音楽制作の著作権|BGM利用範囲と再配布の可否


この記事のポイント
- ✓BGM制作を外注するとき
- ✓著作権や利用範囲はどこまで確認すべきか
- ✓直接依頼と代理店の違いを発注者向けに解説します
「動画の背景に流すBGMを外注で作ってもらったけれど、そのBGMをYouTubeやSNS、店舗のBGMとして使い回してもいいのだろうか」。こういうご相談、本当によく届きます。BGM制作を発注するとき、著作権や利用範囲の確認を後回しにしてしまい、あとから「この使い方は契約外です」とトラブルになるケースは珍しくありません。この記事では、BGM制作を外注する発注者の立場で、著作権の基本、利用範囲の決め方、契約書に入れるべき項目、費用相場までを整理してお伝えします。
BGM制作の外注市場と著作権トラブルの現状
在宅ワーク・フリーランスの市場は年々広がっていて、動画編集者や作曲家に直接BGM制作を依頼する企業や個人事業主も増えています。企業が動画コンテンツやポッドキャスト、店舗BGMを内製せずに外部発注する動きは、SNSマーケティングの拡大とともに加速しました。
一方で、著作権に関するトラブルの相談も比例して増えています。BGM制作は「音源を受け取って終わり」ではなく、「その音源をどこまで使っていいのか」という利用範囲の取り決めが本体です。ここが曖昧なまま発注すると、納品後に「YouTube広告での使用はNG」「店舗での商用利用は別料金」といった条件が後出しで判明し、追加費用や使用差し止めのリスクが発生します。
日本音楽著作権協会や日本BGM協会といった業界団体の資料を見ても、著作権侵害には重い罰則が定められています。
2.刑事上の罰則 著作権侵害は親告罪とされていますから、被害者が侵害をしたものに対し告訴し、有罪となれば、著作権侵害の場合は、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、著作者人格権侵害の場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金となっています。
刑事罰の対象になるのは主に無断利用や不正コピーの悪質なケースですが、発注者としても「自分が使っている音源に著作権上の問題がないか」を把握しておく責任はあります。特にBtoBで動画広告や店舗BGMとして使う場合、利用範囲の確認を怠ると事業リスクに直結します。
BGM制作を外注するときに知っておくべき著作権の基本
著作権はどこに発生するのか
BGMを作曲家やクリエイターに発注すると、原則としてその楽曲の著作権は「作った人」に自動的に発生します。これは著作権法の大原則で、発注者がお金を払って作らせたからといって、自動的に著作権が発注者に移るわけではありません。著作権を発注者側に譲渡してもらうには、契約書に「著作権譲渡」または「著作権の帰属先」を明記する必要があります。
つまり、BGM制作の発注では次の3パターンのどれになっているかを必ず確認してください。
・著作権譲渡型:著作権そのものを発注者に譲渡してもらう。追加料金が発生することが多い ・利用許諾型:著作権はクリエイターに残したまま、発注者は決められた範囲で使う権利だけをもらう ・買い切り型(ライセンスフリー):特定の用途に限らず幅広く使えるが、用途外の利用は別途契約が必要な場合がある
多くの個人クリエイターへの発注は「利用許諾型」です。ここで問題になるのが、まさに「利用範囲」の線引きです。
利用範囲とは具体的に何を指すのか
利用範囲とは、納品されたBGMを「どのメディアで」「どの期間」「どんな目的で」使えるかを定めた条件のことです。具体的には次のような項目が含まれます。
・媒体:YouTube動画、TikTok、Instagram広告、店舗内BGM、テレビCM、ポッドキャストなど ・期間:買い切りか、一定期間のみのライセンスか ・地域:日本国内限定か、海外配信も含むか ・商用/非商用:個人利用か、収益化された動画や広告での使用か ・改変の可否:BGMを短く編集したり、音量を変えたりしてよいか ・再配布の可否:BGMを別の第三者に渡したり、素材集として再販したりできるか
このうち発注者が特にトラブルになりやすいのが「再配布の可否」です。「一度作ってもらったBGMを、自社の複数の動画で使い回していいのか」「グループ会社の別事業でも使っていいのか」といった疑問は、契約時にはっきり確認しておかないと、あとから追加費用を請求されるケースがあります。
JASRACへの申請が必要になるケース
オリジナル曲を新たに作曲してもらう場合は、基本的にJASRAC(日本音楽著作権協会)への申請は不要です。JASRACへの申請が必要になるのは、既存の市販楽曲(J-POPや洋楽など)をカバーしたり、店舗でCDやストリーミングの楽曲を流したりする場合です。
BGM制作を外注してオリジナル曲を作ってもらう場合、著作権の管理はクリエイター自身が行うか、契約で発注者に譲渡されるかのどちらかになります。ただし、店舗で複数のBGMを流し続ける「有線放送的な利用」をする場合は、個別の楽曲とは別に演奏使用料が発生することもあるため、用途を明確に伝えて確認する必要があります。
各事業所が演奏装置を通じてBGMを再生演奏することにより発生する使用料、いわゆる「演奏使用料」は、実際に演奏使用する事業所が負担する著作権使用料ですから、キー局の著作権処理対象には含まれておりません。したがって市販CD、BGM用貸出録音テープなどを利用する店舗やホテルでは、BGM事業者と契約している場合はそのBGM事業者が、契約していない場合はそれぞれの店舗やホテルが演奏使用料を支払うことになります。 出典: bgm.or.jp
つまり、オリジナルBGMを外注で制作してもらう場合と、市販楽曲を店舗BGMとして流す場合とでは、著作権上の扱いがまったく違うということです。発注前に「オリジナル制作なのか」「既存曲のアレンジなのか」を明確にしておきましょう。
BGM制作の依頼方法と費用相場
発注先の選び方
BGM制作の発注先は大きく分けて3つあります。
・音楽制作会社:法人契約で品質が安定しやすいが、仲介マージンが上乗せされ費用は高め ・クラウドソーシング経由のフリーランス:比較的安価だが、著作権に関する知識にばらつきがある ・フリーランスへの直接依頼:仲介会社を通さないため中間マージンが発生せず、同じ予算でもより手厚い制作を依頼しやすい
代理店や制作会社を通すと、見積もりの中に仲介手数料が含まれるため、実際にクリエイターの手元に渡る金額は発注額より少なくなります。フリーランスに直接依頼すれば、その中間マージンがない分、同じ予算でより多くの修正回数や著作権譲渡オプションを交渉できることがあります。
費用相場の目安
BGM制作の費用相場は、用途や尺、依頼内容によって大きく変わります。
・SNS動画用の短尺BGM(30秒〜1分程度):5,000円〜2万円程度 ・YouTube動画用のオリジナルBGM(数分程度):1万円〜5万円程度 ・企業のCM・広告用BGM:3万円〜20万円程度(著作権譲渡込みの場合はさらに高額になることも) ・店舗BGM用の複数楽曲セット:10万円前後からのプロジェクト単位が多い
これらの金額差の大部分は「利用範囲の広さ」と「著作権譲渡の有無」で決まります。用途を限定して利用許諾型で依頼するほど安く、著作権を完全に譲渡してもらい商用利用を無制限にするほど高くなる傾向があります。見積もりを比較する際は、単純な金額だけでなく「どこまでの利用範囲が含まれているか」を必ず確認してください。
発注時に契約書へ入れるべき項目
BGM制作を発注するときは、口約束ではなく必ず契約書やメールで以下を明記してもらいましょう。
・著作権の帰属(譲渡か、利用許諾か) ・利用可能な媒体(YouTube/SNS/CM/店舗BGMなど具体的に) ・利用期間(買い切りか、期間限定か) ・改変・編集の可否 ・再配布・二次利用の可否 ・追加利用が発生した場合の追加料金の有無
これらを事前に明文化しておくことで、「あとから使い方を広げたくなったときに追加料金が必要かどうか」が明確になり、双方のトラブルを防げます。
BGM制作の発注で失敗しないための注意点
安さだけで選ぶと利用範囲でつまずく
私自身、フリーランスとして独立してすぐの頃、動画コンテンツ用のBGMを外注した経験があります。そのときは複数の見積もりを比較して、一番安い業者を選びました。ところが納品後、SNS広告として使いたいと伝えたところ「その用途は契約に含まれていないので追加費用が必要」と言われ、想定より費用がかさんでしまったことがあります。安さだけで選ぶと、利用範囲が狭く設定されていて、あとから追加費用がかかることがあるという教訓でした。今は依頼前に「想定される利用シーンをすべて洗い出してから見積もりを取る」ようにしています。
「フリー音源」との違いを理解する
発注者の中には「フリーBGM素材」と「オーダーメイドで発注するBGM」の違いを曖昧にしたまま検討している方もいます。フリー音源はライセンス規約の範囲内であれば無料や低価格で使えますが、他の誰かも同じ音源を使っている可能性があり、ブランドの独自性を出しにくいという弱点があります。一方、オーダーメイドで発注すれば、独自性の高いBGMを著作権ごと管理できますが、当然費用は発生します。予算と目的に応じて、どちらが適しているかを事前に整理しておくとよいでしょう。
クリエイターとの認識のズレを防ぐコミュニケーション
BGM制作は音楽という感覚的な成果物であるぶん、発注者とクリエイターの間で「イメージのズレ」が起きやすい仕事です。参考となる既存曲を伝える、使用シーンの映像や写真を共有する、修正回数の上限を事前に決めておくといった工夫で、認識のズレによる追加コストを防げます。あわせて、著作権の取り扱いについても制作開始前に文書で合意しておくことが、トラブル回避の最も確実な方法です。
独自データ考察:直接依頼が広がる背景にある構造
発注者向けの外注先を選ぶ際、著作権や利用範囲まで含めた条件をきちんと交渉できるかどうかは、依頼先との距離感に左右される部分があります。たとえば、フリーランスの著作権トラブル|納品物の権利は誰のもの?法的ルールを解説では、納品物の権利の所在について発注者側が誤解しやすいポイントを解説しています。BGM制作に限らず、著作権が絡む外注全般で共通する注意点として参考になります。
また、AI技術を使ったコンテンツ制作が広がる中で、Midjourney×商用利用|AI画像を仕事に使う際の著作権ルールのように、AI生成物の著作権をどう扱うかという論点も増えています。BGM制作でもAI作曲ツールを使うクリエイターが増えており、AI生成音源の著作権の扱いは今後さらに整理が必要な分野です。発注前に「AIツールを使って制作するのか、完全にオリジナルで作曲するのか」を確認しておくことも、トラブル回避につながります。
著作権全般の基礎知識を体系的に押さえたい場合は、フリーランスが知るべき著作権の基本|納品物の権利は誰のもの?も参考になります。BGM制作だけでなく、デザインやライティングなど他の制作物を外注する際にも共通する考え方が整理されています。
20年この市場を見てきた立場から言えば、著作権トラブルが起きる案件の多くは「発注時に利用範囲を口頭でしか確認していなかった」ケースに集中しています。逆に、長く同じクリエイターと付き合いが続いている発注者ほど、最初の契約段階で利用範囲を丁寧にすり合わせています。単発の値切り交渉よりも、双方が納得できる条件を明文化しておくことのほうが、結果的に長期的なコスト削減につながっているという実感があります。
さらに、代理店を挟まずフリーランスへ直接依頼する場合、中間マージンが発生しない分、同じ予算でも交渉の余地が広がります。運営者として見てきた限りでは、直接取引では発注者が浮いた予算を「著作権譲渡オプション」や「追加の利用範囲拡大」に回すケースが目立ちます。手数料0%の直接取引は、単に安く済むという話ではなく、浮いた分を著作権関連の交渉に充てられるという質的なメリットとして捉えるとよいでしょう。同じ予算構造の中で、発注者はより広い利用範囲を確保でき、受け手であるクリエイターも中間マージンが引かれない分、手取りが厚くなります。この双方にとって得になる構造こそが、直接依頼が選ばれる理由です。
BGM制作を外注する際は、費用の安さだけでなく、利用範囲・著作権の帰属・改変や再配布の可否まで含めて契約内容を確認することが、後悔しない発注の第一歩です。動画制作や店舗運営、広告出稿など、BGMを使う場面が広がるほど、この最初の確認作業の重要性は増していきます。
音楽制作以外の分野でも著作権に関わる外注は多く、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やアプリケーション開発のお仕事といった分野でも、成果物の権利関係を事前に取り決めておくことが重要です。制作系の外注先を探す際は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような市場相場のデータも参考にしながら、適正な予算感を把握しておくと交渉がスムーズになります。
公的機関・関連参考情報
本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。
よくある質問
Q. BGM制作を外注した場合、著作権は自動的に発注者のものになりますか?
いいえ。著作権は原則として制作したクリエイターに発生します。発注者に著作権を移したい場合は、契約書に著作権譲渡の条項を明記してもらう必要があります。
Q. 一度作ってもらったBGMを複数の動画やSNS投稿で使い回してもよいですか?
契約で定めた利用範囲によります。利用許諾型の場合、媒体や本数が限定されていることが多いため、使い回したい場合は事前にクリエイターへ確認し、必要なら契約を拡張してもらいましょう。
Q. BGM制作の費用相場はどのくらいですか?
短尺のSNS用BGMで5,000円〜2万円程度、YouTube動画用で1万円〜5万円程度、CMや店舗BGMになると3万円以上が目安です。著作権譲渡の有無で金額が大きく変わります。
Q. 代理店を通さずフリーランスに直接依頼するメリットは何ですか?
仲介手数料が発生しないため、同じ予算でもより多くの修正回数や著作権譲渡オプションを交渉しやすくなります。浮いた予算を利用範囲の拡大に充てられる点も利点です。
無料で案件を掲載する
入力は3分ほど。掲載料も取引手数料も0円です。@SOHOに登録しているフリーランス・副業ワーカーから、早ければ当日中に最初の応募が届きます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド






