内視鏡室で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
内視鏡室で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • ✓内視鏡看護師の仕事内容を
  • ✓病院の内視鏡センター・消化器クリニック・健診施設の違いから整理しました
  • ✓内視鏡室の1日と任される範囲

内視鏡看護師の仕事内容を一言でまとめると、「短い時間で次々に来る患者の安全を、検査の前後と最中にわたって切れ目なく守る仕事」です。病棟のように同じ患者を何日も受け持つわけではなく、1人と関わるのは長くても数時間。その代わり、1日に数十人の患者と向き合い、医師の手技のすぐ横で処置具を扱います。

結論を先に書いておくと、内視鏡室でしか経験できないことは大きく3つあります。鎮静中の患者を連続して観察する経験、医師と呼吸を合わせて処置具を操作する経験、そして感染管理を実務として毎日回す経験です。この記事では、それぞれがどんな場面で求められるのか、同じ内視鏡室でも病院とクリニックと健診施設でどう違うのか、求人票からどう実態を読むのかを順番に整理します。

内視鏡室という場所がどう動いているか

内視鏡室は、口や鼻、肛門から細いカメラ(スコープ)を入れて、食道や胃、十二指腸、大腸などの内側を観察し、必要に応じて組織を採ったり病変を切除したりする部門です。呼吸器内科の気管支鏡を同じ部屋で扱う病院もあります。

扱う検査と治療は、おおむね次のように分かれます。

区分 主な検査・治療 1件あたりの時間の目安
スクリーニング 上部消化管内視鏡(胃カメラ)、経鼻内視鏡 10〜15分
精密検査 下部消化管内視鏡(大腸カメラ)、超音波内視鏡 20〜60分
治療内視鏡 ポリープ切除、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 30分〜3時間
胆膵系 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 30分〜1時間半
緊急 消化管出血の止血、異物除去 状況による

この表で分かるように、内視鏡室の1日は「短い検査を回転させる時間」と「長い治療に張り付く時間」が混ざって進みます。午前中に胃カメラを20件近くこなし、午後はESDで2時間以上同じ患者の鎮静を管理する、という組み立ても珍しくありません。

人員の組み方にも特徴があります。医師1人に対して看護師が1人から2人つき、そこに臨床工学技士や臨床検査技師、洗浄を担当する助手が加わる形が一般的です。スコープの点検や洗浄消毒を臨床工学技士が担う病院もあれば、すべて看護師が行う施設もあります。つまり、「内視鏡看護師」という肩書きが同じでも、洗浄を誰がやるか、処置具を誰が操作するかで、仕事の中身はかなり違ってきます。

もう1つ押さえておきたいのは、内視鏡の件数が社会的に増えている傾向です。高齢化で消化器がんの検診需要が伸び、自治体の胃がん検診でも内視鏡検査を選べる地域が広がりました。大腸がん検診で便潜血検査が陽性になった人の精密検査も、大腸カメラが基本です。こうした背景から、内視鏡専門のクリニックの開業が増え、看護師の求人も病院以外に広がっています。

私は編集者として医療系の取材に関わった際、ある総合病院の内視鏡センターを見学させてもらったことがあります。正直なところ、事前に抱いていたのは「検査の補助」という静かなイメージでした。実際には、朝8時の時点で10台以上のスコープが点検され、看護師が患者ごとに抗血栓薬の休薬状況を読み上げ、鎮静を使う患者の帰宅手段まで確認していました。検査室というより、小さな手術室が何部屋も同時に回っている、というのが率直な印象です。

検査の前に看護師が担うこと

内視鏡看護師の仕事内容のうち、患者から見えにくいのに事故防止への影響が大きいのが、検査前の仕事です。

問診と服薬の確認

最初に行うのは、既往歴、アレルギー、服薬の確認です。中でも重要なのが、血液をさらさらにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)を飲んでいるかどうか。生検やポリープ切除をすると出血のリスクがあるため、薬を続けるか、いつから休むかは主治医と内視鏡医の判断で決まります。看護師は、患者が指示どおりに休薬したか、あるいは休薬してはいけない薬を自己判断で止めていないかを確かめます。

糖尿病の薬も要注意です。検査前は絶食するため、いつもどおり血糖を下げる薬を使うと低血糖を起こすことがあります。緑内障や前立腺肥大、心臓病がある人には、腸の動きを止める薬(鎮痙剤)が使えない場合があり、その確認も看護師の役割です。

大腸カメラの前処置

大腸カメラでは、腸の中を空にするために、腸管洗浄剤をおおむね1.5〜2リットル飲んでもらいます。自宅で飲んでくる方式と、院内の前処置室で飲む方式があり、院内で飲む場合は看護師がその間ずっと様子を見ます。

ここで大切なのは、排便の状態を見て「検査に進めるか」を判断する材料を集めることです。便が黄色く透明な水のようになっていれば準備完了ですが、固形物が残っていれば追加の洗浄剤や浣腸を医師に相談します。高齢者では、大量の水分を飲むことで気分が悪くなったり、まれに腸閉塞のある人で腹痛や嘔吐が起きたりします。前処置は「待っている時間」ではなく、観察の時間です。

説明と不安への対応

内視鏡検査を受ける患者の多くは、痛いのではないか、苦しいのではないか、がんが見つかるのではないかという不安を抱えています。検査の流れ、鎮静を使うかどうか、検査後に運転してはいけないことなどを、短い時間で分かりやすく伝えるのも看護師の仕事です。

私自身、初めて大腸カメラを受けたときに印象に残っているのは、医師の技術よりも看護師の一言でした。「お腹が張ってきたら、我慢しないでおならを出して大丈夫ですからね」。それだけで緊張がほどけました。内視鏡室の看護師は、1人の患者と数分しか話さないからこそ、その数分の言葉選びが検査の苦痛を左右します。

同意書と本人確認

検査の同意書がそろっているか、患者本人に間違いないか、どの検査を受けるのかを、検査室に入る前に確認します。上部と下部を同じ日に受ける患者、生検の予定がある患者、治療が予定されている患者が入り混じるので、取り違えを防ぐための確認の手順は施設ごとに厳密に決められています。

検査中の看護:鎮静管理と処置具の介助

検査が始まってからの仕事は、大きく2つに分かれます。患者を観察する役割と、医師の手技を介助する役割です。施設によっては看護師2人で分担し、1人の場合は両方を同時にこなします。

鎮静中の観察

苦痛を減らすために、静脈から鎮静剤を使って眠っている状態で検査を受ける方式が広がっています。鎮静を使うと、患者は楽になる一方で、呼吸が浅くなったり、血圧が下がったりすることがあります。看護師は、パルスオキシメーターで酸素飽和度を、モニターで血圧と心拍を見ながら、呼吸の音や胸の動き、顔色を観察し続けます。

酸素飽和度が下がってきたら、声をかけて呼吸を促し、あごを持ち上げて気道を確保し、酸素を投与します。必要に応じて医師に報告し、鎮静を拮抗する薬の準備をします。病棟では1人の患者の急変に数日に1回向き合うことがあるかどうかですが、内視鏡室では「鎮静で呼吸が浅くなる」という小さな変化に1日に何度も向き合います。この連続した観察経験は、内視鏡室ならではのものです。

体位の保持と苦痛の緩和

大腸カメラでは、スコープを奥へ進めるために、患者の体の向きを変えたり、お腹を外から押したりします。医師の指示に合わせて、看護師が腹部を押さえる位置と強さを調整すると、スコープがするりと進むことがあります。この「押さえ方」は教科書では身につかず、医師の手元の画面を見ながら繰り返し経験して覚えていきます。

処置具の操作

内視鏡室の看護師が最も専門性を感じる場面が、処置具の介助です。医師がスコープを操作し、看護師がスコープの中を通した鉗子やスネア(金属の輪)を開いたり閉じたりします。

たとえば、組織を採る生検では、医師の「開けて」「閉じて」という合図で鉗子を開閉します。ポリープを切除するときは、スネアを広げ、医師がポリープにかけたところで、ゆっくり締めていきます。締める速さや強さを誤ると、切れ味が悪くなったり、出血したりします。医師によって「締めて」の合図のタイミングが違うので、同じ医師と何度も組むうちに、声をかけられる前に手が動くようになっていきます。

ESDのような長い治療では、局注液の注入、止血鉗子の準備、クリップの装填など、次に何が必要になるかを先読みして準備します。治療の流れを理解していないと、医師の手が止まり、治療時間が伸びて患者の負担も増えます。

ERCPと放射線

胆管や膵管を造影するERCPは、X線透視下で行います。看護師は防護衣を着て、患者の鎮静管理と処置具の介助をしながら、被ばくを減らす立ち位置を考えて動きます。うつぶせに近い体位で長時間の鎮静を行うため、呼吸の観察はさらに難しくなります。ERCPを扱う施設で働くと、放射線防護の基本も実務として身につきます。

検体の取り扱い

採った組織は、ホルマリンの入った容器に入れ、患者名と採取部位を正しくラベルに記載して病理検査に回します。1人の患者から複数の部位の組織を採ることもあり、取り違えは診断を誤らせる重大な事故につながります。検体の確認は、地味ですが緊張感のある仕事です。

検査の後:リカバリーと洗浄消毒

リカバリーでの観察と帰宅の判断

鎮静を使った患者は、検査後にリカバリー室でしばらく休みます。看護師は、意識がはっきりしているか、ふらつきがないか、腹痛や出血がないかを確認します。施設ごとに帰宅してよい基準が決められていて、それを満たすまでは帰すことができません。

特に注意が必要なのが、車やバイク、自転車での来院です。鎮静を使った日は運転してはいけないと事前に説明していても、実際に車で来てしまう人がいます。そのときにどう対応するか、家族に迎えを頼めるかなど、患者の安全と生活の両方を考えて調整するのも看護師の仕事です。

ポリープを切除した患者には、帰宅後に出血や強い腹痛があった場合の連絡先、食事や入浴、飲酒の制限を説明します。検査は外来で終わっても、偶発症は帰宅後に起きることがあるので、この説明は欠かせません。

洗浄消毒という専門業務

内視鏡は構造が複雑で、細い管が何本も通っているため、洗浄が不十分だと感染症を広げる原因になります。そのため、使い終わったスコープは、ベッドサイドで表面を拭き、管の中に洗浄液を吸引したあと、洗浄室で手作業で管の中をブラッシングし、専用の洗浄消毒装置にかけます。消毒には高水準消毒薬を使い、濃度や使用期限の管理も欠かせません。

洗浄消毒の手順は学会などのガイドラインで細かく示されていて、施設ごとに記録を残します。看護師がこの工程を担う施設では、感染管理を毎日の実務として回すことになります。病棟の感染対策が「手指衛生や隔離の徹底」だとすれば、内視鏡室の感染管理は「機器の再処理を1本も漏らさず確実に行う」ことです。これも内視鏡室でしか身につかない経験の1つです。

物品管理と翌日の準備

1日の終わりには、処置具やクリップの在庫を数え、翌日の検査予定を見て、治療がある日には必要な物品をそろえます。ESDの予定がある日は専用のナイフや局注液、ERCPの日は造影剤やステントなど、予定によって準備する物がまるで違います。

スコープそのものの管理も欠かせません。内視鏡は1本あたりの価格が高く、先端のレンズや湾曲部分が傷むと修理に数週間かかることもあります。使用前にアングルの動きや送気送水、吸引が正常かを点検し、異常があればすぐに使用を止めて臨床工学技士やメーカーに連絡します。検査の途中で映像が乱れたり吸引が効かなくなったりすると、患者を鎮静したまま検査を中断することになるので、朝の点検は看護師にとって安全管理の出発点です。何本のスコープを何件の検査に割り当てるかを考え、洗浄にかかる時間を見込んで順番を組むのも、慣れてくると任される仕事です。

働く場所で任される範囲が変わる

同じ内視鏡看護師の仕事内容でも、病院の内視鏡センター、消化器内視鏡クリニック、健診施設では、任される範囲に明確な違いがあります。

総合病院・大学病院の内視鏡センター

扱う検査と治療の幅が最も広いのが、この職場です。スクリーニングから、ESD、ERCP、消化管出血の緊急止血、胃瘻の造設まで、ほぼすべてを経験できます。入院患者の検査も多く、病棟から全身状態の悪い患者が運ばれてくることもあります。

その分、負担も大きくなります。緊急内視鏡に対応するため、夜間や休日の呼び出し当番(オンコール)が組まれていることが多く、月に数回は自宅で待機します。治療内視鏡が長引けば、定時で帰れない日もあります。一方で、医師や臨床工学技士など職種の違うスタッフが多く、分業が進んでいるため、看護師は観察と介助に集中しやすい面もあります。

消化器内視鏡クリニック

外来の検査を中心に、日帰りでの大腸ポリープ切除まで行うクリニックが増えています。特徴は、件数の多さと回転の速さです。1日の検査件数が数十件にのぼるクリニックもあり、前処置、鎮静、検査介助、リカバリー、洗浄を少人数で回します。

クリニックでは、看護師の担当範囲が広くなる傾向があります。受付との調整、予約患者への前処置の説明の電話、洗浄消毒の管理、物品の発注まで看護師が担うことも珍しくありません。緊急の止血や入院が必要な治療は扱わないことが多いので、オンコールはないか、あっても少ないのが一般的です。夜勤もなく、土曜日の勤務がある代わりに平日に休みがある、という働き方が多く見られます。

健診センター・人間ドック施設

胃カメラや経鼻内視鏡によるスクリーニングが中心で、治療はほとんど行いません。検査は午前中に集中し、午後は結果の整理や翌日の準備、別の健診業務に回ることもあります。鎮静を使わない検査が多く、患者の多くは健康な人です。

健診施設は、生活リズムを整えやすく、内視鏡室の基本を身につけるには向いています。ただし、治療内視鏡や緊急対応の経験は積みにくいので、将来は治療の介助まで深めたいと考えている人は、どこかの段階で病院やクリニックに移ることを考えることになります。

どの職場が良い悪いではなく、自分が内視鏡室で何を身につけたいかで選ぶことです。治療の介助を深めたいなら病院、件数をこなして検査の流れに習熟したいならクリニック、生活との両立を優先するなら健診施設が、それぞれ合っています。

給与の相場と、夜勤がない職場の現実

内視鏡看護師の給与について、公的な統計で内視鏡室だけを切り出したデータはありません。看護師全体の数字を目安にすることになります。

内視鏡室看護師に特化した公的な年収データはありませんが、看護師全体の平均月収は約36万円、平均年収は約519万円です。実際の収入は勤務先や夜勤・残業の有無、地域、経験年数、各種手当によって変わります。 出典: kango.mynavi.jp

この数字をそのまま内視鏡室に当てはめるのは、正直なところ注意が必要です。平均年収には、夜勤手当を含む病棟勤務の看護師の収入が多く含まれているからです。内視鏡室は基本的に日勤のみなので、病棟から移ると夜勤手当の分だけ月収が下がる傾向があります。夜勤を月に4回から8回していた人なら、月3万円から8万円ほど減ることも珍しくありません。

その分を補うのが、オンコール手当です。自宅で待機するだけで1回あたり1,000円から3,000円程度、実際に呼び出されて出勤すると時間外手当が別に支給される、という形が一般的です。病院の内視鏡センターでは、この手当が月収に一定の上乗せになります。

クリニックの常勤の求人を見ると、月給28万円から35万円程度の募集が中心で、パートでは時給1,800円から2,300円程度が多く見られます。内視鏡の経験者を優遇する求人では、時給が上乗せされていることもあります。

収入をどう考えるかは、何を重視するかによります。夜勤による体への負担がなくなり、生活のリズムが安定することを、月数万円の差と比べてどう評価するか。子育てや介護と両立したい人にとっては、日勤のみで専門性を深められる内視鏡室は合理的な選択肢です。一方、収入を最優先にするなら、夜勤のある病棟との比較を数字で行ってから判断することをおすすめします。

もう1つ、見落としやすいのが残業の出方です。内視鏡室の残業は、病棟のように記録が終わらないことで発生するのではなく、治療内視鏡が長引く、緊急の止血が夕方に入る、洗浄が終わらないといった理由で発生します。つまり、日によって定時で帰れる日と、1時間から2時間遅くなる日の差が大きいという特徴があります。保育園のお迎えなど、終業時刻が決まっている事情がある人は、面接で「治療が長引いたときに誰が交代するのか」を具体的に聞いておくと、入職後に困らずに済みます。

求人票のどこを見れば、内視鏡室の実態が分かるか

内視鏡看護師の求人票は「内視鏡室勤務」「未経験歓迎」「日勤のみ」といった言葉が並び、どれも似て見えます。実態を読み取るには、次の箇所を確認してください。

1日あたり、または年間の検査件数

「年間検査件数1万件」「1日30件」など、件数が書かれていれば、忙しさの目安になります。同時に、看護師の人数も確認します。1日30件を看護師3人で回すのと、6人で回すのでは、1人あたりの負担がまるで違います。

治療内視鏡を扱っているか

ESD、ERCP、緊急内視鏡の有無は、身につく技術の幅を左右します。治療内視鏡を扱っている施設では、処置具の介助の経験が積める反面、オンコールや残業が発生しやすくなります。求人票に記載がなければ、面接で「どの治療内視鏡を、年間どれくらい行っていますか」と聞いてください。

洗浄消毒を誰が担当しているか

臨床工学技士や洗浄専門の助手がいるかどうかは、看護師の業務量に直結します。すべて看護師が担当する施設では、検査の合間に洗浄を回すことになり、1日の動きが慌ただしくなります。

鎮静の方針

鎮静を積極的に使う施設か、原則使わない施設かで、観察の重さが変わります。鎮静を多く使う施設ほど、リカバリーの管理にも人手が必要です。

病棟や外来との兼務

「内視鏡室専従」なのか、「外来と内視鏡室の兼務」なのかを確認します。兼務の場合、検査がない時間帯に外来の診療補助に回ることになり、内視鏡の経験を深める時間は限られます。

資格取得への支援

内視鏡室で経験を積んだ看護師が目指す資格に、日本消化器内視鏡学会が認定する「消化器内視鏡技師」があります。内視鏡業務に一定期間従事し、講習会などの要件を満たすと受験できる資格で、受験の要件は学会の最新の案内で確認が必要です。学会や研究会への参加費を補助してくれる施設かどうかは、長く専門性を伸ばしたい人にとって大事な判断材料です。

見学で確かめたいこと

求人票だけで判断しきれない部分は、職場見学で補うのが確実です。見るべきは、午前中の検査が最も立て込んでいる時間帯です。検査室とリカバリー室に看護師がそれぞれ何人いるか、鎮静中の患者から目を離さずに記録や片付けができているか、洗浄室にスコープが溜まっていないか。数分眺めるだけでも、その内視鏡室に余裕があるかどうかは伝わってきます。看護師同士が声をかけ合って交代しているか、医師が看護師に指示を出すときの口調が落ち着いているかも、働きやすさを測る手がかりになります。

内視鏡室に入ってから任される範囲が広がる順番

未経験で内視鏡室に配属された看護師が、どういう順番で仕事を任されていくのか。施設によって差はありますが、多くの内視鏡室で見られる流れを整理します。

最初の1か月:前処置とリカバリー

最初に任されるのは、検査室の外の仕事です。問診、前処置の観察、リカバリーでの観察と帰宅前の説明。ここで、検査の種類ごとに患者がどんな経過をたどるのか、どこで体調を崩しやすいのかを覚えます。同時に、洗浄室で先輩と一緒にスコープの洗浄手順を学びます。洗浄の手順は1つでも飛ばすと感染事故につながるので、最初に確実に身につけることが求められます。

2か月から3か月:上部検査の介助

次に、胃カメラの検査室に入ります。上部検査は時間が短く、処置具を使う場面も生検が中心なので、鉗子の開閉と鎮静中の観察を覚える入口として適しています。1日に何件も同じ流れを繰り返すうちに、医師ごとの合図の癖や、患者がむせやすいタイミングが分かってきます。

半年前後:大腸検査とポリープ切除

大腸カメラの介助では、腹部の圧迫や体位変換、スネアによるポリープ切除の介助が加わります。上部検査より時間が長く、患者の苦痛も出やすいので、観察と介助を同時にこなす力が求められます。ここで一通りの検査を1人で担当できるようになると、内視鏡室の中で一人前と見なされることが多いです。

1年以降:治療内視鏡と緊急対応

ESDやERCP、緊急の止血は、経験を積んだ看護師が担当します。オンコールの当番に入るのも、多くの施設ではこの段階からです。治療内視鏡は流れを先読みする力が問われるので、医師が次に何を求めるかを理解するまで、見学と介助を繰り返します。

この順番を知っておくと、面接で「未経験者はどのくらいの期間で、どの検査に入るようになりますか」と具体的に聞けます。教育の段取りを答えられる施設は、新しく入る看護師を育てる体制が整っている傾向があります。反対に、「すぐ慣れますよ」としか返ってこない場合は、配属初日から人手不足の穴埋めとして検査室に入れられる可能性を考えておいた方がよいでしょう。

覚える順番の中で、多くの人がつまずくのは用語と物品の多さです。スコープの型番、処置具の種類、鎮静薬と拮抗薬の組み合わせ、検体容器の区別。最初の数か月は、自分用のメモを作り、医師ごとの好みや手順の違いを書き留めていく人が多いです。施設によっては検査ごとの手順書や物品の写真付き一覧が整備されているので、入職時にそうした資料があるかどうかも、教育体制を見る手がかりになります。

内視鏡室の経験をその先にどう生かすか

最後に、内視鏡室で積んだ経験が、その後のキャリアでどう生きるかを整理しておきます。

まず、鎮静管理と急変の初期対応に慣れていることは、どの職場に移っても強みになります。手術室、カテーテル室、救急外来など、鎮静や処置を伴う部門への異動や転職では、内視鏡室の経験は評価されやすい傾向があります。

次に、患者への短時間の説明力です。内視鏡室では、不安を抱えた患者に数分で検査の流れと注意点を伝え続けます。この経験は、健診センターや美容クリニック、企業の健康管理室など、説明と信頼関係づくりが重視される職場で役立ちます。

さらに、医療の知識を文章で伝える仕事に広げる看護師もいます。検査の前処置の説明書や、患者向けの案内文を作ってきた経験は、医療系の記事を書く仕事と相性が良いからです。看護師が臨床の経験を生かして取り組める在宅の仕事については、医療記事の執筆や健康相談、オンラインでの講師などを具体的に比較した記事があります。看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】

内視鏡室で経験を積んだあとの収入の見通しを立てたい場合は、看護師の年収や時給を公的な統計をもとにまとめたデータが参考になります。看護師の年収・単価相場

フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、医療系の文章の仕事で長く信頼される人には、共通点があります。それは、専門用語を並べるのではなく、患者の目線で「何が不安で、何を知れば安心できるか」を書ける人だということです。内視鏡室で毎日患者に説明してきた看護師は、まさにこの力を持っています。また、仲介の手数料がかからない直接のやり取りで仕事を受けると、同じ予算でも依頼者はより丁寧な監修を頼めて、書き手の手取りも厚くなります。専門職の知識が、中間の取り分に削られずに相手に届く形は、双方にとって納得感があります。

内視鏡看護師の仕事内容は、検査の補助という言葉で片づけられるほど単純ではありません。鎮静中の呼吸を見守り、医師と呼吸を合わせて処置具を操り、1本のスコープも漏らさず洗浄する。その積み重ねの中で、ほかの部門では得にくい観察力と手技と感染管理の実務が身についていきます。求人票の件数と体制を読み、自分が内視鏡室で何を深めたいのかを決めてから、職場を選んでください。

よくある質問

Q. 内視鏡看護師の主な仕事内容は何ですか?

検査前の問診と服薬確認、大腸カメラの前処置の観察、検査中の鎮静管理と処置具の介助、検査後のリカバリーでの観察と帰宅の判断、スコープの洗浄消毒と物品管理が中心です。施設によっては洗浄を臨床工学技士が担当するなど、分担の仕方で看護師の業務範囲が変わります。

Q. 内視鏡室は未経験の看護師でも働けますか?

未経験歓迎の求人は病院、クリニック、健診施設のいずれにもあります。最初は前処置やリカバリーの観察から始め、先輩の介助を見ながら処置具の操作を覚えていく流れが一般的です。鎮静中の急変対応があるため、病棟などで基本的な臨床経験を積んでいると入りやすくなります。

Q. 病棟から内視鏡室に移ると給与は下がりますか?

内視鏡室は基本的に日勤のみのため、夜勤手当の分だけ月収が下がる傾向があります。夜勤を月4回から8回していた人なら月3万円から8万円ほどの差が出ることもあります。病院の内視鏡センターではオンコール手当が一部を補うので、手当の条件を事前に確認するとよいでしょう。

Q. 内視鏡看護師が取れる資格はありますか?

日本消化器内視鏡学会が認定する消化器内視鏡技師があります。看護師などが内視鏡業務に一定期間従事し、講習会などの要件を満たすと受験できます。受験要件は改定されることがあるため、学会の最新の案内を確認し、勤務先に研修参加の支援があるかも合わせて確かめてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月14日最終更新:2026年9月16日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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