職場に副業が知られる経路と先に確かめる就業規則


この記事のポイント
- ✓副業が職場に知られる経路は住民税と社会保険と人づての三つに整理できる
- ✓厚生労働省のモデル就業規則の条文
- ✓地方税法が定める普通徴収の条件
副業を始めたいが職場に知られたくない、という悩みで検索する人が最初に読むべきなのは、節税の裏技ではなく自分の会社の就業規則である。結論から書くと、副業が職場に伝わる経路は住民税、社会保険、そして人づての三つに整理でき、このうち制度上ふさげるのは住民税の一部だけだ。しかも、そのふさぎ方には条件があり、副業の形がアルバイトなら使えない。この記事では、三つの経路それぞれの仕組みを法令と公的資料で確認し、そのうえで先に確かめる就業規則の読み方と、手続きの順序を整理する。
知られる経路は三つしかない
副業が職場に伝わる経路を、仕組みの側から並べると三つになる。
一つ目が住民税である。会社員の住民税は、勤務先が給与から天引きして納める特別徴収という方法が原則になっている。副業の所得が加わると住民税の額が増えるため、勤務先に届く通知の金額が、給与から想定される額と食い違う。経理担当者が金額の差に気づく、という経路だ。
二つ目が社会保険である。副業先でも雇用され、その勤務が社会保険の加入要件を満たすと、二か所で被保険者になる。この場合は本人が届出をして主たる事業所を選ぶ手続きが必要になり、両方の勤務先に書類が回る。この経路は、住民税と違って本人の選択でふさぐことができない。
三つ目が人づてである。同僚や取引先からの伝聞、SNSでの発信、副業先の顧客が偶然の知り合いだったといった経路で、制度とは関係なく伝わる。実際に職場で問題になった事例を見ると、この三つ目が最も多い。
順番も大切だ。多くの解説は住民税の話から始まるが、実務としては就業規則の確認が先に来る。就業規則で副業が届出制になっているなら、隠す前提の設計そのものが不要になるからだ。逆に、就業規則を読まないまま副業を始めて後から発覚すると、副業の内容ではなく手続きを守らなかったことが問題として扱われる。順序を変えるだけで、悩みの大半は形が変わる。
まず就業規則の副業に関する条文を読む
自社の規則を読むときの物差しになるのが、厚生労働省が公開しているモデル就業規則である。令和7年12月版では、副業・兼業は第14章に置かれ、条文は次のようになっている。
第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 出典: 厚生労働省
禁止または制限できる場合として並んでいるのは四つである。労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、そして競業により企業の利益を害する場合。裏を返せば、この四つに当たらない副業を一律に禁止する規定は、モデルの考え方から外れている。
解説部分にはさらに踏み込んだ記述がある。裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されている、として、第1項で副業ができることを明示していると説明されている。また、副業に係る相談や自己申告を行ったことを理由に不利益な取扱いをすることはできないとも書かれている。届け出たら評価が下がるのではないかという不安は、制度の立て付けとしては想定されていない。
この「副業・兼業」の範囲が広い点も押さえておきたい。解説では、他の会社等に雇用される形の副業のほか、事業主となって行うものや、請負、委託、準委任契約により行うものも含むと注意されている。フリーランスとして業務委託で受ける仕事も、就業規則の届出の対象に入るという意味である。自社の規則を読むときは、「他社に雇用されること」だけを禁じているのか、事業を営むこと全般に及んでいるのかを区別して読むとよい。
規則の探し方も具体的に書いておく。就業規則は、労働基準法により常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成と周知が義務づけられている。社内の共有フォルダ、人事部門のページ、あるいは総務への請求で閲覧できる。目次で副業、兼業、他社就労、二重就職といった語を探し、該当する条文と、違反した場合の懲戒に関する条文の両方を確認する。判断に迷う書き方だった場合は、匿名で人事に問い合わせるより、制度として届出の要否を尋ねるほうが話が早い。
公務員は仕組みそのものが違う
会社員向けの解説をそのまま当てはめてはいけないのが公務員である。国家公務員法は、職員が営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問、評議員の職を兼ねること、および自ら営利企業を営むことを禁じている。人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合はこの限りでないとされている。
さらに同法は、職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問、評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、または事務を行うにも、内閣総理大臣およびその職員の所轄庁の長の許可を要すると定めている。報酬を得て何かに従事すること自体に許可が要る、という構造だ。地方公務員にも同様の制限がある。
近年は、自治体によって地域貢献活動などに関する許可の基準を公表する動きがあり、扱いが一律ではなくなっている。公務員が副業を考える場合は、一般向けの記事の情報ではなく、所属先の人事担当部署と、適用される規則そのものを確認するほかない。制度の枠組みが会社員と根本的に違うため、ここを混同すると判断を誤る。
住民税の仕組みと、普通徴収を選べる条件
住民税が経路になる理由を、条文に沿って確認する。地方税法は、前年中に給与の支払を受けた者であり、かつ当該年度の初日において給与の支払を受けている者について、給与所得に係る所得割額と均等割額の合算額を特別徴収の方法によって徴収するものとすると定めている。会社員の住民税が給与から天引きされるのは、この規定によるものだ。会社員の場合、6月から翌年5月までの毎月の給与から差し引かれる形になる。
副業の所得がある場合の扱いは、同じ条文の第2項にある。給与所得者に給与所得以外の所得がある場合、市町村は条例の定めるところによって、その給与所得以外の所得に係る所得割額を、給与から特別徴収する額に加算して徴収することができる。そして、ここに続く一文が重要になる。
ただし、第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない。 出典: e-Gov法令検索
申告書に普通徴収で徴収してほしい旨の記載があれば、給与からの天引きに加算しない。これが、確定申告書や住民税の申告書にある徴収方法の選択欄の根拠である。普通徴収を選ぶと、副業の所得に係る住民税は自分で納付書を使って納めることになり、勤務先に届く通知の金額には反映されない。
ただし、条文をよく読めば分かるとおり、この選択の対象は「給与所得以外の所得に係る所得割額」に限られている。ここが最も誤解されている点だ。副業がアルバイトやパートで、受け取るのが給与なら、その所得は給与所得であって「給与所得以外の所得」ではない。したがって普通徴収を選ぶ欄の対象にならず、本業の給与と合算して特別徴収される。業務委託や個人事業として受ける仕事であれば事業所得や雑所得になり、選択の対象になる。副業の形が給与かどうかで、使える手が変わるということである。
もう一点、実務上の注意がある。自治体によっては、事務処理の都合で選択が反映されないことがある。確実を期すなら、申告の後に、住んでいる市区町村の住民税の担当窓口に、選択が反映されているかを確認する。確認の電話は、6月の通知が届いてからでは遅い。
住民税の申告義務と、20万円という数字の正体
副業の話で必ず出てくるのが「年間20万円以下なら申告しなくてよい」という説明である。これは所得税の確定申告についての話であって、住民税の申告には当てはまらない。
地方税法は、市町村民税の納税義務者について、3月15日までに、総務省令で定めるところにより、一定の事項を記載した申告書を、賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならないと定めている。賦課期日は1月1日であり、その時点で住んでいた市区町村が提出先になる。ただし書きで、給与または公的年金等の支払を受けている者で、前年中に給与所得以外の所得を有しなかった者などは提出が不要とされている。つまり、給与以外の所得があるなら、原則として住民税の申告が必要になるという構造だ。
確定申告をした場合は、その内容が市区町村へ回るため、別途の住民税の申告は不要になる。所得税の確定申告が不要な範囲であっても住民税の申告は必要、という場面が生じるのはこのためだ。副業の所得が少額だからといって何もしないでいると、申告義務を果たしていない状態になる。金額や事情によって扱いが変わるため、自分の場合にどうすべきかは市区町村の窓口で確認するのが確実である。
税金の面から見ると、申告を正しく行うことは、職場に知られないための備えとしても意味がある。申告の中で徴収方法を選ぶ欄に記載できるのは、申告をする人だけだからだ。申告をしなければ、選択の機会そのものが訪れない。
副業が給与のとき、社会保険で何が起きるか
副業先でも雇用される形を選ぶと、住民税とは別の経路が開く。社会保険である。厚生労働省が示している加入の要件は、勤め先の従業員数の条件に加えて、週の所定労働時間が20時間以上であること、学生ではないこと、そしてフルタイムの従業員と同じく2か月を超えて雇用される見込みであることとされている。以前は所定内賃金が月額8.8万円以上であることも要件だったが、この賃金の要件は令和7年年金制度改正により2026年10月に撤廃された。
企業規模の条件は段階的に広がる。2027年9月までは従業員数51人以上の企業が対象で、2027年10月以降は36人以上になる。従業員数36人から50人の企業は2027年10月から、21人から35人の企業は2029年10月から、11人から20人の企業は2032年10月から、10人以下の企業は2035年10月から対象になると示されている。副業先が小規模な事業所でも、いずれは対象に入るという流れである。
二か所で被保険者になった場合の手続きは、日本年金機構が案内している。被保険者が同時に複数の適用事業所に使用されることとなった場合、本人の届出により主たる事業所を選択し、管轄する年金事務所または保険者等を決定する。事実の発生から10日以内に、被保険者所属選択・二以上事業所勤務届を日本年金機構へ提出する必要がある。決定した標準報酬月額と保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知される。
この最後の一文が意味するところは明確だ。二つの勤務先の両方に通知が届く。副業先での勤務が社会保険の加入要件を満たした時点で、本業の勤務先に伝わる仕組みが動く。住民税のように選択の余地はない。副業をアルバイトで、しかも社会保険の要件を満たす時間数で行うのであれば、職場に知られない前提は成り立たないと考えるべきである。
なお、副業を業務委託や個人事業の形で行う場合、この経路は生じない。社会保険の被保険者になるのは雇用される場合だからだ。副業の形を決める段階で、この違いを知っているかどうかが後の選択肢を左右する。
労働時間の通算という、もう一つの論点
雇用される形の副業には、労働時間の通算という論点もある。厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインは、労働者が事業主を異にする複数の事業場において労働基準法の労働時間規制が適用される労働者に該当する場合、複数の事業場における労働時間が通算されると説明している。
通算されない場合も明示されている。労働基準法が適用されない場合として、フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事などが例示されている。また、労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合として、農業や畜産業などの事業、管理監督者や機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度が挙げられている。
通算して適用されるのは、法定労働時間と、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内という要件である。一方、通算されない規定もある。36協定により延長できる限度時間や特別条項の1年の上限は、個々の事業場の協定の内容を規制するものなので通算されない。休憩、休日、年次有給休暇も、労働時間に関する規定ではないため通算されない。
この論点が、就業規則の届出制と結び付いている。モデル就業規則の解説では、労働者が自社と副業先の両方で雇用されている場合、労働時間の通算の対象となるかを確認する必要から、他の使用者の事業場の事業内容や、そこで従事する業務内容を確認することが考えられると述べられている。会社が副業の届出を求めるのは、監視のためというより、労働時間の管理義務を果たすためでもある。届出を求められたとき、その意図を理解していると、書く内容の粒度も決めやすい。
雇用保険は、どちらの勤務先で加入するのか
社会保険と混同されやすいのが雇用保険である。仕組みが違うので分けて整理する。ハローワークの案内では、雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、31日以上の雇用見込みがあること、1週間の所定労働時間が20時間以上であることの両方に該当する場合、原則としてその意思にかかわらず当然に被保険者になるとされている。事業主は、適用基準を満たす労働者について、事業主や労働者の意思に関係なく被保険者となった旨をハローワークへ届け出なければならないとも書かれている。
従来の制度では、この要件を満たすのは主たる事業所であり、複数の勤務先があっても雇用保険は一つの勤務先で適用される形が原則になる。副業先での勤務時間が週20時間に届かなければ、その勤務先で被保険者になることはない。副業先で週20時間以上働く場合は、どちらを主たる事業所とするかの整理が必要になり、その過程で勤務の実態が明らかになる。
例外として、65歳以上を対象にした雇用保険マルチジョブホルダー制度がある。厚生労働省の説明では、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち二つの事業所での勤務を合計して要件を満たす場合、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に被保険者となれる制度とされている。要件は、複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること、二つの事業所それぞれの1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満で、合計して20時間以上であること、そして二つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であることである。
この制度は本人の申出で成り立つため、申出をすれば両方の勤務先に手続きが及ぶ。65歳以上で二か所の勤務を組み合わせて働く人にとっては、給付の面で意味のある制度だが、勤務を伏せたままでは使えない。制度を使って保障を得るか、使わずに伏せるかという選択になる点は、社会保険と同じ構造である。
会社が知ったあと、実際に何が起きるのか
知られたらどうなるのかという不安が、この検索の背景にある。制度の建て付けから言えることを整理する。
まず、副業をしていたという事実だけで、ただちに重い処分が正当化されるわけではない。モデル就業規則の解説が引いているとおり、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由であるという考え方が示されている。会社が禁止または制限できるのは、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、名誉や信用を損なう行為や信頼関係の破壊、競業による利益侵害という四つの事由に当たる場合とされている。逆に言えば、これらに当たる副業は、届け出ていたかどうかに関係なく問題になりうる。
次に、届出義務に違反したことそのものが評価される場面がある。就業規則が届出制を定めているのに届け出なかった場合、副業の中身が問題なくても手続きの違反として扱われる。処分の重さは、会社の規則、実際に生じた支障、本人の説明の仕方によって変わる。ここで効いてくるのが記録である。勤務時間外に行っていたこと、会社の設備を使っていないこと、競合しない業務であることを示せる材料があれば、説明の筋が通る。
もう一点、会社側にも義務があることを知っておきたい。モデル就業規則の解説では、副業に係る相談や自己申告を行ったことによって不利益な取扱いをすることはできないとされている。相談したこと自体を理由にした不利益な扱いは、制度として想定されていない。副業を認めるかどうかの判断と、相談したことへの報復は別の問題である。
実務的な結論としては、隠し続ける前提で設計するより、四つの事由に当たらない形を選んで届け出るほうが、後で起きる面倒が小さい。届け出れば会社が労働時間を把握でき、健康の管理にもつながる。会社が届出を求める理由には、労働時間の通算や安全配慮の義務という背景があるという点を理解しておくと、届出の場面での会話が変わる。
副業の形ごとに、手続きと経路がどう変わるか
ここまでの内容を、副業の形ごとに並べ直す。同じ「副業」でも、契約の形で扱いがまるごと変わるためだ。
雇用される形(アルバイト、パート、契約社員)の場合、受け取るのは給与である。住民税は本業の給与と合算して特別徴収され、普通徴収を選ぶ欄の対象にならない。社会保険は、週20時間以上などの要件を満たせば加入対象になり、二以上事業所勤務届によって両方の勤務先に通知が届く。雇用保険は、要件を満たす勤務先で被保険者になる。労働時間は本業と通算される。経路のどれもふさげない形だと言える。
業務委託や請負の形の場合、受け取るのは報酬で、事業所得または雑所得になる。住民税は普通徴収を選択できる。社会保険の二か所加入は生じない。労働時間の通算の対象にもならない。ただし、就業規則の届出義務の対象には入る。モデル就業規則の解説が、請負や委託、準委任契約により行うものも副業・兼業に含むと明記しているとおりである。会社にとって懸念が少ない形であり、本人にとっても手続きが少ない。
個人事業として開業する形は、業務委託と扱いは近いが、開業届や青色申告の届出といった手続きが加わる。屋号や連絡先の表示が必要な取引では、情報の公開範囲を先に決めておく必要がある。事業として継続するなら、記帳と申告の手間が増える一方、経費の扱いや控除の選択肢が広がる。
どの形を選ぶかは、稼ぎたい額よりも、確保できる時間と、手続きにかけられる労力で決めるほうが現実的だ。週に5時間しか取れないのにアルバイトを選ぶと、シフトの制約で本業に支障が出やすい。時間の自由が利く業務委託を選べば、繁忙期は受注を絞るという調整ができる。副業が続かない原因は稼げないことより、本業との時間の衝突にあることが多い。
制度以外の経路は、自分で管理するしかない
住民税と社会保険は仕組みの話だが、実際に職場へ伝わる経路として最も多いのは人づてである。ここは制度で防げないため、自分で決め事を作るしかない。
まず、社内で副業の話をしないこと。信頼している同僚であっても、雑談の内容は思わぬ経路で広がる。次に、SNSの扱い。副業の成果や作品を発信するアカウントと、本名や勤務先が推測できるアカウントを分ける。プロフィールの写真、投稿の時間帯、背景に写る風景からも推測は進む。第三に、取引先の選び方。本業の取引先や同業他社から仕事を受けると、接点が生まれやすい。競業の禁止規定にも触れかねないため、この点は制度上も避けたほうがよい。
会社の設備を使わないことも当然の前提になる。業務用のパソコン、社内のネットワーク、会社のメールアドレスを副業に使えば、記録が残る。勤務時間中に副業の連絡をすることも同じだ。労務提供上の支障という禁止事由に直接当たるため、就業規則の解釈以前の問題として避ける。
副業の稼働時間の置き方にも気を配りたい。平日の深夜に長時間作業すると、翌日の勤務に影響が出る。遅刻や欠勤、会議中の居眠り、ミスの増加といった変化は、副業をしているという事実より先に気づかれる。労務提供上の支障は、就業規則が禁止できる事由の一つ目に挙げられている項目でもある。副業の存在を伏せたいなら、本業の勤務の質を落とさないことが最も効く対策になる。週あたりに使う時間の上限を先に決め、繁忙期は受注を絞る運用にしておくと、結果として長く続けられる。
名刺と請求書の扱いにも注意が要る。屋号や連絡先に本名を出す必要がある場面では、どこまで公開するかを先に決めておく。法人としての取引や、特定商取引法に基づく表示が必要な取引では、氏名や住所の表示が求められる場面がある。これは隠しようがないため、そうした表示が必要になる形の副業を選ぶかどうかを、始める前の判断に含めておく。
隠すより、通せる形を選ぶほうが早い場合
ここまで見たとおり、制度の側でふさげるのは住民税の一部だけで、しかも副業が給与だとそれも使えない。だとすれば、隠すことに労力を使うより、届け出て通る形を選ぶほうが早い場面が多い。
副業の形を業務委託にすると、社会保険の経路が生じず、住民税も普通徴収を選択できる。さらに、労働時間の通算の対象からも外れる。会社にとって懸念が少ない形であり、届け出たときに許可が出やすいのもこの形である。逆に、アルバイトで深夜に働く形は、労務提供上の支障という禁止事由に最も触れやすい。同じ副業でも、契約の形が違うだけで会社側の判断が変わる。
届け出るときの伝え方にも工夫の余地がある。就業規則が禁止できる四つの事由に、自分の副業が当たらないことを具体的に示す。勤務時間外に行うこと、業務内容が競合しないこと、会社の情報を使わないこと、本業に支障が出ない時間配分であること。この四点を書いた届出は、担当者が判断しやすい。
取引の条件を文書で固めることも、結果として本業を守る。発注書や契約書に何を書くべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに項目が整理されている。報酬が支払われないといった事態になると、対応に時間を取られ、本業の勤務にも影響が出る。万一の回収方法と費用の見当については、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に手順がまとまっている。資格や職種によって副業の可否の考え方が変わる例としては、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】のように、業界ごとの規律を踏まえた整理が参考になる。
始める前に踏む手順の整理
順序を決めておくと判断が速い。第一に、就業規則の副業に関する条文と懲戒に関する条文を読む。届出制か許可制か、事業を営むことまで対象にしているかを確認する。第二に、副業の形を決める。雇用されるか、業務委託かで、社会保険と住民税と労働時間の扱いがすべて変わる。第三に、届け出るかどうかを決める。届出制なら出す。禁止規定がある場合は、その規定が四つの事由に沿ったものかを読み、判断に迷うなら専門家に相談する。
この三つを終えた時点で、残る経路がどれかが見える。業務委託を選んで届け出たなら、社会保険と労働時間の論点は消え、住民税の選択だけが残る。雇用される形を選んだなら、経路をふさぐ発想は捨てて、届け出て通る条件を整える方向に切り替える。どちらを選んでも、判断の材料は就業規則と契約の形にある。
第四に、税の手続きを決める。確定申告が必要かを確認し、住民税の徴収方法の選択欄をどう記載するかを決める。給与以外の所得であれば普通徴収を選べるが、選択が反映されているかは市区町村に確認する。第五に、記録を残す。収入と経費、作業時間、契約書を保管する。確定申告の根拠になるだけでなく、会社から説明を求められたときの材料にもなる。
在宅ワークの市場を20年見てきた運営者の立場から言えば、副業でつまずく人の多くは、稼ぐ手段の選択ではなく、手続きの順序で失敗している。先に就業規則を読み、契約の形を決め、税の扱いを決めてから始めた人は、後から慌てることがない。逆に、始めてから調べ始めた人は、選べたはずの選択肢を失った状態で判断することになる。手続きは面倒に見えるが、最初の1週間で済む作業である。
運営者として見てきた限りでは、中間に手数料が乗らない直接の取引ほど、依頼する側と受ける側の双方に余裕が生まれる。同じ予算で依頼側はより多くを頼めるし、受ける側は同じ作業量で手取りが厚くなる。副業として使える時間が限られている人ほど、この差は大きい。時間あたりの手取りが厚い仕事を選べれば、本業に支障が出るほど稼働時間を伸ばす必要がなくなるからだ。
どんな仕事を選ぶかを考える段階では、在宅で完結し、時間の配分を自分で決められる業務が候補になる。文章を扱う仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっており、勤務時間外に確保できる時間と照らし合わせる材料になる。企業の業務にAIを組み込む支援のように伸びている領域を知りたいなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で業務の内容を確認しておくと、必要な準備の見当が付く。
よくある質問
Q. 住民税を普通徴収にすれば職場に知られませんか?
普通徴収を選べるのは給与所得以外の所得に係る分だけです。地方税法は、申告書に普通徴収で徴収されたい旨の記載があるときは給与からの特別徴収に加算しないと定めていますが、副業がアルバイトやパートで給与を受け取る形だと対象になりません。自治体によって処理が異なるため、選択が反映されているか市区町村に確認してください。
Q. 副業の所得が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
20万円という基準は所得税の確定申告に関するもので、住民税の申告には当てはまりません。地方税法は、給与以外の所得がある人について3月15日までに1月1日現在の住所地の市町村長へ申告書を提出することを定めています。確定申告をすればその内容が市区町村に回るため、別途の住民税の申告は不要になります。
Q. 副業先でも雇用されると必ず職場に伝わりますか?
社会保険の加入要件を満たすと、本人が主たる事業所を選択する届出を事実発生から10日以内に行う必要があり、決定した標準報酬月額と保険料額が両方の事業所へ通知されます。この経路は本人の選択でふさげません。業務委託や個人事業として受ける形であれば、雇用ではないためこの手続きは生じません。
Q. 就業規則で副業が禁止されていたら諦めるしかありませんか?
まず条文を読んで、何がどこまで禁止されているかを確認してください。厚生労働省のモデル就業規則は、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、会社の名誉や信用を損なう行為、競業による利益侵害の四つに当たる場合に禁止または制限できるとしています。判断に迷う書き方の場合は、人事に制度として確認するか、専門家に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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