二級建築士の勤務先に知られずにできるか

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
二級建築士の勤務先に知られずにできるか

この記事のポイント

  • 二級建築士が副業を始めるとき
  • 勤務先に伝わる経路は住民税・社会保険・建築士事務所の公開名簿の3つに絞られます
  • 建築士だけが持つ特有のリスクを実務手順まで整理しました

結論から書きます。二級建築士の副業が勤務先に伝わる経路は、住民税、社会保険、そして建築士特有の公開情報の3つです。噂や人づてを別にすれば、事務的に伝わるルートはこれ以外にほとんどありません。逆に言えば、この3つの仕組みを理解しておけば、何が想定されるリスクで、何が心配しすぎなのかを切り分けられます。

そしてもうひとつ、多くの人が混同している論点があります。「伝わるかどうか」と「やっていいかどうか」は別の問題だということです。就業規則で許可制になっているなら、伝わらないように工夫するより、許可を取ったほうが結果的に安全で、続けやすい。正直なところ、隠すことに神経を使っている人の多くは、就業規則を最後まで読んでいません。

この記事では、伝わる仕組みを制度ごとに分解したうえで、建築士という資格が持つ固有の事情と、実務としてどう手続きすればよいかを順に整理します。

経路1 住民税から伝わる仕組み

もっとも一般的な経路が住民税です。仕組みを理解するには、住民税の徴収方法が2種類あることを押さえる必要があります。

給与所得者の住民税は、原則として勤務先が給与から天引きして納める特別徴収です。市区町村は、その人の前年の所得を全部合算して住民税額を計算し、勤務先に「この人の住民税は年間いくら」という通知を送ります。ここで副業の所得が合算されていれば、勤務先が把握している給与額に対して住民税が不自然に高くなり、経理担当者が気づく余地が生まれます。

所得の種類で扱いが分かれる

重要なのは、副業の所得が給与所得なのか、事業所得または雑所得なのかという区別です。

副業が業務委託契約で、報酬が事業所得または雑所得になる場合、確定申告書の第二表にある住民税に関する事項で、給与所得以外の所得にかかる住民税の徴収方法を「自分で納付」に選択できます。これを選ぶと、副業分の住民税は勤務先を通さず、自宅に届く納付書で自分が納める形になります。

一方、副業が雇用契約で給与所得になる場合、この選択は原則としてできません。給与所得どうしは合算して主たる勤務先で特別徴収されるのが基本の扱いだからです。設計事務所でアルバイトとして働く、スクールに雇用されて講師をする。こうした形は給与所得になるため、住民税の経路で伝わる可能性が高くなります。

つまり、勤務先との関係を静かに保ちたいのであれば、契約形態を業務委託にするという選択が効いてきます。ただし、契約形態は自分だけで決められるものではありません。発注側が雇用しか用意していないなら、そこは受け入れるしかない。

自分で納付を選んでも安心しきれない理由

ここに落とし穴があります。「自分で納付」を選んだからといって、必ずその通りに処理されるとは限りません。自治体によっては事務処理の都合で特別徴収に一本化される運用があり、申告書の選択が反映されない例が報告されています。

対策は単純で、確定申告を済ませたあとに、住所地の市区町村の住民税担当課に電話で確認することです。「事業所得分は普通徴収で処理されているか」を聞けば答えてもらえます。通知が勤務先に届くのは例年5月から6月にかけてなので、確認するなら4月までに動くのが現実的です。

なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になることがあります。給与以外の所得が年間20万円以下なら申告不要という話が広く知られていますが、これは所得税の話であって住民税には当てはまりません。この誤解のまま何もしないと、後から市区町村に指摘されて、そこから勤務先に話が及ぶという逆の経路ができてしまいます。税の手続きの詳細は、国税庁の案内で確認するのが確実です。

経路2 社会保険と雇用保険から伝わる仕組み

2つ目は社会保険です。ここは所得ではなく「働き方」で決まります。

副業先で雇用され、労働時間や賃金が一定の基準を満たすと、その事業所でも健康保険と厚生年金の被保険者になります。2つの事業所で被保険者資格が発生すると、どちらの保険者を主とするかを届け出る必要があり、この手続きの過程で双方の事業所に事実が共有されます。制度の詳細は日本年金機構の案内に整理されています。

裏返せば、副業が業務委託であればこの経路は発生しません。業務委託は雇用ではないため、社会保険の被保険者資格が新たに生じないからです。報酬がいくらであっても、この点は変わりません。

雇用保険についても、原則として主たる賃金を受ける事業所でのみ被保険者になる扱いです。副業先で新たに雇用保険に入る形になると、資格の重複が生じて手続きが必要になります。

ここまでをまとめると、業務委託で受ける副業は、社会保険の経路では伝わらないということになります。図面作成の請負、記事の執筆や監修、講座の講師を業務委託で受ける形は、この点で安全性が高い。

経路3 建築士だけが持つ公開情報の経路

ここからが、建築士の副業を考えるうえで他の職種と決定的に違う部分です。他業種の副業記事にはまず書かれていない論点なので、丁寧に押さえてください。

建築士法第23条は、他人の求めに応じ報酬を得て設計や工事監理などを業として行う場合に、建築士事務所の登録を求めています。この登録は都道府県が受け付け、登録された事務所の情報は名簿として管理されます。開設者、管理建築士、所属建築士といった情報が届出の対象になっており、閲覧できる形で公開されている自治体があります。

さらに、建築士事務所には専任の管理建築士を置くことが求められています。専任という言葉が意味するところは、その事務所の業務に常時従事しているという状態です。すでにどこかの建築士事務所に所属している人が、別に自分の事務所を登録して管理建築士になろうとすると、この専任性の要件と正面から衝突します。

加えて、確認申請の図書には設計者の氏名が記載されます。設計者として名前が載れば、それは第三者が見得る情報になります。同業者どうしの狭い業界で、勤務先の関係者が別の物件の申請図書を目にする場面は十分にあり得ます。

だからこそ、建築士の副業では「どの業務を選ぶか」がリスクの大半を決めます。設計や工事監理そのものを外で受けようとすると、事務所登録と専任性の壁に当たり、名前も残ります。一方で、設計行為に当たらない業務であれば、この経路は生じません。

どこからが設計や工事監理に当たるのかという線引きは、業務の実態で判断されます。図面の一部を作成する補助的な作業、教材や記事の作成、建物に関する一般的な解説。これらが登録を要する業務に当たるかどうかは、内容によって評価が分かれます。自分の判断で「これは大丈夫」と決めず、所管する都道府県の建築指導部局に具体的な業務内容を示して確認してください。登録や届出まわりの書類作成を専門家に任せる選択肢もあり、許認可の申請代理を扱う職種の業務範囲は行政書士の資格ガイドにまとまっています。

就業規則をどう読むか

伝わる経路の話と並んで重要なのが、そもそも副業が許されているのかという点です。

国は副業や兼業を促進する方向に舵を切っており、厚生労働省が公表しているモデル就業規則では、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる、という規定が置かれています。届出制や、一定の場合に制限できるという条項がセットになった構成です。

ただし、モデル就業規則はあくまでモデルです。実際にあなたに適用されるのは、勤務先の就業規則です。確認すべきは次の4点になります。

第1に、副業が禁止か、許可制か、届出制か。第2に、許可が要る場合の申請先と書式。第3に、競業避止の規定があるか。第4に、秘密保持の規定の範囲です。

建築士の場合、第3の競業避止がとくに重い意味を持ちます。勤務先が住宅設計をしていて、自分も住宅設計を外で受けるなら、それは競業に当たると評価される可能性が高い。逆に、勤務先が設計、副業が受験対策講座の講師や記事の監修であれば、競業性の議論にはなりにくくなります。

第4の秘密保持も見落とせません。勤務先で扱った物件の情報、図面、クライアント名は、副業の実績として使えません。ポートフォリオに載せた1枚が、契約違反の証拠になることがあります。

業務の種類ごとのリスクを整理する

ここまでの論点を、実際に選べる副業の種類ごとに並べます。

業務の種類 事務所登録の論点 契約形態 競業性
外部からの設計・工事監理の受注 登録の要否を要確認 業務委託が多い 高い
他の建築士事務所での勤務 所属建築士の届出 雇用が多い 高い
CADトレース・作図補助 内容により判断 業務委託 中程度
建築系記事の執筆・監修 生じにくい 業務委託 低い
受験対策講座の講師 生じにくい 業務委託か雇用 低い
建材や住設のライティング 生じにくい 業務委託 低い

リスクが低い順に並べると、記事の執筆や監修、講師業が最初の候補になります。報酬の水準も、資格保有者向けの案件は一般の副業より高く設定される傾向があります。

建築・不動産系メディアの記事監修は、一級建築士の肩書があるだけで依頼が来やすい副業です。監修料は1本2万円以上が目安で、経験や知名度次第では10万円を超える案件もあります。執筆自体を行う場合は文字単価0.5〜3円程度が相場です。 出典: jobhouse.jp

この記述は一級建築士について書かれていますが、二級建築士でも住宅や小規模建築物を扱う媒体では十分に需要があります。監修や執筆の相場観をつかむには、著述家,記者,編集者の年収・単価相場にある職種としての収入分布が参考になります。

勤務先と衝突しにくい仕事を具体的に見る

表で整理した内容を、もう少し踏み込んで見ていきます。どれを選ぶかで、ここまで説明した3つの経路のうち、いくつを気にせずに済むかが決まります。

建築系メディアの執筆と監修

住宅、リフォーム、不動産、建材。これらを扱うメディアは常に専門家の目を必要としています。記事の内容が法令や技術の面で正しいかを確認する監修と、記事そのものを書く執筆の2つがあり、どちらも在宅で完結します。

この仕事の利点は、契約形態がほぼ業務委託であること、成果物に勤務先の情報を使わずに済むこと、そして納期さえ守れば作業時間帯が自由であることです。3つの経路のうち、社会保険は無関係、住民税は自分で納付を選べる、公開情報の経路も生じない。副業として最も摩擦が少ない選択肢と言えます。

一方で、書く力が要ります。実務ができることと、読者に伝わる文章を書けることは別の能力です。最初のうちは、専門用語をそのまま書いてしまい、編集者から全面的な書き直しを求められることが珍しくありません。1本目の報酬を時給に換算すると、期待した水準を大きく下回る可能性があります。ここを越えられるかどうかが分かれ目です。

受験対策講座と社内研修の講師

建築士や施工管理技士の受験対策を扱うスクールは、二級建築士を必須資格に含めた講師募集を出しています。土日開講の講座であれば、平日勤務の人でも担当できます。オンライン開講が増えたことで、住んでいる地域による制約もかなり小さくなりました。

注意点は契約形態です。スクールによっては雇用契約で採用されるため、その場合は住民税と社会保険の両方の経路が発生します。業務委託で受けられるかどうかを、応募の段階で確認してください。

CADトレースと作図補助

設計事務所や工務店が、繁忙期に外部へ出す作業です。既存図面のCAD化、簡単な平面図の作成、プレゼン用の資料作成など、業務の内容には幅があります。

ここで判断が要るのが、その作業が建築士法上の設計に当たるかどうかです。単純なトレースであれば設計行為とは評価されにくい一方、内容によっては設計の一部を担っていると見られる余地もあります。発注側から「建築士だから任せたい」と言われる案件ほど、この線が近づきます。受ける前に業務範囲を書面で確定させ、迷うなら所管の建築指導部局に確認してください。

競業性の観点でも、勤務先と同じ領域の作図を外で受けると、就業規則上の問題になりやすくなります。用途や規模が勤務先と重ならない案件を選ぶのが実際的です。

3Dパースとビジュアライゼーション

図面から3Dパースを作る仕事は、建築の知識と表現力の両方が要る領域です。専用ソフトの習熟が前提になるため参入者が限られ、単価は作図系より高めに設定される傾向があります。

この分野は設計そのものではなく表現の制作なので、事務所登録の論点とは距離があります。ただし、パースの元になる図面データを扱う以上、守秘義務の管理は厳格に求められます。

この記事では、一級建築士が副業を始める前に確認しておきたい法的なポイントと、実際に取り組みやすいおすすめの副業7選、収入・単価の相場までまとめて解説します。あわせて、副業でよくある失敗パターンとその対策も紹介するので、これから副業を始める方はぜひ参考にしてください。 出典: jobhouse.jp

法的なポイントを先に確認してから副業の種類を選ぶ、という順番は正しい。逆にしてしまうと、始めたあとで撤退することになります。

収入の規模を先に見積もる

どの仕事を選ぶかを決める前に、稼働時間あたりでどれくらいになるのかを把握しておくと判断が早くなります。副業は使える時間が限られるため、単価の差がそのまま結果の差になります。

業務 報酬の形 目安
記事監修 1本あたり固定 1万円から5万円程度
記事執筆 文字単価 0.5円から3円程度
受験対策講座の講師 1コマ単価 8,000円から2万5,000円程度
CADトレース 1件または時間単価 時間換算で2,000円から3,000円程度
3Dパース制作 1カットあたり 1万円から5万円程度

資格・実務経験を活かせるものから、隙間時間でできるものまで、一級建築士に向いている副業を7つ紹介します。単価の高さだけでなく、始めやすさや必要なスキルも合わせて比較しながら、自分に合った副業を見つけてみてください。 出典: jobhouse.jp

単価の高さだけで選ばないほうがいい、という指摘はその通りです。単価が高い案件ほど納期が厳しく、修正の要求も細かくなります。本業がある状態で高単価の案件を受けて、結果的に本業に穴を開けてしまえば、収支としては赤字です。月3万円を安定して積む形から始めて、余力を見ながら広げるほうが長続きします。

よくある失敗と対策

副業がうまくいかない、あるいは勤務先との問題に発展するパターンには、繰り返し現れる型があります。

稼働時間を決めずに始める

最も多い失敗がこれです。最初の案件は嬉しいので受けます。次も受けます。気づくと平日の夜と土日が全部埋まっていて、本業の集中力が落ちる。ここから品質低下、遅刻、体調不良と進み、勤務先が異変に気づきます。

対策は、始める前に上限を決めることです。週10時間、月40時間といった数字を紙に書いて、超える依頼は断る。断る文面をあらかじめ用意しておくと、その場の勢いで受けてしまう事故を防げます。

勤務先の実績をポートフォリオに載せる

実績を示したい気持ちは分かりますが、勤務先で担当した物件の図面や写真、クライアント名は自分の裁量で公開できるものではありません。秘密保持の規定に触れるだけでなく、著作権の帰属の問題にもなります。

対策は、副業用の実績を副業の中だけで積むことです。最初は無報酬に近い案件からでも、自分の名前で完結した成果物を作る。それが1つできれば、以降はそれを見せられます。

報酬の条件を口約束で進める

金額、納品物、修正回数、支払期日。この4つを書面にしないまま進めると、後から揉めます。とくに修正回数を決めていない案件は、際限のない手直しに巻き込まれる典型です。

対策は、発注書かメールで4項目を確認してから着手することです。相手が個人でも法人でも同じです。書面を求めることで関係が悪くなるような取引先は、そもそも避けたほうがいい。

確定申告の準備を年末にまとめてやる

領収書と入金明細を1年分ためて年明けに整理しようとすると、必ず抜けが出ます。抜けた経費は戻ってきません。

対策は、月末に30分だけ入力の時間を取ることです。会計ソフトに口座を連携しておけば、この作業はさらに短くなります。

手続きの実務手順

副業を始めると決めたあと、実際に踏む手順を順番に書きます。

就業規則の確認と申請

最初にやるのは、就業規則の副業に関する条項を読むことです。イントラネットにない場合は、労務担当に閲覧を求めれば見せてもらえます。許可制であれば、申請書に業務内容、想定される稼働時間、勤務先の業務との関係を書いて提出します。

申請を出すこと自体を避けたがる人が多いのですが、許可を取っておけば、後から発覚して処分される可能性を消せます。会社が懸念するのは、労務提供に支障が出ること、競業になること、情報が漏れることの3つです。申請書でこの3点に先回りして回答しておけば、通る確率は上がります。

開業届と帳簿

業務委託で継続的に受けるなら、税務署に開業届を出します。所得税法上、事業の開始から1か月以内の提出が定められています。青色申告承認申請書を同時に出せば、要件を満たすことで最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。

帳簿づけは会計ソフトを使うのが現実的です。副業の規模なら、月に1時間程度の入力で回ります。士業が副業として税務や会計の実務を扱う場合の考え方は、税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に整理されており、有資格者が本業と副業を並行させるときの論点として建築士にも通じる部分があります。

確定申告

年が明けたら確定申告です。副業の所得が事業所得または雑所得であれば、第二表の住民税に関する事項で「自分で納付」を選択します。この一手間を忘れると、ここまでの準備が意味を失います。

申告後に市区町村へ確認の電話を入れるところまでを、毎年の手順に組み込んでください。

契約書で守っておくべきこと

副業を業務委託で受けるなら、契約書の内容が自分を守る道具になります。とくに建築士の場合、成果物の権利と責任の範囲を明確にしておく必要があります。

図面や設計図書には著作権が生じ得ます。誰に権利が帰属し、どの範囲で使えるのかを書面で確認してください。監修を引き受ける場合は、監修の範囲がどこまでかを明記します。記事全体の内容に責任を負うのか、指定された技術的記述だけを確認するのか。この線が曖昧なまま名前が出ると、想定外の記述まで自分の責任として扱われます。

ブランドや名称に関わる仕事を受けるときは、商標の扱いにも注意が要ります。権利の登録や費用感については商標登録の代行費用相場|弁理士に依頼するメリットと自分で行う手間を比較で全体像が掴めます。自分の講座名や屋号を決めるときにも関係する話です。

なお、契約や報酬の支払いに関するトラブルは、発注側の一方的な減額や支払遅延として現れることが多いものです。取引条件を書面で残しておくこと自体が、最大の予防策になります。

運営者から見た副業の実態

在宅とリモートの仕事を長年扱ってきた運営者の立場から見ると、副業が勤務先との問題に発展するケースには共通点があります。伝わったこと自体が問題になっているのではなく、伝わり方が悪かったというパターンがほとんどです。

事後に発覚して、隠していたと受け取られる。あるいは、副業の疲労が本業の品質に出て、そこから調べられる。この2つが大半を占めます。制度上の経路をどれだけ塞いでも、この2つは塞げません。

20年この市場を見てきた立場から言えば、副業が長く続いている人は、稼働時間の上限を先に決めています。週10時間までと決めて、それを超える依頼は断る。断るために、断り方の文面をあらかじめ用意している。この地味な運用が、本業への影響を防いでいます。

もうひとつ、報酬の構造についても触れておきます。仲介を挟む形では、発注側が支払う金額と受け手が手にする金額の間に差が生まれます。中間マージンが乗らない直接取引であれば、依頼側は同じ予算でより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなる。手数料0%で直接つながる形が選ばれるのは、この双方が得をする構造があるからです。副業は稼働時間に上限がある働き方なので、同じ時間でいくら残るかという視点は本業以上に効いてきます。

建築の実務経験を、設計以外の形で使う道は思っているより広く開いています。働き方や副業の選び方そのものを相談される立場になる仕事はキャリア・副業・人生相談のお仕事に、建築とAIを組み合わせた業務支援の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、それぞれ依頼の形がまとまっています。技術職の単価水準を横で比べたいならソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になりますし、音や映像の制作を含む別分野の受注構造を知りたい人には作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事が参考になります。資料や教材の作成力を証明したい場合はAdobe認定プロフェッショナル Adobe Expressのような認定を押さえる手もあります。

伝わるかどうかを気にして小さく縮こまるより、伝わっても問題にならない形を選ぶ。これが、副業を長く続けている人に共通する構えです。

よくある質問

Q. 副業の住民税を勤務先に知られないようにできますか?

副業の所得が事業所得または雑所得であれば、確定申告書第二表の住民税に関する事項で「自分で納付」を選択でき、副業分は自宅に届く納付書で納める形になります。ただし自治体の事務処理により特別徴収に一本化される運用もあるため、申告後に住所地の市区町村へ電話で確認してください。副業が給与所得の場合はこの選択は原則できません。

Q. 二級建築士が外で設計を受けるには事務所登録が必要ですか?

建築士法第23条は、他人の求めに応じ報酬を得て設計や工事監理などを業として行う場合に建築士事務所の登録を求めています。またすでに事務所に所属している場合、管理建築士の専任性の要件とも関係します。どこからが登録を要する業務に当たるかは実態で判断が分かれるため、所管の都道府県建築指導部局に具体的な業務内容を示して確認してください。

Q. 副業の所得が20万円以下なら申告は不要ですか?

給与以外の所得が年間20万円以下なら申告不要という扱いは所得税の話であり、住民税には当てはまりません。所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が別途必要になることがあります。何もしないでいると後から市区町村に指摘され、そこから勤務先に話が及ぶ逆の経路ができるため、住所地の窓口で確認してください。

Q. 建築士の副業で競業避止が問題になりやすいのはどんな場合ですか?

勤務先が住宅設計を行っていて、自分も外で住宅設計を受けるような、業務の内容が重なる場合です。逆に勤務先が設計、副業が受験対策講座の講師や記事の監修であれば競業性の議論にはなりにくくなります。また勤務先で扱った物件の図面やクライアント名を実績として使うと秘密保持の規定に触れるため、ポートフォリオの中身にも注意が必要です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月17日最終更新:2026年8月28日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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