業務委託雇用契約違いを知らないと損!社会保険や残業代の有無を徹底比較

長谷川 奈津
長谷川 奈津
業務委託雇用契約違いを知らないと損!社会保険や残業代の有無を徹底比較

この記事のポイント

  • 業務委託雇用契約違いを行政書士が徹底解説
  • 社会保険・残業代・税金の扱いから2024年施行のフリーランス保護新法までを比較し
  • 契約形態で損しないための判断基準を提示します

先日、あるWebデザイナーさんから相談を受けました。「業務委託契約で働き始めたのに、毎朝9時に出社して、上司から細かい指示を受けて、夜は残業もしている。これって本当に業務委託なんですか?」と。結論から言うと、これは「偽装請負」と呼ばれる違法状態の可能性が極めて高いケースです。「業務委託雇用契約違い」を知らないまま働くと、社会保険にも入れず、残業代も払われず、有給休暇も取れない。これ、知らない人が本当に多いんです。

この記事では、業務委託契約と雇用契約の根本的な違いを、社会保険・残業代・税金・解雇ルールの観点から徹底比較します。さらに2024年施行のフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の影響、契約形態を見分けるための実務的な判断基準、トラブル事例まで網羅しています。法律はあなたの味方です。正しい知識で、自分の働き方を守りましょう。

業務委託雇用契約違いを理解すべき社会的背景と市場動向

総務省「労働力調査」によると、日本のフリーランス人口は約462万人(2024年時点)にまで拡大し、就業者全体の6.8%を占めるに至っています。副業を含めると、雇用契約と業務委託契約を並行して結ぶ「ハイブリッドワーカー」も急増中です。こうした働き方の多様化に伴い、契約形態を巡るトラブルも比例して増えています。

厚生労働省が公表する個別労働紛争解決制度の相談件数を見ると、「契約形態の認識違い」や「労働者性の判断」を巡る相談は年々増加傾向にあります。特に2020年以降のリモートワーク普及で、「自宅で働くから業務委託」「成果物を納品するから業務委託」と、企業側が安易に契約形態を選んでしまうケースが目立つようになりました。

しかし、契約書のタイトルに「業務委託」と書いてあっても、実態が雇用なら、法律上は雇用契約として扱われます。これ、本当に大事なポイントです。法律は「形式」より「実態」を見るんです。例えば、Webデザイナーとして業務委託契約を結んでいても、毎日決まった時間に出社を求められ、上司から細かい指示を受け、勤怠管理されているなら、それは「偽装請負」として労働基準監督署が介入する対象になります。

契約書の名称や形式が「業務委託契約」となっていても、実際の働き方や関係性によっては「雇用契約」とみなされるケースがあります。いわゆる「名ばかりフリーランス」や「偽装請負」として近年問題となることが多々発生しており、企業・個人の双方にとって注意が必要です。

つまり、契約形態の違いを正しく理解することは、単なる知識の問題ではなく、自分の収入・保険・税金・将来設計を守るための実務スキルなんです。

業務委託契約と雇用契約の根本的な違い

まず、両者の最大の違いは「指揮命令関係の有無」です。法律用語で言うと、雇用契約は「使用従属関係」がある契約、業務委託契約は「対等な事業者同士の契約」です。つまり、雇用契約は「会社の指示で働く」契約、業務委託契約は「自分の裁量で成果物を納める」契約と覚えてください。

雇用契約とは何か

雇用契約は、労働者が使用者(会社)の指揮命令下で労務を提供し、その対価として賃金を受け取る契約です。根拠法は民法第623条と労働基準法。労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法など、いわゆる「労働法」の保護が全面適用されます。

具体的には、以下のような保護があります。最低賃金(東京都の場合1,163円/時、2024年10月時点)以上の賃金支払い義務、週40時間を超える労働への残業代支払い、年次有給休暇(半年勤務で10日付与)、解雇権濫用の禁止、社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入、労災保険・雇用保険への加入などです。

つまり、雇用契約は「労働者を守るための法律のフルパッケージ」が適用される契約形態と理解してください。

業務委託契約とは何か

業務委託契約は、対等な事業者同士が、特定の業務遂行や成果物納品を約束する契約です。実は「業務委託契約」という名称は法律上の正式名称ではなく、民法上は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3種類に分かれます。

請負契約(民法第632条)は、成果物の完成を約束する契約。Webサイト制作、ロゴデザイン、プログラム開発などが該当します。完成して納品しないと報酬は発生しません。委任契約(民法第643条)は、法律行為の処理を委託する契約で、弁護士への訴訟依頼などが典型例。準委任契約(民法第656条)は、法律行為以外の事務処理を委託する契約で、コンサルティング、システム保守、業務代行などが該当します。

業務委託契約では、労働法の保護は原則として適用されません。最低賃金も残業代も有給休暇もありません。その代わり、自分の裁量で時間と場所を選び、複数のクライアントと並行して契約を結ぶことができます。

法律上の保護の違いを一覧で比較

両者の違いを実務観点で比較すると、以下の表のようになります。

項目 雇用契約 業務委託契約
指揮命令関係 あり(会社の指示に従う) なし(自分の裁量で働く)
労働基準法 適用される 適用されない
最低賃金 適用される 適用されない
残業代 支払い義務あり なし
有給休暇 付与義務あり なし
社会保険(健保・厚年) 強制加入 国民健康保険・国民年金で自己加入
労災保険 強制加入 原則なし(特別加入制度あり)
雇用保険 強制加入(条件あり) なし
解雇規制 あり(解雇権濫用法理) なし(契約解除は契約書次第)
源泉徴収 会社が実施 原則自分で確定申告
経費計上 原則不可(給与所得控除のみ) 必要経費を計上できる
副業 就業規則による制限あり 自由(契約書で禁止されていなければ)

つまり、雇用契約は「安定と保護」、業務委託契約は「自由と自己責任」のトレードオフだと理解してください。

社会保険・残業代・税金の扱いは決定的に違う

ここからは、業務委託雇用契約違いを実生活レベルで体感できる、社会保険・残業代・税金の扱いを具体的に見ていきましょう。

社会保険の違い

雇用契約の場合、週20時間以上勤務する常用労働者は健康保険と厚生年金に強制加入します。保険料は労使折半(会社と本人で半分ずつ負担)です。例えば月給30万円の会社員なら、健康保険料は約14,985円、厚生年金保険料は約27,450円を本人が負担し、同額を会社も負担しています(2024年度・東京都・協会けんぽの場合)。

業務委託契約の場合、社会保険には加入できません。国民健康保険と国民年金に自分で加入する必要があります。国民健康保険料は前年所得に応じて変動し、年収400万円の単身者で年間約40万円前後(自治体により異なる)。国民年金保険料は2024年度で月額16,980円です。会社員の場合と違って全額自己負担になるため、同じ収入でも手取りが大きく変わってきます。

これ、知らない人が本当に多いんです。「業務委託の方が手取りが多くてお得」と思いがちですが、社会保険料の自己負担、将来の年金額の差を考慮すると、必ずしも有利とは限りません。厚生年金は国民年金に上乗せされるため、老後の年金額が変わります。具体的には、平均年収400万円で40年間厚生年金に加入した場合、老後の年金は月額約14万円ですが、国民年金のみの場合は月額約6.8万円程度にとどまります。

残業代の有無

雇用契約では、労働基準法第37条により、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働には25%以上の割増賃金(残業代)の支払いが義務付けられています。深夜(22時〜翌5時)や法定休日労働ならさらに割増率がアップします。

業務委託契約では、残業代という概念自体がありません。報酬は契約書で定めた金額のみ。締切前に徹夜で作業しても、追加の報酬は出ません。これは「労働時間」ではなく「成果物」や「業務遂行」に対する報酬だからです。

ただし、ここで注意。業務委託契約なのに、実態として残業を強いられている、勤怠管理されている、時給的な働き方をしているなら、それは偽装請負の疑いがあります。労働基準監督署に申告すれば、雇用契約として認められ、未払い残業代を遡って請求できる可能性があります。

実際にあったケースをご紹介します。ITエンジニアとして業務委託契約で働いていた方が、毎日朝9時から夜10時まで客先常駐し、客先の上司から細かい指示を受けていました。3年後、契約解除されたタイミングで弁護士に相談し、結果的に「労働者性が認められる」として未払い残業代と解雇予告手当を請求、和解で数百万円を回収できました。

※このような大きなトラブルに発展した場合は、必ず弁護士に相談してください。労働問題は時効(残業代請求は3年)があるため、早めの行動が肝心です。

税金の扱い

雇用契約の場合、給与所得として源泉徴収されます。年末調整で会社が税金の精算をしてくれるため、原則として確定申告は不要です(医療費控除やふるさと納税を申請したい場合や、副業収入が20万円を超える場合は別途確定申告が必要)。

業務委託契約の場合、報酬は事業所得または雑所得として、自分で確定申告する必要があります。原則として、報酬から必要経費(仕事に使うパソコン、ソフトウェア、通信費、書籍代、交通費など)を差し引いた金額が課税対象になります。経費を計上できる分、税負担を抑えやすいのが業務委託のメリットです。

ただし、業務委託でも報酬の10.21%(100万円超部分は20.42%)が源泉徴収されるケースがあります。これは原稿料、デザイン料、講演料など特定の業務に限定されており、ITエンジニアや一般的なコンサルティング報酬には源泉徴収はかかりません。源泉徴収された金額は確定申告で精算できます。詳しくは国税庁のWebサイト(国税庁)で最新情報を確認してください。

業務委託契約と雇用契約の見分け方

ここが一番大事なポイントです。契約書のタイトルではなく、「実態」で判断されることを念頭に、見分け方を解説します。

労働者性の判断基準

労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかは、厚生労働省の「労働基準法研究会報告(昭和60年)」で示された判断基準が今でも実務で使われています。主な判断要素は以下の通りです。

第一に、仕事の依頼や業務遂行の指示に対する諾否の自由があるか。雇用契約なら原則として拒否できませんが、業務委託契約なら案件単位で受諾・拒否を選べます。第二に、業務遂行上の指揮監督の程度。具体的な作業指示、進捗管理、報告義務などがあれば雇用寄りです。第三に、勤務場所と勤務時間の拘束性。「毎朝9時に出社」「平日9〜18時勤務」など時間・場所の拘束が強いほど雇用寄りです。

第四に、労務提供の代替性。本人ではなく他の人に業務を代わってもらえるなら業務委託寄り、本人でないとダメなら雇用寄りです。第五に、報酬の労働対償性。時給や日給で支払われるなら雇用寄り、成果物単位や案件単位で支払われるなら業務委託寄りです。

これらを総合的に判断して、雇用契約とみなされるかどうかが決まります。つまり、契約書のタイトルは関係なく、実態が労働者性を満たすかどうかが基準なんです。

偽装請負・名ばかりフリーランスのチェックポイント

「偽装請負」とは、形式上は業務委託や請負契約だが、実態は労働者派遣や雇用に該当する違法な働かせ方のことです。「名ばかりフリーランス」も似た概念で、企業側が社会保険や残業代の負担を逃れるために、本来雇用契約であるべき関係を業務委託契約として偽装するケースを指します。

以下に当てはまる項目が多ければ、偽装請負の可能性が高いと判断してください。

・出退勤の管理を受けている(タイムカード、勤怠システムへの打刻) ・上司や担当者から日常的に作業指示を受けている ・業務を断る自由が実質的にない ・他の仕事を並行して受けることが禁止されている ・自分の機材ではなく、発注者の機材で作業している ・発注者の社員と同様のスケジュールで働いている ・休暇を取る際に発注者の承諾が必要

これ、知らない人が本当に多いんですが、3つ以上当てはまったら要注意です。労働基準監督署や、フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業)に相談すれば、無料でアドバイスを受けられます。

契約書で確認すべき項目

業務委託契約を結ぶ前に、以下の項目を必ずチェックしてください。第一に、契約の名称と実態が一致しているか。第二に、報酬の計算方法(時給制ではなく、成果物単位や案件単位か)。第三に、業務遂行の裁量の範囲(場所・時間の自由度)。第四に、契約期間と更新ルール。第五に、契約解除の条件と予告期間。第六に、知的財産権の帰属。第七に、損害賠償の上限額。第八に、秘密保持義務(NDAの範囲)。

特に成果物の検収条件と支払いタイミングは、トラブルの種になりやすいポイントです。「クライアントが満足するまで」のような曖昧な条件は避け、「納品後14日以内に修正依頼がなければ検収完了」など、具体的な条件で書面化することをおすすめします。

2024年施行のフリーランス保護新法で何が変わったか

2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護新法)」は、業務委託契約で働くフリーランスの保護を大幅に強化した重要な法律です。これ、知らない人が本当に多いんですが、フリーランスとして働くなら絶対に押さえておくべき内容です。

新法の主な内容

新法の対象は、従業員を使用しない個人事業主(特定受託事業者)に業務委託する企業です。主な義務は以下の通りです。

第一に、書面または電磁的方法による契約内容の明示義務。発注時に、業務内容、報酬額、支払期日、検収条件などを書面で明示しなければなりません。第二に、報酬の支払期日の制限。発注者は、受領日から60日以内に報酬を支払う義務があります。これに違反すると、公正取引委員会の調査対象になります。

第三に、禁止行為の明確化。受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しなどが禁止されています。第四に、ハラスメント対策の義務化。発注者は、業務委託先のフリーランスに対するハラスメントを防止する措置を講じる必要があります。第五に、育児・介護への配慮。継続的な業務委託において、フリーランスの育児・介護等との両立に配慮しなければなりません。第六に、契約解除の予告義務。継続的な業務委託を解除する場合、原則として30日前までに予告しなければなりません。

つまり、これまで「下請けいじめ」として泣き寝入りしていたケースが、新法によって法的に救済される道筋ができたんです。

違反した場合の罰則

新法の違反に対しては、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が立入検査や勧告・命令を行います。命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。違反事例は公正取引委員会から公表されるため、企業の社会的信用にも大きく影響します。

詳しくは公正取引委員会のWebサイト(公正取引委員会)で最新の運用状況を確認してください。

フリーランス側が活用できる相談窓口

トラブルにあった場合の相談窓口は複数あります。フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業、無料・予約制)、公正取引委員会の相談窓口、各都道府県の労働局、日本弁護士連合会の中小企業法律支援センターなどです。

実は、私のところに相談に来るフリーランスの方の半数以上は、契約書の段階で泣き寝入りを強いられそうになっています。「言われた通りにサインしたら、後で報酬が大幅減額された」「契約書に書いていないことを後から要求された」というケース。新法施行後は、こういった「下請けいじめ」が明確に禁止行為として規制されているため、相談すれば必ず解決の糸口が見つかります。

法律はあなたの味方です。一人で抱え込まず、必ず専門家に相談してください。

業務委託のメリット・デメリットを正直に比較

ここまで両者の違いを説明してきましたが、実際に「業務委託で働くべきか、雇用契約で働くべきか」を判断するために、メリット・デメリットを正直にお伝えします。

業務委託契約のメリット

第一に、働く時間と場所の自由度が高いこと。納期さえ守れば、深夜に作業しても、平日昼間に休んでも誰にも文句を言われません。第二に、複数のクライアントと並行して契約できること。リスク分散になり、収入の上振れも狙えます。第三に、必要経費を計上できるため、税負担を抑えやすいこと。仕事用のパソコン、ソフトウェア、書籍、通信費、自宅の家賃の一部(事業按分)などを経費にできます。

第四に、給与所得控除より青色申告控除(最大65万円)の方が有利になるケースもあること。第五に、定年がなく、生涯現役で働き続けられること。第六に、頑張った分だけ収入が増える成果報酬型の働き方ができること(ただし、頑張っても増えない可能性も同等にある)。

業務委託契約のデメリット

第一に、収入が不安定なこと。案件が途切れれば、即収入ゼロです。第二に、社会保険の自己負担が重いこと。会社員時代と比べて、健康保険料・年金保険料が単純に2倍以上になります。第三に、有給休暇がないこと。病気で休んでも収入は減ります。第四に、退職金・賞与がないこと。長期的なライフプランは自分で組む必要があります。

第五に、住宅ローン審査などで不利になりやすいこと。安定収入の証明が難しいためです。第六に、契約解除のリスクが常にあること。継続案件でも、契約期間満了で打ち切られる可能性があります。第七に、確定申告などの事務作業の負担。第八に、孤独になりやすいこと。職場の同僚との関係がないため、メンタルヘルス管理が重要になります。

雇用契約のメリット・デメリット

雇用契約のメリットは、安定した収入、社会保険の労使折半、有給休暇、退職金、雇用保険による失業給付、解雇規制による雇用安定などです。デメリットは、勤務時間・場所の拘束、上司との人間関係、給与上昇の限界、定年制度、副業制限などが挙げられます。

つまり、自分のライフステージや価値観、リスク許容度に応じて、どちらが向いているかを判断する必要があるんです。

雇用契約と業務委託契約を同時に結ぶケース(ハイブリッドワーク)

最近増えているのが、本業は雇用契約、副業は業務委託契約という「ハイブリッドワーク」の形態です。同じ企業内で、雇用契約と業務委託契約を同時に結ぶケースも出てきました。

結論として、業務委託契約と雇用契約を同時に締結することは、法的には可能です。実際に、同じ企業やグループ会社と、異なる契約形態で並行して働くケースも見られます。

副業として業務委託契約を結ぶケース

会社員として雇用契約で働きながら、休日や夜間に業務委託で副業をするのが典型例です。注意点としては、本業の会社の就業規則で副業が禁止されていないか確認すること、副業収入が年間20万円を超えたら確定申告が必要なこと、住民税の通知で会社に副業が知られる可能性があるため「普通徴収」を選択することなどがあります。

同一企業内での社内副業

近年、大手企業を中心に、本業の所属部署とは別の部署で副業として業務委託契約を結ぶ「社内副業制度」を導入する動きが出ています。

本来の所属部署では雇用契約のもとで勤務しながら、副業として業務委託契約により他部署や事業部の業務に従事する制度です。従業員にとっては通常業務では得られない経験を通じてスキルや知識の幅を広げる機会となり、企業にとっても人手不足の補完や離職防止、社内人材の有効活用といったメリットが期待できます。

このような働き方は、企業側が柔軟な人材活用を実現する手段として注目されていますが、契約形態の切り分けが曖昧になりやすいため、書面での明確化が不可欠です。

兼業時の社会保険の取り扱い

兼業時に注意すべきは社会保険の扱いです。雇用契約の本業で社会保険に加入していれば、副業の業務委託で別途加入する必要はありません。ただし、副業先でも雇用契約を結ぶ場合は、合算した労働時間で社会保険の二重加入が発生する可能性があり、手続きが複雑になります。

※このような複雑なケースは、税理士または社会保険労務士に相談することをおすすめします。

業務委託契約で働くなら知っておくべき実務知識

業務委託契約で安定して働くために、最低限押さえておきたい実務知識をまとめます。

インボイス制度への対応

2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、業務委託で働くフリーランスに大きな影響を与えています。年商1,000万円以下の免税事業者は、適格請求書を発行できないため、取引先から消費税分の値下げや取引停止を求められるケースが出ています。

対応策は2つ。一つは課税事業者となってインボイス登録する道、もう一つは免税事業者のまま、取引先と交渉する道です。どちらを選ぶかは、取引先の構成や経費の状況によって異なります。詳しくは国税庁の特設サイト(国税庁)で最新情報を確認してください。

確定申告の基本

業務委託で働く場合、年間所得が48万円を超えたら確定申告が必要です(給与所得がある場合は副業所得が20万円を超えたら)。青色申告を選択すれば、最大65万円の青色申告特別控除、家族への給与の経費算入、赤字の3年間繰越などのメリットがあります。

青色申告には事前申請(開業届と青色申告承認申請書の提出)と、複式簿記による帳簿付けが必要です。会計ソフト(freeeマネーフォワードなど)を使えば、簿記の知識がなくても比較的簡単に対応できます。

国民年金基金・iDeCoの活用

国民年金だけでは老後の生活費が不足しがちな業務委託契約者は、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入を検討する価値があります。iDeCoの掛金は全額所得控除になるため、節税効果も高いです。第1号被保険者(自営業者・フリーランス)のiDeCo上限は月額68,000円です。

万が一の備えとしての労災特別加入

業務委託契約者は原則として労災保険の対象外ですが、2021年から「特別加入制度」の対象が拡大され、ITフリーランス、自転車配達員、ウーバーイーツ配達員などが特別加入できるようになりました。仕事中のケガや病気に備えて、加入を検討する価値があります。詳しくは厚生労働省のWebサイト(厚生労働省)を確認してください。

職種別の単価相場

ソフトウェア開発者の業務委託単価は、経験年数や技術スタックによって幅がありますが、フルスタックエンジニアの場合、月額60万円〜120万円程度が相場です。AIエンジニアやデータサイエンティストといった希少性の高い職種では、月額100万円を超える案件も珍しくありません。詳しい単価相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。

ライター・編集者の業務委託単価は、ジャンルや経験によって大きく異なります。一般的なWebコンテンツライターの場合、文字単価1円〜5円程度、専門分野(医療・金融・法律など)では文字単価5円〜20円に上がります。編集者の業務委託では、書籍1冊あたり20万円〜50万円程度が相場です。詳しい単価相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。

成長分野での業務委託案件

AIやセキュリティ、マーケティングの分野では、業務委託の需要が急増しています。例えば、企業のDX推進に伴うAIコンサルティング案件は、月80万円〜200万円程度の高単価で取引されています。経営課題の解決にAIを活用するAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、デジタルマーケティングと情報セキュリティを組み合わせたAI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、業務委託契約で参入しやすい成長領域です。

また、スマートフォンアプリやWebアプリの開発を請け負うアプリケーション開発のお仕事も、業務委託案件が豊富にあります。受託開発から自社サービスのMVP開発まで、案件の規模感も多様です。

資格と単価の関係

業務委託で単価アップを目指すなら、関連資格の取得が有効です。例えば、IT分野ではCCNA(シスコ技術者認定)を取得すると、ネットワークエンジニアとしての案件単価が10〜20%程度上がる傾向があります。事務系の業務委託でも、ビジネス文書検定などの基礎資格は、クライアントからの信頼獲得につながります。

在宅で働くフリーランスの実態

集中力の維持も重要なスキルです。業務委託で成果を出すためには、限られた時間で集中して作業する力が問われます。在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックでは、フリーランスが実践する集中力向上のメソッドが紹介されています。

また、業務委託案件の探し方も重要です。在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説では、信頼できる案件の見つけ方や、悪質な依頼を避けるためのチェックポイントが解説されています。

契約形態を選ぶ際の客観的判断軸

業務委託契約は、自己責任の代わりに自由を得る契約です。雇用契約は、自由を一部手放す代わりに安定を得る契約です。どちらが優れているかではなく、自分のライフステージや価値観に合った契約形態を選ぶことが重要なんです。

そして、契約形態を選んだ後も、「実態が契約形態と一致しているか」を定期的に見直すことが大切です。業務委託のはずなのに、いつの間にか実質的に雇用関係になっていた、というケースは本当に多い。だからこそ、自分の働き方を客観視する習慣をつけてください。法律はあなたの味方です。正しい知識で武装すれば、どんな契約形態でも自分の利益を守ることができます。

よくある質問

Q. 副業でやっている場合でも、この法律の対象になりますか?

対象になります。 本業か副業かは関係ありません。「従業員を雇わずに業務を請け負う個人」であれば、すべて特定受託事業者として守られます。会社員が週末にライティングやデザインを請け負う場合も、立派なフリーランスです。

Q. 自分が下請法とフリーランス新法のどちらの対象になるか、どうやって見分ければいいですか?

主な判断基準は「発注者の資本金」と「業務内容」です。下請法は発注者の資本金が1000万円超で、かつ物品の製造や情報成果物の作成などが対象になります。一方、フリーランス新法は発注者が従業員を使用していれば資本金要件はなく、すべての業務委託が対象となるため、より幅広いフリーランスが保護されます。記事内の「判定フロー」を活用して自分の状況を確認しましょう。

Q. 雇用保険に入っていないフリーランスでも本当に利用できますか?

はい、制度の改正により、一定の所得要件を満たすなどの条件をクリアすれば、雇用保険に加入していないフリーランスであっても、専門実践教育訓練給付金などの対象となる場合があります。まずはハローワークで相談してみることを強くおすすめします。

Q. クライアントが契約書を嫌がる場合は?

「法律で義務付けられています」と毅然と伝えてください。それでも拒否するような企業は、後々トラブルになる確率が極めて高いです。関わらないほうが、あなたの身のためです。

Q. 「書面明示」はLINEやSlackでも有効ですか?

はい、有効です。 メールだけでなく、LINE、Slack、Chatworkなどのメッセージアプリ、さらにはPDFの送付なども「電磁的方法」として認められています。ただし、後で消去されないようにバックアップをとっておくことが重要です。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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