50代の鍼灸師という働き方|体力と経験の折り合いの付け方


この記事のポイント
- ✓50代から鍼灸師を目指す人に向けて
- ✓学費と支援制度の確認方法
- ✓開業時の手続きと契約の注意点までを整理しました
「50代から鍼灸師を目指すのは、さすがに遅いのではないか」。この不安を抱えたまま検索している方が、本当に多いです。
先に結論を書きます。年齢そのものが受験や就業の障壁になる仕組みは、この資格にはありません。ただし、20代で目指す場合とはまったく別の設計が必要になります。何が違うかというと、体力の使い方と、時間の使い方、そして何を強みにするかの3点です。
この記事では、資格を取るまでの道のりを整理したうえで、50代という条件で本当に問題になる部分、つまり体力と経験の折り合いをどう付けるかを具体的に書きます。開業を考える方に向けて、手続きと契約まわりの注意点も入れました。これ、知らないまま進めて後から困る方が本当に多い部分です。
50代から目指せるのか、まず前提を整理します
鍼灸師という言葉は日常的に使われますが、正確には、はり師ときゅう師という2つの国家資格を指します。両方を取得している人が一般に鍼灸師と呼ばれています。
つまり、目指すというのは「2つの国家試験に合格する」ということです。多くの養成校は両方の受験資格を同時に得られる課程を組んでいるので、実務上は1つの学校に通って2つの試験を受ける形になります。
年齢についての前提を確認します。養成校への入学に年齢の上限は設けられていないのが一般的で、国家試験の受験資格にも年齢の要件はありません。免許を受けたあとの就業についても同様です。
ただし、これは制度上の話です。実際に選ぶかどうかは、別の判断が必要になります。この不安は、多くの方が共有しています。
しかし、未経験から本当に鍼灸師を目指せるのか、年齢がハンデにならないか、鍼灸師として食べていけるのかなど、さまざまな不安もあるかと思います。 出典: idononippon.com
不安の中身を分解すると、3つに分かれます。合格できるか。学費を回収できるか。体力が続くか。この記事では、この3つを順番に扱います。
なお、資格の要件や業務の範囲は法令で定められており、改正されることがあります。進路を最終的に決める前に、厚生労働省の公式サイトや、志望する養成校の窓口で必ず最新の情報を確認してください。※この記事は一般的な整理であり、個別のケースの判断材料としては使わないでください。
資格を取るまでの3つのステップ
道のりはシンプルです。複雑なのは中身であって、手順そのものは3段階しかありません。
ステップ1:養成校に入学する
文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成施設に入学します。専門学校が中心で、大学や短期大学の課程もあります。修業年限は3年以上です。
入学するには、高等学校を卒業しているか、それと同等以上の学力があると認められる必要があります。50代の方の多くは高校を卒業しているので、この要件で引っかかることはあまりありません。
入学試験の内容は学校によって異なりますが、社会人枠を設けている学校では、書類と面接、小論文で選考する形が多く見られます。学力試験に不安がある方は、社会人向けの入試制度がある学校を先に調べてください。
ステップ2:3年以上の課程を修める
解剖学、生理学といった基礎医学から、東洋医学の理論、実技、臨床実習まで。学ぶ範囲は広く、量も多いです。
50代の方が最初につまずくのは、暗記の科目です。骨や筋肉、経穴の名称と位置を覚える作業は、若い頃と同じやり方では効率が落ちます。これは能力の問題ではなく、記憶の仕方の相性の問題です。対策は後の節で書きます。
ステップ3:国家試験に合格する
はり師ときゅう師、それぞれの国家試験を受験します。年に1回の実施です。合格したら免許の申請手続きを行い、名簿に登録されて初めて業務ができます。
試験の日程や手続きの期限は年度によって変わるので、必ず実施機関の公表資料で確認してください。学校に在籍していれば案内がありますが、自分でも確認する習慣を持っておくと安心です。
国家試験の難易度と、50代の学習の組み立て方
合格できるかという不安に対して、数字で答えます。
「今から勉強して合格できるか不安」と感じるかもしれませんが、国家試験の合格率は比較的高い水準で安定しています。過去5年間(2021〜2025年)の合格率を見ても、はり師・きゅう師ともに、おおむね70%前後を推移しています。 出典: idononippon.com
合格率は70%前後で推移しています。極端に難しい試験ではありません。ただし、この数字は養成校の課程を修了した人のなかでの割合です。3年間の勉強を積み上げた人たちの7割ということなので、「簡単だ」と読むのは違います。
50代の学習で効く方法
3年間を走り切るために、いくつか押さえておくといい点があります。
まず、詰め込み型をやめること。短期間に大量に覚える方法は、記憶の定着という点で不利になります。代わりに、毎日短時間でも触れる形に切り替える。通勤時間、就寝前の20分。回数を稼ぐほうが確実です。
次に、理屈から入ること。若い頃は丸暗記が通用しましたが、50代の学習では「なぜそうなるのか」を理解してから覚えたほうが定着します。人体の構造にも東洋医学の理論にも、それぞれ筋道があります。筋道をつかんでから細部を埋めるほうが速い。
そして、仲間を作ること。社会人が多い夜間の課程では、同じ立場の学生が集まります。試験前に情報を共有できる相手がいるかどうかで、3年目の負担がまったく変わります。実技の練習相手を確保するという実務的な意味でも、同期とのつながりは重要です。
私が行政書士の試験勉強をしていたときも、ひとりで抱え込んだ時期がいちばん効率が悪かったです。誰かに説明しようとすると、自分の理解の穴が見えます。これは資格の種類を問わず共通する感覚だと思います。
実技の練習時間をどう確保するか
実技は反復でしか身につきません。授業時間だけでは足りないので、放課後や休日に練習する時間が必要になります。仕事と両立している方は、この時間の確保がいちばんの課題になります。
現実的な対策は、勤務時間そのものを見直すことです。フルタイムを維持したまま3年を走り切るより、勤務形態を調整したほうが完走率は上がります。在宅や業務委託の形で時間の裁量を確保する人もいます。
学費と、確認しておきたい支援の仕組み
学費は学校によって差が大きく、この記事で金額を断定することはしません。代わりに、確認すべき項目を整理します。
入学金と授業料。これは募集要項に明記されています。それに加えて、実習費、教材費、実技で使う道具の費用。この諸費用が積み上がるので、初年度納入金だけで判断すると計算が狂います。
そして、卒業までの総額。3年制なら3年分を合計してください。年間の金額だけを見て「なんとかなる」と判断するのは危険です。国家試験の受験料と免許の申請費用も、学費とは別に必要になります。
支援の仕組みについて。社会人の学び直しを支援する公的な制度が存在し、条件を満たす場合に費用の一部が支給される仕組みがあります。ただし、対象となる講座や要件は制度ごとに定められていて、改正もあります。
これ、知らずに入学してから「対象外だった」と気づく方が本当に多い部分です。※利用を検討する場合は、必ず入学前に、居住地のハローワークと志望校の窓口の両方で確認してください。学校側が「対象です」と言っていても、個人の受給要件を満たすかどうかは別の話です。ここは自分で確認する以外に方法がありません。
生活費の計画も忘れないでください。学費だけを見て決めて、2年目に資金が苦しくなるパターンがあります。3年間の総支出と、その間に見込める収入を並べて書き出す。これは必ずやってください。
社会人向けの養成校の選び方
50代で入学する場合、学校選びの基準は現役の高校生とは違ってきます。
夜間の課程があるか
働きながら通うなら、夜間部が現実的な選択肢になります。授業は夕方から夜に行われ、日中は働ける構成です。ただし履修する内容と時間数は昼間と変わらないので、平日の夜が3年間埋まると考えてください。
通学時間
意外に軽視されがちですが、これが完走率を左右します。片道の通学時間が長いと、3年間で失う時間が膨大になり、体力も削られます。学校の評判より、通える距離かどうかを優先してください。
社会人の在籍状況
同年代がいるかどうかは、思っている以上に効きます。周りが全員10代や20代の環境で3年間過ごすのは、精神的な負荷になります。学校見学のときに、社会人学生の割合を聞いてください。
補習や質問の体制
授業についていけなくなったとき、どうフォローされるのか。質問できる時間が設けられているか。教員1人あたりの学生数はどのくらいか。ここを確認しておくと、入学後のリスクが減ります。
就職や開業のサポート
卒業生がどこに就職しているのか、開業を選んだ人の割合はどのくらいか。50代で卒業する場合、新卒とは求められる進路が違います。年齢が上の卒業生の実績を具体的に聞いてみてください。
学校説明会では、パンフレットに載っている数字ではなく、この5点を直接質問してください。答え方そのものが判断材料になります。
50代で目指すメリットは、どこにあるのか
年齢が不利にならない、というだけではありません。積極的な意味でのメリットを整理します。
社会人経験がそのまま強みになる
鍼灸の施術は、人と向き合う仕事です。相手の話を聞き、状態を把握し、説明して納得してもらう。この一連の流れは、社会人として何十年も積み上げてきた対人経験が直接効いてくる領域です。
技術は学べば身につきますが、人と信頼関係を作る力は短期間では育ちません。ここは50代の明確な優位です。
患者層との年齢の近さ
体の不調を抱えて施術を受けに来る方には、中高年以上の割合が高い傾向があります。同世代であることは、話が通じやすいという実際的な意味を持ちます。膝の痛み、腰の重さ、疲れの抜けにくさ。自分の身体の変化を知っている人の言葉は、説得力が違います。
定年という区切りがない
会社勤めには定年がありますが、この資格には制度上の定年がありません。体力と気力が続く限り、働き方を調整しながら続けられます。50代で資格を取っても、その後に働ける期間は決して短くありません。
需要のある分野が存在する
働く場所の選択肢についても、具体的な数字が出ています。
これらの分野では年齢よりも人柄・誠実さ・継続性が重視される傾向があり、50代の社会人経験が強みになります。医療キャリアナビの鍼灸師求人データでは、訪問マッサージ関連の求人が415件(2026年4月時点)掲載されており、需要の高さがうかがえます。 出典: iryo-careernavi.com
訪問の分野で415件という求人数が示されています。この分野で年齢よりも人柄や継続性が重視される傾向があるという指摘は、50代で目指す方にとって重要な情報です。
デメリットと、正直に見ておくべき現実
メリットだけ並べる記事は信用できません。厳しい部分も同じ密度で書きます。
3年間、収入が下がる可能性が高い
働きながら通うにしても、勤務時間を減らす選択をする方が多いです。その間、収入は下がります。学費の支出と収入の減少が同時に来るので、家計への影響は3年分の学費以上になります。
これを織り込んだ資金計画を立てずに入学すると、途中で行き詰まります。ここがいちばん現実的なリスクです。
体力の問題は避けられない
施術は立って行い、指と手首、腕を使います。1日に何人も対応すれば、相応の負担がかかります。20代と同じ働き方を前提にすると、無理が出ます。
これは次の節で詳しく扱いますが、対策を設計せずに現場に出るのはおすすめしません。
就職の間口は、若い人より狭い
年齢を理由に採用しないと明言する事業所は多くありませんが、実際の採用の場面で年齢が考慮されないとは言い切れません。特に、若手を育てて長く働いてもらうことを前提にした求人では、50代の応募は不利に働くことがあります。
だからこそ、後述する「年齢が強みになる分野」を最初から狙うほうが合理的です。全方位で応募して不採用を重ねるより、勝てる場所に絞る。これは戦術の問題です。
資格を取っても、すぐに独立できるわけではない
免許を取得すれば施術所を開設する道が制度的に開かれています。ただし、技術の習熟と、患者さんを集める仕組みは別の話です。卒業してすぐに開業して、集客に苦戦するケースは実際にあります。
まずは勤務して経験を積む期間を想定しておいたほうが、現実的な計画になります。
体力との折り合いを、どう設計するか
ここがこの記事の中心です。50代で続けるためには、体力の使い方を最初から設計する必要があります。
1日の施術件数に上限を決める
体力を消耗し尽くすまで働くと、翌日に響き、それが積み重なって数年後に体を壊します。1日に対応する人数の上限を自分で決めて、それを超えない働き方を選ぶ。勤務先を選ぶ段階で、1日あたりの担当人数を確認してください。
手技の負担を減らす工夫
施術の姿勢、体の使い方、道具の配置。負担のかかりにくいやり方を、在学中の実技の時間から意識して身につけておくことが重要です。若い学生は力技で乗り切れますが、同じやり方を真似すると体を痛めます。
指導する教員に「長く続けるための体の使い方」を具体的に質問してください。経験のある教員なら、必ず答えを持っています。
働く時間帯と勤務日数を選ぶ
週5日フルタイムだけが選択肢ではありません。週3日から4日の勤務、午前だけ、午後だけといった形で働ける職場もあります。収入は下がりますが、続けられる期間は長くなります。
10年働けなくなる週5日より、20年続けられる週4日のほうが、生涯の総収入では上回ることがあります。この計算をしてから働き方を決めてください。
自分の体をケアする時間を予定に入れる
これは意外と守られません。他人の体を扱う仕事をしていると、自分の体のケアが後回しになります。休息、運動、睡眠の時間を、業務の予定と同じ扱いでスケジュールに入れる。これができるかどうかで、続けられる年数が変わります。
経験を活かす、50代ならではの仕事の取り方
若い人と同じ土俵で競争しない。これが基本方針です。
訪問という選択肢
高齢者の自宅や施設を訪問して施術を行う分野があります。前に見たとおり、この分野には一定の求人があり、年齢よりも人柄や継続性が重視される傾向が指摘されています。
訪問の仕事は、移動があるため体力を使います。ただし、1人あたりの施術時間が読めることと、同じ方に継続して関わる形になることから、施術所での連続対応とは負荷の性質が違います。自分の体力と相性を見て判断してください。
前職の人脈と知識を使う
50代には、それまでの職業人生で作った人脈があります。前職が営業なら、その経験は集客に直結します。前職が事務なら、記録や請求の処理を苦にしません。前職が製造なら、同じ業種で働く人の身体の使い方を理解しています。
これ、意識していない方が本当に多いのですが、前職の経験は資格と組み合わせたときに価値になります。「元の仕事の分野に詳しい鍼灸師」という位置づけは、他の人には作れない差別化です。
説明する力を武器にする
社会人経験の長い人は、物事を整理して伝えることに慣れています。施術の内容、通院の見通し、日常での注意点。これらを納得できる形で説明できると、信頼が積み上がります。
書いて伝える力も同じです。記録、案内文、同意を得るための書面。文書作成の基礎を体系的に整理したい方には、ビジネス文書検定の学習範囲が実務の土台として役に立ちます。専門知識とは別の軸ですが、開業を考えるなら必ず効いてきます。
入学を決める前にやっておきたい準備
いきなり願書を出すのではなく、先に確かめておくと判断の精度が上がることがあります。
実際に施術を受けてみる
意外にも、鍼灸の施術を一度も受けたことがないまま進路として検討している方がいます。まずは受けてください。鍼がどういう感覚なのか、施術者がどう説明し、どう対応するのか。受け手として体験すると、自分がその立場に立つ姿を具体的に想像できます。
複数の施術所に行ってみると、施術者による違いも見えます。説明の丁寧さ、時間の使い方、空間の作り方。自分が目指したいのはどのタイプかが、見学より鮮明にわかります。
オープンキャンパスで実技を体験する
多くの養成校が、実技の体験ができる機会を用意しています。座学の説明を聞くだけでなく、実際に手を動かす体験を選んでください。
そこで確認したいのは、自分の手が動くかどうかと、身体的な負担の感覚です。細かい手作業に対する適性は、やってみないとわかりません。無理だと感じたら、その感覚は大事にしてください。
在校生と卒業生に話を聞く
学校の担当者が話す内容と、実際に通っている人の実感は、必ずしも一致しません。社会人から入学した在校生がいれば、生活のやりくりについて具体的に聞いてください。
聞くべき質問は3つです。1日のスケジュールがどうなっているか。入学前に想定していなかった負担は何だったか。そして、もう一度選ぶとしても同じ学校を選ぶか。
情報を集める先を分散させる
学校のサイトだけを見て決めないでください。学校は入学してほしい立場なので、情報は当然その方向に整理されています。求人情報を横断的に見て、有資格者がどんな条件で募集されているかを自分で確かめる。卒業後の現実を、先に見ておくということです。
家族への説明と、3年間の家計の組み立て
50代での学び直しは、ひとりの決断で完結しません。家計を共有している相手がいるなら、必ず説明と合意が必要になります。
説明すべき数字を先に用意する
「鍼灸師になりたい」という気持ちだけを伝えても、相手は判断できません。伝えるべきは数字です。
3年間の学費の総額。その間に減る収入の見込み。生活費として必要な額。それを賄う原資が何か。卒業後に想定している働き方と、そこから見込まれる収入の幅。この5つを紙に書いて共有してください。
これ、口頭で説明しようとして揉めるケースが本当に多いです。数字を書いて渡すと、感情の話ではなく計画の話になります。
途中で立ち行かなくなったときの想定
3年間、計画どおりに進まないことは起こり得ます。健康の問題、家族の事情、勤務先の変化。そのときにどうするかを、あらかじめ決めておいてください。
休学の制度があるか、復学の条件はどうか。学費の返還はどう扱われるのか。この確認を入学前にしておくと、いざというときに選択肢が残ります。
時間の使い方についての合意
3年間、平日の夜と休日の一部が勉強に消えます。家庭の役割分担が変わることを、事前に話しておく必要があります。
途中で「こんなに家にいないとは思わなかった」と言われる事態は、避けられるなら避けたほうがいい。最初に想定を共有しておくことは、家族への配慮であると同時に、自分が続けるための条件整備でもあります。
働き方の選択肢と、年収をどう考えるか
働き方は大きく3つに分かれます。
勤務する形。施術所や治療院に雇用される、あるいは業務委託で働く形です。収入は安定しやすい一方、上限も見えやすい。
訪問する形。前述の分野です。移動を伴いますが、需要のある領域です。
開業する形。自分で施術所を構えます。収入の上限はなくなりますが、集客と経営の責任をすべて負います。
年収については、勤務先、地域、働き方、経験年数で大きく変わるため、この記事で断定的な数字を示すことはしません。重要なのは、平均値を見るのではなく、自分が選ぼうとしている働き方の相場を、求人情報から自分で集めることです。
50代で目指す場合、収入の設計は「この仕事だけで生活費のすべてを賄う」形とは限りません。年金の受給が視野に入る年代でもありますし、配偶者の収入がある場合もあります。生活費の何割をこの仕事で賄うのか、そこから逆算して働き方を決めるほうが、無理のない計画になります。
開業を考えるなら、押さえておく手続きと契約
行政書士として相談を受けている立場から、開業前に知っておいてほしいことを書きます。
施術所の開設には届出が必要です
施術所を開設する場合、法令に基づく届出が必要になります。届出先や必要書類、構造設備の基準は法令と自治体の運用で定められており、地域によって取り扱いが異なることがあります。
つまり、他の地域の開業体験談をそのまま真似すると、要件を満たさない可能性があるということです。※必ず、開設予定地を管轄する保健所に事前相談してください。物件を契約する前に相談するのが鉄則です。契約後に構造の基準を満たさないと判明すると、原状回復の費用まで負うことになります。
業務委託で働く場合の契約
施術所に雇用されるのではなく、業務委託の形で働くケースがあります。この場合、雇用契約とは扱いが違います。
これ、知らない人が本当に多いのですが、契約書の内容によって、報酬の計算方法も、経費の負担も、責任の範囲もまったく変わります。口約束で始めて、後から条件の認識が食い違うトラブルは珍しくありません。
確認すべきは、報酬の計算方法と支払日、経費をどちらが負担するか、契約の期間と終了の条件、そして守秘義務の範囲です。書面がない場合は、必ず書面を求めてください。
なお、業務委託で仕事を受ける立場を保護するための法律が整備されており、発注する側には取引条件を明示する義務や、報酬の支払期日にかかわるルールが定められています。つまり、「後で決めましょう」と条件を曖昧にしたまま働かせることは、法律上望ましくない扱いになります。※個別のトラブルについては、契約内容によって判断が変わるため、弁護士や専門の相談窓口に相談してください。
開業前に決めておくこと
開業の届出、事業に関する税務の手続き、保険の取り扱い。これらは開業してから調べ始めると間に合いません。開業を決めた時点で、必要な手続きの一覧を作ってください。手続きの詳細は、国税庁の公式サイトや管轄の窓口で確認できます。
卒業してからの最初の1年で、何が起きるか
免許を取った直後の1年は、学生時代とはまったく違う課題が出てきます。ここを想定しておくと、心の準備ができます。
学校で習った通りには進まない
在学中の実技は、条件が整った状態で行われます。相手は同級生で、時間の制約も緩い。実際の現場では、相手の状態はさまざまで、時間は限られ、想定外のことが起きます。
最初の数か月は、習ったことと現場のずれに戸惑う時期になります。これは誰もが通る過程なので、自分の技術が足りないと結論を急がないでください。
説明の言葉を作り直す必要がある
学校では専門用語で学びます。しかし患者さんに専門用語で説明しても伝わりません。習った内容を、相手が理解できる言葉に翻訳する作業が必要になります。
この翻訳が上手い人は、信頼を早く積み上げます。社会人経験の長い方は、ここで明確に有利です。専門外の相手に説明する場面を、何十年も経験してきているからです。
体の使い方を修正する時期でもある
現場に出て毎日施術を行うと、在学中には気づかなかった負担が出てきます。手首が痛む、腰が張る、特定の姿勢がつらい。ここで我慢して続けると、数年後に働けなくなります。
違和感が出たら、その時点で体の使い方を見直してください。経験のある先輩に見てもらう、道具の高さを変える、施術の順番を組み替える。早い段階での修正が、長く続けるための投資になります。
収入は、すぐには安定しない
勤務であっても、最初の1年は試用の期間や研修の扱いになることがあります。開業した場合は、患者さんが定着するまでに時間がかかります。
つまり、卒業した瞬間に想定していた収入が入るわけではありません。この時期の生活費を、資金計画に含めておいてください。学費と在学中の生活費だけを計算して、卒業後の助走期間を忘れる方が少なくありません。
独自データの考察と、この市場を長く見てきた視点
ここからは、在宅ワークや業務委託の求人を扱ってきた運営側の視点で書きます。
20年この市場を見てきた立場から言えば、50代以降で新しい仕事に移った人のなかで長く続いているのは、技術を磨いた人ではなく、関係を作るのが上手い人です。「この人に任せると楽だ」と思われる状態を作れるかどうか。施術の現場でも、業務委託の現場でも、この構造は変わりません。
運営者として見てきた限りでは、50代から始めた人の強みは、待てることにあります。若い人は成果が出るまでの時間に耐えられず、途中で方向を変えてしまうことが多い。50代の方は、時間がかかるものだと最初から理解しているぶん、腰を据えて積み上げられます。3年の学びと、その後の数年をかけて信頼を作るという設計に、耐えられる年代なのです。
もうひとつ、収入の構造について触れておきます。組織に雇われて働く場合、あなたの働きに対して支払われる対価と、実際に手元に入る金額のあいだには差が生まれます。組織を維持する費用が乗るためで、これ自体は当然のことです。
一方、仲介の手数料が乗らない直接取引という形もあります。依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手数料0%のぶん手取りが厚くなる。額面の大小ではなく、同じ働きに対して手元に残る質が変わるという話です。開業を視野に入れている方にとっては、この構造の理解が、そのまま価格の付け方の理解につながります。
学びながら収入を支える方法についても触れておきます。3年間の在学期間は、時間の裁量が効く仕事と相性がいい期間です。専門領域を持つ書き手は一般的な書き手より評価されやすい傾向があり、著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、この分野の報酬水準が職種データとして整理されています。学費の一部を賄う手段を検討する材料になります。
打ち合わせをオンラインで済ませられれば、移動の時間をそのまま勉強に回せます。Zoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】では主要なツールの違いが実務目線で整理されているので、在学中に働き方を組み替えたい方は目を通しておくといいです。
50代から鍼灸師を目指すという選択は、3年の時間と相応の費用を投じるものです。楽な道ではありません。ただ、年齢が制度上の壁にならず、社会人経験がそのまま強みになり、定年という区切りもない。この3つが揃う職種は、そう多くありません。
やると決めたなら、まず確認するのは学校のパンフレットではなく、卒業までの総額と、その間の家計です。数字を並べて、3年後の自分が困らない計画を立てる。準備を整えたうえで進むなら、制度も法律もあなたの味方です。
よくある質問
Q. 50代から鍼灸師を目指すのに、年齢の制限はありますか?
養成校の入学、国家試験の受験、免許取得後の就業のいずれについても、年齢そのものを理由に制限する仕組みは設けられていないのが一般的です。ただし要件は法令で定められ改正もあるため、志望校の窓口や厚生労働省の情報で必ず確認してください。制度上の問題より、資金計画と体力の設計のほうが実際の課題になります。
Q. 国家試験の合格率はどのくらいですか?
2021年から2025年の5年間で見ると、はり師ときゅう師ともにおおむね70%前後で推移しています。極端に難しい試験ではありませんが、この数字は3年以上の課程を修了した人のなかでの割合です。簡単な試験と読むのは誤りで、日々の積み上げが前提になります。
Q. 働きながら通うことはできますか?
夜間の課程を設けている養成校があり、日中働きながら通う人はいます。ただし履修する内容と時間数は昼間と変わらないため、平日の夜が3年間ほぼ埋まります。実技の練習時間も別途必要になるので、フルタイム勤務を維持したまま完走するのは負担が大きく、勤務形態の見直しを先に検討したほうが現実的です。
Q. 50代で資格を取ったあと、どんな働き方が現実的ですか?
施術所での勤務、訪問による施術、そして開業の3つが基本になります。訪問の分野では年齢よりも人柄や継続性が重視される傾向が指摘されており、社会人経験が強みになります。週5日フルタイムにこだわらず、続けられる勤務日数を選ぶほうが、生涯で見た総収入では上回ることがあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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