NDAを結ぶときの注意点|受注側が必ず確認すべき条項と修正の伝え方


この記事のポイント
- ✓NDAを結ぶタイミング
- ✓受注側にとって危険な競業避止や損害賠償の書き方
- ✓修正を申し入れるときの文面
NDAを結ぶことになったとき、いちばん多い失敗は「送られてきた文面をそのまま返信してしまうこと」です。結論から言うと、NDAは開示の前に結ぶものであり、受け取った文面のうち三か所だけは必ず読んで、必要なら直してもらう価値があります。その三か所とは、秘密情報の定義、競業避止と知的財産の扱い、そして損害賠償の上限です。この記事では、締結のタイミングから条項の読み方、修正を申し入れるときの実際の言い方、電子契約や印紙の扱い、結んだあとの運用までを、受ける側の目線で順番に整理します。
NDAを結ぶタイミングは「秘密情報を渡す前」が鉄則
最初に押さえておきたいのが順番です。NDAは、情報を渡したあとに結んでも意味が薄くなります。すでに渡してしまった情報は、契約の対象外だと主張される余地が残るからです。
実務では、取引の話が具体化して「詳しい資料をお見せします」となる直前が締結のタイミングになります。法律事務所の解説でも、この順序が明確に示されています。
NDAを結ぶタイミングは秘密情報を開示する前の取引交渉段階がほとんどです。取引の可能性を検討する際に、秘密情報の開示が必要となることが多いからです。 出典: ai-con.lawyer
交渉段階、という部分が重要です。仕事が決まってから結ぶものだと思っていると、見積もりを出す段階でもう遅い。見積もりを作るには、相手の商品情報、販売数、原価、今後の計画といった情報が必要になるからです。その時点で秘密情報のやり取りが始まっています。
私がEC運営の支援を始めたころ、いちばん困ったのがここでした。ブランド側から「まず現状を見てほしい」と言われて、在庫データと売上の数字を共有してもらい、そのあとに提案書を作った。結果的にその案件は流れたのですが、手元には相手の売上データが残ったままでした。返すのか、消すのか、どう扱えばいいのかが決まっていなかった。そのとき初めて、NDAは相手を縛る書類ではなく、自分の立場をはっきりさせる書類なのだと理解しました。
もう一つ、締結の順番で迷いやすいのが「業務委託契約に秘密保持条項が入っている場合」です。この場合は、原則として別途NDAを重ねて結ぶ必要はありません。ただし、業務委託契約を結ぶ前の提案段階で情報のやり取りがあるなら、その期間をカバーするためにNDAを先に結ぶ意味があります。
NDAで実際に守られるものと、法律との関係
NDAを結んだからといって、情報が物理的に守られるわけではありません。守られるのは「漏らされたときに責任を問える立場」です。ここを誤解していると、締結しただけで安心してしまいます。
日本には不正競争防止法という法律があり、営業秘密として保護されるための条件が定められています。秘密として管理されていること、事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること、公然と知られていないこと。この三つが揃って初めて、法律上の保護を受けられます。
このうち最初の「秘密として管理されている」という条件が、実務では一番難しい。誰でも見られる共有フォルダに置いてある、印刷して机に放置してある、取引先に渡しっぱなしで回収していない。こういう状態だと、秘密として管理していたとは言いにくくなります。NDAを結ぶことは、この管理の意思を示す材料の一つになります。
経済産業省は秘密情報の保護に関する実務的な手引きを公開しており、社内での管理方法や契約の考え方が整理されています。制度の全体像を確認したい場合は、経済産業省のサイトが出発点になります(https://www.meti.go.jp/)。
もう一つ知っておきたいのが、NDAは万能ではないという点です。情報が漏れたことを立証し、それによって損害が出たことを立証し、金額を算定する。この三つは、どれも簡単ではありません。だからこそ、契約書の文面でどこまで具体的に書かれているかが効いてきます。抽象的な文言しかない契約は、いざというときに使えないことが多い。
一方向か双方向か、まずここを見る
NDAには、情報を出す側と受け取る側の関係によって二つの形があります。どちらの形になっているかで、あなたの負う義務の重さが変わります。
一方向型は、片方だけが情報を開示し、もう片方だけが守秘義務を負う形です。発注側が自社の情報を渡す場合に使われます。受注側から見ると、義務だけを負う形になります。
双方向型は、両者が互いに情報を開示し、両方が守秘義務を負う形です。共同で企画を進める場合や、こちら側のノウハウも見せる必要がある場合に使われます。
受注側として注意したいのは、実態は双方向なのに文面が一方向になっているケースです。たとえば、こちらの運用ノウハウや分析の手法を見せながら提案するのに、守秘義務は自分だけが負っている。この状態だと、提案内容を別の業者に流用されても文句が言えません。
提案のなかで自分の手の内を見せる場面があるなら、双方向にしてもらうよう申し入れる価値があります。伝え方は難しくありません。「弊方からも運用方法や分析の手順をお見せすることになるため、相互の秘密保持の形にしていただけますか」と一行書けば済みます。断られることはほとんどありません。
契約の全体像を先に把握しておきたい方には、フリーランスが契約で見落としやすい項目を具体的に挙げた記事が役立ちます。フリーランスの契約で注意すべき10のポイント|トラブル防止の契約書チェックリスト【2026年版】では、NDA以外の契約書でも共通して見るべき箇所が整理されています。
必ず確認する条項
送られてきた文面を読むとき、どこを見ればよいのか。優先度の高い順に並べます。
秘密情報の定義は最初に見る箇所です。何が秘密情報にあたるのかが書かれています。「開示されたすべての情報」という広い書き方になっていると、日常の会話や一般的な知識まで含まれてしまいかねません。実務では抽象的な文言が使われることが多いのですが、せめて「秘密である旨を明示して開示したもの」という条件が入っているかは確認したい。
秘密情報の例外も重要です。すでに公知の情報、開示前から自分が持っていた情報、第三者から適法に入手した情報、独自に開発した情報。これらが除外されていないと、あとで自分の既存のノウハウまで縛られる危険があります。
目的外使用の禁止は、受け取った情報をその案件以外に使わないという条項です。これは当然の内容なので、そのまま受け入れて問題ありません。
第三者への開示と再委託の扱いも見ます。外注を使う予定があるなら、事前の書面による承諾を得れば再委託先に開示できる、という書き方になっているか確認してください。一切禁止になっていると、実務が回らなくなります。
有効期間と、期間終了後の存続も確認します。契約期間は1年から3年程度が一般的ですが、秘密保持義務だけは契約終了後も一定期間続く形になっていることが多い。この存続期間が10年を超えるような設定だと、実務上は負担が重くなります。
返還と破棄の条項は、案件が終わったときに何をすればよいかを決めています。返すのか、消すのか、消したことを証明する書面が必要なのか。ここが決まっていないと、私が最初に困ったような状態になります。
受注側にとって特に危ない三つの条項
ここからが本題です。NDAという名前の書類に、秘密保持とは別の重い義務が紛れ込んでいることがあります。正直なところ、これはどうかと思う内容が入っている契約書を何度も見てきました。
一つ目が、競業避止義務です。「本契約期間中および終了後一定期間、開示者と競合する事業を行わないものとする」といった条項。フリーランスにとってこれは致命的で、同じ業界の他社から仕事を受けられなくなります。アパレルのEC支援をしている人が、あるブランドとのNDAで同業への関与を禁じられたら、仕事の大半が消えます。秘密保持と競業の禁止はまったく別の話なので、NDAに入っていたら削除を申し入れてよい箇所です。
二つ目が、知的財産権の帰属です。「本契約に関連して生じた発明、考案、著作物等の権利は開示者に帰属する」という条項。秘密保持の契約に成果物の権利の話が入っているのは、本来おかしい。提案段階で作った企画書や分析資料の権利まで相手に移ってしまう書き方になっていないか確認してください。成果物の権利は、業務委託契約のほうで報酬とセットで決めるべき事項です。権利の移転をどう考えるかは、著作権の譲渡と利用許諾の違いを整理した記事が分かりやすい。著作権譲渡契約の注意点|デザイン・ライティング案件でトラブルを避ける「帰属」と「譲渡」の境界線では、帰属と譲渡がどう違うのかが具体例で説明されています。
三つ目が、損害賠償の書き方です。上限が定められておらず、違約金の額だけが固定で書かれている場合、報酬額とまったく釣り合わない責任を負うことになります。受注側としては「故意または重過失による場合を除き、賠償額は本件業務の報酬額を上限とする」といった上限の設定を求めるのが妥当です。
この三つは、いずれも「NDAだから」と流し読みされやすい場所に置かれています。だから最初に探す癖をつけてください。目次を見て、秘密保持以外の言葉が出てきたら、そこが読むべき場所です。
修正を申し入れるときの伝え方
条項に問題を見つけても、言い出しにくいという方が多い。ここは経験上、伝え方の型を持っておくと一気に楽になります。
基本の形は、断る理由ではなく実務上の事情として伝えることです。「この条項は受け入れられません」ではなく、「この書き方だと実務が回らないので、こう直していただけますか」と言う。相手の担当者も、自社のひな形をそのまま送っているだけで、中身を精査していないことが多いからです。
文面の例を挙げます。競業避止の削除を求める場合はこうなります。
「第〇条の競業避止の条項についてご相談です。弊方は同業種の複数社様のご支援を並行して行っており、この条項をそのまま受けますと業務の継続が難しくなります。秘密保持義務は当然に遵守いたしますので、本条の削除をご検討いただけませんでしょうか」
損害賠償の上限を求める場合はこうです。
「第〇条の損害賠償について、賠償額の上限を本件の報酬額とする旨を追記いただけますでしょうか。故意または重過失の場合は除外していただいて構いません」
再委託の許容を求める場合はこうです。
「撮影やコーディングの一部を外部の協力者に依頼する場合がございます。事前に書面でご承諾をいただく前提で、再委託先への開示を可能とする条項を追加いただけますでしょうか」
どれも、要求ではなく相談の形になっているのが分かると思います。私の経験では、この形で申し入れて関係が悪くなったことは一度もありません。むしろ、契約書をきちんと読む相手だと認識されて、その後のやり取りが丁寧になることのほうが多い。
逆に、修正の申し入れに強い拒否反応を示す相手は、そのあとの業務でも一方的な条件を出してくる傾向があります。契約書のやり取りは、相手を見極める最初の機会でもあります。
締結の方法と印紙の扱い
締結の方法は、紙に押印する形と電子契約の二つがあります。近年は電子契約が主流になりつつあり、フリーランス側からも扱いやすい。
電子契約の利点は、郵送の往復が不要で締結までの時間が短いこと、原本の保管場所が要らないこと、そして印紙が不要になることです。電子署名法にもとづく仕組みを使えば、証拠としての効力も確保されます。ツールの違いや選び方を比較した記事があるので、自分から提案する場合の参考になります。電子契約ツール比較 2026|クラウドサイン vs ドキュサインを徹底解説では、受注側が無料で使える範囲についても触れられています。
印紙については、誤解が多い部分なので整理しておきます。秘密保持契約書だけであれば、課税文書に当たらず印紙は不要とされるのが一般的です。ただし、継続的な取引の基本契約としての性質を併せ持つ場合や、請負に関する内容が含まれる場合は、課税文書に該当する可能性が出てきます。判断に迷ったら、国税庁のサイトで文書の区分を確認するのが確実です(https://www.nta.go.jp/)。
紙で締結する場合の実務的な注意も書いておきます。二部作成して双方が原本を保有する形が基本です。片方だけが原本を持ち、こちらはコピーしかないという状態は避けたい。また、押印した日付が空欄のまま送られてくることがありますが、いつから効力が生じるのかが曖昧になるので、日付は必ず入れてもらいます。
署名する人の権限も確認しておく価値があります。担当者個人の名前で結ばれた契約は、その人が異動したときに引き継がれないことがあります。法人としての締結になっているかを見てください。
個人事業主として結ぶ場合の書き方も触れておきます。屋号を使っている場合は、屋号だけでなく個人名を併記するのが一般的です。住所は事業所の所在地を書きますが、自宅で仕事をしていて住所を知られたくない場合は、バーチャルオフィスなどの利用を検討する余地があります。契約書に書いた住所は、相手の社内で回覧される前提だと考えてください。
締結後の保管も決めておきます。電子契約ならサービス内に保管されますが、サービスの契約が切れたときに取り出せなくなることがあるので、締結済みのファイルは自分の手元にも保存しておきます。紙の場合は案件ごとにまとめ、有効期間が終わるまでは処分しません。契約期間より秘密保持義務のほうが長く残る形が一般的なので、案件が終わったからといって捨ててしまわないようにしてください。
結んだあとの運用が、実は一番抜ける
締結して安心してしまうのが、いちばん多い失敗です。契約書は結んだ瞬間から運用が始まります。
まず、受け取った情報の置き場所を決めます。案件ごとにフォルダを分け、他の案件の資料と混ざらないようにする。クラウドストレージを使うなら、共有リンクに有効期限をつけ、作業が終わったらアクセス権を外します。
次に、関わる人への周知です。外注の協力者に作業を頼むなら、その人にも同じ義務が及ぶことを伝え、必要なら自分と協力者の間でもNDAを結びます。この周知が抜けることは珍しくありません。
企業でNDAを結ぶ際、契約書を見るのは限られた上層部の人間のみで、実際に秘密情報に触れる社員には周知されていないケースは少なくありません。 出典: ai-con.lawyer
契約を結んだ人と、実際に情報を触る人が違う。この断絶が、漏えいの入口になります。個人で仕事をしている場合でも、外注を使えば同じ構造が生まれます。
三つ目が、実績としての公開の可否です。ポートフォリオやSNSで「このブランドの運用を担当しました」と書けるかどうかは、NDAの内容で決まります。案件名を出したいなら、締結の段階で「実績として社名を掲載してよいか」を確認しておくのが確実です。あとから聞くと断られやすい。
四つ目が、終了時の処理です。案件が終わったら、返却または破棄を規定どおりに行い、必要なら実施したことを書面で伝えます。ここまでやって初めて、契約が完結します。
外注先とのトラブルの類型を具体的に見ておくと、どこで事故が起きるのかが分かります。外注先とのトラブル事例と防止策|契約書のポイント【2026年版】では、発注側の視点も入っているので、自分が外注を使う立場になったときにも使えます。
実際に起きるトラブルの形を知っておく
条項の話を抽象的に読んでもピンと来ないと思うので、実務で起きる形を具体的に並べます。どれも珍しい話ではありません。
一つ目が、提案内容だけを持っていかれるケースです。コンペや相見積もりで詳細な企画書を出したあと、受注には至らなかったのに、後日そのブランドが提案とよく似た施策を別の業者と実施している。この状況で戦えるかどうかは、双方向のNDAを結んでいたか、企画書に権利の帰属を書いていたかで決まります。提案書の末尾に「本提案の内容および資料の著作権は当方に帰属します」と一行入れておくだけでも、抑止として働きます。
二つ目が、秘密情報の範囲をめぐる食い違いです。打ち合わせで口頭で聞いた話が秘密情報に含まれるのか、含まれないのか。口頭開示についての定めがない契約だと、あとで争いになります。多くのひな形には「口頭で開示した場合は一定期間内に書面で秘密である旨を通知する」という条項が入っているので、その期間がどれくらいかを見ておいてください。
三つ目が、案件終了後の実績公開でもめるケースです。SNSやポートフォリオに載せた投稿について、取引先から削除を求められる。実績として使えるかどうかは締結時に確認しておくのが確実で、口頭の了承ではなくメールなど文字で残る形でもらうのが安全です。
四つ目が、外注先からの漏えいです。自分は守っていても、作業を頼んだ相手が資料をそのまま個人のクラウドに保存していた、というような事故。自分が責任を負う立場なので、協力者にも同じ条件を課しておく必要があります。
五つ目が、退職や契約終了後の引き抜きに絡むもの。NDAに競業避止や勧誘の禁止が紛れ込んでいると、関係者に声をかけただけで違反を主張されることがあります。秘密保持以外の義務が書かれていないかを、最初に確認する理由がここにあります。
NDAを結ばずに始めてしまったときのリカバリー
すでに情報を受け取ってしまった、あるいは渡してしまった。この状態からでもできることがあります。
第一に、いま結ぶことです。遅くても、これから先の情報については効力が及びます。さらに、「本契約締結前に開示された情報についても本契約の対象とする」という一文を入れてもらえば、遡って対象にできます。この一文があるかないかで、範囲がまったく変わります。
第二に、受け渡しの記録を残すことです。いつ、どのファイルを、どの経路で受け取ったか。メールの履歴やチャットのログがそのまま記録になります。あとで範囲を確定するときの材料になります。
第三に、自分の側の管理を整えることです。相手の情報を自分のパソコンのどこに置いているかを把握し、不要なものは消す。共有していたリンクを切る。バックアップに残っていないかを確認する。この整理をしておくと、万一の際に「適切に管理していた」と言える状態になります。
第四に、既存の契約を確認することです。業務委託契約や基本契約に秘密保持の条項が入っていれば、それで足りる場合があります。重ねて結ぶかどうかは、条項の範囲を読んでから判断すれば十分です。
テンプレートを下敷きにして自分から提示するのも、実は有効な手です。相手が用意していない場合、こちらから出せば内容を自分で選べます。フリーランス向けの書き方と注意点をまとめた記事があるので、たたき台として使えます。フリーランスのNDA(秘密保持契約)テンプレート|書き方と注意点では、最低限入れるべき条項が整理されています。
契約を読む力を仕事の価値に変える
ここまで見てきたとおり、NDAの読み方は特別な知識というより、どこを見るかを知っているかどうかの問題です。そして、この力は仕事の単価にも効いてきます。
理由は二つあります。一つは、契約書を読める人は、条件交渉ができるからです。報酬、納期、修正回数、権利の扱い。これらを契約の言葉で話せる相手は、発注側から見ても安心して任せられます。もう一つは、リスクを自分で判断できると、引き受けられる仕事の範囲が広がるからです。情報を扱う案件は単価が高い傾向がありますが、管理ができない人には回ってきません。
基礎から体系立てて学びたいなら、法務の検定が近道です。契約の成立、債権の回収、知的財産の基本まで一通り入っているので、実務で出てくる言葉が分かるようになります。ビジネス実務法務検定は、法学部出身でなくても十分に到達できる内容です。
法務そのものを仕事にする道もあります。どの程度の水準なのかを知りたい場合は、職種別の相場が参考になります。法務従事者の年収・単価相場では全国平均と地域差の両方が確認できます。
情報の扱いが絡む案件全般に広げるなら、セキュリティやマーケティングの支援業務も視野に入ります。仕事の中身と求められる経験が具体的に書かれているので、自分に足りないものが逆算できます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、外部人材がどのフェーズで呼ばれるのかが分かります。
20年この市場を見てきた立場からの観察
運営者として在宅ワークと業務委託の市場を長く見てきた立場から、一つ書いておきます。NDAの扱い方には、その人が長く続けられるかどうかが表れます。
運営者として見てきた限りでは、継続的に仕事を得ている人ほど、契約書のやり取りを面倒だと思っていません。むしろ、そこを丁寧にやることで相手の信頼を得ています。逆に、早く仕事を始めたいからと内容を見ずに返信してしまう人は、後になって条件のことで揉めることが多い。そして一度揉めると、その取引先からの依頼は途切れます。契約書を読む数十分が、次の仕事を守っているわけです。
もう一つ、長く続く人は「この人に任せると段取りが楽だ」と思われる状態を作ることに時間を使っています。情報の管理が安定している相手には、発注側も踏み込んだ仕事を任せられる。結果として単発の作業ではなく継続の依頼に変わり、毎回新しい相手を見極めるコストが消えていきます。
中間マージンが乗らない直接の取引は、依頼する側から見れば同じ予算でより多く頼めますし、受ける側から見れば手数料0%のぶん手取りが厚くなります。ただ、その形が機能するのは、契約と記録がきちんと残っているときだけです。間に入る仲介がないぶん、条件の取り決めは自分で固める必要がある。額面が同じでも手取りが違うという話の本当の意味は、安心して繰り返せる関係を自分で作れているかどうかにあります。NDAは、その関係の最初の一歩に置かれている書類です。
最後に整理します。NDAを結ぶときは、情報を渡す前に結ぶ、秘密情報の定義と例外を見る、競業避止と知的財産と損害賠償の三か所を探す、必要なら相談の形で修正を申し入れる。この四つを習慣にすれば、契約書に押し負けることはなくなります。
よくある質問
Q. NDAはどのタイミングで結べばよいですか?
秘密情報を開示する前、つまり取引の交渉段階で結ぶのが原則です。見積もりや提案書を作るために相手の売上や原価の情報をもらう場面が発生するので、その前に締結しておく必要があります。すでに渡した情報については、契約書に「締結前に開示された情報も対象とする」旨を追記してもらうと範囲をそろえられます。
Q. NDAに競業避止の条項が入っていました。受け入れるべきですか?
秘密保持と競業の禁止は別の話なので、削除を申し入れてよい箇所です。同業他社の仕事を受けられなくなると業務の継続が難しくなる旨を、相談の形で伝えてください。秘密保持義務そのものは当然に守る前提だと添えれば、拒否されることはほとんどありません。
Q. 秘密保持契約書に収入印紙は必要ですか?
秘密保持契約書だけであれば課税文書に当たらず、印紙は不要とされるのが一般的です。ただし継続的な取引の基本契約としての性質を併せ持つ場合などは該当し得ます。電子契約で締結すれば印紙の問題自体が生じません。判断に迷う場合は国税庁のサイトで文書の区分を確認してください。
Q. 業務委託契約に秘密保持条項がある場合、NDAも別に結ぶ必要はありますか?
業務委託契約に秘密保持条項があれば、原則として重ねて結ぶ必要はありません。ただし業務委託契約を結ぶ前の提案段階で情報をやり取りするなら、その期間をカバーするためにNDAを先に締結する意味があります。条項の範囲と有効期間を読んでから判断してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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