救急外来で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

中西 直美
中西 直美
救急外来で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • 救急外来の看護師の仕事内容を
  • 一次・二次・三次救急の違いから整理しました
  • ホットラインの受け入れ準備

「救急外来に異動が決まったけれど、自分に務まるのか分からない」。 このご相談、本当に多いんです。

救急外来の看護師の仕事内容は、次に誰が来るのか分からない状態で、来た人の命の優先順位を決め、最初の数十分を支えることです。 病棟のように、朝の申し送りで今日の患者さんが分かっているわけではありません。 電話1本で、数分後に心肺停止の患者さんが運ばれてくることもあります。

怖いと感じるのは、当然のことです。 大丈夫ですよ。 救急外来の仕事は、才能ではなく「型」を身につけることで少しずつできるようになります。

この記事では、救急外来で看護師が任される仕事を場面ごとに分けて、同じ救急外来でも病院の役割によってどう違うのか、そしてこの場所でしか経験できないことは何かを、順番にお話しします。

救急外来という場所の成り立ち

まず、救急外来がどんな役割を持つ場所なのかを整理しておきます。 ここを知っておくと、求人を見たときに「自分が行くのはどんな救急外来か」が分かるようになります。

日本の救急医療は、患者さんの重さに応じて3つの段階に分かれています。

段階 主な施設 対象となる患者さん
一次救急 休日夜間急患センター、在宅当番医 入院の必要がない軽症の人
二次救急 救急告示病院など地域の中核病院 入院や手術が必要になりうる人
三次救急 救命救急センター 命に関わる重篤な人

一次救急は、夜間や休日に熱が出た、軽いけがをした、という人を診る場所です。 二次救急は、救急車の受け入れの中心で、腹痛、骨折、脳卒中の疑い、心不全の悪化など、入院になるかもしれない人を幅広く受けます。 三次救急は、多発外傷、心肺停止、重症のやけどなど、一刻を争う人を受け入れます。

救急の需要は増え続けています。 総務省消防庁の統計では、2023年の救急出動件数は760万件を超え、過去最多を更新しました。 高齢化で、転倒による骨折や、持病の悪化による搬送が増えていることが大きな理由です。

もう1つ、救急外来の運営には2つの型があります。 1つは、救急科の医師が最初にすべての患者さんを診て、必要に応じて専門の科に引き継ぐ「ER型」。 もう1つは、内科や外科など各科の当番医が、それぞれの専門の患者さんを診る「各科対応型」です。

ER型では、救急外来の看護師は救急科の医師と一緒に、あらゆる症状の患者さんに最初から関わります。 各科対応型では、どの科の医師を呼ぶかを判断する場面が増え、看護師が患者さんの症状から「これは脳神経外科に連絡を」と見立てる力が求められます。

また、救急外来に専従の看護師がいる病院と、夜間は病棟の看護師や外来の看護師が交代で救急外来を兼ねる病院があります。 中小規模の二次救急病院では、夜間の救急外来を看護師1人から2人で担当していることも珍しくありません。

同じ「救急外来の看護師」でも、どの段階の、どの型の、どんな体制の救急外来かで、任される範囲は大きく変わります。 この違いは、この記事の後半でもう少し詳しくお話しします。

もう1つ、救急外来ならではの特徴があります。 それは、「患者さんとの関わりが、多くの場合その日で終わる」ということです。 病棟では、退院の日に「ありがとう」と言われる瞬間があります。 救急外来では、処置を終えて病棟へ送り出したら、その後どうなったかを知らないまま次の患者さんに向き合います。 この関わり方が合う人もいれば、寂しさを感じる人もいます。 どちらが正しいということではなく、自分がどちらの関わり方に心が満たされるかを、一度考えてみてください。

ホットラインから受け入れ準備までの数分間

救急外来の看護師の仕事の中で、この場所にしかない緊張感があるのが、救急隊からの電話、いわゆるホットラインを受けてから、患者さんが到着するまでの数分間です。

救急隊からの情報を聞き取る

救急隊からは、患者さんの年齢と性別、何が起きたのか、意識の状態、呼吸、脈拍、血圧、酸素飽和度、行った処置、到着までの時間といった情報が伝えられます。 看護師がこの電話を受ける病院では、限られた時間で必要な情報を漏れなく聞き取り、医師に伝えます。

慣れないうちは、メモを取るだけで精一杯です。 多くの救急外来では、聞き取る項目をあらかじめ書き込める用紙が用意されていて、その順番に沿って聞けば漏れが出ないようになっています。 これが先ほどお話しした「型」の1つです。

到着までに部屋を整える

受け入れが決まったら、患者さんの状態を予測して準備を始めます。

心肺停止なら、胸骨圧迫を交代する人員、除細動器、気管挿管の道具、救急カートの薬剤。 大量出血を伴う外傷なら、太い点滴の針を2本、温めた輸液、輸血の準備、ポータブルのX線撮影。 脳卒中の疑いなら、CT室への連絡と、発症時刻の確認。

予測が外れることもあります。 それでも、最悪の事態を想定して準備しておくことで、患者さんが到着した瞬間から処置を始められます。 この「来る前に整える」経験は、救急外来でしか積めないものです。

役割を決めておく

複数の看護師がいる場合は、到着前に誰が何をするかを決めます。 記録係、点滴と採血の係、モニター装着と観察の係、家族の対応の係。 役割がはっきりしていると、処置が始まってから人がぶつかったり、同じことを2人でやってしまったりすることがなくなります。

こういう相談がよくあります。 「救急外来に来たばかりのころ、何をすればいいか分からず、処置室の隅に立っているだけだった」。 新しく来た人がまず任されるのは、記録係であることが多いです。 記録係は、誰がいつ何をしたかを時刻とともに書き留めながら、処置全体の流れを一番よく見られる場所にいます。 焦らなくて大丈夫。 記録係として何度も場面を見ているうちに、次に何が必要になるかが自然と分かるようになっていきます。

トリアージという、救急外来ならではの判断

救急車で運ばれてくる人だけが、救急外来の患者さんではありません。 自分で歩いて来る人、家族に連れられて来る人も大勢います。 この「歩いて来る人」の中に、実は重い病気が隠れていることがあります。

そこで行われるのが、トリアージです。 来院した順番ではなく、緊急度の高い順に診察の優先順位を決めることを言います。

緊急度の判定

日本の多くの救急外来では、緊急度を5段階に分ける方法が使われています。 蘇生が必要な段階から、しばらく待っても差し支えない段階まで。 看護師は、患者さんの訴え、見た目の様子、呼吸や脈拍、体温、血圧、意識の状態を短い時間で確認し、どの段階にあたるかを判定します。

たとえば、「胸が少し重い」と言って歩いて来た50代の人。 見た目は落ち着いていても、冷や汗をかいていたり、脈が乱れていたりすれば、心筋梗塞を疑って最優先で心電図をとり、医師に報告します。 反対に、発熱と咳で来た若い人で、呼吸も脈も安定していれば、待合室で待ってもらうことになります。

待っている人を見続ける

トリアージは、1回判定したら終わりではありません。 待合室で待っている間に、状態が悪くなる人がいます。 一定の時間ごとに再評価し、様子が変わった人がいれば順番を入れ替えます。

待っている人やご家族から、「いつまで待たせるのか」と強い言葉を向けられることもあります。 そんなとき、看護師は「後から来た人が先に呼ばれる理由」を、相手を責めずに伝えなければなりません。 この説明はとても難しく、心がすり減る場面の1つです。

こういう相談がよくあります。 「トリアージで待ってもらった人が、あとで重症だと分かった。自分の判断のせいだと、何日も眠れなかった」。 あなたは一人じゃありません。 トリアージは、限られた情報の中で最善を尽くす判断であり、どれほど経験を積んだ看護師でも、すべてを見抜けるわけではありません。 だからこそ、判定の結果を振り返り、チームで学ぶ仕組みを持っている救急外来では、1人に責任を背負わせないようにしています。

電話での相談

救急外来には、「今から受診したほうがいいか」という電話もかかってきます。 看護師が電話で症状を聞き、すぐに救急車を呼ぶべきか、来院してもらうか、翌日の外来でよいかを案内します。 顔が見えない相手の緊急度を声だけで判断するのは、トリアージの中でも特に難しい仕事です。

到着した患者さんへの初期対応

患者さんが到着したら、救急外来の看護師は医師と一緒に、命を守るための最初の処置に入ります。

まず命に関わるものから確かめる

救急の初期対応では、確認する順番が決まっています。 気道は通っているか、呼吸はできているか、血液の循環は保たれているか、意識はどうか、体温は下がっていないか。 この順番で異常を探し、見つけたらその場で対処してから次へ進みます。 病名を探すより先に、命を支えることを優先するのが救急の考え方です。

看護師は、モニターを付け、酸素を投与し、点滴のルートを確保し、採血をします。 医師が気管挿管をするときは、薬剤の準備と介助を行います。 心肺停止の場合は、胸骨圧迫を交代しながら、薬剤投与の時刻を管理します。

検査への移動と観察

CTやX線、エコー、心電図などの検査が次々に行われます。 状態が不安定な患者さんをCT室へ移動させるときは、看護師が付き添い、移動中にも急変に備えます。 検査室は処置室より設備が少ないので、酸素ボンベや救急バッグ、薬剤を持って行きます。

入院か、帰宅か

初期対応が終わると、患者さんは入院するか、手術室や集中治療室へ移るか、帰宅するかに分かれます。 入院になる場合、看護師は病棟に空いているベッドを確認し、患者さんの状態を申し送ります。 夜間は空きベッドが少なく、入院先が決まるまで救急外来で何時間も患者さんを見続けることもあります。

帰宅になる場合は、帰宅後に気をつけること、どんな症状が出たらもう一度受診すべきかを伝えます。 「頭を打ったけれど今は大丈夫」という人に、今夜は1人で寝ないでほしい、吐き気が出たらすぐに来てほしいと説明するのも、大切な仕事です。

救急外来でしか経験できないこと

ここまでお話ししたように、救急外来では、あらゆる年齢の、あらゆる症状の患者さんに、最初の数十分だけ関わります。 乳児の熱性けいれんの直後に、高齢者の心肺停止の処置に入ることもあります。

こうした幅広い疾患と、超急性期の看護を学べることについて、看護師の就職情報サイトでも次のように紹介されています。

救急の現場で初期治療に携わる救急看護師は、その仕事を通して幅広い疾患と超急性期の看護が学べます。今回は、勤務経験者の話をもとに、救急の仕事内容や特徴、向いている人の傾向を解説します。救急看護師に興味がある人や目指している人はぜひ参考にしてみてください。 出典: recruit.nurse-senka.com

病棟で3年働いても出会わないような症状に、救急外来では1か月で出会うことがあります。 その経験の密度こそが、この場所で働く意味の1つです。

患者さん以外の人と向き合う仕事

救急外来の看護師の仕事内容を語るとき、見落とされがちなのが、患者さん本人以外の人と向き合う仕事です。 実はここに、救急外来ならではの難しさがあります。

突然の知らせを受けたご家族

救急外来に駆けつけるご家族は、ほとんどの場合、心の準備ができていません。 朝は元気だった家族が、倒れて意識がない。 事故にあったと警察から電話があった。

看護師は、処置が続いている間、ご家族を別室に案内し、今どういう状況なのかを分かる範囲で伝え、医師からの説明の場を整えます。 亡くなられた場合には、ご家族がお別れをする時間と場所を用意し、そばに寄り添います。

こうした悲しみへの寄り添い方は、心理学では「グリーフケア」と呼ばれます。 難しい言葉ですが、要するに「悲しんでいる人が、悲しむことを許される時間をつくる」ということです。 何か気の利いた言葉をかける必要はありません。 ただ、そばにいて、ご家族の言葉を遮らずに聞くことが、一番の支えになります。

警察や行政との連絡

救急外来には、交通事故や事件に巻き込まれた人、自宅で亡くなって発見された人も運ばれてきます。 こうした場合は警察との連絡が必要になり、看護師は所持品の管理や、処置の記録の整理を行います。

子どもの不自然なけがや、高齢者の低栄養、配偶者からの暴力が疑われる場合もあります。 虐待が疑われるときは、病院の中の決まった手順に沿って、医師や医療ソーシャルワーカーと相談し、児童相談所や市町村に連絡します。 看護師は、患者さんの話や体の状態を丁寧に記録し、見過ごさないようにします。

心の危機にある人

自殺を図って運ばれてくる人もいます。 体の処置が終わったあと、その人が再び危険な行動をとらないように見守り、精神科の医師や相談窓口につなぐことも、救急外来の役割です。 責めず、急がず、「ここに来てくれてよかった」という姿勢で関わることが大切です。

お酒に酔って大声を出す人、医療者に暴力をふるおうとする人への対応もあります。 自分の身を守ることを最優先にし、1人で対応せず、必要なら警備員や警察を呼ぶ決まりを、どの救急外来も持っています。 「看護師だから我慢しなければ」と思わなくて大丈夫です。

病院の役割によって、任される範囲が変わる

冒頭でお話ししたように、救急外来は病院の役割によって姿がまるで違います。 ここでは、看護師が任される範囲の違いを具体的に見ていきます。

救命救急センター(三次救急)

重症の患者さんが中心で、多発外傷、心肺停止、重症のやけど、中毒などに対応します。 看護師の人数は比較的多く、救急科の医師も常にいます。 集中治療室や手術室と連携しながら、高度な処置の介助を行います。

ドクターヘリやドクターカーを持つ施設では、看護師が現場に出動することもあります。 また、災害時に被災地で医療を行うチームに参加する看護師もいます。

また、救急看護師のなかには病院に勤務しながらDMAT(災害派遣医療チーム)に所属し、災害現場で救急看護にあたる人もいます。ドクターヘリや災害の現場で活躍するには、専門的な知識が必要なため、研修の修了、一定の経験年数、訓練などが求められます。 出典: recruit.nurse-senka.com

三次救急では、1人の患者さんに深く関わる時間が長く、処置の技術を磨くには向いています。 その反面、亡くなる方と向き合う機会も多く、心の負担は大きくなりがちです。

二次救急病院

救急車の受け入れと、歩いて来る患者さんの両方に対応するのが二次救急です。 症状の幅が最も広く、トリアージの力が最も鍛えられるのがこの職場です。

中規模の病院では、日中は外来の看護師が救急外来を兼ね、夜間は2人から3人の看護師で救急外来を回すことがよくあります。 夜間は医師も当直の1人から2人で、看護師が最初に患者さんを見て、どの科の医師を呼ぶかを判断する場面が多くなります。 任される範囲は広く、判断の責任も重くなりますが、そのぶん看護師としての見立ての力が伸びます。

一次救急(休日夜間急患センター)

軽症の患者さんが中心で、多くは子どもの発熱や嘔吐、軽いけがです。 重症の人が来た場合は、二次救急や三次救急の病院へ送る判断をします。

勤務は夜間や休日の数時間で、パートとして働く看護師も多い職場です。 処置の技術よりも、短時間で多くの人を診察につなぐ段取りと、保護者への説明の力が求められます。

どの職場が上ということはありません。 重症の処置を学びたいなら三次救急、幅広い見立ての力をつけたいなら二次救急、家庭と両立しながら救急に関わりたいなら一次救急。 自分が今、何を大切にしたいかで選んでいいんです。

夜勤と人員体制、そして心の負担との付き合い方

救急外来は24時間365日開いているので、夜勤は避けられません。 勤務の組み方は、病院によって二交代制と三交代制に分かれます。 二交代制の場合、夜勤は16時間ほどになり、仮眠の時間が取れるかどうかは、その夜に何台の救急車が来るかで決まります。

夜間の人員をどう読むか

夜勤の負担を左右するのは、看護師の人数と、救急車の受け入れ台数の組み合わせです。 夜間に看護師2人で、救急車を1晩に10台受ける病院では、1人が処置に入ると、もう1人が待合室と電話と次の受け入れ準備を1人で抱えることになります。 求人票で「夜間の看護師の人数」と「年間の救急車受け入れ台数」が分かれば、おおよその忙しさが想像できます。

夜勤明けの過ごし方も、長く続けるためには大切です。 明けの日にすぐ眠るか、少しだけ眠って夜にしっかり眠るか。 自分に合うリズムを見つけるまでには、何度か試してみる必要があります。 夜勤の翌日が休みになっているか、夜勤が連続しないように組まれているかも、体を守るうえで確かめておきたい点です。

心に残る場面とどう付き合うか

救急外来の看護師が退職を考えるきっかけとして多いのは、体の疲れよりも、心に残る場面の積み重ねです。 子どもの死、若い人の事故、救えなかった命。 こうした経験を繰り返すと、眠れない、その場面が突然よみがえる、何をしても楽しくない、といった状態になることがあります。

これは、あなたが弱いから起きるのではありません。 つらい場面に何度も立ち会う仕事をしている人に、誰にでも起こりうる反応です。

私はカウンセラーとして、救急の現場で働く方のお話を何度も聞いてきました。 その中で強く感じるのは、「話せる場所がある人ほど、長く続けられている」ということです。 つらい症例のあとに、チームで短く振り返る時間を持っている職場。 上司が「大丈夫だった?」と声をかける習慣がある職場。 そうした職場で働く人は、心の負担を1人で抱え込まずに済んでいます。

私自身、この仕事を始めたばかりのころ、ある救急看護師の方のお話を聞いたあと、帰りの電車でしばらく涙が止まらなかったことがあります。 話を聞く側でさえ、そうなるのです。 現場で直接その場面に立ち会った人が、何も感じないはずがありません。

もし、眠れない日が2週間以上続いたり、仕事に行くのが怖くなったりしたら、1人で我慢せず、職場の産業医や相談窓口、心療内科などの専門家に相談してください。 ※症状が重い場合や、自分を傷つけたい気持ちがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。

求人票で、救急外来の実態を確かめる

救急外来の求人票は、「救急看護に興味のある方歓迎」「スキルアップできる環境」といった言葉が並びがちです。 実態を知るために、次の点を確かめてみてください。

救急の段階と受け入れ台数

一次、二次、三次のどれにあたるか。 年間の救急車の受け入れ台数と、歩いて来る患者さんの数。 これで、忙しさと症状の幅がおおよそ分かります。

救急外来専従か、兼務か

救急外来に専従の看護師がいるのか、外来や病棟と兼務なのか。 兼務の場合、夜間だけ救急外来に入るのか、日中も含むのかで、身につく経験の量が変わります。

夜間の体制

夜間の看護師の人数、当直医の人数と診療科、仮眠室の有無。 二交代か三交代か。 夜勤の回数の目安も聞いておくと安心です。 救急車が重なったときに、病棟や当直の師長から応援が来る決まりがあるかどうかも、聞いておきたい点です。 応援の仕組みがある職場では、夜間に1人で抱え込む場面が減ります。

教育と振り返りの仕組み

救急外来に配属された人への教育の段取り。 心肺蘇生やトリアージの研修を受けられるか。 つらい症例のあとに振り返る時間を持っているか。 この最後の点は、面接で聞きにくいかもしれません。 でも、「つらい症例のあと、スタッフ同士で話す機会はありますか」と聞いて構いません。 その質問に真剣に答えてくれる職場は、働く人の心を大切にしている職場です。

資格取得への支援

救急の分野で経験を積んだ看護師が目指す資格に、日本看護協会の認定看護師があります。 救急看護と集中ケアの分野は、制度の見直しで「クリティカルケア」という1つの分野にまとめられました。 教育課程に通う間の勤務の扱いや、費用の補助があるかどうかも、長く働くつもりなら確認しておきたい点です。

見学で、夕方から夜の空気を感じる

可能であれば、救急車が増えやすい夕方から夜にかけての時間に、職場見学をお願いしてみてください。 看護師同士が声をかけ合っているか。 忙しいときに、誰かが1人で取り残されていないか。 処置のあとに、先輩が新人に「さっきはありがとう」と伝えているか。 こうした小さな場面に、その職場の空気は表れます。 求人票の言葉よりも、見学で感じた空気のほうが、あなたが長く働けるかどうかを正直に教えてくれます。

救急外来に来てから、慣れていくまでの道のり

救急外来に配属された人が、どんな順番で仕事を覚えていくのか。 施設ごとに違いはありますが、よく見られる流れをお伝えします。 先が見えると、不安は少し軽くなります。

最初の1か月:場所と物を覚える

最初は、どこに何があるかを覚えるだけで精一杯です。 救急カートの中身、除細動器の使い方、点滴や採血の物品の置き場所、CT室や手術室への連絡方法。 急いでいるときに「あれはどこですか」と聞かずに手が伸びるようになることが、最初の目標です。

この時期は、先輩について動き、記録係やモニターの装着を担当することが多いでしょう。 わからないことを聞くのは、恥ずかしいことではありません。 救急外来で一番危ないのは、分からないまま動くことです。

2か月から半年:歩いて来る人の対応とトリアージ

次に、歩いて来る軽症から中等症の患者さんの対応を任されるようになります。 先輩と一緒にトリアージを行い、判定の理由を言葉にして確認してもらう。 これを繰り返すうちに、「この訴えなら、この検査が必要になりそう」という見立てが少しずつできるようになります。

半年から1年:救急車の受け入れと夜勤

救急車の受け入れで、点滴や採血、処置の介助を担当するようになります。 夜勤に入るのも、多くの職場ではこの時期からです。 夜間は人数が少ないので、日中に先輩がいる環境で経験を積んでから入る流れが一般的です。

1年以降:重症の対応とリーダー

心肺停止や多発外傷などの重症の対応で、中心的な役割を担うようになります。 やがて、その日の救急外来全体を見渡し、誰をどこに配置するかを決めるリーダーの役割も任されます。

慣れるまでの道のりで、多くの人が一度は「自分には向いていないかもしれない」と感じます。 それは、成長している途中で誰もが通る場所です。 大丈夫ですよ。 1年前の自分と比べて、できるようになったことを1つずつ数えてみてください。

覚えることが多い時期は、勤務が終わったあとに、その日に出会った症状と対応を2行か3行だけ書き留めておくのもおすすめです。 長い勉強ノートを作る必要はありません。 「胸痛の人に、まず心電図」「高齢者の転倒は、頭を打っていないか必ず確認」。 そんな短いメモが、数か月後にはあなただけの手引きになります。

救急外来の経験を、その先の働き方に生かす

救急外来で身につけた力は、ほかの場所でも必ず生きます。 急変に落ち着いて対応する力、短い時間で人の状態を見立てる力、突然の知らせを受けた家族に寄り添う力。 訪問看護、介護施設、健診センター、企業の健康管理室など、どこに移っても頼りにされます。

体力的に夜勤が難しくなってきたとき、救急外来での経験を生かして、在宅でできる仕事に広げる看護師もいます。 医療記事の執筆や監修、健康相談、オンラインでの講師など、臨床経験を生かせる在宅の仕事を比べた記事があります。看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】

救急外来で積んだ経験が収入の面でどう評価されるのかを知っておきたい人は、看護師の年収や時給の分布を公的な統計をもとにまとめたデータも参考になります。看護師の年収・単価相場

また、心のケアに関心が深まり、心理職と連携する働き方を考える人もいます。 心理の専門職がオンラインで相談を行う仕組みや、始めるときに必要な準備をまとめた記事もあります。臨床心理士・公認心理師のオンラインカウンセリング開業術【2026年版】

フリーランスや在宅の働き方を長く見てきた立場から言えば、医療職の方が現場の外で信頼を得ていく過程には、1つの共通点があります。 それは、「知識の量」より「相手が何に困っているかを聞く力」で選ばれているということです。 救急外来で、言葉にならない不安を抱えた人の話を聞いてきた経験は、そのまま強みになります。 仲介の手数料がかからない直接のやり取りで仕事を受ければ、依頼する側は同じ予算でより丁寧な対応を頼め、受ける側の手取りも厚くなります。 専門職の経験が、途中で削られずに必要な人に届く形です。

救急外来は、怖い場所ではありません。 次に誰が来るか分からない場所で、チームで命をつなぐ場所です。 型を身につけ、つらいときは話せる職場を選んでください。 あなたの経験は、必ず誰かの支えになります。

よくある質問

Q. 救急外来の看護師の主な仕事内容は何ですか?

救急隊からの連絡を受けて受け入れ準備をすること、歩いて来た患者さんの緊急度を判定するトリアージ、到着した患者さんのモニター装着や点滴、採血などの初期対応、検査への付き添い、入院先との調整、帰宅する人への説明、ご家族への寄り添いが中心です。病院の役割によって任される範囲が変わります。

Q. 救急外来は新人や未経験の看護師でも働けますか?

救急外来に未経験で配属される人は少なくありません。最初は記録係やモニター装着などから始め、処置の流れを見ながら覚えていくのが一般的です。受け入れの聞き取り用紙やトリアージの手順など、決まった型に沿って動けるので、教育の段取りが整っている職場を選ぶと安心です。

Q. 一次・二次・三次救急で看護師の働き方はどう違いますか?

三次救急は重症の患者さんが中心で、高度な処置の介助を多く経験します。二次救急は症状の幅が最も広く、トリアージや見立ての力が鍛えられます。一次救急は軽症の人が中心で、夜間や休日の短時間のパート勤務も多く、家庭と両立しながら救急に関われる職場です。

Q. 救急外来で働く看護師が心の負担を減らすにはどうすればよいですか?

つらい症例のあとにチームで短く振り返る、信頼できる同僚や上司に話すなど、1人で抱え込まない工夫が大切です。眠れない日が2週間以上続く、仕事に行くのが怖いといった状態があれば、産業医や相談窓口、心療内科などの専門家に早めに相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月5日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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