業務委託契約と雇用契約は何が違うのか、責任と保険で比べる


この記事のポイント
- ✓業務委託契約と雇用契約の違いを
- ✓責任の重さと保険の扱いという2点から整理します
- ✓労災保険と雇用保険の有無
業務委託契約と雇用契約の違いを調べている人は、たいてい具体的な場面に直面しています。会社から業務委託に切り替えないかと打診された、副業で受ける仕事の契約書に業務委託と書かれていた、あるいは自分が発注する側で、どちらの形にすべきか迷っている。
結論から書きます。違いの本質は2つに集約されます。1つは、発注する側が仕事の進め方を指示できるかどうか。もう1つは、働けなくなったときに誰が生活を支えるかです。前者が法律上の性格を決め、後者が実際の損得を決めます。この記事では、条文と公的な一次資料に当たりながら、責任と保険という2つの軸で違いを並べます。
結論を表で先に並べる
細かい説明の前に、違いを1枚で見ます。
| 比べる点 | 雇用契約 | 業務委託契約 |
|---|---|---|
| 適用される法律 | 労働基準法などの労働関係法令 | 民法と契約の条項、フリーランス法 |
| 仕事の進め方 | 会社が指示できる | 受ける側の裁量 |
| 報酬の決まり方 | 時間に対して | 成果や業務に対して |
| 最低賃金 | 適用される | 適用されない |
| 残業代 | 発生する | 発生しない |
| 年次有給休暇 | 発生する | なし |
| 労災保険 | 強制適用 | 対象外(特別加入の道あり) |
| 雇用保険 | 要件を満たせば加入 | 対象外 |
| 健康保険と年金 | 会社と半分ずつ負担 | 全額を自分で負担 |
| 契約の終了 | 解雇の制約がある | 契約の条項と民法による |
| 経費 | 原則として認められない | 必要経費として差し引ける |
この表のうち、実際に手取りと安心を左右するのは下半分です。上半分は制度の建前で、下半分が生活の話です。順に見ていきます。
契約の型そのものが違う。雇用、請負、委任という3つの入れ物
法律の世界では、業務委託契約という名前の契約類型は存在しません。実務で使われている呼び名です。中身は民法の請負か、委任か、準委任のいずれかに当たります。
請負については、民法にこう書かれています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 出典: laws.e-gov.go.jp
ここに「仕事を完成すること」と「その結果に対して」という文言が入っている点が決定的です。請負では、完成という結果が約束の中身になります。途中まで作っただけでは報酬は発生しません。
委任は、法律行為を頼む契約です。法律行為でない事務の委託には、民法656条により委任の規定が準用されます。これが準委任で、コンサルティングや運用の代行はここに入ります。委任や準委任では、完成そのものではなく、注意を尽くして事務を処理することが約束の中身になります。
一方、雇用契約は労働力を提供する契約です。成果が出たかどうかではなく、指示に従って労働に従事したことに対して賃金が支払われます。同じ「仕事をしてお金をもらう」形でも、約束している中身が違うわけです。
労働時間と報酬のルールが適用されるかどうか
雇用契約なら労働基準法が適用されます。1日8時間、1週40時間という枠があり、これを超えれば割増賃金が発生します。最低賃金を下回る賃金は認められません。6か月続けて働いて所定労働日の8割以上出勤すれば年次有給休暇が発生します。
業務委託契約にはこれがありません。3日徹夜して納品しても割増はつきません。時間あたりに換算すると最低賃金を下回っても、契約として成立します。休んだ日の報酬もありません。
正直なところ、ここを軽く考えて業務委託に切り替える人が多すぎます。月の報酬額が同じなら手取りは増えるように見えますが、残業代と有給休暇と社会保険料の会社負担分がまとめて消えています。額面が同じなら実質は減ります。切り替えを打診されたときは、額面ではなく年間の手取りと保険の負担を並べて計算してください。
仕事の結果に対する責任の重さが違う
責任の軸で見ると、業務委託のほうが重いです。
雇用契約では、労働者が指示どおりに働いた結果として成果が出なくても、賃金は支払われます。成果のリスクを負うのは会社です。ミスをして会社に損害を与えた場合も、労働者に全額を負わせることは制限されます。裁判例では、事業の性質や労働者の地位、注意の程度などを考慮して賠償額を大きく減らす扱いが定着しています。
業務委託では、成果を出せなければ報酬が発生しません。請負なら完成が条件です。さらに、納めたものが契約の内容に適合していなければ、受けた側は追完の請求を受けます。民法562条は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求できると定めています。この契約不適合責任は請負にも準用されます。
平たく言えば、作り直しを無償で求められる場合があるということです。修正の回数を契約書に書いていないと、この境目が曖昧になります。契約の段階で、修正の範囲と回数、追加費用が発生する条件を書面にしておくことが自分を守る手当てになります。
損害が出たときに誰がどこまで負うのか
業務委託で起こりうる損害を3つに分けて考えると整理しやすいです。
第1に、納品物の不具合による損害です。作ったシステムの不備で発注した側の業務が止まった、といった場合です。契約書に損害賠償の上限条項があるかどうかで負担が大きく変わります。上限を報酬額と同額に設定する条項は実務でよく使われています。無制限の条項に署名すると、受け取る報酬の何倍もの請求が理屈上は成り立ちます。
第2に、情報の取り扱いによる損害です。預かったデータを流出させた場合、秘密保持契約に基づく責任が生じます。在宅で作業する人は、私用の端末と共用の保管場所を使う場面が多く、ここが弱点になりやすい部分です。
第3に、作業中の事故です。他人の物を壊した、けがをさせた、という場合です。雇用なら会社が加入している保険で対応されますが、業務委託では自分で備えることになります。フリーランス向けの賠償責任保険は年間の掛金がそれほど高くないので、対人や対物のリスクがある仕事を受ける人は検討する価値があります。
労災保険。業務中のけがをどう扱うか
保険の軸で見ると、最も差が大きいのが労災保険です。
雇用契約なら、労働者を1人でも雇えば労災保険は強制的に適用されます。保険料は全額が事業主の負担で、労働者の給与から引かれません。業務中や通勤中のけがや病気は、治療費が原則として全額給付され、働けない期間の補償も出ます。
業務委託は、原則としてこの対象外です。作業中に転んで骨を折っても、自分の健康保険で3割を負担して治療することになります。しかも、業務中のけがであることを理由に健康保険が使えないと扱われる場面もあり、扱いが厄介です。
ただし道はあります。厚生労働省は、令和6年11月から労災保険の特別加入の対象が広がり、特定受託事業に従事する方が新たに対象になったと案内しています。加入は特別加入団体を通して行い、保険料は自分で払います。給付基礎日額を自分で選ぶ仕組みで、選んだ額に応じて保険料と給付が決まります。詳細は厚生労働省の労災補償のページに案内があります。強制適用と任意加入は前提が違うので、業務委託を選ぶなら加入の手続きは早めに済ませておくことを勧めます。
雇用保険。仕事がなくなったときの備え
次に差が大きいのが雇用保険です。雇用契約で週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがあれば被保険者になります。離職後は要件を満たせば基本手当を受け取れます。教育訓練給付金で講座の費用の一部が戻る仕組みも使えます。
業務委託はこれらの対象外です。取引が打ち切られても失業給付はありません。次の仕事が決まるまでの生活費は自分の貯えから出します。
この点を軽視すると危険です。フリーランス法16条は、一定の期間以上続いている業務委託について、契約の解除や更新しない場合には少なくとも30日前までに予告しなければならないと定めています。予告があるのは助けになりますが、30日で次の取引先が見つかるとは限りません。業務委託で生活する人は、生活費の何か月分を現金で確保するかを最初に決めておいたほうがよいです。
健康保険と年金。保険料と将来の受け取り
雇用契約で社会保険の対象になれば、健康保険と厚生年金保険に入ります。保険料は会社と半分ずつです。健康保険からは、病気で働けない期間に傷病手当金が出ます。出産のときは出産手当金が出ます。厚生年金に入っていれば、老後の年金は基礎年金に上積みされます。
業務委託では、国民健康保険と国民年金です。保険料は全額が自己負担です。国民健康保険には傷病手当金がありません。国民年金だけだと将来の年金は基礎年金のみになります。
この差を埋める手段はあります。国民年金基金、確定拠出年金、小規模企業共済はいずれも掛金が所得控除の対象になり、老後の上積みと税の軽減を同時に狙えます。所得補償の保険は、働けない期間の収入を補う役割を果たします。いずれも自分で申し込んで自分で払う仕組みです。会社が代わりに手続きしてくれることはありません。
税の扱い。源泉徴収と経費と消費税
税の面では業務委託に有利な点があります。必要経費を差し引けることです。仕事に使うパソコン、通信費、書籍、作業場所の家賃のうち事業に使っている割合は経費として扱えます。雇用契約の給与では、これが給与所得控除という決まった額に置き換わっていて、個別の経費を差し引くことはできません。
源泉徴収の扱いも違います。業務委託でも、原稿料や講演料など一定の報酬は源泉徴収の対象です。国税庁の案内では、支払額が100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%で計算します。150万円の原稿料なら、100万円を超える50万円に20.42%をかけて102,100円を足し、204,200円が源泉徴収されます。計算の詳細は国税庁の案内で確認できます。
注意したいのは、源泉徴収されない報酬もあることです。デザインやシステム開発の報酬は、支払う側が個人か法人か、業務の内容が何かによって扱いが変わります。源泉徴収されていない場合は、確定申告で自分が納めることになります。年末に慌てないよう、報酬の入金時に源泉の有無を記録しておいてください。
消費税も業務委託だけの論点です。売上が一定額を超えると課税事業者になります。インボイスの登録をするかどうかで、発注する側との条件交渉が変わる場面もあります。登録の判断は自分の売上規模と取引先の性質で決まるので、金額が近づいてきたら税務署か税理士に確認するのが確実です。
契約が終わるときの手続きが違う
終わり方も対照的です。
雇用契約では、労働基準法20条が解雇の予告を義務づけています。使用者は少なくとも30日前に予告しなければならず、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。加えて、解雇そのものに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。つまり、理由なく辞めさせることはできません。
業務委託では、原則として契約の条項に従います。民法641条は、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約の解除ができると定めています。委任については民法651条が、各当事者がいつでも解除できると定め、一定の場合に損害の賠償義務を置いています。つまり「いつでも解除できるが、損害は賠償する」という構造です。
この違いは、収入の安定に直結します。解雇の制約がある雇用と、原則として自由に解除できる業務委託では、翌月の収入が見通せる度合いがまるで違います。フリーランス法の予告義務は、この落差を一部埋めるものですが、埋めきるものではありません。
業務委託でも雇用と扱われる場合がある
ここが最も重要な点です。契約書に業務委託と書いてあっても、実態が雇用なら労働者として扱われます。
厚生労働省は、労働基準法9条の定義に基づき、労働が他人の指揮監督下において行われているかどうかと、報酬が指揮監督下における労働の対価として支払われているかどうかの2つの基準で判断すると説明しています。そして、この判断は請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、実態から総合的に行われます。
具体的な判断の材料は8つほどあります。仕事の依頼を断る自由があるか。作業の進め方まで指示されているか。場所と時間を決められているか。代わりの人を立てられるか。報酬が時間で決まっているか。道具を誰が用意しているか。報酬の額が同じ仕事をする社員と比べてどうか。他社の仕事を受けられるか。厚生労働省はこれを8問の自己診断チェックリストにしていて、フリーランス向けのリーフレットで公開しています。
自分の働き方が当てはまりそうなら、全国の労働基準監督署に設置されている労働者性に疑義がある方の相談窓口に相談できます。令和6年11月1日から設けられた窓口で、平日の8時30分から17時15分まで受け付けています。
フリーランス法で埋められた部分と埋まらない部分
令和6年11月1日にフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されました。厚生労働省の説明によれば、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対して、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備などが義務づけられます。法の取引の適正化に関する部分は主に公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備に関する部分は主に厚生労働省が執行を担います。
埋められた部分は大きいです。条件が書面やデータで明示されるようになり、後から言った言わないの争いが減ります。支払期日の上限が決まったことで、入金が半年先という取引は認められなくなりました。ハラスメントの相談体制も発注側の義務になりました。
埋まらない部分も明確です。最低賃金は適用されません。残業代も有給休暇もありません。労災保険と雇用保険の強制適用もありません。つまり、この法律は業務委託の取引を公正にするものであって、雇用と同じ保護を与えるものではありません。法律の条文と解釈のガイドラインは厚生労働省のフリーランス関連ページにまとめられています。
雇用契約と業務委託契約を同時に結べるか
副業に関連してよく出る疑問です。同じ会社と雇用契約を結びながら、別の業務について業務委託契約を結ぶことは、法的には可能とされています。社内の別部署の業務を副業として業務委託で受ける仕組みを導入している会社もあります。
ただし注意点があります。同じ業務について2つの契約を並べると、実質は残業代の支払いを避けるための形式と見られる危険があります。業務の内容、指示の経路、報酬の決まり方が雇用の分と明確に分かれていなければ、業務委託の分も労働時間として通算され、割増賃金の対象になり得ます。
もう1つ、労働時間の通算のルールがあります。雇用契約を2社と結んでいる場合、労働時間は通算され、割増賃金の計算に影響します。一方、業務委託で受ける仕事の時間は労働時間として通算されません。副業の形を選ぶときは、この違いが働き方の自由度に直結します。
副業で業務委託を受けるときに詰まる3点
実務でつまずく箇所を3つ挙げます。
第1に、勤め先の規則です。就業規則で副業の許可や届出が求められている職場が多く、無断で始めると懲戒の対象になり得ます。副業を制限できる事由は限られていますが、届出をしないこと自体が規則違反になります。
第2に、確定申告です。給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要です。国税庁のタックスアンサーにこの線が示されています。20万円以下なら所得税の申告は不要ですが、住民税の申告は別に必要です。この点はよく誤解されています。
第3に、住民税の徴収方法です。副業の所得を普通徴収にできるのは給与所得以外の所得だけです。副業がアルバイトで給与として支払われている場合、普通徴収は選べません。業務委託なら選べる可能性がありますが、自治体の運用によります。勤め先に知られたくない事情がある人は、ここを事前に市区町村の窓口で確認してください。
どちらを選ぶかの判断軸を3つに絞る
比べる材料が多すぎて決められない、という人に向けて軸を絞ります。
第1の軸は、仕事の進め方を自分で決めたいかどうかです。決めたいなら業務委託が合います。指示を受けて動くほうが楽なら雇用のほうが向いています。これは能力の話ではなく好みの話です。
第2の軸は、収入が止まったときに何か月耐えられるかです。貯えが2か月分しかないなら、業務委託だけで生活を組むのは危険です。まず雇用で収入を確保しながら業務委託で実績を積み、複数の取引先ができてから移るほうが現実的です。
第3の軸は、単価です。同じ仕事を業務委託で受けるなら、社員の給与と同額では割に合いません。社会保険料の会社負担分、有給休暇、労災保険、退職金の不在を金額に換算して上乗せする必要があります。目安を持つには、自分の職種の相場を知ることから始まります。
取引条件は書面かデータで明示される。届いた紙で確かめる項目
業務委託で受ける側にとって、最初に効く守りが条件の明示です。フリーランス法3条は次のように定めています。
業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
条文に名前が出ているのは、給付の内容、報酬の額、支払期日の3つです。残りの項目は公正取引委員会規則で決まっていて、業務委託をした日、受ける側と発注する側の名称、給付を受け取る期日と場所などが並びます。メールやチャットの本文でも要件を満たしますが、データで受け取ったあとに紙で欲しいと求めれば、遅滞なく交付する義務が発注する側に生じます。
実務で確かめてほしいのは3点です。1つ目は、給付の内容の書き方です。「記事の執筆一式」のような書き方では、修正が何回まで含まれるのかが読み取れません。修正の回数と、追加費用が発生する条件を文面に入れてもらいます。2つ目は、報酬の額が税抜か税込かです。源泉徴収の対象になる報酬なら、手元に入る額と請求する額が違います。3つ目は、支払期日です。フリーランス法では、給付を受け取った日から原則60日以内に支払わなければならない決まりになっています。「翌々月末」と書かれている場合は、納品日によって60日を超えることがあるので、日数を数えて確かめます。
明示された条件が届かないまま作業を始めると、あとから金額や範囲でもめたときに、自分の主張を裏づける材料がありません。口約束のまま着手しないことが、いちばん安く済む自衛策です。
業務委託への切り替えを打診されたときの確認手順
勤め先から業務委託への切り替えを持ちかけられる場面があります。判断を急がされることが多いので、確かめる順番を決めておくと落ち着いて答えられます。
最初に確かめるのは、仕事の中身が変わるのかどうかです。同じ席に座り、同じ指示を受け、同じ時間に働くのに契約だけが業務委託に変わるなら、実態は雇用のままです。その形は、労働基準法や社会保険の負担を避けるための形式と見られる可能性があり、あとで労働者として扱われる争いに発展します。中身が変わらないのに形だけ変える提案なら、その理由を文書で説明してもらってください。
次に、金額を年単位で並べます。給与のときは、健康保険料と厚生年金保険料の半分が会社の負担でした。この負担がそのまま自分に移ります。厚生年金から国民年金に変われば、将来受け取る年金の上積みも失います。有給休暇と残業代も消えます。目安として、同じ手取りを保つには額面を相当に引き上げる必要があり、単純な同額では確実に減ります。年間の社会保険料、経費として差し引ける見込み額、休む予定の日数を紙に書き出して、両方の手取りを計算してから返事をします。
3つ目に、取引の続き方を確かめます。契約期間が何か月か、更新の判断がいつ行われるか、解除の予告が何日前かです。フリーランス法では一定期間以上続く業務委託の解除や不更新に30日前の予告が義務づけられていますが、それより短い契約を繰り返す形なら予告の義務が及ばない場合があります。
4つ目に、他社の仕事を受けてよいかを確かめます。専属を求められ、他の取引先を持てないのに業務委託という形にされると、収入の逃げ道がないまま雇用の保護も失う、いちばん不利な組み合わせになります。この点は書面で確認を取ってください。
発注する側から見た境目と、形を選ぶときの基準
発注する立場でこの記事を読んでいる人も、境目の考え方は同じです。どちらの形にすべきかは、仕事の進め方を自分たちで決めたいかどうかで判断できます。
作業の順番、使う道具、始業と終業の時刻まで指示したいなら、雇用契約が適した形です。業務委託の形にしたまま細かく指示を出し続けると、労働者として扱われる余地が生まれ、割増賃金や社会保険料の遡りといった負担につながります。逆に、成果物と納期だけを決めて進め方は任せられるなら、業務委託が向いています。
境目を確かめるときは、契約書の題名ではなく、日々の連絡の内容を見ます。連絡の中身が「この手順でやってください」「この時間に作業してください」に寄っていれば、実態は指揮命令に近づいています。連絡の中身が「この状態まで仕上げてください」「期日はいつです」に寄っていれば、業務委託の形に沿っています。
発注する側にとって、業務委託で受けてくれる人を長く確保する条件は単価です。受ける側は社会保険料と経費を自分で負担しているため、社員の給与と同水準では割に合わないと判断されます。継続して同じ人に頼みたいなら、その負担を織り込んだ単価を出すほうが、人を探し直す手間より安く済みます。
派遣や出向とも混同されやすい。4つの形を並べて区別する
業務委託と雇用の間に、似た形がいくつかあります。区別しておかないと、自分が置かれている立場を読み違えます。
労働者派遣は、派遣会社と雇用契約を結び、指揮命令は派遣先から受ける形です。雇用主と指示を出す人が分かれている点が特徴で、労働基準法や社会保険は派遣会社との関係で適用されます。契約の形は雇用なので、有給休暇も残業代も発生します。
出向は、元の会社に籍を残したまま別の会社で働く形です。給与を誰が払うか、指示を誰が出すかは取り決めによって変わりますが、いずれも雇用の枠の中にあります。
これに対して業務委託は、指示を出す関係そのものがない形です。ここで注意したいのが、契約は業務委託なのに発注する側の担当者が現場で細かく指示を出しているという状態です。この形は、実質的に労働者を供給しているのと変わらないと見られる可能性があり、受ける側にとっては雇用の保護もなく、発注する側にとっては法令違反を問われる余地が残ります。
自分がどの形にいるかを見分ける近道は、指示を出している人がどこに所属しているかを確かめることです。自分と契約している相手から直接指示が来ているなら業務委託としては危うい状態で、契約先ではない会社の人から指示が来ているなら、さらに整理が必要な状態です。
記録を残す。あとで自分を守る材料になるもの
業務委託で働く人は、労働時間の記録を会社が付けてくれることがありません。争いになったときに材料がないという事態を避けるため、自分で残しておく習慣を作ります。
残しておくと役に立つのは4種類です。1つ目は、条件が明示された書面やメールです。金額と範囲と期日が書かれた記録で、あとから条件を変えられたときの比較材料になります。2つ目は、指示のやりとりです。チャットやメールをそのまま保存しておくと、自分の裁量がどこまであったかを示す材料になります。労働者性を主張する場面でも、逆に業務委託であることを示す場面でも、同じ記録が使えます。
3つ目は、作業した日と時間の記録です。手帳でも表計算でもかまいません。時間あたりの実際の報酬を把握できるようになるので、次の契約で単価を上げる交渉の根拠にもなります。4つ目は、経費の領収書と通信費や家賃の按分の計算です。確定申告のときに必要になるうえ、税務署から確認が入ったときに説明できる形にしておく必要があります。
記録を取る手間は1日あたり数分で済みます。それで、単価の交渉、契約の争い、申告の3つに同じ材料が使えます。業務委託を選んだ時点で、記録を付ける役目も自分に移っていると考えてください。
手取りで考える視点と、相場を確かめる方法
編集部が在宅ワークの市場を20年にわたって見てきた立場から言えば、業務委託で長く続いている人は、契約の形そのものより単価の決め方を先に固めています。額面の比較で判断した人は、社会保険料と経費の扱いを計算に入れておらず、1年たって手取りが減っていたと気づく例が多いです。
逆に、中間の手数料が乗らない直接取引では、同じ予算で依頼する側はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。運営者として見てきた限り、長く続く人ほど単発の作業を数で追うのではなく、任せると楽だと思われる関係を1社ずつ積み上げています。指示を受けなくても回る状態を作れれば、業務委託の本来の形に近づき、労働者性を疑われる場面も減ります。
自分の単価が妥当かを確かめるには、公的統計に基づく相場を見るのが早いです。文章や編集の仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発系ならソフトウェア作成者の年収・単価相場に、職種ごとの水準と幅が並んでいます。雇用で受け取っていた給与と業務委託の報酬を並べるときは、この水準を基準にしてください。
受ける仕事の種類を広げるなら、分野ごとに求められる前提を確かめておくと判断が早くなります。相談に近い形の業務は時間拘束が生じにくく、成果で評価されやすい領域です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には進め方と前提が、周辺分野はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発の受託はアプリケーション開発のお仕事にまとめられています。
契約の入口で条件を固める力は、そのまま収入の安定につながります。発注書と契約書に何を書いてもらうべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形で並んでいます。書類のやりとりを自分で整える力を形にしておきたい人にはビジネス文書検定が出発点になります。
よくある質問
Q. 業務委託契約と雇用契約でいちばん大きな違いは何ですか?
発注する側が仕事の進め方を指示できるかどうかと、働けなくなったときに誰が支えるかの2点です。雇用契約なら労働基準法が適用され、労災保険が強制適用で、社会保険料の半分は会社が負担します。業務委託契約ではこれらがなく、代わりに必要経費を差し引ける点と進め方の裁量が得られます。
Q. 業務委託でけがをしたとき、労災保険は使えますか?
原則として使えません。ただし令和6年11月から労災保険の特別加入の対象が広がり、特定受託事業に従事する人も加入できるようになりました。特別加入団体を通じて申し込み、保険料は自分で払います。強制適用ではないため、加入していない期間の事故は対象外です。業務委託を選ぶなら早めに手続きしておくことを勧めます。
Q. 契約書に業務委託と書いてあれば労働者にはなりませんか?
なりません。厚生労働省は、労働者に当たるかどうかは請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、実態から総合的に判断されると明記しています。指示の程度、時間と場所の拘束、報酬の決まり方などを見て判断されます。8問の自己診断チェックリストが公開されているので、まずそれで当てはめてください。
Q. 同じ会社と雇用契約と業務委託契約を同時に結べますか?
法的には可能とされています。社内の別部署の業務を副業として業務委託で受ける仕組みを導入している会社もあります。ただし同じ業務について2つの契約を並べると、割増賃金の支払いを避けるための形式と見られる危険があります。業務の内容、指示の経路、報酬の決まり方を明確に分けておく必要があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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