | 原則不可 |
両方に加入すれば、月額最大138,000円(年間1,656,000円)の所得控除が可能です。余裕がある方は併用をおすすめします。
まとめ
小規模企業共済は、フリーランスにとって「節税」と「老後資金の準備」を同時に実現できる数少ない制度です。まずは月額1,000円からでも始められますので、加入を検討してみてください。
※この記事は2026年3月時点の制度情報に基づいています。掛金の控除や受取時の税制は変更される場合がありますので、最新情報は中小機構または税理士にご確認ください。
→ フリーランスの節税テクニック → フリーランスの年金を詳しく知る → フリーランスの税金ガイド
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この記事を書いた人
織田 莉子
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。











