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NDAと機密保持契約の関係

@SOHO編集部
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NDAと機密保持契約の関係

この記事のポイント

  • ✓秘密保持契約は呼び名が違うだけで同じ契約です
  • ✓この記事ではNDAと機密保持契約の関係を整理した上で
  • ✓収入印紙や電子契約の扱い

結論から書きます。NDAと機密保持契約は、別の契約ではありません。同じ契約を違う名前で呼んでいるだけです。日本語では「秘密保持契約」と書かれることが最も多く、「機密保持契約」と書かれることもありますが、内容も法的効力も変わりません。だから「NDAと機密保持契約、どちらを結べばいいのか」という問いには、そもそも選択肢が存在しません。

では、なぜこの検索が生まれるのか。取引先から届いたPDFの表題が「機密保持契約書」で、メールの本文には「NDAをご返送ください」と書かれている。その食い違いを見て、違うものを2通結ばされるのかと不安になる。あるいは社内で「NDAは法務、機密保持契約は総務」と分かれていて、どちらに回すのか分からない。正直なところ、この混乱は書き手側が用語を揃えないまま文書を量産してきたことが原因です。

この記事では、呼び名の整理を入口にして、実務で本当に困るところに踏み込みます。いつ結ぶのか、どの条項を見落とすと痛い目に遭うのか、片務と双務の違いは何か、収入印紙は要るのか、電子契約でよいのか、そして受け取った側として何を直してもらうべきか。読み終えたときに、届いた1通を自分で判断できる状態になることを目標にします。

NDAと機密保持契約と秘密保持契約は、全部同じ契約である

NDAは Non-Disclosure Agreement の頭文字です。直訳すれば「開示しない合意」で、日本語では秘密保持契約と訳されるのが通例です。法律の条文に「秘密保持契約」という契約類型が定義されているわけではなく、民法が定める典型契約(売買、賃貸借、請負など)にも含まれません。つまりこれは、当事者が自由に内容を決められる無名契約のひとつです。名前が揺れる根本の理由はここにあります。法律が名前を決めていないので、誰が何と呼んでもよいのです。

実務での呼び分けには、一応の傾向があります。

一般的には「秘密保持契約書」と書くことが多いです。機密文書という言葉の流れから「機密保持契約書」と書かれていることもありますが同じ意味です。 従業員の雇用時など相手に一方的に制約させる場合は「秘密保持に関する誓約書」と書くことが多いです。 出典: saisoncard.co.jp

この整理は現場の感覚とよく合います。企業間で対等に結ぶときは「秘密保持契約書」、社内文書の流れを引き継いだときは「機密保持契約書」、雇用や業務委託で受け手だけに義務を負わせるときは「誓約書」という表題になりやすい。さらに英語圏の文書では CA(Confidentiality Agreement)という表題も使われますが、これもNDAと実質的に同じものです。M&Aの初期段階ではCAという表題を見かける頻度が上がりますが、条項の構成はNDAと大差ありません。

大事なのは、表題ではなく中身を読むことです。「秘密保持契約書」という穏当な表題でも、中を開けたら競業避止義務と損害賠償の予定額が入っていることがある。逆に「NDA」という短い表題で、開示目的の限定だけが書かれた1枚もののこともある。表題で警戒度を決める癖がついていると、この差を見落とします。

私が編集の仕事を請けはじめた頃、取引先から届いた「秘密保持に関する覚書」という1枚を、覚書だから軽いものだと思ってそのまま押印しました。あとで読み返したら、成果物の二次利用を無期限に禁じる条文が混ざっていて、自分の実績としてポートフォリオに載せることもできない状態になっていました。表題の軽さと拘束の強さは一致しません。これは反省を込めて書いておきます。

呼び名の話をもうひとつ。「NDA」を「エヌディーエー」と読むのが一般的ですが、社内で「ノンディスクロージャー」と省略せずに呼ぶ会社もあります。相手がどう呼んでいるかに合わせておくと、やり取りの往復が減ります。用語が揃わないままメールを重ねると、「先日のNDA」と「先日の機密保持契約」が別案件だと誤解されて、確認のラリーが増えます。

結ぶタイミングを間違えると、契約書があっても守られない

NDAで最も多い実務上の失敗は、条文の中身ではなくタイミングです。情報を渡したあとに結んでも、すでに渡した分については効きません。正確には、渡した情報を後追いで秘密情報に含める書き方はできますが、相手が「それは受領前に知っていた」と主張したときに反証しづらくなります。

NDAは、相手に情報を開示する前に締結する必要があります。別の契約を交わす前や同時というわけではありません。実際の取引が始まる前には商談や打ち合わせがあります。 その時に自社商品やサービスを理解してもらうために、情報を開示するケースがあります。その商談の前にNDAを結んで、情報漏洩のリスクを避けなければなりません。 出典: saisoncard.co.jp

順番を具体的に並べると、こうなります。初回の問い合わせや会社紹介の段階では、まだ公開情報しか出しません。次に、相手の課題を聞き取って自社の提案を作る段階に入ると、価格の考え方や実装方法、既存顧客の事例といった非公開情報が出はじめます。この境目が締結のタイミングです。提案書を送る前、見積の内訳を開示する前、テストデータを渡す前。この3つのどれかに差しかかったら、先にNDAです。

業務委託の現場だと、もっと手前で必要になることがあります。たとえばシステムの改修見積を作るために、既存のソースコードや設計書を見せてもらう。この時点ですでに秘密情報の授受が発生しているので、見積を出す前に締結しておく必要があります。逆に、発注者側から「NDAは契約書と一緒にまとめて」と言われた場合、見積段階の情報開示が無防備になります。ここは押し戻してよいところです。

締結までに時間がかかるとき、実務では覚書や合意書の形で先に秘密保持だけを取り交わすことがあります。あるいは、メールの本文で「本メールに記載した内容は貴社内での検討目的に限り使用し、第三者に開示しない前提でお送りします」と一文添えておく。これは正式なNDAの代わりにはなりませんが、まったく何もない状態よりは主張の足がかりになります。

それから、期間の設計もタイミングの一部です。契約期間が終われば秘密保持義務も終わるように書かれているNDAは珍しくありません。しかし製造ノウハウや価格の考え方は、取引が終わったあとも価値が残ります。だから多くのNDAは、契約終了後も一定期間は義務が残る「残存条項」を置きます。この期間の相場は3年から5年で、営業秘密性の高い情報については無期限とする例もあります。受け手として無期限を飲むかどうかは、後述するチェック手順のところで扱います。

条項を1つずつ読む:ここを見落とすと痛い

NDAの条文構成は、どの雛形でもおおむね似ています。逆に言えば、見るべき場所が決まっているということです。上から順に見ていきます。

秘密情報の定義

最初に来る条項で、そして最も揉めるところです。定義の書き方には大きく2通りあります。ひとつは「開示の際に秘密であることを明示したものに限る」とする明示方式。もうひとつは「本目的に関連して開示された一切の情報」とする包括方式です。

開示する側から見れば包括方式が安全ですが、受け取る側から見ると管理コストが跳ね上がります。口頭で聞いた雑談も、打ち合わせのホワイトボードも全部が秘密情報になるので、理屈の上では社内の誰にも共有できません。現実的な落としどころは、書面や電子データは明示、口頭開示は開示後14日以内に書面で特定する、という折衷です。

除外事由もここに書かれます。受領時にすでに公知だったもの、受領後に自分の責任なく公知になったもの、受領前から自分が保有していたもの、第三者から適法に取得したもの、独自に開発したもの。この5つが標準です。1つでも欠けている雛形は、受け手にとって不利なので追記を求めてよいところです。

目的外使用の禁止

秘密を漏らさないことと、もらった情報を別の用途に使わないことは別の義務です。後者を書き忘れているNDAは、実は少なくありません。たとえば発注検討のために受け取った仕様書を、自社の別製品の設計に流用する。これは漏洩ではないので秘密保持義務には触れませんが、目的外使用の禁止があれば止められます。

目的の書き方も見ます。「両社間の取引に関する検討」のように広く書かれていると、事実上なんでも使えてしまいます。案件名や対象範囲を入れて特定するのが望ましい形です。

第三者開示の例外と再委託

自社の役員と従業員には共有できる、という条項はほぼ必ず入っています。問題は外注先です。デザインを別のイラストレーターに、翻訳を別の翻訳者に回す働き方をしているなら、再委託先への開示が認められているかを確認しないと、契約違反を犯しながら仕事をすることになります。認められていない場合は、事前の書面承諾を得る形に直してもらいます。

弁護士や税理士、会計監査人への開示も、法令上の守秘義務がある専門家として例外に入れておくのが実務的です。

法令に基づく開示

裁判所の命令や税務調査で開示を求められたときは、義務違反にならない旨を書いておきます。ここが抜けていると、法律に従うと契約違反、契約を守ると法律違反という板挟みになります。併せて、開示を求められた場合は事前に相手方へ通知する努力義務を置くのが一般的です。

複製、返還、廃棄

契約が終わったとき、預かった資料をどうするか。返還と廃棄のどちらを選べるのか、廃棄したことの証明書を出す必要があるのか。クラウドに置いたデータのバックアップまで消せるのか。この条項は、実務で本当に守れる内容になっているかを見てください。バックアップの世代管理が自動で回っている環境で「すべての複製を完全に消去し証明書を提出する」と約束すると、履行できない約束をしたことになります。

損害賠償と差止め

損害賠償の条項は、上限が書かれているかどうかで性格が変わります。上限がなく、しかも「一切の損害」と書かれていると、情報漏洩の二次被害まで請求される余地が残ります。受け手の立場では、委託料相当額や直接損害に限定する交渉をします。加えて、違約金の額をあらかじめ定める損害賠償額の予定が入っている場合は、その金額が業務の規模に見合っているかを確認します。

差止請求を認める条項は、開示する側にとって重要です。損害額の立証は難しいので、まず止めさせることに意味があります。

「NDAは意味がない」と言われる理由

検索していると「NDAは意味がない」という論調の記事に当たります。乱暴な言い方ですが、指摘の中身は正しい部分があります。整理すると、批判は3つです。

1つめは、漏洩の立証が難しいこと。情報が外に出たとして、それが自社から渡した情報であり、かつ相手が漏らしたものだと証明するのは簡単ではありません。相手が「独自に開発した」「別ルートで知った」と主張したときに、それを崩す材料が必要になります。だから実務では、渡した情報に管理番号を振る、開示の記録を残す、電子ファイルに透かしを入れるといった地味な作業が効いてきます。

2つめは、損害額の算定が難しいこと。ノウハウが漏れたことで将来失われた利益を金額にするのは、計算方法から争いになります。これを見越して、違約金の予定や差止めを入れておくわけです。

3つめは、結んだあとに運用されないこと。これが一番大きい。契約書はファイルに綴じられ、現場では共有ドライブの権限が広いまま、退職者のアカウントも残っている。契約で縛っても、物理的に取り出せる状態を放置していたら意味がありません。

だからNDAは、契約書の完成度だけでなく、社内の情報管理とセットで考えるものです。経済産業省は秘密情報の保護についての実務資料を公開していて、契約と管理体制の両輪で考える枠組みが整理されています。所管官庁の情報は経済産業省のサイトから確認できます。

もうひとつ押さえておきたいのが、不正競争防止法との関係です。同法は「営業秘密」を保護していますが、その要件には秘密管理性が含まれます。つまり、秘密として管理していた事実がなければ法律の保護も受けられません。NDAを結び、秘密であることを明示し、アクセス権を限定しておくことは、契約上の主張だけでなく法律上の保護を得るための下地にもなります。ここを理解すると、NDAは「効かないから無駄」ではなく「効かせるための手順の一部」だと見えてきます。

収入印紙、電子契約、片務と双務の実務

細かいところで迷いやすい3点をまとめます。

収入印紙については、通常のNDAには不要です。印紙税は課税文書に対してかかるもので、秘密保持契約は印紙税法の定める課税文書の類型に当てはまらないのが通常です。ただし例外があります。ひとつの契約書の中に、業務委託の内容や請負の内容が書き込まれていて、継続的取引の基本契約に該当してしまう場合です。この場合は第7号文書として4,000円の印紙が必要になります。秘密保持だけを書いた1通に印紙を貼る必要はありませんが、秘密保持条項を業務委託契約書に含めた場合は、その契約書全体の性質で判断されます。判断に迷う文書は、国税庁の資料で課税文書の分類を確認するのが確実です。所管の情報は国税庁のサイトにまとまっています。

電子契約については、NDAは電子でまったく問題ありません。書面の作成が法律で義務づけられている契約ではないので、電子署名でも、クラウド型の契約サービスでも有効です。むしろ印紙税の観点では、電子データとして完結させた契約書には印紙税がかからないという実務上の扱いがあるので、前述の第7号文書に当たりうるケースでは電子のほうが合理的です。受け手としては、送られてきた署名依頼のリンクが正規の事業者のドメインかどうかを確認する習慣をつけてください。契約書の署名依頼を装ったフィッシングは実際に起きています。この種の攻撃への備え方は、社内教育の観点から社員のセキュリティ意識を向上させるフィッシングメール模擬訓練の効果|2026年最新の従業員教育ガイドで扱っています。訓練メールの作り方と、引っかかった人を責めない運用の勘所をまとめた記事です。

片務と双務の違いも押さえておきます。片務は一方だけが秘密保持義務を負う形、双務は双方が負う形です。発注者が受注者に情報を渡すだけの案件では片務で足りますが、受注者側も自分の手法や既存の成果物を見せることが多いので、実際には双務にしておくほうが自然です。届いたNDAが片務で、しかも自分だけが義務を負う側になっているときは、双務に直してもらう交渉をしてよい。相手が渋る場合でも、少なくとも「受注者の既存ノウハウと既存著作物の権利は移転しない」という一文を入れてもらうと、あとで揉めません。

どちらが作成すべきかという論点もありますが、実務では情報を多く開示する側が用意することが多いです。ただし作成した側の雛形は作成した側に有利に書かれているのが当然なので、受け取った側は読み込む前提で動きます。

受け取ったNDAを自分でチェックする手順

ここまでを踏まえて、手順に落とします。フリーランスや小規模な事業者が、法務部門を持たずに1通を判断するための現実的な段取りです。

目的と当事者を確認する

最初に見るのは表題ではなく前文です。誰と誰の間の契約か、何のための開示か。当事者名が正式な商号になっているか、代表者名が現任者か。案件名が入っているか。ここが曖昧なNDAは、あとで「この案件は対象外だ」という争いを生みます。

自分が負う義務の範囲を数える

義務の条文だけを拾って、箇条書きに書き出します。漏らさない、目的外に使わない、複製しない、再委託しない、返還する、報告する。この6種類のうちいくつが入っていて、それぞれ自分の作業環境で本当に守れるかを照らします。守れないものが1つでもあれば、条文を直すか、作業環境を変えるかのどちらかです。守れない条文に署名するのが一番よくない選択です。

期間と残存を見る

契約期間、秘密保持義務の存続期間、返還や廃棄の時期。この3つはそれぞれ別の日付です。存続期間が無期限になっているときは、受け手として期間を切る交渉をしますが、営業秘密性が高い情報を扱う案件では無期限が通ることもあります。飲む場合は、除外事由が十分に書かれているかを必ず確認してください。公知になった情報が永久に秘密扱いのままだと、履行不能な義務を負い続けることになります。

賠償と競業避止を探す

損害賠償の上限、違約金の予定額、そして競業避止義務。NDAの体裁で競業避止が混ざっているケースは実際にあります。「本件と同種の業務を第三者に対して行わない」という一文が入っていたら、それは秘密保持ではなく営業の自由の制限です。受注の幅が狭まるので、範囲と期間を限定するか、削除を求めます。

疑問は1回でまとめて返す

修正依頼を小出しにすると、相手の法務を何往復もさせることになり、着手が遅れます。気になった点を表にして、修正案の文言まで添えて1回で返すのが最短です。「この条項は削除してほしい」ではなく「この条項の末尾に、ただし公知情報を除くという但し書きを追加したい」と書くところまで踏み込みます。

セキュリティ関連の案件を継続的に受けるなら、契約の読み方だけでなく技術側の基礎知識も収入に直結します。ネットワークの基礎を体系的に押さえる資格としてはCCNA(シスコ技術者認定)が定番で、出題範囲、学習期間の目安、受験費用の相場がまとまっています。クラウド側の基礎を押さえるならMicrosoft Azure Fundamentals(AZ-900)が入口になり、こちらは実務経験がなくても取り組める内容です。

結んだあとの運用:契約書より共有ドライブのほうが穴になる

NDAを結ぶまでの話が終わったので、結んだあとの話に進みます。ここを飛ばすと、冒頭で触れた「意味がない」という批判がそのまま自分に当たります。

まず、預かった情報の置き場所を1か所に決めます。案件ごとにフォルダを作り、その案件の関係者だけがアクセスできる状態にする。これだけで事故の大半は防げます。実際に起きやすいのは、メールの添付をダウンロードフォルダに残したまま忘れる、チャットに貼ったファイルがチーム全員に見える設定になっている、検証用に作ったコピーを個人のクラウドに置いたまま消し忘れる、という3パターンです。悪意ではなく、作業の途中で生まれた副産物が残るのです。

次に、共有の範囲を作業単位で切ります。デザイナーに渡すのは画像素材と指示書だけで、顧客リストは渡さない。ライターに渡すのは仕様の抜粋で、社内の価格表は渡さない。この線引きを面倒だと感じるかもしれませんが、渡さなかった情報については漏洩の心配をしなくて済むので、結果として管理する対象が減ります。守る範囲を狭くするのが一番安いセキュリティ対策です。

認証も見直します。預かった資料を置くクラウドのアカウントがパスワードだけで守られているなら、そこが最も弱い部分になります。NDAで無期限の秘密保持を約束しておいて、認証はパスワード1本というのは、契約と実態が釣り合っていません。多要素認証の入れ方と製品ごとの違いはMFA(多要素認証)導入のメリットと製品比較|2026年の認証セキュリティ決定版にまとめてあり、個人でも導入できる方式から順に整理しています。

案件が終わったときの後始末も、手順として決めておきます。返還か廃棄かを契約書で確認し、対象のフォルダを消し、ゴミ箱も空にし、バックアップの保持期間を確認する。証明書の提出が必要なら、消した日付と対象を書いた文書を作って送ります。この一連の作業を案件終了時のチェックリストに入れておくと、あとから「あの資料まだ持っていませんか」と聞かれたときに即答できます。

そしてもうひとつ。取引先から預かった情報の管理は、自分が発注する側に回ったときにも同じ形で返ってきます。外注先に渡す情報を絞れているか、外注先とのNDAを結んでいるか。上流から無期限の秘密保持義務を負っているのに、下流には何も結ばずに渡しているという状態は、自分が契約違反の側に立っている状態です。受け手と渡し手の両方の立場を、同じ台帳で管理するのが安全です。案件ごとに、誰から何を受け取り、誰に何を渡したかを1行ずつ書いておくだけでよい。凝った仕組みは要りません。表計算ソフト1枚で足ります。

市場から見たNDAの位置づけと、案件選びへの影響

ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を長く見てきた立場からの観察です。

20年この市場を見てきて言えるのは、NDAを丁寧に扱う発注者と、雑に扱う発注者では、その後の取引の質がはっきり分かれるということです。雛形を右から左に流すだけの発注者は、仕様の詰め方も検収の基準も同じように雑で、途中で条件が動きます。逆に、条文の意味を説明でき、こちらの修正依頼に理由をつけて答えてくれる発注者は、作業範囲の線引きも明確で、支払いも予定どおりに動く。だからNDAのやり取りは、契約の手続きであると同時に、相手を見極める最初の実地テストでもあります。

もうひとつの観察は、中間に人が入るほど秘密情報の経路が長くなるという構造の話です。発注者から仲介会社、仲介会社から下請け、下請けから個人へと流れる案件では、NDAが階層ごとに結ばれます。ところが階層が増えるたびに、条文の内容が上流と下流でずれます。上流で「再委託禁止」と書かれているのに、中流が個人に外注している。この不整合は珍しくありません。直接取引であれば、この経路は1本で済みます。中間マージンが乗らないので、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めますし、受ける側は手数料0%の環境なら手取りが厚くなります。金額の話に見えますが、秘密情報の管理という観点でも、経路が短いほうが事故が起きにくい。この二重の意味で、間に入る層は少ないほうが合理的です。

セキュリティ領域の仕事は、この数年で個人が受けられる範囲が広がりました。脆弱性診断の一次スクリーニング、セキュリティ教育コンテンツの制作、規程やガイドラインの整備、インシデント対応手順書の作成といった業務が、社内に専任者を置けない中小企業から出てきています。こうした案件の入口としてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に募集の傾向がまとまっていて、求められるスキルの組み合わせが把握できます。開発寄りの案件を探すならアプリケーション開発のお仕事が参考になり、こちらは言語や工程ごとの依頼の出方が分かります。

報酬の水準も押さえておくと、NDAの条文をどこまで交渉すべきかの判断がしやすくなります。開発系の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場に職種別の数字が整理されており、公的統計をもとにした年収帯と時間単価の換算が載っています。文書作成やコンテンツ制作の案件を受けるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうが近く、こちらも同じ形式で確認できます。契約の縛りが強い案件ほど、作業以外の管理コストが乗ります。その分を単価に織り込んで見積るという発想を持てるかどうかで、年間の実入りは変わってきます。

最後に、受け手として一番効くのは「読める状態を作っておくこと」だと考えています。毎回ゼロから読むのではなく、自分用のチェックリストを1枚作って、届いたNDAをそれに当てて差分だけ見る。前の案件で直してもらった文言は、そのまま次の修正依頼に再利用する。この蓄積が、法務部門を持たない個人にとっての防御になります。契約書は読むのが面倒な書類ですが、面倒の総量は最初の1回で払い切れます。2回目以降は差分だけです。

よくある質問

Q. NDAと機密保持契約は別々に結ぶ必要がありますか?

必要ありません。NDAは Non-Disclosure Agreement の略で、日本語では秘密保持契約または機密保持契約と訳されます。表題が違っても内容と法的効力は同じです。取引先が両方の呼び方を混ぜて使っていても、指しているのは同じ1通です。2通結ばされそうになったら、同じ契約かどうかを先に確認してください。

Q. NDAに収入印紙は必要ですか?

秘密保持だけを定めた契約書には通常不要です。ただし継続的取引の基本契約に当たる内容が同じ書面に含まれていると、第7号文書として4,000円の印紙が必要になります。電子データとして完結させた契約には印紙税がかからない扱いなので、判断に迷う内容なら電子契約を選ぶほうが確実です。

Q. 秘密保持義務が無期限のNDAは受けてよいですか?

営業秘密性の高い情報を扱う案件では無期限が通ることもあり、それ自体は異常ではありません。ただし受ける場合は、公知になった情報や自分が独自に開発したものを除外する条項が入っているかを必ず確認してください。除外事由が不十分な無期限は、履行できない義務を負い続けることになります。

Q. 外注先に作業を回す働き方でも結べますか?

再委託先への開示が認められているかを確認してください。認められていない雛形のまま外注すると、契約違反の状態で作業することになります。事前に書面で承諾を得る形に直してもらうか、再委託先にも同等の秘密保持義務を負わせる条項を追加する形が実務的です。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年6月29日最終更新:2026年10月13日
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@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。

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