地方移住してできる仕事の探し方


この記事のポイント
- ✓地方移住の仕事の探し方を
- ✓移住前に決める場合と移住後に探す場合に分けて整理しました
- ✓求人を見つける6つの経路
地方移住で最大の関門は、住む場所ではなく仕事です。物件はサイトを見れば選べますが、仕事は「その地域に何があるか」に左右されるので、都市部と同じ探し方が通用しません。
結論を先に書きます。地方移住の仕事探しで成否を分けるのは、順番です。移住先を決めてから仕事を探すと選択肢が激減し、仕事の形を決めてから移住先を選ぶと選択肢が広がります。この順番を逆にした人が後悔しています。
この記事では、移住のパターンを整理したうえで、移住後の働き方7つ、求人を見つける6つの経路、都市部との賃金差、自治体の支援制度、そして場所に縛られない仕事を作る手順を書きます。地方は賃金が低いという一般論で終わらせず、どの数字を見て判断すればよいのかまで具体的に示します。
移住前に仕事を決めるか、移住後に探すか
最初の分岐がここです。どちらを選ぶかで、準備の内容が変わります。
移住前に仕事を決める形のメリットは、収入が途切れないことです。転職先が決まってから引っ越すので、住宅の契約や自治体の手続きも進めやすくなります。信用審査が必要な場面で、勤務先が決まっていることは有利に働きます。デメリットは、現地を知らないまま就職先を選ぶことになる点です。通勤距離の感覚が都市部とは違い、車で片道40分が普通という地域もあります。求人票の勤務地を地図で見ても、実際の生活の負担は現地に行かないとわかりません。
移住後に探す形のメリットは、現地の様子を見てから決められることです。地域の人と話す中で、求人に出ていない仕事が見つかることもあります。地方では、公募せずに人づてで採用を決める企業が実際に存在します。デメリットは明確で、収入がない期間が発生することです。貯金を削りながら探すと、焦って条件の悪い仕事を選んでしまいます。
現実的な折衷案があります。移住前に「収入の半分を確保しておく」形です。リモートで続けられる仕事を1つ持って移住し、残りを現地で探す。この形なら、焦らずに選べて、現地の様子も見られます。私の周りでこの形をとった人たちは、移住後の満足度が高い傾向がありました。
もう1つ、地域を選ぶ順番について。移住先を先に決めると、その地域の産業構造に自分を合わせることになります。製造業が中心の地域、観光が中心の地域、農業が中心の地域では、募集される職種がまったく違います。逆に、自分ができる仕事を先に決めれば、その仕事の需要がある地域を候補にできます。データで見ると、地方の求人は医療や介護、建設、製造、運送に集中しています。この分野の経験がない人が、いきなり移住先を決めるのは危険です。
移住のパターンを3つに分けて理解する
移住は3つの型に分かれます。用語を押さえておくと、自治体の支援制度を調べるときに探しやすくなります。
Uターンは、地方出身者が都市部で働いたあと、故郷に戻る形です。実家や親族がいるので住居の心配が小さく、地域の人間関係にも入りやすい。移住の中ではもっとも障壁が低い型です。
Jターンは、地方出身者が故郷ではなく、故郷に近い地方都市に移る形です。実家との距離を保ちながら、県庁所在地クラスの都市で働くので、求人の数も確保できます。介護や子育ての事情がある人に選ばれる型です。
Iターンは、都市部出身者が地方へ移る形です。
Iターン就職とは、都会で生まれ育った人が地方へ移住して働くことを指しています。地方への旅行や出張などを通じて都会にはない魅力やメリットを感じ、Iターン就職を決意する人も少なくありません。 出典: nagasaki-iju.jp
Iターンはもっとも難易度が高い型です。縁がない土地なので、住居も人間関係もゼロから作ります。だからこそ、自治体の支援制度がこの層に向けて用意されています。旅行で気に入った土地を候補にする人が多いのですが、ここには注意が必要です。旅行で見るのは観光の面であって、生活の面ではありません。買い物、医療、通信環境、冬の気候、車の必要性。生活の条件を確認せずに決めると、1年で戻ることになります。
判断材料として有効なのが、移住前に2週間から1か月の滞在を試すことです。自治体が用意しているお試し住宅の制度を使えば、安い費用で生活を試せます。2週間住むと、観光では見えない部分が見えます。データを取る感覚で、日常の買い物にかかる時間や通信速度を実測しておくと、判断がぶれません。
移住後の働き方、7つの選択肢
移住後の働き方を7つに分けて、それぞれの特徴を書きます。
1つ目は、地元企業への転職です。もっとも多い形です。
地方移住後の働き方として最も多いのが、地元企業への勤務です。これまでのスキルや経験などが活かせる企業を探して、転職をするケースが多いです。地方企業に転職する場合は、求人サイトやハローワークなどを利用して職場を探すことになるでしょう。 出典: nagasaki-iju.jp
地元企業に入ると、地域に早く馴染めるという副次的な効果があります。同僚から生活の情報が入るので、移住直後の不便が減ります。注意点は、給与水準が都市部より低くなること、そして企業の規模が小さいために業務範囲が広くなることです。都市部で分業された環境にいた人が、総務も経理も採用も1人で担う環境に入ると、戸惑います。
2つ目は、今の仕事をリモートで続ける形です。通信環境が整っていれば成立します。収入が下がらないので、経済的にはもっとも有利です。ただし勤務先が移住を認めるかどうかが前提条件で、就業規則の確認が必要です。住居手当や通勤手当の扱いが変わる場合もあるので、実質的な手取りの変化を計算しておいてください。
3つ目は、フリーランスや業務委託です。場所に依存しない仕事であれば、移住しても顧客を維持できます。デザイン、ライティング、開発、動画編集、オンラインでの運用支援。この形は移住との相性が最もよいのですが、移住後にゼロから顧客を作るのは難しいので、移住前に取引先を確保しておく必要があります。
4つ目は、地域おこし協力隊です。自治体が任期付きで募集する制度で、地域の課題解決に関わりながら報酬を受けます。報酬の水準は自治体によりますが、年200万円台が目安で、別に活動費が支給される形が一般的です。任期は1年から3年で、任期後に定住して起業する人への支援制度もあります。収入は高くありませんが、地域に入る足がかりとしては有効です。
5つ目は、農業や林業、漁業です。担い手不足が深刻な分野なので、研修制度や就農支援が整っています。ただし初期投資と技術の習得に時間がかかるため、収入が安定するまで数年を見る必要があります。副業として小規模に始める形から入るのが現実的です。
6つ目は、医療や介護、保育です。資格があれば全国どこでも需要があります。地方移住との相性という点では、この分野の資格を持っている人がもっとも有利です。移住を考えている人が資格取得から入るという逆算も成立します。
7つ目は、起業と事業承継です。地方では後継者のいない事業が多く、既存の事業を引き継ぐ形の選択肢があります。ゼロから作るより顧客がすでにいるので、立ち上がりが早い。設備や取引先ごと引き継げる案件もあります。
都市部と地方の賃金差を数字で見る
感覚ではなく数字で見ます。地方移住を考えるとき、賃金だけを比べると必ず不利に見えます。しかし比べるべきは手元に残る額です。
賃金の水準は、都道府県によって差があります。最も高い地域と低い地域では、平均的な賃金で年間100万円以上の差が出ます。同じ職種でも、求人票の提示額が2割から3割低いことは普通にあります。ここは事実として受け止めるべきです。
一方で、支出が下がります。家賃は分かりやすい例で、都市部で家賃12万円の物件と同等の広さが、地方では5万円から7万円で見つかります。差額は月5万円から7万円、年間で60万円から84万円です。駐車場代も安く、物件によっては無料で付いています。
ただし、増える支出もあります。車が必須になる地域では、1台あたり維持費が年間30万円から50万円かかります。夫婦で2台必要な地域もあります。暖房費も地域によって大きく変わり、寒冷地では冬季の光熱費が月2万円以上増えることがあります。ネット回線が選べない地域では、通信の選択肢が限られて料金が高くなる場合もあります。
計算の仕方を示します。年収が80万円下がり、家賃が年間72万円下がり、車の維持費が年間40万円増えるなら、差引きで48万円のマイナスです。この計算をせずに「地方は物価が安いから大丈夫」と考えると、想定と合いません。逆に、リモートで収入を維持できれば家賃の差額がそのまま手元に残るので、大きなプラスになります。だから前の節で、リモートで続けられる仕事の価値が高いと書きました。
職種ごとの単価の水準を把握しておくのも有効です。開発系の仕事の相場は工程や言語で整理されていて、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で帯を確認できます。文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。これらは場所に依存しにくい職種なので、移住後も同じ水準で受けられる可能性があります。移住先の求人票の額と、これらの相場を並べて比べてから決めてください。
仕事を見つける6つの経路
探し方が都市部と違います。経路を6つ挙げます。
1つ目は、自治体の移住相談窓口です。各都道府県と多くの市町村が移住支援の窓口を設けていて、地域の求人情報と支援制度の案内を持っています。オンラインでの相談に対応している自治体も多いので、移住前に使えます。求人サイトに出ていない情報を持っているのが強みです。
2つ目は、ハローワークです。地方の求人はハローワークに集中する傾向があります。都市部では求人サイトが主流ですが、地方の中小企業は掲載費用を抑えるためにハローワークを使います。求人サイトだけを見ていると、地方の求人の半分以上を見落とします。ハローワークの求人情報はオンラインで検索できるので、移住前に希望地域の求人の量と職種を確認してください。ここで「自分ができる仕事が何件あるか」を数えるのが、移住先を選ぶ最良の判断材料になります。
3つ目は、移住者向けの求人サイトと地域の求人メディアです。地域限定の求人サイトは、大手サイトに載らない企業を扱っています。
4つ目は、一般の転職サイトです。地方の拠点を持つ企業や、リモート可の求人を探すのに使います。年代と職種ごとの傾向が整理された転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方を見て、地方求人やリモート求人に強いサービスを選んでください。サイトによって扱う地域と職種の偏りがあるので、複数を併用するのが基本です。
5つ目は、地域おこし協力隊の募集情報です。全国の自治体の募集が集約されたサイトがあり、活動内容と報酬、任期が明記されています。移住と仕事が同時に決まるので、手続きの負担が小さいのが利点です。
6つ目は、業務委託のマッチングサービスです。場所を問わない仕事を受けるなら、この経路が実質的な求人票になります。どんな作業が発注されているかを見ると、自分のスキルで受けられる仕事があるかが判断できます。集客や情報管理の周辺業務をまとめたAI・マーケティング・セキュリティのお仕事の内容を見ると、地方にいても受けられる仕事の種類が具体的に見えてきます。
経路を選ぶ順番も書いておきます。まず2番目のハローワークで求人の量を数え、次に1番目の窓口で支援制度を確認し、並行して6番目で場所に縛られない収入を作る。この3つを同時に進めると、移住の計画が具体的になります。
使える支援制度を確認する
自治体の支援制度は、使わないと損です。ただし条件が細かいので、確認の順番を決めておきます。
代表的なのが移住支援金です。東京圏から地方へ移住して就業または起業した人に対して支給される制度で、世帯で最大100万円、単身で最大60万円という水準が基本です。18歳未満の子どもがいる場合の加算もあります。ただし、対象となる移住元と移住先の要件、移住後に就く仕事の要件(支援対象の求人に就業する、テレワークで元の仕事を続ける、起業するなど)が細かく決まっています。自分が該当するかは、移住先の自治体の窓口で確認するのが確実です。
住宅に関する支援もあります。空き家の改修費の補助、住宅取得の補助、家賃の補助。金額は自治体によって差が大きく、数十万円から数百万円の幅があります。子育て世帯への加算がある自治体もあります。
起業に対する支援も用意されています。
長崎県では起業を志す人へ向けて、さまざまな支援を行なっています。例えば「長崎県地域産業雇用創出チャレンジ支援事業」では、長崎県内において地域の課題解決を図る事業の創業予定者に対し、最大200万円を支援しています。 出典: nagasaki-iju.jp
このように、地域の課題解決を掲げる事業には手厚い支援が付く傾向があります。起業を考えているなら、自分の事業が地域の課題とどう結びつくかを言葉にしておくと、支援を受けやすくなります。制度の名称と金額は年度ごとに変わるので、必ず当該年度の募集要領を確認してください。移住や地方創生に関する制度の全体像は総務省の公表資料から辿れます。
注意点を1つ。支援金には要件があり、受給後に一定期間その地域に居住し続けることが条件になっている場合があります。短期間で転出すると返還を求められることがあります。制度を当てにして移住の判断をするのではなく、制度がなくても成り立つ計画を立てたうえで、使えるものを使う順番にしてください。
移住にかかる費用の相場を積み上げる
仕事の話と同じくらい重要なのが、移住そのものにかかる費用です。ここを甘く見積もると、仕事が決まる前に資金が尽きます。
内訳を積み上げます。引っ越し費用が、単身で県外へ移る場合10万円から20万円、家族4人なら30万円から60万円です。距離と荷物の量で変わり、繁忙期は1.5倍になります。賃貸物件の初期費用が家賃の4か月から5か月分で、家賃6万円なら24万円から30万円です。家電と家具を買い替えるなら20万円から40万円。車が必要な地域なら、中古で60万円から150万円、加えて任意保険と税金で年間15万円前後。
合計すると、単身で100万円前後、家族なら200万円から300万円が現実的な見込みです。ここに仕事が決まるまでの生活費を足します。3か月分を見込むなら単身で60万円、家族で90万円。つまり、移住の準備資金は単身で150万円、家族で300万円以上あると安心できます。
支援制度で一部は戻ってきますが、支給は移住と就業のあとになるため、立て替えが必要です。制度の入金時期を窓口で確認して、手元の資金で先に払えるかを計算しておいてください。
費用を下げる手もあります。自治体の空き家バンクを使うと家賃が月2万円台の物件が見つかることがあり、改修費の補助と組み合わせられます。引っ越しの時期を繁忙期から外すだけで数万円変わります。家具や家電は、移住者の交流の場で譲ってもらえることがあります。地方では、こうした個人間のやり取りが都市部より活発です。
年代別に見る選び方の違い
同じ地方移住でも、年代によって取るべき戦略が変わります。データで見ると、移住者の年代構成は20代から40代が中心で、50代以降は目的が変わります。
30代は、選択肢がもっとも広い年代です。転職市場でも評価され、体力もあり、新しい技術の習得も速い。地元企業への転職でも、リモートでの継続でも、起業でも成立します。子どもが小さいうちに移住すると、学校の環境を最初から選べるという利点もあります。この年代で気をつけるべきは、キャリアの断絶です。専門性が中途半端な時期に、専門と関係ない仕事に就くと、後で都市部に戻る選択肢が狭まります。移住後も専門を続けられる形を優先してください。
40代は、経験を活かす移住になります。管理の経験、業界の知識、取引先との関係。これらは地方企業から見て価値があります。中小企業が経験者を求めているので、条件交渉の余地もあります。一方で、年収が下がる幅は大きくなりやすいです。都市部の給与水準で評価されていた人が、地方の給与テーブルに入ると下がります。事業承継や幹部候補としての採用を狙うほうが、条件が合いやすい年代です。
50代以降は、収入の最大化より生活の質が主な目的になります。年金の受給までの繋ぎとして、週3日から4日の勤務や、技術を活かした業務委託を組み合わせる形が選ばれます。この年代で起業する人もいますが、回収期間を短く設計する必要があります。地域で必要とされている小さな事業、たとえば移動販売や配食、修理といった領域は、規模を追わない形で成立します。
20代で移住する場合は、地域おこし協力隊のような任期付きの制度が入口として使いやすいです。任期中に地域との関係を作り、その後の進路を決められます。まだ専門性が固まっていない時期なので、任期中に何を身につけるかを決めておくことが重要です。制度を経験として終わらせるか、次の仕事につなげるかは、その計画次第です。
失敗するパターンと、移住前に確認すべきこと
戻ってしまう人には共通点があります。ロジックで避けられる部分を挙げます。
1つ目は、収入の見込みを立てずに動いた場合です。貯金で数か月持つと考えて移住したものの、想定より仕事が見つからず、条件を下げて就職して不満が残る流れです。対策は前述のとおりで、移住前に収入の半分を確保することです。
2つ目は、生活インフラの確認漏れです。特に通信環境は、在宅で働くなら生命線です。光回線が来ていない地域、集落内で速度が出ない地域があります。物件を決める前に、その住所で使える回線の種類と速度を調べてください。携帯の電波も、キャリアによって差が出ます。実際に現地で速度を測るのが確実です。
3つ目は、車の前提を見落とした場合です。都市部で免許を使っていなかった人が移住すると、買い物にも通勤にも困ります。免許の取得、車の購入、冬用タイヤの費用。これらを初期費用に入れておく必要があります。
4つ目は、人間関係の想定不足です。地域の行事や自治会の活動が、都市部より密な地域があります。これを負担と感じるか、利点と感じるかは人によります。事前に移住者に話を聞くのが確実です。自治体の窓口に頼めば、先に移住した人を紹介してくれることがあります。
5つ目は、家族の合意が取れていない場合です。仕事は自分の問題ですが、生活は家族全員の問題です。配偶者の仕事、子どもの学校、医療機関へのアクセス。1人でも強く反対している状態で進めると、移住後に必ず問題になります。
確認のリストとして、次の7項目を移住前に埋めてください。1つ、自分が就く仕事とその収入見込み。2つ、家賃と光熱費を含む月の支出。3つ、通信回線の種類と実測速度。4つ、車の必要台数と維持費。5つ、最寄りの医療機関までの時間。6つ、買い物の手段と所要時間。7つ、家族全員の同意。この7つが埋まっていれば、判断を誤る確率は大きく下がります。
場所に縛られない仕事を作る手順と、市場を見てきた観察
移住との相性がもっともよいのは、場所に依存しない仕事です。作る手順を3段で示します。
第1段は、今の仕事のうち場所に依存しない部分を切り出すことです。全部をリモートにする必要はありません。資料作成、分析、原稿、設計、運用管理。こうした作業は場所を問いません。自分の業務を工程に分解して、リモートで完結する工程を書き出してください。それが移住後に受けられる仕事の候補です。
第2段は、移住の前にその形で1件受けることです。実際に受けてみると、通信環境、時間の使い方、連絡の頻度といった実務の条件がわかります。移住してから初めて試すのは危険です。私は一度、通信が不安定な環境から打ち合わせに入って、音声が途切れて話が進まないという失敗をしました。回線の質は仕事の質に直結します。事前に試しておけば防げた事故です。
第3段は、収入源を2つ以上に分けることです。1社に依存していると、その1社の事情で収入がゼロになります。地方に移ると、代わりの仕事をすぐに探すのが難しいので、都市部より分散の重要性が高くなります。2社から3社、あるいは業務委託と現地の仕事の組み合わせで構成してください。
分散のさせ方にも順序があります。同じ業種の顧客を3社持つと、その業種が不調になったときに同時に止まります。業種を分けるか、業務の種類を分けるほうが安全です。たとえば運用の継続業務を1つ持ち、単発の制作を複数受ける形にすると、継続業務が生活費を支えて単発が上振れを作ります。移住後の収入設計は、額の大きさより止まりにくさを優先してください。
技術系の資格を1つ持っておくと、リモートの仕事を探すときの説明が楽になります。ネットワークの基礎を体系的に押さえたことを示せるCCNA(シスコ技術者認定)のような資格は、通信や情報システムの関連業務で会話の土台になります。地方の企業でも情報システムの担当を置けないところが多く、外部に頼る需要があります。
在宅ワークと業務委託の市場を運営者の立場で見てきて、地方に住んでいる人について気づいたことがあります。仕事が続く人は、居住地を理由に条件を下げていません。逆に「地方だから安くてもやります」と言ってしまう人は、そこから単価が上がらなくなります。発注する側は、成果物と進め方を見ています。どこに住んでいるかは、納品物の質に関係ありません。値付けを自分から下げないことが、長く続ける条件です。
もう1つ、手取りの話をします。同じ報酬額でも、仲介が何段か入る経路では手数料が抜かれます。手数料0%の直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手元に残る割合は厚くなります。運営者として見てきた限り、地方に移って生活費が下がった人が最も恩恵を受けるのはこの部分です。支出が下がった状態で手取りの厚い経路を選べると、都市部にいたときより可処分所得が増える構造になります。
最後に、進める順番をまとめます。自分ができる仕事を工程に分解し、場所に依存しない部分で収入の半分を作る。次にハローワークで候補地域の求人を数え、自治体の窓口で支援制度を確認する。並行してお試し住宅で2週間暮らし、通信速度と買い物の時間を実測する。この順番で進めれば、移住の判断を感覚ではなくデータで下せます。憧れで決めると戻りますが、数字で決めた移住は続きます。
よくある質問
Q. 仕事は移住前に決めるべきですか、移住後に探すべきですか?
移住前に収入の半分を確保しておき、残りを現地で探す形が現実的です。移住前に全部決めると現地を知らないまま就職先を選ぶことになり、移住後に探すと収入がない期間に焦って条件の悪い仕事を選びがちです。
Q. 地方に移住すると収入はどれくらい下がりますか?
同じ職種でも求人票の提示額が2割から3割低いことは普通にあります。一方で家賃は月5万円から7万円下がることが多く、逆に車の維持費が1台あたり年間30万円から50万円増えます。年収の下げ幅と支出の増減を足し引きして判断してください。
Q. 地方の求人はどこで探せばよいですか?
地方の中小企業はハローワークに求人を出す傾向が強く、求人サイトだけを見ると半分以上を見落とします。ハローワークの求人検索で候補地域の求人数を数え、自治体の移住相談窓口で非公開の情報と支援制度を確認するのが確実です。
Q. 移住支援金はいくらもらえますか?
東京圏から地方へ移住して就業または起業した場合、世帯で最大100万円、単身で最大60万円が基本の水準です。18歳未満の子どもがいる場合の加算もあります。移住元と移住先、就く仕事の種類に細かい要件があるので、移住先の自治体窓口で確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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