求人詐欺に多い手口|条件すり替え・応募者狙い・掲載料請求の3系統


この記事のポイント
- ✓求人票の条件をすり替える型
- ✓応募者から金銭を取る型
- ✓掲載する企業へ高額請求する型の3系統に分かれます
結論から書きます。求人詐欺という言葉は、実は3つのまったく違う現象を指しています。第一が、求人票に書いてある条件と実際の労働条件が違う型。第二が、応募者から金銭や個人情報を取ることを目的にした型。第三が、求人を出す企業に「無料掲載」と持ちかけて後から高額請求する型です。被害者が求職者側なのか企業側なのかも違いますし、使える法律も対処の順序も違います。
検索してきた皆さんがどの立場でも読めるように、この記事では3系統を分けて書きます。自分に関係するのは1系統だけでも、他の系統を知っておくと手口の共通構造が見えます。どの系統にも共通するのは、「最初に有利な数字を見せて、後から不利な条件を出す」という時間差の作り方です。この構造を理解すると、初見の手口でも判別できるようになります。
私は編集の仕事で、採用広告の原稿と、労働条件の相違をめぐるトラブルの記録の両方を見てきました。正直なところ、この分野で厄介なのは、悪意のある詐欺と、単に求人票の書き方が下手な会社の境目が曖昧なことです。だからこそ、応募する側は「悪意があるかどうか」を見抜こうとせず、「条件が確認できる形になっているか」だけを見るほうが確実です。その具体的な見方を書きます。
求人詐欺の3系統を先に分ける
最初に全体像を押さえます。
第一系統が、条件相違型です。求人票には月給25万円と書いてあったのに、入社時の契約では20万円だった。正社員募集だったのに契約社員で採用された。残業はほとんどないと書かれていたのに月60時間あった。この型が、行政に寄せられる相談として最も多いものです。加害者は実在する企業であり、会社としては事業を続けているため、対処は労働法の枠組みで進みます。
第二系統が、応募者搾取型です。求人を装って応募者を集め、登録料や研修費を取る、商品を買わせる、個人情報や口座情報を集める、あるいは犯罪の実行役として使う。この型では、そもそも雇用する意思がありません。加害者は連絡が取れなくなることが多く、対処は刑事と消費者保護の枠組みになります。
第三系統が、掲載料請求型です。企業の採用担当に電話やFAXで「無料で求人を掲載できます」と持ちかけ、申込書に署名させ、後に「無料期間が終了したので掲載料を支払え」と請求する。請求額は数十万円規模になることがあります。被害者は求職者ではなく、人手不足で困っている中小企業です。この型は近年、中小企業向けの注意喚起が繰り返し出されています。
3系統に共通する構造は、意思決定の時点で情報が不足していることです。第一系統は入社を決める時点で実際の条件がわからない。第二系統は応募する時点で相手の実体がわからない。第三系統は署名する時点で有料化の条件がわからない。つまり対策も共通で、「決める前に、決めるための情報を文書で取る」ことに収斂します。
厚生労働省による調査の規模感を示す記述があります。
求人詐欺とは、求人内容と実際の勤務形態が大きく異なることです。例えば、給与が大幅に異なる、実際の仕事内容が違うといったケースがあるでしょう。ハローワークでも求人詐欺に関する相談が労働局に相次いでおり、厚生労働省の調査によると2014年には12,000件もの報告件数が報告されています。 出典: freejob.work
年に1万件規模の相談が寄せられているということは、これが例外的な事故ではなく、構造的に起きている現象だということです。個人の不注意の問題として片付けられる話ではありません。
系統1 条件をすり替える手口の典型
条件相違型は、いくつかの決まったパターンに分かれます。求人票を読むときにこのパターンを頭に入れておくと、危ない表現が浮かび上がって見えます。
第一が、給与の見せ方です。最も多いのが、固定残業代を含んだ金額を月給として表示する方法です。「月給25万円」と書いてありながら、内訳は基本給17万円と固定残業代8万円という構成になっている。この場合、月に何時間残業しても追加の残業代が出ないように見せかけられ、実質的な時間単価は表示から想像するより大幅に低くなります。法律上は、固定残業代の時間数と金額を明示する義務があるため、内訳が書かれていない求人票はその点で不適切です。
第二が、賞与や手当を含んだ年収表示です。「年収400万円可能」という表示が、業績連動の賞与と皆勤手当と住宅手当をすべて満額で得た場合の数字になっている。条件が付いた数字を、条件を書かずに提示する手法です。
第三が、雇用形態のすり替えです。求人票では正社員募集としながら、実際には試用期間中は契約社員、あるいは業務委託契約を結ばせる。業務委託にされると、労働基準法の保護が及ばず、残業代も有給休暇もなくなります。この差は極めて大きいので、契約書の表題を必ず確認してください。
第四が、職種と業務内容のすり替えです。事務職の募集で入ったら営業に配属された、内勤と書かれていたのに外回りだった、というパターンです。2024年4月から、労働条件の明示事項に業務内容の変更の範囲が加わったため、どこまで変更され得るのかを書面で確認できるようになりました。
第五が、勤務地と勤務時間のすり替えです。転勤なしと聞いていたのに遠方の事業所へ配属された、日勤のみと聞いていたのに夜勤が入った、という形です。
具体例として、次の記述がわかりやすいです。
求人内容と実際の勤務条件が異なると求人詐欺に該当する可能性が高いです。例えば求人内容で月給25万円と記載があったにもかかわらず、契約時に月給20万円と伝えたり、月給は残業代込みで17万円と通知したりすれば、求人詐欺にあたります。 出典: freejob.work
注意すべきなのは、求人票の条件が自動的に契約内容になるわけではないという点です。求人票は募集の段階の情報であり、実際の労働条件は契約で決まります。だから、条件が変わるなら契約前に変更後の内容を明示しなければならないという義務が、職業安定法で定められています。この明示なしに下げられた条件で契約させるのが違法な部分なのです。
条件相違はどの法律に触れるのか
法的な位置づけを整理します。ここを知らないと、どこに相談すればよいかが判断できません。
まず職業安定法です。虚偽の条件を提示して労働者を募集する行為が禁じられており、違反には罰則が定められています。また2018年の改正で、求人票の条件から変更して契約する場合には、変更内容を書面などで明示する義務が明確化されました。求人票と違う条件で契約させるなら、その差分を先に示さなければならないということです。
次に労働基準法第15条です。使用者は労働契約の締結に際して、賃金、労働時間、就業場所、業務内容、契約期間などを書面で明示しなければなりません。この明示された条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると同条に定められています。つまり、入社後に条件が違うとわかったら、退職の予告期間を待たずに辞められます。遠隔地から就業のために転居していた場合は、帰郷旅費の請求も認められています。
そして最低賃金法と労働基準法の割増賃金の規定です。固定残業代の形をとっていても、実際の残業時間に対応する割増賃金が固定額を超えれば、その差額の支払義務は消えません。「固定残業代を払っているから追加は出ない」という説明は、時間数を超えた分については通りません。
民法の不法行為や契約締結上の過失という枠組みで、慰謝料や損害賠償を請求できる場合もあります。実務で認められた例は、他社の内定を断って入社したのに条件が大きく違っていた、というような、具体的な損害が説明できるケースが中心です。
相談先は、労働条件の相違であれば労働基準監督署または都道府県労働局の総合労働相談コーナーです。ハローワーク経由の求人であれば、ハローワークにも申出の窓口があります。制度や窓口の情報は厚生労働省のサイトで確認できます。
調査の結果として、相違が実際に確認された件数の内訳も報告されています。
2018年の厚生労働省による求人詐欺の調査件数は、およそ9,000件以上あったことが報告されています。その中で、実際に求人詐欺があった企業は3,600件であることが分かりました。 出典: freejob.work
相談の4割程度で実際の相違が確認されているという数字です。逆に言えば、相談したうち一定数は、求人票の読み違いや伝達の不備だったということでもあります。だから応募する側としては、相手が悪質かどうかを事前に判断しようとするより、条件を文書で確定させる作業に力を入れるほうが効率的です。
系統2 応募者から金銭や情報を取る手口
こちらは雇用する意思がない型です。手口はいくつかの型に収斂しています。
第一が、登録料や研修費を取る型です。「採用後に使うシステムの利用料」「研修テキスト代」「制服代」といった名目で、入社前に金銭を求めます。労働者から費用を徴収して働かせる形は、労働基準法や職業安定法の観点から問題があり、正規の雇用ではまず発生しません。有料職業紹介についても、求職者から手数料を取れるのは限定された職種のみと定められています。
第二が、商品購入を条件にする型です。「まず自社製品を理解するために購入してください」という流れで、高額な商品や在庫を買わせます。連鎖販売取引の入口になっている場合もあります。
第三が、個人情報収集型です。応募書類として身分証の画像、口座情報、マイナンバーの写し、さらには身分証を持った自撮り写真を求めます。集まった情報は、口座開設、携帯電話の契約、借入の申込に転用されます。判別のポイントは時点です。口座情報とマイナンバーは、採用が決まって報酬を支払う段階で必要になる情報であり、応募の段階では不要です。
第四が、犯罪の実行役として集める型です。「高収入」「即日現金」「荷物を受け取るだけ」「口座を貸すだけ」という募集がこれに当たります。応募すると詐欺や特殊詐欺の実行役、口座の名義貸し、運び役として使われ、本人が刑事責任を問われます。報酬の高さと作業の単純さが釣り合っていない募集は、この型を疑うべきです。
第五が、連絡手段をメッセージアプリに限定する型です。面接をせず、あるいはビデオ通話だけで「採用」を伝え、その後のやりとりを全部チャットで行います。会社のドメインのメールアドレスが一度も出てこない採用は不自然です。
判別の実務としては、相場の感覚を持っておくのが一番効きます。単純作業で時間単価が一般的なアルバイトの何倍にもなる募集は、報酬の出どころが作業ではありません。職種ごとの現実的な水準は、開発系ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、文章を扱う仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場で分布まで確認できます。相場を知っていると、提示額が何倍なのかを即座に判断できます。
また、応募を機に登録するサービスが増えると、パスワードの使い回しによる被害が広がります。主要なアカウントの多要素認証は、この段階で有効にしておくべきです。仕組みごとの強さはMFA(多要素認証)導入のメリットと製品比較|2026年の認証セキュリティ決定版で比較されています。
在宅ワークと業務委託の募集で起きる手口
雇用ではなく業務委託の募集にも、同じ構造の手口があります。在宅で働く形を探している人は、ここを分けて理解しておく必要があります。
第一が、単価と作業範囲の不一致です。「1件3,000円」という単価だけが示され、1件の作業範囲が定義されていない。着手してから「この工程も含まれます」「修正は無制限で対応してください」と範囲が膨らみ、実質の時間単価が大きく下がります。雇用の場合の固定残業代と同じ構造で、上限のない作業を定額で引き受けさせる形です。対策は明快で、着手前に成果物の定義、修正回数の上限、追加作業の扱いを文書で確定させることです。
第二が、テスト案件の無償化です。「まずは適性を見たいので1本お試しで書いてください」と言われ、納品した原稿がそのまま使われ、採用は見送られる。複数の応募者に同じことをすれば、無償で成果物が集まります。テスト課題そのものは正当な選考手段ですが、そのまま公開できる形の成果物を無償で求めるのは別です。分量を限定してもらう、あるいはテスト分も有償にしてもらうという交渉が可能です。
第三が、検収の引き延ばしです。納品後に「確認中です」と繰り返し、支払期日が来ない。2024年に施行されたフリーランス関連の法律により、発注者には業務委託の条件を書面または電子データで明示する義務と、原則として納品から60日以内に報酬を支払う義務が課されました。支払期日が明示されていない発注、あるいは「入金があり次第お支払いします」という条件は、この点で問題があります。
第四が、名義と実体の乖離です。募集を出している個人が、実際には別の発注元から受けた仕事を丸投げしている。契約相手が誰なのかが不明確なまま作業が進み、支払いの段階で「元の発注者から入金がない」と言われる。契約書の当事者名と、請求書を出す相手が一致しているかを最初に確認してください。
判別に使える一番簡単な基準は、条件が数字で書かれているかです。単価、分量、納期、修正回数、支払期日。この5つが数字で示されている募集は、少なくとも条件を確定させる意思があります。示されていない募集は、後から動かす余地を残しているということです。
系統3 企業を狙う無料求人広告詐欺
こちらは被害者が企業側です。手口が定型化しているため、知っておけばほぼ防げます。
流れはこうです。まずFAXまたは電話で「求人広告を無料で掲載できます」という案内が届きます。人手不足の企業にとって魅力的な話です。申込書をFAXで返送するよう求められ、担当者が署名して返信します。その後、掲載が始まり、数週間から数か月後に「無料期間が終了したため、以降は有料での自動更新となっています」という通知と、数十万円の請求書が届きます。
問題は申込書の記載です。無料をうたう大きな文字の下や裏面に、極めて小さな文字で「無料期間は14日間」「期間満了後は自動的に有料契約に移行」「解約は書面で期間満了の1か月前まで」という条項が書かれています。担当者はその部分を読んでおらず、署名だけしてしまう。請求段階で抗議すると「申込書に記載してあります」と返されます。
さらに厄介なのが、支払いを拒むと法的措置を示唆する書面が届く点です。訴訟予告、債権回収会社への譲渡、代表者の自宅への通知といった文言で圧力をかけてきます。中小企業の経営者や総務担当者が、揉めるのを避けて払ってしまうケースが少なくありません。
対処の方向性は明確です。まず、支払う前に申込書の控えと送られてきた書面を全部保管してください。次に、すぐに支払わないこと。この種の契約は、無料と強調した勧誘と実際の有料条件との乖離が大きいため、消費者契約法の対象外である事業者間取引であっても、錯誤や公序良俗の観点から争える余地があります。そして弁護士または所属している商工会議所、中小企業向けの相談窓口に相談してください。同種の被害が多数集まっている業者であれば、対応の前例があります。
予防としては、社内ルールを1つ作るだけで足ります。求人広告の申込は、担当者個人の判断では返送せず、必ず決裁者が申込書の全文を読んでから決める。FAXで届いた申込書にその場で署名しない。この2つを決めておけば、この型は入ってきません。企業側のセキュリティと業務ルールの整備という観点では中小企業のサイバーセキュリティ対策2026|IT導入補助金で防御力を強化する方法で扱っている考え方が共通して使えます。
応募前に求人票のどこを読むか
ここから実務です。求人票を読むときに確認する項目を並べます。
賃金については、基本給と諸手当の内訳が分かれて書かれているかを見ます。固定残業代がある場合は、その時間数と金額が明記されているか。「月給25万円以上」のように下限だけ書かれている場合、その金額がどの経験年数に対応するのかを確認します。賞与は「年2回」だけでなく「前年度実績◯か月」のように実績が書かれているかを見ます。
労働時間については、所定労働時間、休憩、月平均の残業時間、変形労働時間制やみなし労働時間制の有無を確認します。「残業ほぼなし」という表現は、数字が伴っていなければ情報ではありません。
雇用形態については、正社員か契約社員か業務委託か、試用期間の長さと試用期間中の条件、契約期間の定めがあるかを確認します。ここは入社後の権利に直結します。
会社そのものについては、法人名で検索し、国税庁の法人番号公表サイトで実在と所在地を照合します。設立年、従業員数、事業内容が求人票の記載と整合するか。同じ会社が常に同じ職種を大量に募集し続けている場合、離職率が高い可能性を示します。
そして、求人票の掲載元も見てください。ハローワーク、大手の求人媒体、自社サイトのいずれかに掲載されているかで、掲載前の審査の有無が変わります。SNSのダイレクトメッセージやメッセージアプリだけで届く募集は、審査を通っていないということです。
私自身、駆け出しの頃に条件の確認を怠って痛い思いをしました。業務範囲を口頭の説明だけで了解して着手したところ、後から「これも含まれているはずだ」という要求が次々に出てきたのです。金額は決まっているのに作業量が膨らむ。あのときから、条件はすべて文面で受け取ると決めました。書面で確認を求めて嫌がる相手とは、その後もうまくいきません。
面接と内定、そして入社後にやること
応募後の各段階で、やるべきことが違います。
面接の段階では、聞くべき質問が決まっています。求人票に書かれた月給の内訳、固定残業代の時間数、直近の月平均残業時間、試用期間中の条件、想定される配属先と業務、転勤や夜勤の可能性。これらを質問することは、選考で不利になりません。むしろ、条件を確認する候補者を嫌う会社は、その反応自体が情報になります。回答が曖昧だった項目はメモしておきます。
内定の段階では、労働条件通知書または雇用契約書を、入社日より前に受け取ってください。法律上、労働条件の明示は契約締結に際して行う義務があります。入社初日まで書面が出てこない、あるいは「入社後にお渡しします」と言われる会社は、この時点で警戒対象です。受け取ったら、求人票と1項目ずつ突き合わせます。差分があれば、その理由を書面またはメールで確認します。メールで残すのが重要で、後から証拠になります。
入社後に条件が違うと判明した場合の手順です。まず、求人票の保存です。掲載が取り下げられると消えるので、応募の時点でスクリーンショットまたはPDFで保存しておくべきでした。すでに消えている場合も、応募時のメール、媒体への問い合わせ、ハローワークの求人票の控えから再現できることがあります。
次に、実際の条件を記録します。給与明細、タイムカードや勤怠記録、業務指示のメール、シフト表。労働時間については、自分でも毎日の出退勤を記録しておきます。
そして会社へ申し入れます。口頭ではなくメールなど記録の残る手段で、求人票の条件と現状の差分を示し、是正を求めます。応じない場合は、労働基準監督署または総合労働相談コーナーに相談します。労働基準法第15条の明示条件と事実が相違する場合は即時に契約を解除できるため、辞めるという選択も法的に裏付けられています。
市場を20年見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、2つ書いておきます。
ひとつは、求人詐欺の入口が「募集情報」から「広告とメッセージ」に移ったという変化です。かつては求人情報そのものに怪しいものが混ざっていました。今は、募集情報を扱う場では掲載前の審査が働くようになり、代わりにSNS広告とメッセージアプリが入口になっています。だから「自分は仕事を探していたわけではないのに」という経路で被害に遭う人が増えました。運営者として見てきた限りでは、審査を通った場から探した人と、届いた広告から入った人では、トラブルの発生率がまったく違います。探しに行く側から動くというだけで、リスクは大きく下がります。
もうひとつは、条件の明示が丁寧な発注者ほど、長く続く取引相手になるということです。業務範囲、報酬の計算方法、検収の基準、支払日を最初に文書で出してくる相手は、後から揉めません。逆に、条件を曖昧にしたまま始めたい相手は、曖昧にしておくほうが自分に有利だと判断しています。中間に取り分を置かない直接取引では、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手は同じ仕事から残る金額が厚くなります。手数料0%の意味は金額の大小ではなく、働いた分がそのまま残るという質の話です。そして直接取引だからこそ、条件を自分で確認する力がそのまま収入の安定に繋がります。
長く続けている人を見ていると、条件の確認を面倒がりません。むしろ最初の1通のメールで、業務範囲と支払日を確認してから着手しています。これは相手を疑う行為ではなく、双方が同じ理解に立つための作業です。どういう業務がどういう条件で動いているかを知るには、実際の仕事の中身を見るのが早いです。アプリケーション開発のお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事では、業務の範囲がどう区切られるのかが具体的に書かれています。条件の書き方の標準を知っておくと、標準から外れた求人がすぐに見えるようになります。
もうひとつ、20年見てきて変わらないことがあります。条件を確認した人が、それを理由に採用を断られた例をほとんど見ていません。応募者の側は「細かいことを聞くと落とされるのではないか」と心配しますが、実際に起きているのは逆です。条件を確認する応募者は、入社後に認識の違いで揉めないので、採用する側にとっても安全な相手です。確認を嫌がる会社は、確認されると困る条件を抱えている会社であって、その会社に入らなかったことは損失ではありません。ここを恐れて質問を飲み込むと、結果として条件相違型の被害に自分から近づいてしまいます。
そして、条件を確認する習慣は、雇用でも業務委託でも同じように効きます。会社に勤める場合は労働条件通知書、業務委託なら発注書と契約書。どちらも「決める前に文書で受け取る」という一点に集約されます。逆に、この習慣がないまま働き方を変えると、雇用の保護がない業務委託の世界でより大きな損失に繋がります。最初に身につける順序として、条件の確認は技術より前に来ます。
求人詐欺を見抜く力は、結局のところ、正常な条件の書き方を知っているかどうかに尽きます。手口を暗記する必要はありません。標準を知っていれば、外れは自然に目立ちます。
よくある質問
Q. 求人票と実際の労働条件が違ったら、すぐ辞められますか?
辞められます。労働基準法第15条により、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は労働契約を即時に解除できます。退職の予告期間を待つ必要はありません。就業のために転居していた場合は、契約解除から14日以内に帰郷する場合の旅費を請求できる規定もあります。
Q. 「月給25万円」の内訳に固定残業代が含まれていたら違法ですか?
固定残業代そのものは違法ではありませんが、対応する時間数と金額を明示する必要があります。内訳が書かれていない求人票は、その点で不適切です。また、実際の残業時間に対応する割増賃金が固定額を超えた場合、差額の支払義務は残ります。固定残業代を理由に追加分を支払わない扱いは通りません。
Q. 応募の段階で身分証と口座情報を求められました。応じるべきですか?
応じるべきではありません。口座情報は報酬を支払う段階、マイナンバーは支払調書の作成段階で必要になる情報で、採用が決まる前には不要です。身分証の両面画像と身分証を持った自撮り写真を求められる場合、口座開設や借入の申込に使える組み合わせが揃うため、特に警戒してください。
Q. 「無料で求人掲載できます」という電話が来ました。どう対応すべきですか?
その場で申込書に署名して返送しないでください。無料期間の長さ、期間満了後の自動有料化、解約の方法と期限が小さな文字で書かれているのが定型の手口です。申込は担当者個人で決めず、決裁者が申込書の全文を読んでから判断するというルールを社内に作っておけば、この型は防げます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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