介護老人保健施設は職場によって何が違うのか|規模と運営で変わる働きやすさ

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
介護老人保健施設は職場によって何が違うのか|規模と運営で変わる働きやすさ

この記事のポイント

  • ✓介護老人保健施設(老健)は同じ基準で運営されていても
  • ✓在宅復帰への力の入れ方
  • ✓運営法人と病院との関係

介護老人保健施設(老健)は、職場によって何が違うのか。結論から言うと、違いが出るのは「法律で決まった基準の上に、何を上乗せしているか」の部分です。人員や設備の最低基準はどの老健も同じですが、在宅復帰にどれだけ力を入れているか、定員と併設部門の構成、運営している法人と病院との関係、配置の手厚さと設備、職員を育てて処遇する仕組み。この5つで、介護職員の働き方は別の職場かと思うほど変わります。

老健の選び方を解説する記事の多くは、入所を考えるご本人やご家族に向けて、費用や入所条件を中心に書かれています。これから老健で働こうとする人、あるいは別の老健への転職を考えている人にとって知りたいのは、「その老健の中で、職員がどう動いているか」のはずです。

この記事では、老健ごとに違いが出る5つのポイントを、働く側の視点で整理します。そのうえで、求人票や公開情報、見学でその違いを読み取る方法をまとめます。

老健はどこも同じではない:基準は共通、差は上乗せ部分に出る

まず、どの老健にも共通する部分を確認しておきます。

老健は介護保険法にもとづく施設で、病院を退院した方などが、リハビリや医療的なケアを受けながら自宅に戻る準備をする場所です。全国に約4,200施設あり、定員は100人前後の施設が多く見られます。

人員の基準は、どの老健にも同じように適用されます。

・医師:入所者100人に対して常勤換算で1人以上 ・看護職員と介護職員:合わせて入所者3人に対して1人以上(そのうち看護職員はおおむね7分の2) ・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士:入所者100人に対して1人以上 ・支援相談員、介護支援専門員、栄養士または管理栄養士など

特養との比較でよく語られるのが、医療体制の違いです。

大きな特徴のもうひとつとしては、医療体制が充実している点です。 介護老人保健施設には、1人以上の医師が常勤しています。看護職員が24時間常駐している施設もあり、介護だけでなく医療ケアも必要に応じて受けられるため、長期入院後の人にとっても心強いと言えます。 また、看護職員の配置基準は、特養より手厚く設定されているため、たんの吸引やインスリン注射、服薬管理、胃ろうにも対応してもらえる施設もあります。施設ごとに確認が必要です。 出典: kaigo.benesse-style-care.co.jp

注目したいのは、引用の最後にある「施設ごとに確認が必要です」という一文です。看護職員が24時間いるかどうか、どこまでの医療的なケアを受け入れるかは、老健ごとに違います。これは入所する側にとっての違いであると同時に、働く側にとっては「夜勤に看護職員がいるか」「どのくらい医療的な管理が必要な方を介護するか」という違いになります。

設備についても、機能訓練室、談話室、食堂、浴室、診察室などの設置が基準で決まっています。ただし、同じ「浴室」でも、機械浴や特殊浴槽が何台あるか、移乗用のリフトが導入されているかは、施設によって大きく異なります。

つまり、基準は「どの老健でも最低限そろっているもの」を示しているにすぎません。正直なところ、求人票に「基準を満たした人員配置」と書いてあっても、それは何も書いていないのとほぼ同じです。働きやすさの差は、基準を超えてどこに人やお金を使っているかに表れます。ここからは、その差が出る5つのポイントを順に見ていきます。

違い1:在宅復帰への力の入れ方(施設の区分)

老健ごとの違いで、介護職員の働き方にもっとも大きく影響するのが、在宅復帰への力の入れ方です。

老健は、2018年の介護報酬改定以降、在宅復帰や在宅療養支援の実績を点数化した指標によって、いくつかの区分に分けられています。指標には、在宅復帰率、ベッドの回転率、入所前後の訪問指導の割合、リハビリ専門職の配置の割合、喀痰吸引や経管栄養を受ける方の割合などが含まれます。

区分 指標の目安 施設の特徴 介護職員の働き方への影響
超強化型 70点以上などの要件 在宅復帰に最も力を入れる 入退所の回転が早く、記録と連携の量が多い
在宅強化型 60点以上などの要件 在宅復帰に力を入れる 入退所が多い。リハビリとの連携が密
加算型 40点以上などの要件 一定の在宅支援を行う 入退所と長めの入所が混在
基本型 20点以上などの要件 基本的な在宅支援を行う 入所期間が比較的長め
その他型 基本型の要件を満たさない 長期入所の方が多い傾向 特養に近い働き方になることがある

在宅復帰に力を入れている老健ほど、介護報酬が高く設定されています。そのため、経営が安定しやすく、リハビリ職や看護職員を手厚く配置できる傾向があります。一方で、介護職員にとっては、入退所の対応、入所前後の自宅訪問への同行、ご家族への介助指導など、業務の種類と量が増えます。

基本型やその他型に近い老健では、入所期間が長くなる傾向があり、同じ利用者さんと数か月から年単位で関わることもあります。業務の変化は少なめですが、看取りに近い対応が必要になる場面も出てきます。

どちらが働きやすいかは、何を求めるかによります。医療やリハビリの知識を身につけて、介護職としての幅を広げたいなら、在宅強化型以上の老健で得られる経験は大きいでしょう。変化の少ない環境で落ち着いて働きたいなら、基本型に近い老健のほうが合うかもしれません。

面接で「この施設は在宅強化型ですか」と質問するのは、まったく失礼ではありません。むしろ、老健の仕組みを理解している応募者として好意的に受け止められることが多いはずです。

違い2:定員の規模と、併設している部門

2つ目の違いは、施設の規模と、同じ建物や敷地の中にどんな部門があるかです。

定員の規模による違い

老健の定員は、50人程度の小さな施設から、150人を超える大きな施設まであります。また、本体の老健とは別の場所に、定員29人以下のサテライト型や小規模の老健を置いている場合もあります。

規模 働く側から見たよい点 働く側から見た注意点
小規模(50人前後以下) 職員全員の顔が分かり、情報が伝わりやすい 1人が休むと影響が大きい。夜勤の人数が少ない
中規模(100人前後) フロアごとにチームがあり、配置のバランスがとりやすい フロアによって雰囲気が違うことがある
大規模(150人以上) 研修や委員会の体制が整いやすい。異動の選択肢がある 情報が行き渡りにくく、決定に時間がかかることがある

規模の大きい施設では、教育担当の職員を置いたり、新人研修のプログラムを組んだりする余裕が生まれやすい傾向があります。未経験者や経験の浅い人にとっては、学ぶ仕組みが整っていることが多いのは利点です。一方、小規模な施設では、職員同士の距離が近く、自分の意見がケアに反映されやすいと感じる人もいます。

併設部門による違い

多くの老健は、入所部門のほかに、次のような部門を併設しています。

・通所リハビリテーション(デイケア) ・短期入所療養介護(ショートステイ) ・訪問リハビリテーション ・認知症専門棟 ・居宅介護支援事業所

併設部門が多い老健では、同じ法人の中で配属を変える選択肢があります。たとえば、子育て中は夜勤のないデイケアで働き、落ち着いたら入所部門に戻る、といった働き方ができます。

一方で、ショートステイを併設している老健では、数日単位で利用者さんが入れ替わるので、入所部門の職員の業務量が増える場合があります。ショートステイの利用者さんは、自宅での生活の様子が分からない状態で受け入れることもあり、観察と申し送りに気を使います。認知症専門棟がある老健では、配属によって必要な知識や対応が変わります。

ユニット型かどうか

老健にも、10人前後の少人数を1つの単位としてケアするユニット型と、フロア単位でケアする従来型があります。ユニット型は一人ひとりに合わせたケアをしやすい一方、ユニットごとに少人数で動くので、一人あたりの責任が重くなりがちです。従来型は、多くの職員で協力して動ける反面、流れ作業のようなケアになりやすいという指摘もあります。

違い3:運営する法人の種類と、病院との関係

3つ目の違いは、誰がその老健を運営しているかです。

老健を開設できるのは、医療法人、社会福祉法人、地方公共団体などに限られています。実際には、医療法人が運営している老健が全体の7割以上を占めています。これは、老健がもともと病院と在宅の間をつなぐ中間施設として作られた経緯によるものです。

医療法人が運営する老健

医療法人の老健は、同じ法人が病院やクリニックを運営していることが多く、病院と同じ敷地や隣接地に建っている場合もあります。

・利用者さんの急変時に、同じ法人の病院と連携しやすい ・病院からの退院者を受け入れる流れができていて、入所の数が安定しやすい ・医療寄りの文化が強く、医療の用語や記録の方法が病院に近いことがある ・法人内に病院の看護助手や、クリニックの通所リハビリなど、異動先がある

社会福祉法人が運営する老健

社会福祉法人の老健は、同じ法人が特養やデイサービス、グループホームなどを運営していることが多く見られます。

・生活の視点を重視したケアの文化を持つことが多い ・法人内の特養やグループホームへの異動の選択肢がある ・地域の福祉のネットワークとのつながりが強い

地方公共団体などが運営する老健

自治体や公的な団体が運営する老健は数が少ないですが、給与の規程や休暇の制度が整っていることが多いのが特徴です。一方で、運営の見直しで民間の法人に移管されるケースもあります。

どの法人がよい、ということではありません。見るべきは、その法人の中で自分がどういうキャリアを描けるかです。医療の知識を深めたいなら病院を持つ医療法人、介護の幅を広げたいなら多様な事業を持つ社会福祉法人、というように、法人の事業の広がりが、長く働いたときの選択肢を決めます。

もうひとつ、病院との関係が働き方に与える影響があります。病院に隣接した老健では、夜間に医師への連絡がつきやすく、介護職員が急変の対応で抱える不安は小さくなりがちです。反対に、病院とのつながりが薄い独立した老健では、夜間は看護職員が施設の医師にオンコールで相談する形が中心になります。面接では「夜間の急変時は、どういう流れで医師に連絡しますか」と聞いておくと、実態が分かります。

法人の規模も見ておきたい点です。複数の老健や病院を運営する大きな法人では、給与の規程や研修の制度が法人全体で統一されていて、施設間の異動や昇進の道筋が見えやすい傾向があります。1施設だけを運営する法人では、施設長の考え方がそのまま職場の文化になりやすく、合えばとても働きやすい一方、合わないと逃げ場がありません。法人のホームページで、運営している事業所の一覧や、理念、職員向けの研修の取り組みを確認しておくと判断材料になります。

違い4:人員配置の手厚さ、夜勤体制、設備と記録の仕組み

4つ目の違いは、日々の働きやすさに直結する、人員配置と設備です。

人員配置の手厚さ

基準では看護職員と介護職員を合わせて入所者3人に対して1人以上ですが、実際にはこれより手厚く配置している老健も多くあります。求人票に「2.5対1」「2対1」と書かれていれば、基準より余裕のある配置と読み取れます。ただし、この数字は常勤換算で、看護職員を含んでいることに注意してください。介護職員だけの配置が手厚いとは限りません。

夜勤の体制

夜勤の人数は、施設の定員やフロアの構成で変わります。見ておきたいのは次の3点です。

・1フロアあたりの夜勤者の人数と、担当する利用者さんの人数 ・看護職員が夜勤に入るのか、オンコール対応なのか ・夜勤の時間(16時間程度の長時間夜勤か、8時間程度の2交代・3交代か)

同じ老健でも、看護職員が夜勤にいる施設と、いない施設では、介護職員の夜間の緊張感がまったく違います。

設備と福祉用具

移乗用のリフト、スライディングボード、座ったまま入浴できる機械浴、高さを調整できるベッドなどがそろっているかは、腰痛を防いで長く働けるかどうかに直結します。厚生労働省の腰痛予防対策の指針でも、介護作業では人力で人を抱え上げることを原則として避け、福祉用具を活用することが示されています。設備への投資を惜しまない老健は、職員の体を守ることにも意識が向いている可能性が高いと言えます。

記録と情報共有の仕組み

記録が紙中心か、タブレットやパソコンで入力する電子記録か。見守りセンサーやインカムを導入しているか。こうしたICTの活用の度合いも、老健ごとに差が大きい部分です。電子記録の老健では、介助の合間にその場で記録でき、勤務の終わりにまとめて書く負担が軽くなります。見守りセンサーがあると、夜間の巡回の負担が軽くなり、転倒の予兆にも気づきやすくなります。

国も介護現場でのICTや介護ロボットの活用を後押ししており、導入に対する補助の制度を設けている自治体もあります。導入が進んでいる老健は、職員の負担を減らすことに前向きな運営だと読み取ることができます。

違い5:職員を育てる仕組みと、処遇の決め方

5つ目の違いは、目に見えにくいけれど、長く働くほど効いてくる部分です。職員をどう育て、どう処遇するかの仕組みです。

教育の仕組み

新人に指導担当(プリセプター)をつけるか、独り立ちまでの期間を決めているか、定期的な勉強会があるか。老健ではリハビリ職や看護職員が施設内にいるので、移乗の方法や嚥下、感染対策について、専門職が講師になって勉強会を開いている施設もあります。こうした仕組みがある老健では、経験の浅い職員でも、専門職の知識を日常的に吸収できます。

反対に、教育の仕組みがなく「見て覚えて」という文化の老健では、先輩によって教え方が違い、新人が混乱しやすくなります。求人票の「研修制度あり」だけでは区別がつかないので、面接で「入職後の研修は何日間で、誰が担当しますか」と具体的に聞くことが必要です。

キャリアの道筋と処遇改善の配分

介護職員の給与には、国の処遇改善の加算が上乗せされています。この加算を取るには、職員の職位や能力に応じた賃金の体系を整えることなどが要件になっており、上位の区分を取っている老健ほど、キャリアの道筋が明文化されている傾向があります。どの区分を取っているかは、介護サービス情報公表システムや、施設内の掲示で確認できます。

加算をどう配分するかは、施設ごとに決めています。経験年数や資格に応じて厚く配分する施設もあれば、全員に均等に配分する施設もあります。介護福祉士を取ったときにどのくらい手当が上がるのか、リーダーになるとどう変わるのかは、面接で聞いてかまいません。

身体拘束や虐待防止への向き合い方

介護施設には、身体拘束を適正化するための委員会や、虐待を防止するための研修の実施が義務づけられています。形だけ委員会を開いている施設と、実際に事例を検討してケアを見直している施設では、職場の空気がまったく違います。見学のときに、ベッドの柵やミトンの使い方、利用者さんへの声かけの丁寧さを観察すると、その施設のケアの考え方が見えてきます。

職員を育てる仕組みと、利用者さんを大切にする文化は、たいてい同じ根っこから出ています。教育に力を入れている老健は、ケアの質にも力を入れていることが多いのです。

求人票と公開情報から違いを読み取る方法

ここまでの違いを、応募する前にどう確かめればよいのか。まずは、書類と公開情報から読み取る方法を整理します。

求人票で見る項目

・施設の区分(在宅強化型などの記載があるか) ・定員と、配属先の部門(入所、デイケア、ショートステイ、認知症専門棟) ・人員配置の比率(基準より手厚い記載があるか) ・夜勤の時間と回数の目安、看護職員の夜勤の有無 ・運営法人の名称と、同じ法人のほかの事業所 ・研修制度と資格取得支援の中身 ・福祉用具や電子記録の導入についての記載

求人票に書かれていない項目は、それだけで「書くほどの特徴がない」と判断するのは早計ですが、面接で確認すべき項目のリストになります。

介護サービス情報公表システムを使う

厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システムでは、全国の介護事業所の情報を検索できます。老健の場合、次のような情報が公開されています。

・定員と、実際の利用者の数 ・職種ごとの従業者の数(常勤と非常勤の内訳) ・従業者の経験年数の分布 ・前年度の採用者数と退職者数 ・介護報酬の加算の取得状況 ・利用者の要介護度の分布

特に参考になるのが、採用者数と退職者数、経験年数の分布です。退職者数が採用者数に近い、あるいは経験年数の短い職員ばかりという老健は、定着に課題を抱えている可能性があります。反対に、経験年数5年以上の職員が多い老健は、長く働ける環境が整っていると考えられます。加算の取得状況からは、在宅復帰への取り組みや、職員の処遇改善に取り組んでいるかも読み取れます。

同じ求人が出続けていないか

求人サイトで施設名を検索し、同じ職種の募集が年中出ていないかを確かめるのも、手軽で有効な方法です。常に募集がある施設は、規模が大きくて定期的に採用しているだけのこともありますが、辞める人が多いこともあります。公開情報の退職者数と合わせて判断すると精度が上がります。

公開情報を見るときの注意点

介護サービス情報公表システムの情報は、事業所が自ら報告した内容をもとにしていて、更新の時期にずれがあることもあります。数字は職場の傾向をつかむための目安として使い、最終的には見学や面接で確かめるのが確実です。また、1年分の退職者数だけで判断せず、定員の規模と比べて多いか少ないかを考えることも大切です。定員150人の施設で退職者が5人なのと、定員50人の施設で5人なのとでは、意味がまったく違います。

見学と面接で確かめること

書類と公開情報で候補を絞ったら、見学と面接で実態を確かめます。老健の多くは見学を受け入れているので、応募の前後に申し込むのがおすすめです。

質問・観察のポイント 答えや様子から分かること
カンファレンスに介護職員は参加しますか 介護職員の観察が方針づくりに生かされているか
夜間の急変時は、どういう流れで医師に連絡しますか 夜間の医療体制と、介護職員の負担の大きさ
入所は週に何件くらいありますか 入退所の回転の早さと、業務の変化の量
リフトなどの福祉用具はフロアで使われていますか 腰痛予防への取り組みと、職員の体への配慮
記録は紙ですか、電子ですか 記録にかかる時間と、残業の出やすさ
前年度に入った介護職員は、いま何人残っていますか 定着の状況と、新人を育てる力
法人内で異動の希望は出せますか 長く働いたときのキャリアの選択肢

見学では、質問の答えだけでなく、フロアの様子を観察してください。見るべきは、職員同士が短く声をかけ合っているか、リハビリ職がフロアに出てきて介護職員と話しているか、利用者さんが日中に活動に参加しているか、の3点です。見学の時間帯は、昼食の前後や夕方など、フロアが動いている時間を選ぶと、実際の忙しさが分かります。

面接で具体的な数字を尋ねたときの反応も、職場を見極める材料になります。「昨年は4人入って3人が残っています」と具体的に答えてくれる施設は、定着を意識して取り組んでいる可能性が高いと言えます。答えをはぐらかされた場合は、公開情報の数字と照らし合わせてみましょう。

見学のときは、案内してくれる人が誰かにも注目してください。施設長や相談員だけでなく、現場のリーダーが案内してくれる老健は、採用に現場が関わっている証拠です。可能であれば、実際に働いている介護職員に「このフロアで大変なのはどんなときですか」と一言聞いてみると、パンフレットには載っていない実態が見えてきます。現場の職員が率直に答えてくれる職場は、風通しがよい傾向があります。

自分に合う老健のタイプを考える

最後に、ここまでの違いを踏まえて、働く人のタイプ別に合いやすい老健を整理します。

医療やリハビリの知識を身につけたい人

在宅強化型以上で、病院を持つ医療法人が運営する老健が候補になります。リハビリ職や看護職員との連携が密で、学べる量は多くなります。そのぶん業務の変化も多いので、変化を楽しめる人に向いています。

未経験や経験の浅い人

定員100人以上で、教育担当や新人研修のプログラムがある老健が安心です。夜勤に看護職員がいる施設を選ぶと、夜勤デビューのときの不安が小さくなります。

家庭との両立を優先したい人

デイケアなど夜勤のない部門を併設していて、法人内で異動の相談ができる老健が向いています。

同じ利用者さんとじっくり関わりたい人

基本型に近い区分で、入所期間が比較的長い老健が合いやすいでしょう。場合によっては、老健ではなく特養やグループホームのほうが合うこともあります。

体への負担を減らして長く働きたい人

リフトや機械浴などの設備が整い、電子記録や見守りセンサーを導入している老健を選びましょう。

将来、介護福祉士やケアマネジャーを目指したい人

処遇改善の加算を上位の区分で取り、資格ごとの手当やキャリアの道筋が明文化されている老健が向いています。居宅介護支援事業所を併設している老健なら、ケアマネジャーの資格を取ったあとに法人内で役割を移せる可能性もあります。

どのタイプにも完全に当てはまる老健は、なかなかありません。自分がいちばん譲れない条件を1つか2つに絞り、その条件で候補を比べると、選びやすくなります。

介護職の給与は、老健の区分や法人、夜勤の回数、資格によって違います。介護職員の年収・単価相場では、介護職員の平均年収や経験年数による違いを整理しています。応募先の給与が相場のどのあたりにあるかを知っておくと、条件の比較がしやすくなります。老健では看護職員も同じ職場で働いているので、夜勤体制を考えるうえで看護職員の働き方も参考になります。看護師の年収・単価相場では、看護師の平均年収や勤務先による違いを確認できます。

20年この市場を見てきた立場から考える、職場の選び方の本質

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、職場選びで後悔が少ない人には共通点があります。給与の額や施設のきれいさより先に、「その職場で自分の時間と力がどう使われるか」を確かめているのです。

運営者として見てきた限りでは、介護の現場で長く働いてきた人ほど、職場を選ぶ目が具体的です。夜勤の体制、記録の方法、他職種との関係。この記事で挙げたような項目を、自分の言葉で質問できる人は、転職後のギャップが小さく、結果として長く働いています。

また、介護の現場で培った観察力や調整力を、介護の外で生かす人も少しずつ増えています。介護施設向けの研修資料の作成や、介護職向けの記事の執筆、職場選びの相談に乗る仕事などです。長く続いている人ほど、いきなり大きな仕事を取ろうとせず、「この人に頼むと現場を分かったうえで話が進む」と思ってもらえる関係を積み上げています。

こうした仕事では、依頼する側と受ける側が直接やり取りできるほうが、同じ予算でも受け手の手取りが厚く残ります。手数料0%で直接つながる形は、依頼者はより多くを頼めて、受け手は手取りが目減りしない、双方にとって無理のない構造です。

職場選びの相談に乗る側に関心がある方には、国家資格のキャリアコンサルタントという道もあります。キャリアコンサルタントでは、資格の概要や受験の流れ、どんな場面で生かせるかを整理しています。老健の違いを自分の言葉で説明できるほど職場を見てきた経験は、同じ業界で職場に悩む人の相談に乗るときの土台になります。

老健は、同じ名前の施設でも中身が大きく違います。区分、規模と部門、法人、配置と設備、育成と処遇。この5つに公開情報と見学での確認を加えれば、自分に合う老健はかなりの確度で見つけられます。

よくある質問

Q. 在宅強化型の老健と基本型の老健では、働き方はどう違いますか?

在宅強化型は在宅復帰に力を入れているため、入退所の回転が早く、記録や多職種との連携、入所前後の自宅訪問への同行など業務の種類が増えます。基本型に近い老健は入所期間が比較的長く、同じ利用者さんと長く関わりやすい一方、看取りに近い対応が必要な場面もあります。

Q. 医療法人と社会福祉法人の老健では、何が違いますか?

医療法人の老健は病院と連携しやすく、医療寄りの文化や病院への異動の選択肢があることが多いです。社会福祉法人の老健は、特養やグループホームなど福祉の事業を併せて運営していることが多く、生活の視点を重視したケアや福祉の事業所への異動の選択肢があります。

Q. 老健の働きやすさを応募前に調べる方法はありますか?

厚生労働省の介護サービス情報公表システムで、従業者の数や経験年数の分布、前年度の採用者数と退職者数、加算の取得状況を確認できます。求人サイトで同じ職種の募集が年中出ていないかを見るのも有効です。最終的には見学で職員同士の声かけや設備を確かめましょう。

Q. 規模の大きい老健と小さい老健では、どちらが働きやすいですか?

規模の大きい老健は研修や教育の体制が整いやすく、異動の選択肢もあるため、未経験者には安心材料が多いです。小さい老健は職員同士の距離が近く、意見がケアに反映されやすい一方、1人が休んだときの影響が大きく夜勤の人数も少なめです。何を重視するかで選びましょう。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月19日最終更新:2026年9月21日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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