看護師がカウンセラーになるまでの道のり|取れる資格と働き方の広がり

中西 直美
中西 直美
看護師がカウンセラーになるまでの道のり|取れる資格と働き方の広がり

この記事のポイント

  • 看護師からカウンセラーになるには何が必要か
  • 公認心理師と臨床心理士の違い
  • 働きながら取れる産業カウンセラーやキャリアコンサルタント

「患者さんの体は診られるのに、心の話になると、どう返せばいいのか分からなくなる」

このご相談、看護師さんから本当によくいただきます。夜勤明けの面談室で、退院を控えた患者さんが不安を口にしたとき。ご家族が涙をこぼしたとき。処置は完璧にできるのに、その瞬間だけは足元が揺れる。そんな感覚を抱えたまま、検索窓に「看護師 カウンセラー なるには」と打ち込んだ方が、ここにたどり着いているのだと思います。

大丈夫です。その違和感は、あなたの能力不足ではありません。看護教育は身体の科学を軸に組み立てられていて、心理面接の訓練はほとんど入っていない。だから「教わっていないことができない」という、ごく当たり前のことが起きているだけです。

そしてもうひとつ、最初にはっきりお伝えしておきたいことがあります。看護師資格があっても、公認心理師の受験資格にはなりません。ここを誤解したまま数年を過ごしてしまう方が少なくないので、この記事では資格ごとの受験要件を、逃げずに正確に書きます。そのうえで、働きながら現実的に進める道と、資格を取らなくても今の経験を活かせる場所を、順番に整理していきます。

心のケアの担い手が足りない、という市場の現実

まず、あなたが考えていることは決して遠回りではない、という話から始めます。

日本の「心の支援」を取り巻く環境は、この10年で構造そのものが変わりました。かつて心理職の職場といえば病院の精神科と学校がほとんどでしたが、いまは企業の産業保健、自治体の相談窓口、就労支援、児童福祉、災害支援、そしてオンラインカウンセリングまで、需要の面が広がっています。

大きな転換点になったのが、労働安全衛生法にもとづくストレスチェック制度です。従業員50人以上の事業場では、年1回のストレスチェック実施が義務づけられています。制度の詳細や様式は厚生労働省が公開していますが、ここで見落とされがちなのが「誰が実施者になれるか」です。

実施者になれるのは医師と保健師、そして所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。つまり、看護師は研修を修了すればストレスチェックの実施者になれる。心理職の資格を持たない段階でも、企業のメンタルヘルス領域に足をかけられる数少ない専門職なのです。これは看護師の大きなアドバンテージであり、キャリアを考えるうえで最初に知っておいてほしい事実です。

もうひとつの背景が、公認心理師という国家資格の誕生です。心理職は長らく民間資格しかなく、医療保険上の位置づけも曖昧でした。2017年に公認心理師法が全面施行され、2018年に第1回試験が行われたことで、心理支援は「国家資格者が担う専門領域」として制度に組み込まれました。裏を返すと、資格の線引きが以前よりはっきりしたということでもあります。

看護師の経験は、心理支援の土台としてかなり強い

制度の話が続いたので、少し肩の力を抜きましょう。

私がカウンセラー養成の場や、産業領域の現場で看護師出身の方と接してきて感じるのは、看護師さんは「聴く仕事」に必要な筋肉をすでに持っている、ということです。

急変を見逃さない観察眼。表情や声のトーンの変化に気づく感度。深刻な話を聞いても顔色を変えずに受け止められる胆力。そして何より、死や喪失の場面に何度も立ち会ってきたという事実。これらは心理の学校では教えられません。教科書で学べる知識より、はるかに時間のかかる部分です。

ただし、同情するのではなく「この人は今、どのような気持ちなんだろう」と相手の心情を考えてきた看護師の経験は、カウンセラーとしての土台になります。 出典: ns-pace-career.com

ここで言われている「同情ではなく」という区別が、実は転身の最初のハードルになります。看護は「良くする」ことを目的にした関わりです。痛みがあれば取り除く、不安があれば説明して安心させる。これはケアとして正しい。

一方でカウンセリングは、すぐには解決しない気持ちに一緒に留まる時間が長い仕事です。答えを渡さずに、その人が自分で答えにたどり着くのを待つ。この待つ姿勢への切り替えに、看護師出身の方は最初かなり苦労されます。

私自身、産業領域に移った頃、相談者が沈黙した数十秒に耐えられず先回りして助言してしまい、面談後の振り返りで「あの沈黙は、ご本人が考えていた時間でしたよ」と指導者に言われたことがあります。良かれと思って動いたことが、相手の思考を止めていた。あのときの気まずさは、今でも面談前に思い出します。看護からの転身は、スキルを足す作業であると同時に、身についた反射を一度ゆるめる作業でもあるのです。

大前提として、「カウンセラー」という名称の資格は存在しない

ここは全員に共通する土台なので、丁寧に押さえます。

日本には「カウンセラー」という名前の免許や資格はありません。医師や看護師のような名称独占もないため、極端に言えば、明日から名刺に「メンタルカウンセラー」と刷って活動を始めることも制度上は可能です。

この事実は、良い意味にも悪い意味にも取れます。

良い面は、参入の入口が開かれていること。悪い面は、玉石混交になりやすく、資格の名前だけでは実力も学習量も判別できないこと。だからこそ求人側は「公認心理師または臨床心理士」といった具体的な資格名で条件を書くようになりました。名乗るのは自由でも、雇われる条件は明確に決まっている。ここを分けて理解しておくことが重要です。

資格を大きく分けると、次の3層になります。

位置づけ 代表的な資格 主な就業先
国家資格 法律にもとづく 公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント 医療機関、行政、学校、企業
有力な民間資格 業界標準として通用 臨床心理士、産業カウンセラー、認定心理士 学校、企業、相談機関
学習型の民間資格 知識の証明が中心 メンタルケア心理士、各種心理カウンセラー講座の認定 現職での活用、独立の補強

上の層ほど、求人票の応募条件として書かれる頻度が高くなります。下の層は「就職の切符」というより「今の仕事に上乗せする学び」として機能すると考えてください。この整理をせずに講座に申し込んでしまい、修了後に「求人がない」と気づく方が本当に多いのです。

公認心理師:唯一の国家資格と、避けて通れない受験資格の壁

心理職を目指すなら、まずこの資格の要件を正確に知る必要があります。

公認心理師は、心理に関する支援を要する人への観察・分析、相談・助言・指導、関係者への支援、そして心の健康に関する知識の普及を業とする国家資格です。名称独占資格であり、有資格者でなければ「公認心理師」と名乗れません。試験は年1回、全154問のマークシート方式で、合格基準は総得点のおおむね60%程度とされています。

看護師免許は受験資格にならない

最も誤解が多い部分なので、はっきり書きます。看護師免許を持っていること、精神科での勤務経験があること、これらはいずれも公認心理師の受験資格になりません。

受験資格の主なルートは次の通りです。

・大学で指定された科目を履修し、さらに大学院で指定された科目を履修して修了する ・大学で指定された科目を履修し、その後、定められた施設で2年以上の実務経験を積む(施設側がプログラムを実施していることが条件) ・外国の大学等で相当する課程を修めた場合

つまり、どのルートでも「大学の学部段階で心理学の指定科目を履修していること」が起点になります。看護大学の卒業でも、看護専門学校の卒業でも、この指定科目を満たしていなければスタートラインに立てません。

さらに重要なのが、制度移行期に設けられていた経過措置です。施行前から心理の実務に従事していた人が現任者講習を受けて受験できる区分がありましたが、この経過措置は第5回試験をもって終了しています。「実務経験だけで受けられる裏ルート」は、もう存在しません。数年前の記事や体験談を読んで計画を立てると、この点で確実に躓きます。

実際に目指すなら、必要な時間とお金

看護師として働きながら公認心理師を目指す場合、現実的な道筋はこうなります。

まず学部段階の指定科目を、通信制大学の心理学部に編入して取得する。看護系の大学を卒業していれば3年次編入が可能な場合が多く、通信制なら在学期間2年ほど、学費は年間20万円台からという設定が一般的です。ここまでは働きながらでも十分に射程に入ります。

問題はその次です。大学院で指定科目を履修するには、実習が必須になります。心理実習は平日日中に医療機関や教育機関へ通う形が多く、夜勤を含むフルタイム勤務との両立はかなり厳しい。ここで多くの方が、常勤から非常勤やパートへ働き方を変える判断を迫られます。大学院の学費は2年で総額150万円前後から、私立や専門職大学院ではそれ以上を見込む必要があります。

合格率は回によって変動が大きく、これまでの実績はおおむね46%から80%の幅で推移してきました。経過措置の受験者が多かった初期は高く、正規ルートの受験者が中心になるにつれて落ち着いた水準に移っています。国家試験としては極端に難しいわけではありませんが、出題範囲が心理学全般、精神医学、法制度、統計まで広く、暗記より理解が問われます。看護師国家試験の勉強法をそのまま持ち込むと、範囲の広さに苦しむ方が多い印象です。

正直に言えば、看護師として働きながら公認心理師に到達するには、最短でも4年から5年、費用は総額200万円を超える計画になります。それでもこの資格を選ぶ価値があるのは、医療機関で心理職として採用される際にほぼ必須条件となっているからです。病院の中でキャリアを続けたいなら、遠回りに見えてもこれが本道です。

臨床心理士:民間資格でありながら、評価は依然として高い

公認心理師と並んで名前が挙がるのが臨床心理士です。

こちらは公益財団法人が認定する民間資格ですが、1988年から続く歴史があり、スクールカウンセラーや相談機関の採用要件として長く機能してきました。民間資格だから格下、という理解は正確ではありません。

受験には指定大学院(第1種・第2種)または専門職大学院の修了が必要です。試験は一次のマークシートと論述、二次の面接で構成され、合格率はおおむね6割前後で推移しています。そして5年ごとの更新制で、研修ポイントの取得が求められます。取ったら終わりではなく、学び続けることが前提の設計です。

両者の違いを整理すると次のようになります。

比較軸 公認心理師 臨床心理士
種別 国家資格 民間資格(財団法人認定)
学部要件 指定科目の履修が必要 学部の専攻は不問(大学院が指定校)
大学院 指定科目を履修(実務経験ルートあり) 指定大学院または専門職大学院の修了
更新 更新なし 5年ごとの更新
試験形式 マークシートのみ マークシート、論述、面接
強い領域 医療、行政、制度に関わる業務 学校、相談機関、心理療法の実践

現在は指定大学院の多くが公認心理師のカリキュラムにも対応しており、両方の受験資格を同時に得られる進学先が主流になっています。どちらか一方を選ぶというより、大学院を選ぶ時点で両方が視野に入る、というのが2026年時点の実情です。

なお、学部で心理学の指定科目を持っていない場合、臨床心理士の指定大学院は受験可能でも、公認心理師の受験資格には届かない、というねじれが起きます。看護出身の方はこのパターンに入りやすいので、進学先の説明会では必ず「看護学部卒でも公認心理師の受験資格が取れるか」を直接確認してください。

働きながら現実的に目指せる資格を、5つ整理する

大学院まで行くのは難しい。でも今の仕事に心理の力を足したい。そういう方に向けて、働きながら取得できる資格を並べます。

産業カウンセラー

働く人の心の支援に特化した民間資格で、一般社団法人が認定しています。看護師からの転身で最も選ばれている入口のひとつです。

養成講座は通信教育と対面での実技演習を組み合わせた形式で、期間は6か月ほど。受講料は十数万円から20万円台が目安です。修了後に学科試験と実技試験を受けます。

この資格の価値は、傾聴の実技訓練が講座の中心に据えられている点にあります。ロールプレイを何度も繰り返し、録音を聞き返して自分の応答を検証する。知識ではなく、面接の所作そのものを鍛える設計です。看護の関わり方から心理面接の関わり方へ切り替えるうえで、この訓練はかなり効きます。私自身、最初に受けた実技演習で「相手の言葉を要約したつもりが、自分の解釈にすり替わっていた」と指摘された経験が、その後の面接の姿勢を決めました。

キャリアコンサルタント

国家資格でありながら、大学院を必要としない点が最大の特徴です。

受験するには、厚生労働大臣が認定する講習を修了するか、3年以上の相談実務経験があることが条件になります。認定講習は150時間前後の設計で、土日開講や夜間開講のコースが多く、費用は30万円台が中心です。教育訓練給付の対象になっている講座もあり、条件を満たせば受講費用の一部が戻ります。登録制で5年ごとの更新が必要です。

心の不調そのものより、働き方や職業選択の相談を扱う資格ですが、実際の現場では両者は分けられません。復職支援、両立支援、離職相談。どれも心理と職業の境目にあります。看護師の資格と組み合わせると、医療従事者のキャリア相談や、病気を抱えながら働く人の支援という、代替の効きにくい立ち位置がつくれます。

精神保健福祉士

こちらも国家資格で、精神障害のある方の生活支援と社会復帰を担う専門職です。

看護師で一般の4年制大学を卒業している場合、一般養成施設で1年以上学ぶことで受験資格が得られます。通信課程が整備されており、スクーリングと実習をこなせば働きながらの取得も可能です。合格率は例年6割台から7割台で推移しています。

精神科病棟の経験がある看護師にとっては、日々の業務内容と学習内容が地続きになるため、学びやすい資格でもあります。医療の中で心理社会的支援を担いたい方には、公認心理師より現実的な選択肢になることが多いです。

認定心理士

日本心理学会が認定する資格で、大学で心理学の所定単位を修得したことを証明するものです。

これ単体で就職の条件になることはほとんどありません。ただ、通信制大学で心理学を学ぶ過程の到達点として設定すると、学習のペースメーカーになります。そして重要なのは、この学習過程が公認心理師の指定科目と重なる場合があること。将来の進学を残しておきたい方には、無駄になりにくい投資です。

メンタルケア心理士などの学習型資格

通信講座で学び、修了と試験を経て認定される民間資格群です。取得までの期間が短く、費用も抑えられます。

ここは冷静に評価してください。これらの資格で「カウンセラーとして転職する」のは、正直に言って難しい。求人の応募条件として指定されることはまれです。

ただし、使い道がないわけではありません。今の看護業務の中で患者さんやご家族との対話の質を上げたい、院内のメンタルヘルス委員会で発言の裏付けがほしい、あるいは将来の独立に向けて基礎知識を体系化したい。こうした目的なら十分に機能します。目的と手段が合っているかどうか、それだけの話です。

看護の中で専門性を深めるという選択

見落とされがちですが、心理の資格を取りに行かず、看護の枠内で精神領域の専門性を高める道もあります。

大学院修士課程を経て取得する精神看護専門看護師、そして精神科認定看護師です。どちらも実務経験が必要で、学習の負荷は決して軽くありません。ただ、看護師としての給与体系と職位を維持したまま専門性を深められるという、他にはない利点があります。「心のケアがしたい」という動機が、必ずしも職種変更を要求しているとは限りません。ここは一度、立ち止まって考える価値があります。

資格を取る前に、今の場所でできることがある

資格の話が続いたので、少しトーンを変えます。

私のところに来られる看護師さんの中には、「資格を取れば、もっとうまく話が聴けるようになるはず」と思い込んでいる方がいます。気持ちはよく分かります。でも、順序が逆なこともあるのです。

面接技法の基本は、資格がなくても今日から練習できます。相手の言葉を言い換えて返す。沈黙を怖がらずに待つ。助言する前に「今どんなお気持ちですか」と一度確認する。この3つを意識するだけで、患者さんの語る量は目に見えて変わります。

そして、その変化を体感してから資格の学習に入ると、講座の内容が「知識」ではなく「答え合わせ」として入ってきます。学習効率がまったく違う。数十万円と数年を投じる前に、明日の勤務で試せることから始めてみてください。

もうひとつ。院内で心のケアに関わる役割は、思っているより空いています。リエゾン活動の補助、退院支援の面談、新人看護師のメンタルサポート、職場のハラスメント相談窓口。「心理の勉強をしている」と周囲に伝えておくだけで、声がかかる確率は上がります。実績を先に作っておくと、後の転職活動で語れる材料になります。

資格を取ったあと、どこで働くのか

進路の全体像を押さえておきましょう。看護師の資格を持っていることが、それぞれの場所でどう効くかも合わせて書きます。

医療機関

病院やクリニックの心理職として働く道です。公認心理師または臨床心理士がほぼ必須で、精神科・心療内科のほか、緩和ケア、周産期、小児、リエゾンチームなどに配置されます。

看護師資格を併せ持つ心理職は、多職種連携の場面で圧倒的に強い。医師の指示の意味が分かる、検査値が読める、病棟の動線が想像できる。この「翻訳できる力」は、心理単独の経歴では身につきません。求人票には書かれない評価軸ですが、現場では確実に効きます。

一方で、常勤の心理職ポストは病院あたりの人数が限られており、非常勤や複数施設の掛け持ちで働く方も少なくありません。給与水準は看護師の夜勤込みの収入を下回ることが多い、というのは知っておくべき現実です。看護師の年収・単価相場のページで職種別の水準を確認できますが、転身によって収入が一時的に下がる前提で家計を設計しておくと、精神的にずっと楽になります。

企業の産業保健・EAP

働く人のメンタルヘルスを支える領域です。ここが看護師にとって最も入りやすい入口だと、私は考えています。

理由は冒頭に書いた通り、ストレスチェックの実施者要件です。所定の研修を修了した看護師は実施者になれるため、心理資格がない段階でも企業のメンタルヘルス業務に関与できます。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントを足せば、面談業務まで担当範囲が広がります。

企業側から見ると、健康診断の結果を読めて、生活習慣病の話ができて、かつメンタル面談もできる人材は貴重です。健康経営への関心が高まる中で、この複合スキルの需要は増えています。企業内の健康管理室、健康保険組合、EAP提供会社、産業保健の受託事業者などが主な受け皿です。

教育分野

スクールカウンセラーは、公認心理師・臨床心理士・精神科医・大学教員などが選考の基準になっており、看護師資格だけでは原則として応募できません。自治体によっては「これらに準ずる者」の枠がありますが、狭き門と考えたほうが現実的です。

ただし、学校保健の分野なら話は別です。養護教諭の免許を取得する道や、教育委員会が設置する相談センターの職員、特別支援教育の支援員など、周辺には入口があります。

福祉・行政

自治体の保健センター、精神保健福祉センター、地域包括支援センター、障害福祉サービス事業所、就労移行支援事業所などです。

保健師資格があればさらに選択肢が広がりますが、看護師と精神保健福祉士の組み合わせでも十分に評価されます。この領域は生活支援と医療の両方を見る必要があり、両方の言語を持つ人材が慢性的に不足しています。

オンライン・在宅という広がり

ここ数年で急速に育ったのが、オンラインカウンセリングの領域です。

ビデオ通話、チャット、音声通話でカウンセリングを提供するサービスが複数立ち上がり、登録カウンセラーとして業務委託で働く形が一般化しました。多くのプラットフォームは登録要件として公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラーなどの資格を求めます。医療行為ではないため、看護師資格単独で登録できるサービスは限られますが、心理資格と組み合わせれば選択肢に入ります。

在宅で働けることの意味は、看護師にとって小さくありません。夜勤で体を壊した、育児や介護で日中フルタイムが難しい、腰痛で立ち仕事がつらい。そうした事情でキャリアを断念しかけていた方が、対話を軸にした仕事で復帰する例を私は何度も見てきました。医療機関に所属しながら、休日にオンライン面談を数件だけ受ける、という並行の仕方も可能です。業務委託の働き方全般についてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように分野別の解説ページを見比べると、契約形態や報酬の考え方の相場観がつかめます。

書くという選択肢

もうひとつ、意外に相性の良い道が「書く仕事」です。

心の健康に関する記事、医療系メディアのコラム、患者向けパンフレット、企業の健康施策の情報発信。これらは医療知識と読者への配慮の両方を必要とし、看護師の経験がそのまま価値になります。カウンセリングを学んだ人が書く文章は、読み手の不安を煽らない。これは編集者から見て希少な資質です。

在宅で完結し、資格取得の学習と並行しやすいのも利点です。実際の進め方は看護師ライターとして月5万円稼ぐ方法|専門記事の書き方【2026年版】で具体的な手順がまとまっており、単価の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。カウンセラーを目指す期間の収入を支える手段としても検討する価値があります。

お金の話を、ごまかさずに書きます

進路選択でいちばん現実的な論点です。

心理職の収入は、雇用形態によって大きく分かれます。常勤の心理職であれば一般的な事務職と近い水準に落ち着くことが多く、非常勤の場合は時間給や1件あたりの面談単価での契約になります。夜勤手当が積み上がる看護師の収入と比べると、転身直後は下がるのが通常です。

ここを直視せずに進むと、資格取得後に「こんなはずでは」となります。逆に、最初から織り込んでおけば選択肢は増えます。実際に多いのは次のような形です。

・看護師の常勤を続けながら、心理の資格を取得して院内での役割を広げる ・看護師を非常勤に切り替え、心理職と兼務して合計収入を維持する ・平日は医療機関で勤務し、休日や夜にオンラインで面談や執筆を受ける ・企業の産業保健職として、看護師と心理の両方の職務で採用される

4番目が、収入面ではもっとも安定しやすい選択です。企業側は「保健師または看護師」の要件で採用し、心理資格を加算評価する形が多いため、看護師の給与水準を保ったままメンタルヘルス業務に軸足を移せます。

独立開業を考える場合は、さらに慎重な計算が必要です。カウンセリングルームの開業は、集客が最大の壁になります。相談は緊急性が高いように見えて、実は「いつでもいい」領域に分類されやすく、認知されるまでに時間がかかります。開業直後から生計が立つ想定は現実的ではありません。企業や自治体との契約を1本確保してから、個人相談を積み上げるという順序が定石です。

メリットとデメリットを、両方書きます

前向きな話だけを並べても意味がないので、正直に整理します。

メリットの側から。まず、身体を酷使する働き方から離れられること。夜勤、重い患者さんの移乗、感染リスク。これらの負荷が減るだけで、体調が変わる方は多いです。次に、定年後も続けやすいこと。対話を軸にした仕事は経験が積み上がる性質があり、年齢が不利になりにくい。そして、看護と心理の両方を持つ人材は市場に少なく、希少性が収入と選択肢の両方を押し上げます。

デメリットも書きます。まず、資格取得までの時間と費用が重い。公認心理師なら数年と数百万円の投資になります。次に、常勤ポストが少なく、非常勤や掛け持ちが前提になりやすいこと。そして、成果が見えにくいこと。看護は処置の結果が数値や状態で返ってきますが、カウンセリングは変化が緩やかで、手応えのないまま数か月が過ぎることもあります。この「効いているのか分からない」状態への耐性は、想像以上に必要です。

もうひとつ、あまり語られない負荷があります。感情労働の質が変わることです。看護の忙しさは体力を削りますが、カウンセリングは相手の重い感情を受け止め続けることで、静かに消耗します。忙しくないのに疲れる、という種類の疲労です。自分自身のケアの仕組みを持たない人は、この仕事を長く続けられません。スーパービジョンや同業者との定期的な対話を、贅沢品ではなく必需品として予算に入れておいてください。

向いている人の特徴

判断材料として、いくつか挙げます。

心理学の内容そのものに知的な興味がある方。これは大きいです。学習期間が長いので、義務感だけでは走り切れません。

心理学に興味がある

人の心の仕組みや行動の背景に興味をもち「心理学をもっと学びたい」と感じている看護師は、カウンセラーに向いています。 出典: ns-pace-career.com

次に、答えを出さずにいられる方。すぐ解決したくなる性質が強い人は、訓練で調整はできますが、最初はしんどい思いをします。

そして、自分の感情を扱える方。相談者の話に自分の過去が反応することは必ず起きます。それに気づいて扱えるかどうかが、この仕事の安全性を決めます。

逆に、慎重に考えたほうがいいのは、今の職場のつらさから逃れたい気持ちが動機の中心にある場合です。それが悪いわけではありません。ただ、逃れたいだけなら、心理職への転身より部署異動や看護師からCRA(臨床開発モニター)への転職ガイド|年収1000万への道【2026年版】で扱われているような他分野への転職のほうが、時間も費用も少なく済みます。看護師資格を活かせる進路の広さは看護師 メリットを徹底解説!フリーランスエンジニアが語るキャリアの魅力にも整理されているので、比較検討の材料にしてください。

目的別に、進み方を3パターン示します

自分がどこに当てはまるかを考えながら読んでください。

医療機関で心理職として働きたい場合。通信制大学で心理学の指定科目を履修し(2年前後)、公認心理師カリキュラム対応の大学院へ進学(2年)、その後に受験します。大学院の実習期間は勤務調整が必須です。総額は200万円以上を見込みます。長い道ですが、医療の中で心理職の椅子に座るにはこれが本道です。

企業のメンタルヘルス領域に移りたい場合。ストレスチェック実施者研修を受け、産業カウンセラーまたはキャリアコンサルタントを取得します。期間は6か月から1年、費用は20万円から40万円台。働きながら完結でき、看護師の給与水準を維持したまま職務内容を移せる可能性が高い経路です。

今の看護の仕事の質を上げたい場合。まずは面接技法の書籍と院内の事例検討から始め、必要に応じて産業カウンセラーの養成講座や、精神看護の認定資格を検討します。職種を変えずに、できることを増やす発想です。

どのパターンでも共通してお願いしたいのは、進学先や講座に申し込む前に、その資格を持って実際に働いている人の話を1人でも聞くことです。パンフレットには書かれていない、勤務の実態と収入の実感が分かります。

20年、在宅と業務委託の市場を見てきた立場からの観察

最後に、フリーランス・在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から、少し違う角度の話をします。

運営者として見てきた限りでは、「対話を仕事にする人」の働き方は、この数年で確実に変わりました。かつては相談室という物理的な場所が必要でしたが、いまはオンラインでの面談が普通になり、地方在住のまま首都圏の企業と契約する例も珍しくありません。場所の制約が外れたことで、育児中や介護中の人が専門性を活かして働き続けられるようになった。これは市場の構造変化として、かなり大きいことだと考えています。

そしてもうひとつ、長く続く人の共通点があります。単発の面談を数多くこなす人ではなく、「この人に相談すると社内が落ち着く」という関係を作った人が残っている。継続契約を持っている人は、営業をしていません。最初の1件を丁寧にやった結果として、翌年も声がかかる。この積み上げ方は、看護師が病棟で信頼を築いてきたやり方とよく似ています。

お金の話にも触れておきます。相談業務の報酬は、間に入る事業者の数だけ目減りします。同じ1時間の面談でも、仲介が2社挟まる契約と、依頼企業と直接結ぶ契約とでは、手元に残る額がまるで違う。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額の大小そのものより「同じ働き方で手取りが厚くなる」という点にあります。依頼する側も、中間コストが乗らない分だけ回数を増やせる。この構造は、対話を軸にした仕事のように「継続してこそ効果が出る」領域と特に相性が良いのです。

看護師からカウンセラーへの道は、決して短くありません。ただ、あなたがこれまで積んできた経験は、どのルートを選んでも無駄になりません。人の弱った姿を見て、逃げずにそこにいた時間。それは資格では買えないものです。

焦らなくて大丈夫です。まずは自分がどこで働きたいのか、そこを一つ決めるところから始めてください。道筋は、そのあとで必ず見つかります。

よくある質問

Q. 看護師の資格があれば公認心理師の受験資格になりますか?

なりません。公認心理師の受験には、大学で心理学の指定科目を履修したうえで、大学院の指定科目を修めるか、定められた施設で2年以上の実務経験を積む必要があります。実務経験だけで受験できた経過措置は第5回試験で終了しており、現在は利用できません。看護大学卒でも指定科目を満たしていなければ、通信制大学などで履修し直すところからのスタートになります。

Q. 働きながら取れるカウンセラー資格でおすすめはどれですか?

産業カウンセラーとキャリアコンサルタントが現実的です。産業カウンセラーは6か月程度の養成講座で傾聴の実技を集中的に訓練でき、費用は十数万円から20万円台。キャリアコンサルタントは国家資格で、150時間前後の認定講習を修了すれば受験できます。どちらも土日や夜間の開講が多く、看護師の勤務と両立しやすい設計になっています。

Q. カウンセラーになると収入は下がりますか?

心理職の常勤ポストは限られており、夜勤手当を含む看護師の収入と比べると転身直後は下がるのが一般的です。収入を保ちたい場合は、企業の産業保健職として看護師と心理の両方の職務で採用される道が有力です。看護師を非常勤に切り替えて心理業務と兼務する、平日は医療機関で働き休日にオンライン面談や執筆を受ける、といった組み合わせ方も現実的です。

Q. 資格を取らなくても、今の職場で心理の関わりを活かせますか?

活かせます。相手の言葉を言い換えて返す、沈黙を待つ、助言の前に気持ちを確認する。この3つを意識するだけで患者さんの語る量は変わります。所定の研修を修了した看護師はストレスチェックの実施者にもなれるため、資格取得前でも企業のメンタルヘルス業務に関わる道があります。院内のリエゾン活動や新人サポートで実績を作っておくと、後の転身時に語れる材料になります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月9日最終更新:2026年8月3日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方