歯科医院の志望動機をどう書くか|ここを選んだ理由の組み立て方


この記事のポイント
- ✓医院の中で実際に起きていることから組み立てる方法を解説します
- ✓医院のタイプで変わる仕事
- ✓この医院を選んだ理由の見つけ方
結論から書きます。歯科医院の志望動機で差がつくのは、「歯科の仕事に興味がある理由」ではなく、「なぜ、この歯科医院なのか」を、その医院の中で実際に行われていることにもとづいて説明できるかどうかです。
歯科医院の数は全国で約6万7千か所あり、コンビニエンスストアの店舗数より多いとよく言われます。それだけ数があるということは、応募する側から見れば選択肢が多く、採用する側から見れば「うちでなくても働ける人」がたくさんいる、ということでもあります。どの医院にも出せる志望動機は、採用担当者の目にはすぐにそれと分かります。
一方で、歯科医院は医院ごとの違いがとても大きい職場です。保険診療を中心に地域の患者さんを幅広く診る医院もあれば、矯正やインプラントなどの自費診療に力を入れる医院、子どもの患者さんが多い医院、通院できない高齢者の自宅や施設を訪問する医院もあります。同じ歯科衛生士や歯科助手でも、医院が違えば1日の仕事の中身がまるで変わります。この違いこそが、「ここを選んだ理由」の材料になります。
この記事では、採用側が志望動機で何を見ているのかを整理したうえで、歯科医院の中の1日と医院のタイプごとの違い、選んだ理由の見つけ方、志望動機の組み立て方と例文、避けたい書き方までを順番に解説します。
採用する側は、志望動機で何を見ているのか
書き方の前に、読む側の事情を押さえておきます。歯科医院の採用は、多くの場合、院長が自分で書類を読み、面接も院長が行います。規模の大きい医療法人でも、事務長と院長の2人で判断することが一般的です。つまり、志望動機を読むのは、その医院の診療方針を決めている本人です。
院長が志望動機で確かめていることは、主に3つあります。
1つ目は、「うちの医院が何をしているかを知ったうえで応募しているか」です。自費診療に力を入れている医院に「地域の方の歯の健康を守りたい」とだけ書いた志望動機が届いても、間違いではありませんが、医院のことを調べていないと受け取られます。反対に、訪問歯科を行っている医院に、訪問に触れた志望動機が届けば、院長は「ちゃんと見てくれている」と感じます。
2つ目は、「長く働いてくれそうか」です。歯科医院のスタッフは、院長を除くと数人から十数人の規模であることがほとんどです。歯科衛生士が1人辞めると、その人が担当していた患者さんのメンテナンスの予約を他の人に振り替えなければならず、診療の予定そのものが崩れます。特に歯科衛生士は採用が難しい職種で、養成校に届く求人は卒業生1人あたり20件を超えると言われます。採るのに苦労する分、すぐに辞めない人かどうかを院長は慎重に見ます。
3つ目は、「チームの中でうまくやれそうか」です。歯科の診療は、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付が狭い空間で連携して進みます。診療台の横で器具を渡すタイミング、次の患者さんを呼ぶ順番、急患を入れるかどうかの判断など、声をかけ合わないと回らない場面が1日中続きます。志望動機の文章から、協調性や周りを見る姿勢が伝わるかどうかも見られています。
この3点をそろえれば、良い志望動機の条件ははっきりします。医院が力を入れていることを知っていると伝わり、長く働く理由がその医院の中にあり、自分の経験や関心がその医院の仕事とつながっている。文章の上手さは、その次の話です。
正直なところ、ネット上の例文の多くは1つ目が弱いと感じます。「患者さんに寄り添いたい」「スキルアップしたい」といった内容は、どの医院に対しても成り立つからです。面接ではほぼ確実に「なぜうちなんですか」と聞かれます。書類の段階でこの問いに答えておけば、面接の準備も半分は済んだことになります。
志望動機を書く前に、歯科医院の中の1日を知っておく
「この医院を選んだ理由」を書くには、歯科医院という職場で何が起きているのかを具体的に知っておく必要があります。ここでは一般的な保険診療中心の歯科医院を例に、1日の流れを追ってみます。
歯科医院の多くは完全予約制で、午前は9時か9時半から13時ごろまで、昼休みを挟んで午後は14時半から19時ごろまで診療します。仕事帰りの患者さんに合わせて、平日は19時や20時まで開けている医院も少なくありません。休診日は木曜と日曜、祝日という組み合わせが多く、土曜は診療している医院が大半です。
スタッフの朝は、診療開始の30分ほど前に始まります。診療台ごとに器具をそろえ、滅菌器から出した器具を並べ、バキュームや吸引の配管を確認し、その日の予約表を見て、どの診療台で誰が何の処置をするのかを共有します。朝の短い打ち合わせで、「10時の患者さんは麻酔が効きにくい方」「午後に急患の枠を1つ空けておく」といった情報を確かめる医院も多くあります。
診療が始まると、歯科医師は複数の診療台を行き来しながら治療を進めます。1人の患者さんに付きっきりになるのではなく、麻酔が効くのを待つ間に隣の診療台で型取りをする、といった並行の進め方が一般的です。この間、歯科助手は器具の準備と受け渡し、バキュームでの吸引、治療後の片付けと消毒を担当し、歯科衛生士は歯石の除去や歯周病の検査、ブラッシングの指導といった予防の処置を、自分の担当の患者さんに対して行います。
受付は、予約の管理、電話の対応、会計、そして保険の請求のための書類であるレセプトの作成を担当します。予約の電話は1日に何十本もかかってくることがあり、急な痛みを訴える患者さんをどの時間に入れるかを、歯科医師の手が空く時間を読みながら判断します。
1日の終わりには、使った器具の洗浄と滅菌、診療台の清掃、翌日の予約の確認を行います。器具の滅菌は患者さんの安全に直結する仕事なので、どの医院も手順を細かく決めています。
この流れから分かるのは、歯科医院の仕事が「予約の時間どおりに、複数の処置を並行して進める」ことの連続だということです。1人が遅れると、後ろの予約が全部ずれていきます。だからこそ、院長は段取りの良さと周りへの気配りを重視します。志望動機で前職の経験を書くときも、「正確さ」や「スピード」を、この1日の流れのどこで活かせるのかまで結びつけると、読む側に具体的な姿が浮かびます。
同じ職種でも、医院のタイプで任される仕事が変わる
志望動機の材料を集めるうえで、最も役に立つのが「医院のタイプの違い」です。ここを押さえておくと、応募先の医院が他の医院とどう違うのかを、自分の言葉で説明できるようになります。
保険診療中心の一般歯科は、虫歯の治療、歯周病の治療、入れ歯、定期的なメンテナンスなど、幅広い処置を行います。患者さんの年齢層が広く、1日に診る人数も多い傾向があります。歯科衛生士は、メンテナンスで定期的に通う患者さんを担当として持つことが多く、同じ人と何年も関わります。歯科助手は、さまざまな処置に対応するため、器具の種類と準備の手順を幅広く覚えることになります。
自費診療に力を入れる医院は、インプラント、セラミックの被せ物、ホワイトニングなどを多く扱います。1人の患者さんにかける時間が長く、治療の説明やカウンセリングが仕事の大きな部分を占めます。歯科衛生士や受付が、治療の選択肢を患者さんに説明する役割を担うこともあります。医院の雰囲気や接遇を重視するところが多いのも特徴です。
矯正歯科は、治療の期間が年単位と長く、同じ患者さんが月に1回ほどのペースで通い続けます。装置の調整の介助や、装置を付けている間の歯みがきの指導が中心で、子どもから大人まで患者さんの幅があります。
小児歯科は、子どもが怖がらずに治療を受けられるよう、声のかけ方や待合室の工夫に力を入れています。保護者への説明も多く、フッ素の塗布やシーラントといった予防の処置が大きな比重を占めます。
訪問歯科を行う医院では、歯科医師と歯科衛生士が高齢者の自宅や介護施設を回り、口腔ケアや入れ歯の調整、食べる機能の訓練などを行います。外来とは使う器材も時間の流れも違い、介護職や看護師との連携が必要になります。
医療法人として複数の分院を展開している医院は、研修の仕組みやマニュアルが整っている一方で、分院間の異動がある場合もあります。
志望動機では、応募先がこのうちどのタイプなのか、あるいはどの組み合わせなのかを最初に見極めます。そのうえで、「なぜそのタイプの医院で働きたいのか」を、自分の経験とつなげて説明します。たとえば、一般歯科で担当の患者さんを持ってメンテナンスを続けてきた歯科衛生士が、次は訪問歯科に関わりたいと考えるなら、「通院が難しくなって来られなくなった患者さんがいたこと」を出発点にすると、理由に一貫性が出ます。
「この医院を選んだ理由」を見つけるための調べ方
医院のタイプの見当がついたら、次は、その医院だけが持っている特徴を探します。ここで集めた情報が、志望動機の中で最も説得力のある部分になります。
最初に見るのは、医院のホームページです。特に次の項目を読みます。
・院長のあいさつや診療方針(何を大切にしていると書いているか) ・診療内容の並び順(最初に書かれている診療が、力を入れている分野であることが多い) ・設備の紹介(歯科用CT、マイクロスコープ、滅菌の設備など) ・スタッフの紹介や、研修・勉強会の記述 ・診療時間と休診日
院長のあいさつは、志望動機の材料として特に役に立ちます。「治療より予防を大切にしたい」「なるべく削らない、抜かない治療を」「子どもが歯医者を好きになる医院に」といった言葉は、その医院の方針そのものです。その言葉に、自分の経験や考えがどう重なるのかを書けば、「なぜこの医院か」に正面から答えられます。
次に、求人票を読みます。求人票の「仕事内容」「求める人物像」「教育制度」の欄には、医院がどんな人を必要としているかが書かれています。「担当衛生士制」と書かれていれば、患者さんを継続して担当する仕組みがあるということです。「未経験者は先輩がマンツーマンで指導」とあれば、教える体制を整えていることが分かります。
可能であれば、見学に行きます。歯科医院は見学を受け入れているところが多く、実際に診療の様子を見ると、ホームページだけでは分からないことに気づきます。スタッフ同士の声のかけ方、診療台の数と歯科医師の人数、器具の片付けの丁寧さ、待合室にいる患者さんの年齢層などです。見学で見たことを志望動機に1文入れるだけで、他の応募者との違いがはっきり出ます。
私は編集の仕事で取材の依頼書を書くことがよくありますが、最初のころは、どの相手にも同じ文面を送っていました。返事がほとんど来ないので、相手のこれまでの記事や発言を読み込み、「なぜあなたに話を聞きたいのか」を1段落書くようにしたところ、返信の数が目に見えて変わりました。志望動機も同じ構造で、相手のことを調べた跡が見える文章は、それだけで読まれ方が変わります。
調べた内容は、その場で箇条書きにしておきます。「院長が予防を重視している」「担当制がある」「訪問歯科を始めた」「見学で、助手の方が次の器具を先回りして準備していた」といった具合です。この箇条書きが、次の組み立ての材料になります。
求人票の数字から、医院の中の実態を読む
志望動機の材料を集めるついでに、求人票に書かれた数字から医院の実態を読んでおくと、応募するかどうかの判断そのものが確かになります。志望動機は「なぜこの医院か」を説明する文章なので、自分がその医院で長く働けるかどうかを先に確かめておくことは、書く内容の一貫性にもつながります。
最初に見るのは、診療台の数とスタッフの人数の関係です。診療台が5台ある医院で歯科医師が1人、歯科衛生士が2人、歯科助手が2人という体制なら、1人あたりが受け持つ診療台の数が多く、忙しい時間帯は常に動き続けることになります。同じ診療台の数でも、歯科医師が2人いれば、並行して進む処置の数が増える一方で、1人の歯科医師に付く時間は短くなります。求人票に人数が書かれていなければ、見学か面接で聞いておきます。
次に、予約の枠の長さです。歯科衛生士のメンテナンスに1人30分の枠を取る医院と、1時間の枠を取る医院では、1日に担当する患者さんの数も、1人にかけられる丁寧さも大きく違います。予防に力を入れていると書いている医院が、実際にどのくらいの時間を取っているかは、方針が本物かどうかを見分ける手がかりになります。
3つ目は、診療の終わりの時刻と勤務時間の関係です。最終の予約が19時なら、患者さんが帰り、片付けと滅菌が終わるのは19時半を過ぎます。求人票の勤務時間が19時までとなっていたら、その後の時間がどう扱われているかを確かめます。
給与の相場も押さえておきます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、歯科衛生士の平均年収は400万円前後です。歯科助手は国家資格ではないため統計の区分が分かれておらず、求人を見る限り、常勤で年収250万〜350万円程度の範囲で募集されることが多い印象です。都市部と地方、保険診療中心か自費診療中心かでも差があります。歯科衛生士は採用が難しい分、経験者に対して手当や賞与を厚くしている医院もあります。
こうして読み取った数字は、志望動機に直接は書きません。ただ、自分がその医院の1日の中にどう入っていくのかを具体的に想像できるようになると、「この医院で何ができるか」を書く3段目に、無理のない言葉が出てきます。条件が合わないと分かった医院に、無理に志望動機をひねり出す必要もなくなります。
志望動機は、3つの段で組み立てる
材料がそろったら、志望動機を組み立てます。長さは履歴書の欄なら200〜300字、職務経歴書や応募フォームなら400字程度を目安にします。構成は、次の3つの段にすると書きやすくなります。
1段目は、「なぜ歯科医院で、この職種なのか」です。これまでの経験や、この仕事に関心を持ったきっかけを短く書きます。ここに字数を使いすぎないことが大切です。
2段目は、「なぜこの医院なのか」です。前の節で調べた医院の特徴と、自分の考えや経験がどう重なるのかを書きます。志望動機の中心はこの段です。
3段目は、「この医院で何ができるか、どうなりたいか」です。自分の経験のどの部分が、医院の1日のどこで活かせるのかを具体的に書きます。
例として、転職の支援サイトに掲載されている、歯科受付の経験者の志望動機を見てみます。
前職では、診察券の受け取りやカルテ管理、電話応対、予約管理のほか、1日20件前後のレセプト作成などの歯科受付業務を行っていました。受付では清潔感のある応対、事務処理では正確でスピーディな処理ができると自負しています。これまでの経験を生かして、歯科受付として貴院で貢献できればと考えています。 出典: tenshoku.mynavi.jp
この例文は、3段目にあたる「できること」がとても具体的です。「1日20件前後のレセプト作成」という数字があるので、どの程度の仕事量をこなしてきたのかが伝わります。経験者の志望動機として、ここはそのまま参考になります。
一方で、2段目の「なぜこの医院なのか」が入っていません。この文章は、どの歯科医院にもそのまま出せます。例文として一般化するために省かれている部分なので、実際に使うときは、ここに応募先の医院の特徴を1〜2文加える必要があります。たとえば「貴院のホームページで、予約の取りやすさと待ち時間の短さを大切にしていると知り、予約の管理を工夫してきた経験が活かせると考えました」といった文です。受付の仕事と医院の方針が1本の線でつながり、この医院に出す理由がはっきりします。
文章を整えるときは、1文を短くし、主語と述語をはっきりさせることを意識します。院長は診療の合間に書類を読むことが多いので、一読で意味が取れる文章は、それだけで印象が良くなります。受付や歯科助手として応募する人は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の内容を見ておくと、受付の実務や保険請求の流れを志望動機の中で具体的に書けるようになります。応募書類に限らず、患者さんへのお知らせや院内の書類を作る場面でも使える知識です。
職種と経歴ごとの例文
ここでは、3つの段の組み立てを使った例文を、職種と経歴ごとに紹介します。医院の特徴の部分は、応募先に合わせて必ず書き換えてください。
経験のある歯科衛生士が、予防に力を入れる医院に応募する場合の例です。
「前職の一般歯科では、担当の患者さんのメンテナンスを5年間続けてきました。定期的に通っていただく中で、歯周病の数値が改善していく過程に関われることに、この仕事のやりがいを感じてきました。貴院のホームページで、担当衛生士制を取り入れ、治療後のメンテナンスに力を入れていることを知り、患者さんと長く関わる働き方をさらに深められると考え、応募いたしました。これまでの歯周病の検査と指導の経験を活かし、患者さんが通い続けたくなる関係づくりに取り組みたいと考えています。」
ブランクのある歯科衛生士が、復職の研修がある医院に応募する場合の例です。
「子育てのため3年間現場を離れていましたが、子どもの手が離れたことを機に、歯科衛生士として復職したいと考えています。久しぶりの現場で技術と知識を確かめ直したいと考えていたところ、貴院の求人に復職者向けの研修があると知り、応募いたしました。見学の際に、先輩の衛生士の方が器具の扱いを丁寧に教えている様子を拝見し、ここであれば焦らずに感覚を取り戻せると感じました。子育ての経験を活かし、保護者の方にも伝わりやすい説明を心がけたいと考えています。」
未経験で歯科助手に応募する場合の例です。
「前職は飲食店で5年間接客を担当し、混雑する時間帯に複数の注文を並行して処理することに慣れてきました。自分の歯の治療で通った際に、治療の段取りを先回りして進める歯科助手の方の動きに関心を持ち、この仕事を目指すようになりました。貴院は小児の患者さんが多く、子どもが怖がらない声かけを大切にしていると知り、接客で身につけた相手に合わせた話し方を活かせると考えています。器具の名前と手順を早く覚え、診療が時間どおりに進むよう支えていきたいと考えています。」
医療事務の経験があり、歯科受付に応募する場合の例です。
「前職の内科クリニックでは、受付と会計、レセプトの作成を4年間担当してきました。患者さんが多い日でも待ち時間を短くするため、予約の入れ方や会計の順番を他のスタッフと相談しながら工夫してきました。貴院が完全予約制で、待ち時間の少なさを大切にしていることをホームページで知り、予約の管理で積み重ねてきた工夫を活かせると考えました。歯科の保険請求は内科と異なる点が多いため、入職までに歯科のレセプトの基本を学び、早く戦力になれるよう努めます。」
事務職から歯科受付に応募する場合は、先ほどの引用例の3段目を活かしつつ、「電話対応の件数」「扱っていた書類の種類」など、数字で示せる経験を入れると具体性が増します。受付の未経験者なら、レセプトの知識がないことを隠すより、医療事務の勉強を始めていることを書くほうが、長く働く意思が伝わります。
どの例文でも、医院の特徴の部分が抜けると、ただの自己紹介になってしまいます。例文を丸ごと写すのではなく、組み立ての型として使ってください。
避けたい書き方と、面接で深掘りされたときの答え方
最後に、避けたい書き方と、面接での答え方をまとめます。
避けたい書き方の1つ目は、条件だけを理由にすることです。「家から近い」「土日が休み」「給与が高い」は、本音としては大切な条件ですが、志望動機の中心に置くと、条件の良い医院が他にあればそちらに移る人だと受け取られます。通勤の近さは、長く働ける理由の補足として触れる程度にとどめます。
2つ目は、「勉強させてください」「スキルアップしたい」だけで終わることです。学ぶ意欲は評価されますが、医院はスタッフに教えるために人を雇っているわけではありません。学んだことを医院の中でどう活かすのかまで書く必要があります。
3つ目は、前の職場の不満を理由にすることです。「人間関係が悪かった」「残業が多かった」という事情があっても、書類には書きません。面接で転職の理由を聞かれたときは、不満ではなく「次にどんな働き方をしたいか」の形に言い換えて答えます。
4つ目は、医院の特徴を取り違えたまま書くことです。たとえば、ホームページに「痛みの少ない治療」と書かれているのを見て「最新の設備に惹かれた」と書いても、院長が伝えたいのは設備ではなく、麻酔の打ち方や声のかけ方といった診療の姿勢かもしれません。ホームページの言葉をそのまま借りるのではなく、その言葉が1日の診療のどこに表れているのかを見学や求人票で確かめてから書くと、取り違えを防げます。分からない点は、面接で「ホームページで拝見した〇〇について、日々の診療ではどのように取り組んでいらっしゃいますか」と聞き返せば、調べてきたことと関心の深さの両方が伝わります。
面接では、志望動機について深掘りの質問が来ます。よく聞かれるのは、「他の医院も受けていますか」「うちの医院のどこに惹かれましたか」「入職したら、最初の1年で何をしたいですか」といった質問です。書類に書いた医院の特徴について、なぜそれに惹かれたのかを自分の経験と結びつけて話せるよう、準備しておきます。他の医院も受けているかと聞かれたら、正直に答えてかまいません。そのうえで、この医院を第一に考えている理由を、書類の2段目と同じ内容で伝えれば十分です。
最近は、見学の前にオンラインで簡単な面談を行う医院も出てきました。画面越しの面談では、音声や映像の不具合で話が途切れると、それだけで印象が落ちてしまいます。主要なオンライン会議ツールの違いと、使い分けの考え方は、Zoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】にまとめています。医院から指定されたツールは、前日までに一度つないで確かめておくと安心です。
運営者の視点から見た、長く働ける職場の選び方
志望動機を書く作業は、見方を変えると、自分が長く働ける職場を選ぶ作業でもあります。医院の方針を調べ、1日の流れを知り、自分の経験と重なる部分を探す過程で、「ここは合わないかもしれない」と気づくこともあります。それも立派な成果です。
20年ほどフリーランスと在宅ワークの市場を見てきた運営者の立場から言えば、長く仕事を続けている人ほど、条件の良さより「自分の経験が相手の役に立つ場所かどうか」で仕事を選んでいます。単発で条件だけを追う人は、次の条件の良い話に移り続け、結果として経験が積み上がりにくくなります。これは歯科医院の転職でも同じで、医院の方針と自分の経験が重なる場所を選んだ人は、同じ医院で担当の患者さんを持ち、少しずつ任される仕事を広げていく傾向があります。
歯科の知識を活かして、勤務の外で文章を書く仕事に関わる人もいます。歯科衛生士が口腔ケアの記事を監修する、歯科医院のホームページの原稿を書く、といった形です。本業の職場を大切にしながら、専門知識を別の形で役立てる場を持っておくと、職場の変化に振り回されにくくなります。
運営者として見てきた実感をもう1つ付け加えると、仲介の手数料がかからない直接のやりとりは、依頼する側と受ける側の双方に得になりやすいということです。同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手元に残る報酬が厚くなります。手数料0%で直接やりとりできる場を知っておくことは、専門職が働き方の幅を広げるうえで、小さくない意味を持ちます。
歯科医院の志望動機は、上手な文章を書く試験ではありません。その医院が何を大切にしていて、自分の経験がその中のどこで役に立つのかを、院長に分かる言葉で伝えることです。調べた跡が見える志望動機は、それだけで「なぜうちなのか」への答えになります。
よくある質問
Q. 歯科医院の志望動機は、どのくらいの長さで書けばよいですか?
履歴書の志望動機の欄なら200〜300字、職務経歴書や応募フォームなら400字程度が目安です。長さよりも、「なぜ歯科医院でこの職種か」「なぜこの医院か」「この医院で何ができるか」の3つがそろっていることが大切で、中心は「なぜこの医院か」に置きます。
Q. 未経験で歯科助手に応募する場合、志望動機に何を書けばよいですか?
前職で身につけた力が、歯科医院の1日のどこで活かせるかを書きます。たとえば接客なら相手に合わせた声かけ、飲食店なら複数の注文を並行して処理する段取りの良さです。そのうえで、応募先の医院の特徴に触れ、器具や手順を早く覚える意思を伝えると、長く働く姿勢が伝わります。
Q. 「家から近い」を志望動機に書いてもよいですか?
中心の理由にするのは避けたほうが無難です。条件だけを理由にすると、より条件の良い医院があれば移る人だと受け取られるからです。医院の方針や仕事の内容に惹かれた理由を先に書き、通勤が近いことは長く働ける理由の補足として一言添える程度にとどめます。
Q. 応募先の医院の特徴は、どうやって調べればよいですか?
医院のホームページで院長のあいさつ、診療内容の並び順、設備、研修の記述を読み、求人票の仕事内容と求める人物像を確かめます。可能なら見学に行き、スタッフ同士の連携や患者さんの年齢層を見ておくと、ホームページだけでは書けない具体的な理由が見つかります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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