実績ゼロで似顔絵・ヘッダー制作を始めるとき、練習作の見せ方には注意が要る


この記事のポイント
- ✓実績ゼロで似顔絵・ヘッダー制作を始めるとき
- ✓練習作をどう見せるかで信頼が決まります
- ✓有名人の似顔絵や他人の写真を使うリスク
実績ゼロの状態で似顔絵やヘッダーの制作を始めようとすると、必ず同じ壁にぶつかります。見せるものがない。だから練習で描いた絵を並べる。ここまでは自然な流れです。
問題はその中身です。相談を受けるなかで多いのが、有名人の似顔絵をずらりと並べたページと、ネットで拾った写真をもとに描いた作品を掲載しているケースです。これ、知らない人が本当に多いんですが、状況によっては権利の問題が生じます。しかも、実績としての見え方という点でも損をしています。
この記事では、実績ゼロの段階で練習作をどう扱えばいいのかを、権利の整理と見せ方の設計の両面から書きます。法律の話は必ず「つまりどういうことか」に言い換えるので、身構えずに読んでください。
実績ゼロは、隠す問題ではなく設計する問題
まず前提を整えます。実績がないこと自体は、そこまで大きなハンデではありません。似顔絵の依頼者が見ているのは、経歴ではなく仕上がりの方向性だからです。
依頼者が判断に使っているもの
依頼者は、自分や自分の家族、あるいは社員の顔が、どういう絵になるのかを知りたがっています。そこで見るのは、過去に何件やったかではなく、目の前にある絵が好みに合うかどうかです。
つまり、実績の件数は判断材料の一部でしかありません。掲載されている作品が、依頼したい用途に近ければ、それで足ります。ここを誤解して「実績がないから応募できない」と足踏みしている人が多いのですが、必要なのは実績ではなく、見せられる作品です。
実績ゼロが不利になる、本当の理由
では何が不利なのか。3つあります。
1つ目は、納品までの流れを説明できないこと。依頼者は、どういう順序で進むのかを知りたい。ここが不明瞭だと不安になります。2つ目は、第三者からの評価がないこと。3つ目は、掲載している作品の説明が薄いことです。
このうち1つ目と3つ目は、実績がなくても解消できます。工程を書き、作品に説明を添えればいいだけです。実績ゼロの人が本当に取り組むべきなのは、件数を作ることより、この2つを整えることです。
練習作を見せるときの、3つの落とし穴
ここからが本題です。練習作の掲載には、法的にも実務的にも注意点があります。
落とし穴1: 有名人の似顔絵をそのまま看板にする
練習の題材として有名人を選ぶのは、よくある方法です。顔の特徴がはっきりしていて、資料も見つけやすいからです。
ただ、それを自分のポートフォリオの中心に据えるのは、慎重になったほうがいい。人には、自分の肖像をみだりに使われない利益があり、著名人については、氏名や肖像が持つ顧客吸引力を無断で営利目的に使われない利益が問題になります。後者は一般にパブリシティ権と呼ばれています。
つまり、有名人の似顔絵を「仕事の受注につながる場所」に掲載するということは、他人の知名度を自分の営業に使っている状態になり得るということです。似顔絵として掲載している事例が世の中に存在するのは事実ですが、それは問題が起きていないだけであって、許されていることの証明ではありません。
※実際にどこまでが許容されるかはケースバイケースで、最終的な判断は弁護士に相談してください。ここでは「リスクがある領域だ」という認識を持つことが目的です。
落とし穴2: 他人が撮影した写真をもとに描く
これも見落とされがちです。写真には撮影者の著作権があります。ネット上で見つけた写真をそのまま資料にして描いた場合、絵の完成度によっては、写真の表現をなぞったと評価される可能性が出てきます。
似顔絵は写実的なイラストではないので、多くの場合は問題になりにくいのですが、構図、光の当たり方、背景まで写真どおりに再現していると話が変わります。つまり、「顔の特徴を借りる」のと「写真の表現を写す」のは別だということです。
安全なのは、資料として複数の写真を見つつ、構図は自分で決めることです。1枚の写真に依存しない。これだけでリスクはかなり下がります。
落とし穴3: 練習作を、依頼を受けた実績のように見せる
法務の観点で一番気にしてほしいのがここです。練習で描いたものを、あたかも受注案件であるかのように掲載するのは避けてください。
「株式会社◯◯様 名刺用」といった記載を、実際には依頼されていないのに書く。これは表示として誤解を招きますし、実在の企業名を無断で使えば、その企業との関係でも問題になります。
対処は簡単です。「練習作」「自主制作」と明記すればいい。それだけで誤認は生じません。そして、依頼者はそれを理由に敬遠したりしません。むしろ、正直に書いてある人のほうが信用されます。これ、実感として本当にそうです。
権利の整理を、実務の言葉に落とす
法律用語をいくつか出しましたが、実務でどう動けばいいかに置き換えます。
誰の許可が必要になるのか
似顔絵の掲載で関係してくる相手は、最大で3者います。描かれた本人、写真を撮影した人、そして制作を依頼した人です。
描かれた本人の許可は、顔を公開する以上、原則として必要だと考えてください。撮影者の許可は、写真をそのまま掲載する場合に必要になりますが、それを資料として絵を描くだけなら別の論点になります。依頼者の許可は、納品したものを実績として公開する場合に必要です。
この3つを整理せずに掲載を進めると、後から取り下げることになります。取り下げるのは、掲載するより手間がかかります。
迷ったときの安全側の選択
判断に迷うときは、次の順で考えると整理しやすくなります。
第1に、自分で用意した素材か。第2に、本人の許可があるか。第3に、公開しても誰も困らないか。この3つがすべて満たされていれば、掲載してまず問題ありません。1つでも欠けるなら、その作品は手元に置いて、練習の記録として保管しておく。無理に掲載する必要はありません。
作品数が足りないと焦る気持ちは分かりますが、リスクのある作品を並べて仕事を取っても、後から指摘されたときに失うもののほうが大きい。ここは急がないほうがいい。
模写、トレース、参考にする。この3つは別物です
言葉が混同されやすいので、整理しておきます。
トレースは、元の画像を下に敷いて線をなぞる行為です。仕上がりは元画像の輪郭と一致します。これを他人の写真やイラストに対して行い、その成果物を公開すると、元の表現をそのまま利用したと評価されやすくなります。
模写は、元を見ながら手で描き写す行為です。トレースよりは自分の線が入りますが、構図も陰影も再現していれば、実質的にトレースと変わらない場合があります。
参考にするというのは、顔の特徴や資料としての情報を取り出して、構図や表現は自分で組み立てることです。似顔絵の制作で行われているのは、本来これです。
つまり、練習としてトレースや模写をすること自体は否定されませんが、その成果物を公開・営業に使うかどうかは別の判断だということです。手を動かす練習と、看板に掲げる作品は、分けて考えてください。
AIで生成した画像を素材に使う場合
近年は、AIで生成した人物画像を資料として使う人もいます。この扱いには注意が必要です。
生成に使ったサービスの利用規約によって、商用利用の可否や、生成物の権利の扱いが異なります。さらに、生成された顔が実在の人物に似てしまうことも起こり得ます。似た顔が出た場合、それを掲載すれば実在人物の肖像に関わる問題が生じかねません。
架空の人物を想定した練習作を作るなら、AIに頼らず自分で特徴を設計するほうが、説明できる範囲が広がります。「この作品はどうやって作りましたか」と聞かれたときに、はっきり答えられる作り方をしておいてください。
依頼者が抱く不安を、先に消しておく
実績ゼロの人に依頼するとき、依頼者側にも不安があります。その不安を1つずつ潰しておくと、件数の少なさは問題になりません。
不安1: 途中で連絡が取れなくなるのではないか
これが一番大きい不安です。制作を依頼したのに、進捗が分からないまま締切を迎えるという経験をした発注者は、少なくありません。
対処は、連絡の頻度をあらかじめ約束することです。「着手のご連絡、下描きのご提示、完成品のお渡しの3回、必ずご連絡します」と書いておく。約束された頻度があると、待っている側は安心します。
不安2: イメージと違うものが上がってくるのではないか
似顔絵は主観が入る制作物なので、この不安は当然のものです。
対処は工程で示します。下描きの段階で確認を挟み、そこで方向性を合わせる。「下描きの段階で方向性を確認いただき、ご納得いただいてから着色に進みます」と書いてあるだけで、不安の大半は解消します。
修正の回数も明記してください。2回までは無償、それ以降は追加料金という形が一般的です。回数を書くと制限のように見えますが、依頼者にとっては「2回は直してもらえる」という保証になります。
不安3: 権利関係でトラブルにならないか
法人が発注する場合、ここを気にする担当者は多いです。納品された絵を自社の名刺やWebサイトで使ってよいのか、後から制限されないか。
だからこそ、実績ゼロの段階から、利用範囲について書いておいてください。「納品後、ご指定の用途での利用は自由です。当方は実績としての掲載可否を事前にご相談します」。この2文があれば、依頼者は判断できます。
権利の扱いを最初から書いている人は、それだけで「分かっている人」に見えます。件数の実績より、この一文のほうが効く場面があります。
実績ゼロから、掲載できる素材を作る5つの方法
では、どうやって掲載可能な作品を用意するか。現実的な方法を挙げます。
方法1: 家族や友人に許可を取って描く
最も手堅い方法です。本人に「練習で描かせてほしい。ポートフォリオに載せたい」と伝えて、了承をもらう。口頭でも構いませんが、メッセージのやり取りとして残しておくとより確実です。
このとき、依頼者と同じ流れで進めてみてください。写真をもらう、要望を聞く、下描きを見せる、修正を受ける、納品する。実際の案件と同じ工程を通ることで、所要時間の実測もできます。作品と工程の両方が手に入るので、効率がいい。
方法2: 自分の顔を描く
許可の問題が一切発生しない方法です。プロフィール画像としても使えるので、一石二鳥になります。
似顔絵制作者のプロフィールが写真ではなく自作の似顔絵になっていると、それ自体が技術の証明になります。実績ゼロの段階では、この一手は費用ゼロで打てます。
方法3: 架空の人物を設定して描く
実在しない人物を想定し、「30代男性・IT企業勤務・SNSアイコン用」といった条件を自分で設定して描く方法です。
この方法の良いところは、案件を想定した見せ方ができる点です。「名刺用」「配信のヘッダー用」「法人の社員紹介ページ用」と用途を変えて描けば、対応範囲を示せます。架空である以上、権利の問題も起きません。
ただし、実在の人物に似すぎないよう注意してください。特定の人物を想起させる仕上がりになると、意味がなくなります。
方法4: 権利処理された素材を使う
モデルの許諾が取られている写真素材を使う方法もあります。ただし、素材の利用規約は提供元によって異なり、「加工の可否」「作品としての公開の可否」「商用利用の範囲」が細かく定められています。
規約を読まずに使うのが一番危険です。イラストの元資料として使えるか、成果物を公開できるか。この2点を必ず確認してください。読むのに10分かかりますが、後で消す手間よりはるかに安い。
方法5: 最初の1件を、条件を決めて受ける
無償や低額で最初の案件を受けるという方法もありますが、条件を先に決めてください。「実績として掲載させていただくことを条件に、この価格で承ります」と明示する。
ここを曖昧にすると、納品後に「掲載は困る」と言われて、結局手元に何も残りません。それに、価格を下げる代わりに何を得るのかがはっきりしていれば、安売りではなく取引になります。
ただし、無償で受け続けるのは避けてください。1件か2件で切り上げて、次からは正規の価格に移る。この線引きを最初に決めておくことが大切です。
ポートフォリオの構成を、依頼者の視点で組む
作品が用意できたら、並べ方の話になります。掲載場所として、クラウドソーシング系のサービスにポートフォリオ機能が用意されていることもあります。
こちらは似顔絵作成の事例サンプル・参考デザイン集・アイディア一覧ページです。ランサーズに登録している多数のクリエイターのポートフォリオが確認できます。おしゃれ・かわいい・かっこいいなど様々なタイプのデザインがあり、お気に入りのデザインを見つけて直接クリエイターに制作依頼が可能です。また、デザイン作成や仕事依頼時のアイディアにも活用いただけます。仕事を依頼したい方も、受けたい方も、まずはカンタン無料会員登録がおススメです。 出典: lancers.jp
依頼者は、こうした一覧のなかから好みのデザインを探しています。つまり、並んだ状態で目に留まるかどうかが最初の関門で、そこから個別のページに進んで詳細を読むという二段構えになっています。
1枚目に何を置くか
一覧で表示されるのは、多くの場合1枚目です。ここには、最も得意なタッチで、最も汎用性の高い用途の作品を置いてください。
やりがちなのは、一番手間をかけた大作を1枚目に置くことです。しかし、依頼したい内容と違えば、手間の量は伝わりません。「自分が頼みたいものに近いか」で見られていることを忘れないでください。
1作品ごとに、3つの情報を添える
画像だけを並べているポートフォリオは、情報量が足りません。各作品に、次の3点を添えてください。
用途(何に使う想定か)、条件(人数、タッチ、背景の有無)、そして制作の位置づけ(練習作か、依頼を受けたものか)です。この3点目が、前述の誤認を防ぐ部分にあたります。
「自主制作。30代男性のSNSアイコンを想定。線画と単色着色、背景透過で制作」。この一文があるだけで、読み手は状況を正確に理解できます。隠すよりも、書いたほうが信頼されます。
制作の流れと納期の目安を書いておく
実績ゼロの段階で最も効くのが、実はこの部分です。依頼者が不安なのは、頼んだ後どうなるか分からないことなので、工程を書けば不安の大半は消えます。
「ヒアリング(1日)、下描き提示(2日)、修正2回まで、完成データ納品(合計7日程度)」。こういう記載があるだけで、初めての依頼者でも判断できます。件数の実績がなくても、段取りの設計は示せます。
ポートフォリオの構成という考え方自体は、他の在宅職種でも共通しています。文章の分野での組み立て方はWebライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】に整理があり、掲載する情報の粒度や並び順の考え方は、そのまま似顔絵にも転用できます。
掲載場所は1か所に絞らない
作品を置く場所は、複数持っておいたほうがいい。クラウドソーシング系のポートフォリオ機能、SNS、自分のページ。それぞれ見に来る人が違います。
ただし、内容はばらばらにしないでください。どこを見ても同じ3枚が上に来て、同じ工程説明が書いてある状態にしておく。依頼者は複数の場所を見比べることがあるので、情報が食い違っていると不安になります。
更新の手間を考えると、まず1か所を作り込んで、それを他へ転載する形が現実的です。作り込む場所は、依頼者が実際に発注できる場所を選んでください。見てもらえても、そこから依頼できなければ意味がありません。
実績が1件入ったら、すぐに書き換える
最初の依頼が終わったら、その日のうちにポートフォリオを更新してください。時間が経つと、細部を忘れます。
書くのは、用途、人数、タッチ、制作にかかった日数、修正の回数。これらは次の依頼者にとって、判断材料そのものです。そして自分にとっても、次の見積もりの根拠になります。
実績1件は、ゼロとは決定的に違います。「依頼を受けて納品したことがある」という事実は、掲載作品の説得力を変えます。だからこそ、最初の1件は掲載許可を含めた条件を整えて受けることに意味があります。
積み上がるものは、件数ではなく関係
実績ゼロから始めた人が、数年後にどうなっているか。参考になる記録があります。
似顔絵イラストをはじめ、記念すべき1人目をお描きしたのが2023年2月なので、2年で200人の似顔絵を描いてきたことになります!たくさんの方々との出会いや、その一人一人の個性を描いた作品に触れることができたことは、私にとってとても大切な経験です。この人数が多いのか、少ないのか自分では判断しきれない部分もありますが、何より大切なのはこの道をコツコツ続けてこられたことだと思っています。毎回新しい依頼をいただくたびに、ドキドキしながらもワクワクし、それぞれの方とのふれあいを楽しむことができました。 出典: note.com
注目してほしいのは、件数の多寡ではなく「続けられたこと」を軸に振り返っている点です。実績ゼロから始めた人は、必ずここを通ります。1人目がいて、2人目がいて、その積み重ねになる。
そして、ここで挙げられた最初の1人も、当然ながら実績ゼロの状態で受けた依頼です。誰にでもその地点があります。焦って権利の怪しい作品を並べるより、正しく作った数枚から始めるほうが、後々まで使える資産になります。
単価の考え方についても、最初から高く設定できるわけではありません。段階的に上げていく設計の考え方は、Webライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】にある発想が参考になります。実績が積み上がるほど、価格の根拠を説明しやすくなるという構造は、職種を問わず共通しています。
市場を長く見てきた立場からの観察
ここで、フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた立場からの見え方を書いておきます。
運営者として見てきた限りでは、実績ゼロから始めて長く続いている人には、共通した順序があります。最初に整えるのが作品の数ではなく、「頼んだらどうなるか」の説明であることです。工程、納期、修正の回数、権利の扱い。これらを先に書いている人は、作品数が少なくても最初の依頼が入ります。逆に、作品を大量に並べているのに説明がない人は、見られてはいても声がかからない。この差は、20年見てきてかなり一貫しています。
もうひとつ、手取りの話をしておきます。始めたばかりの時期は1件あたりの金額が小さいので、そこから手数料が引かれるかどうかは体感に直結します。仲介手数料が乗らない直接取引の場では、依頼者は同じ予算でより多く頼めて、受け手は同じ仕事で手取りが厚くなる。手数料0%という条件は、金額の大小ではなく、続けられるかどうかに効いてくる質の違いです。
職種としてどういう案件が動いているのかは、似顔絵・SNSヘッダーのお仕事に整理されています。用途ごとの需要が見えると、どの練習作を用意すべきかの判断がしやすくなります。
対応範囲を広げたいときの隣接領域としては、ブランドの世界観づくりという文脈で作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事、SNS運用の需要という文脈でAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が近い位置にあります。
価格を決めるときは、近い制作職の水準を見ておくと基準ができます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場やソフトウェア作成者の年収・単価相場は、在宅の制作職がどのくらいの幅で動いているかを知る材料になります。
やり取りの文面に自信がないという方は、基礎を一度体系的に確認しておくと楽になります。ビジネス文書検定で扱う型は、見積書や納品連絡、掲載許可のお願いといった場面でそのまま使えます。制度や助成の情報を扱う際の書き方については福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法のように、根拠を示しながら書く形が参考になります。
最後に、記録の話をしておきます。誰にどの作品の掲載許可をもらったのか、いつ、どういう文面で了承を得たのか。これを1か所にまとめておいてください。表計算でも構いません。
数年経つと、必ず忘れます。忘れたまま掲載を続けている状態は、指摘を受けたときに説明できません。逆に、記録があれば「◯年◯月にご本人から掲載の了承をいただいています」と即答できます。この差は大きい。
許可の取得は、取った瞬間より、後から証明できるかどうかのほうが重要です。メッセージのやり取りをそのまま保存しておくだけでも十分です。手間としては1分もかかりません。
実績ゼロという状態は、いつか必ず終わります。終わったときに手元に残るのが、正しく作った作品と、正直に書いた説明であってほしい。権利の確認は面倒に感じるかもしれませんが、一度身につければ以降は自動的にできるようになります。法律はあなたの味方ですが、知らないままでは使えません。
よくある質問
Q. 実績ゼロでも似顔絵・ヘッダー制作の仕事は受けられますか?
受けられます。依頼者が見ているのは件数ではなく、掲載されている作品が自分の用途に合うかどうかです。ただし、工程や納期の目安を明示していないと不安を持たれます。作品数を増やすより先に、頼んだ後どう進むかの説明を整えてください。
Q. 有名人の似顔絵をポートフォリオに載せてもよいですか?
慎重に判断してください。著名人の氏名や肖像には顧客吸引力があり、それを無断で営利目的に使うことは問題になり得ます。受注につながる場所への掲載は避け、練習の記録として手元に保管するほうが安全です。判断に迷う場合は弁護士に相談してください。
Q. 掲載できる作品は、どうやって用意すればよいですか?
家族や友人に許可を取って描く、自分の顔を描く、架空の人物を設定して描く、権利処理された素材を使う、最初の1件を掲載許可付きの条件で受ける。この5つが現実的です。いずれも実際の案件と同じ工程を通すと、所要時間の実測もできます。
Q. 練習作であることは書いたほうがよいのでしょうか?
書いてください。依頼を受けていないものを受注実績のように見せると、誤解を招きます。「自主制作」「練習作」と明記したうえで、想定した用途と制作条件を添えるのが適切です。正直に書いてあるほうが、依頼者からの信用は高くなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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