JAの直売所に出品するための登録手順と、出せる品物の条件


この記事のポイント
- ✓JAの直売所に出品したい人に向けて
- ✓出荷者として登録するまでの流れ
- ✓出せる品物と出せない品物
家庭菜園で育てた野菜が食べきれないほど採れた。定年後に借りた畑で、せっかくなら売ってみたい。そんなとき、まず思い浮かぶのが地元のJAが運営している直売所ではないでしょうか。JAの直売所に出品するには、何から始めればよいのか、誰でも出せるのか、どんな品物なら置いてもらえるのか。初めての人には分からないことだらけですよね。
先に結論を書きます。JAの直売所に出品するには、多くの場合、そのJAの組合員になったうえで、直売所の出荷者として登録する必要があります。登録の条件、手数料、出せる品物の範囲は、JAや直売所ごとに決められているので、まずは最寄りのJAの窓口か直売所の事務所に問い合わせるのが近道です。そして、どの直売所でも共通して守るべきルールとして、野菜や果物の表示、農薬の使い方、加工品をつくるときの許可があります。
この記事では、JAの直売所に出品するまでの流れを順番に整理し、登録の前に確かめておきたいこと、出せる品物の条件、売り場で選ばれやすくするための工夫、副業として続けるときのお金の扱いまでを、法令と公的な資料を確かめながら書いていきます。
JAの直売所とはどんな場所か
JAの直売所は、地域の農家が育てた野菜や果物、花、加工品などを、農家自身が値段をつけて並べ、消費者に直接届ける売り場です。「ファーマーズマーケット」「産直市場」といった名前で呼ばれていることもあります。
スーパーに並ぶ野菜の多くは、農家からJAや市場を通り、卸売の業者、小売の店と何段階もの流通を経て消費者に届きます。直売所では、その途中の段階がほとんどありません。農家は朝に収穫した野菜を袋に詰め、値札とラベルを貼って売り場に並べ、売れた分の代金から手数料を差し引いた額を受け取ります。
この仕組みには、出品する側にとって次のような特徴があります。
・自分で値段を決められる ・形が不ぞろいなものや、少量の品目でも並べられることが多い ・売れ行きを見ながら、品目や量を自分で調整できる ・売れ残った品物は、基本的に自分で引き取る
最後の点は、意外と見落としやすいところです。直売所の多くは、売れた分だけ代金を払う「委託販売」の形をとっています。委託販売とは、品物の持ち主は農家のままで、直売所が販売を代わりに行う仕組みのことです。売れ残りが出れば、閉店の時間までに引き取りに行く必要があります。
JAの直売所のほかにも、道の駅の売り場、自治体の施設に入っている産直コーナー、スーパーの中の地場野菜コーナー、民間企業が運営する直売所、無人販売所など、農産物を売る場所はいくつもあります。JAの直売所は、地域の農業を支える目的で運営されているため、出荷者の条件がはっきり決められていることが多いのが特徴です。
出品できる人の条件と、組合員の資格
JAの直売所に出品できるのは誰なのか。ここは直売所ごとに条件が違うので、断定はできません。ただ、多くのJAの直売所では、そのJAの組合員であること、または組合員の家族であることを出荷者の条件にしています。
JAの組合員になれる人は、農業協同組合法という法律で大枠が決められています。
農業協同組合の組合員たる資格を有する者は、次に掲げる者で定款で定めるものとする。 一 農業者(組合を除く。) 二 当該農業協同組合の地区内に住所を有する個人又は当該農業協同組合からその事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を継続して受けている者であつて、当該農業協同組合の施設を利用することを相当とするもの 出典: laws.e-gov.go.jp
1つ目の「農業者」として加入する人が、一般に「正組合員」と呼ばれます。2つ目の、地区内に住んでいる人などが加入するのが「准組合員」です。正組合員になるには、どのくらいの面積の農地で、年に何日ほど農業をしているか、といった条件が、それぞれのJAの定款(JAの基本ルールを定めた書類)で決められています。
ここで気をつけたいのは、法律が決めているのは「定款で定める」という枠組みまでで、具体的な条件はJAごとに違うという点です。たとえば、准組合員でも直売所に出荷できるJAもあれば、正組合員に限っているJAもあります。家庭菜園の規模でも受け入れている直売所もあれば、一定の面積以上の農地で生産していることを求める直売所もあります。
組合員になるには出資金を払います。出資金とは、組合に加入するときに出すお金で、脱退するときには原則として払い戻されます。金額はJAごとに決められているので、窓口で確かめましょう。
まずは、自分が住んでいる地域、あるいは畑がある地域のJAに、「直売所に出荷したいのですが、どんな条件がありますか」と電話で聞いてみるのが一番早い方法です。
登録までの流れ
JAの直売所に出荷できるようになるまでの流れは、一般的には次のような順番になります。細かな手順は直売所ごとに違いますが、全体の流れを知っておくと、問い合わせのときに話が通じやすくなります。
1. 問い合わせと説明を受ける
最寄りのJAの支店、営農センター、または直売所の事務所に連絡し、出荷を始めたいと伝えます。出荷者の条件、手数料、出荷できる時間、出せる品目、必要な書類などについて説明を受けます。
2. 組合員への加入
まだ組合員でなければ、加入の手続きをします。加入の申込書と出資金の払い込みが必要です。加入には理事会の承認が必要なJAもあり、すぐには組合員になれないこともあります。
3. 出荷者としての登録
直売所の出荷者として登録します。多くの直売所には「出荷者協議会」「生産者部会」といった出荷者の会があり、そこへの加入と年会費の支払いを求められることがあります。登録の書類には、名前、住所、口座のほかに、生産している品目、畑の場所、栽培の方法などを書く欄があるのが一般的です。
4. 講習や説明会への参加
初めて出荷する人向けに、出荷のルール、表示の付け方、農薬の使い方、袋詰めの方法を説明する講習会を開いている直売所があります。参加が登録の条件になっていることもあります。
5. 栽培記録の提出
出荷する前に、どの品目にいつ、どの農薬をどれだけ使ったかを記録した書類(栽培履歴、防除記録と呼ばれます)の提出を求める直売所が多くあります。直売所によっては、出荷する前に記録を確認し、問題がなければ出荷できる仕組みにしています。
6. バーコードラベルの発行と出荷開始
登録が済むと、出荷者ごとの番号が割り当てられ、値段と出荷者番号が入ったバーコードラベルを発行できるようになります。店内の端末でラベルを印刷する直売所が多く、品物に貼って売り場に並べます。
問い合わせから出荷開始までの期間は、数週間から数か月までさまざまです。理事会の承認を月1回にまとめて行っているJAでは、加入の時期によって待つ期間が変わります。出荷したい野菜の収穫時期から逆算して、早めに動き出しましょう。
出せる品物と、出せない品物
直売所に並べられる品物は、大きく分けて次のようなものです。
・自分で育てた野菜、果物、米 ・花や苗、植木 ・卵や加工品(直売所が認めている場合) ・山菜やきのこ(直売所が認めている場合)
一方で、多くの直売所が受け付けていない、あるいは条件をつけているのが次のようなものです。
・自分で育てていない品物(仕入れた品物の転売) ・地域外で生産した品物 ・食品の営業許可が必要なのに、許可を取っていない加工品 ・農薬の使い方が確認できない品物 ・野生の山菜やきのこで、種類の判別が確実でないもの
直売所の多くは「地元でつくられたもの」を売り物にしています。そのため、自分で育てたものであることや、地域内で生産したものであることが前提になっていることがほとんどです。
山菜やきのこは、特に注意が必要です。見た目が似た有毒な植物やきのこを誤って採ってしまう事故が毎年起きています。直売所によっては、山菜やきのこの出荷を認めていなかったり、判別の講習を受けた人に限っていたりします。自信がない種類は出さない、という姿勢が大切です。
また、同じ野菜でも、直売所によって受け入れる規格が違います。たとえば、ひと袋の重さの目安、袋の種類、傷や虫食いの許容範囲などが、直売所ごとに決められていることがあります。登録のときにもらう出荷のルールの冊子をよく読んでおきましょう。
野菜や果物の表示のルール
直売所で野菜や果物を売るときに必ず押さえておきたいのが、食品表示のルールです。食品表示とは、食品の名前や産地などを、買う人に分かるように示すことです。食品表示法という法律と、その細かい決まりを定めた食品表示基準で決められています。
野菜や果物のような生鮮食品を消費者に売るときは、原則として「名称」と「原産地」を表示する必要があります。名称は、その野菜の一般的な名前(たとえば「なす」「トマト」)、原産地は、国産であれば都道府県名など、一般に知られている地名で示します。
では、農家が直売所に出荷する場合は誰が表示をするのか。消費者庁の食品表示基準Q&Aには、次のように書かれています。
食品表示基準においては、表示義務者は全ての食品関連事業者(農協、産地市場の卸売業者や産地出荷業者等を含む。)とされています。生産農家であっても消費者向けに直接出荷する場合等「業として」販売する場合には表示が義務付けられています。 出典: caa.go.jp
つまり、農家であっても、直売所を通じて消費者に売るなら表示の義務がある、ということです。同じQ&Aでは、生産者が農協に出荷し、農協との合意で農協が表示を含めた販売に責任を持つ場合には、農協から出荷される段階で表示されていればよい、という考え方も示されています。直売所でどちらの形をとっているかは、出荷のルールで確かめましょう。
同じQ&Aには、「JA○○」という表示だけでは原産地の表示にならない場合がある、とも書かれています。JAの名前に含まれる地名が実際の産地と違うことや、一般に知られた地名でないことがあるためです。JAの名前とは別に「○○県産」などと原産地を示す必要があります。
表示の場所は、袋や容器の見やすい場所か、品物のすぐ近くに立てた札などです。直売所のバーコードラベルに品名と産地が印字される仕組みになっていることも多いので、ラベルの記載内容を確認しておきましょう。
加工品を出すときに必要な許可
野菜や果物をそのまま出すだけでなく、漬物、ジャム、干し柿、餅、弁当などの加工品を出したいと考える人も多いと思います。加工品は、生の野菜とは扱いが大きく変わります。
食品衛生法という法律では、食品をつくって売る営業のうち、食中毒などのリスクがあるものについて、都道府県などの許可を受けることを求めています。許可を受ける窓口は、多くの場合、地域の保健所です。
令和3年6月の制度の見直しで、許可が必要な業種が整理され、たとえば漬物製造業が新たに許可の対象になりました。厚生労働省の営業許可に関するQ&Aでは、漬物を製造する営業は漬物製造業になると説明されています。それまで許可なしで漬物をつくって直売所に出していた人も、経過措置の期間が終わった今は、許可を受けた施設でつくる必要があります。
許可を受けるには、決められた基準を満たした施設が必要です。家庭の台所をそのまま使うことは、多くの場合認められません。調理の場所と住まいを区切る、専用の手洗い設備を設ける、といった基準があり、細かな基準は自治体の条例でも決められています。
一方、自分で育てた野菜を収穫して、洗って袋に詰めて売るだけであれば、通常は食品衛生法の営業許可の対象にはなりません。農業で作物を収穫することは、法律上の「営業」とは別に扱われているためです。ただし、カット野菜にする、ゆでる、乾燥させるといった加工を加えると、扱いが変わることがあります。
加工品を出したいときは、つくりたい品物の名前と作り方を整理して、地域の保健所に相談するのが確実です。あわせて、加工品には生鮮食品より多くの表示事項(原材料名、内容量、消費期限や賞味期限、製造者など)が必要になることも覚えておきましょう。
農薬の使い方と栽培記録
直売所に出荷するとき、表示とならんで大切なのが農薬の使い方です。
農薬は、農薬取締法という法律で、使ってよい作物、使う量、使う時期(収穫の何日前まで使えるか)、使える回数が決められています。これを「使用基準」といいます。農薬の容器のラベルに、使える作物と使い方が書かれているので、必ず確認してから使います。
家庭菜園の感覚で、ある作物用の農薬を別の作物に使ってしまうと、使用基準の違反になることがあります。たとえば、トマトに使える農薬でも、ナスやピーマンには使えないことがあります。直売所に出す野菜は、他の人が食べるものです。ラベルに書かれていない作物には使わない、という原則を徹底しましょう。
多くの直売所が栽培記録の提出を求めるのは、このためです。栽培記録には、次のような項目を書くのが一般的です。
・作物の名前と畑の場所 ・種をまいた日、植え付けた日 ・使った農薬の名前、使った日、薄めた倍率、使った量 ・使った肥料の名前と量 ・収穫を始めた日
記録の様式は直売所ごとに用意されていることが多いので、登録のときにもらっておきましょう。農薬を使わない場合でも「使用なし」と記録する決まりになっていることがあります。
直売所の中には、出荷された品物を抜き打ちで検査し、残っている農薬の量を調べているところもあります。記録をきちんと付けておくことは、自分の品物の安全を示すことにもつながります。
登録の前に窓口で聞いておきたいこと
最初の問い合わせで聞き漏らしがあると、何度も窓口に足を運ぶことになります。電話や訪問の前に、聞きたいことを紙に書き出しておきましょう。次の表は、多くの人が登録の後で「先に聞いておけばよかった」と感じやすい項目をまとめたものです。
| 聞くこと | 確かめたい理由 |
|---|---|
| 出荷者の条件(組合員の種類、農地の広さ) | 自分が登録できるかどうかが決まる |
| 販売手数料の割合と年会費 | 手元に残る額の計算に必要 |
| 出荷できる時間と、売れ残りの引き取り時間 | 仕事や家事との両立ができるか分かる |
| 出荷できる品目と、受け付けていない品目 | 育てる作物の計画に関わる |
| 栽培記録の様式と提出の時期 | 出荷開始までの準備に関わる |
| 講習会の日程 | 登録の条件になっていることがある |
| 袋やラベルの購入方法と費用 | 資材の費用の見積もりに必要 |
| 代金の締め日と振込日 | お金の流れを把握するため |
特に、出荷できる時間と売れ残りの引き取り時間は、会社員が副業として続けられるかどうかを左右します。朝は開店前の決まった時間までに並べ、夕方の閉店前後に売れ残りを引き取る、という形が多く見られます。勤務時間と重なる場合は、家族に手伝ってもらえるか、出荷する曜日を絞れるかを考えておく必要があります。
窓口の担当者は、地域の農業の事情に詳しい人です。「初心者でも育てやすく、売り場で不足しやすい品目はありますか」と聞いてみると、作付けの計画を立てるヒントがもらえることがあります。
出荷する日の1日の流れ
実際に出荷を始めると、どんな1日になるのでしょうか。一般的な流れを、朝から順に見てみましょう。
まず早朝に畑で収穫します。葉物や果菜類は、気温が上がる前に収穫すると鮮度が保ちやすくなります。収穫した野菜は、土や傷んだ葉を取り除き、決められた量ずつ袋に詰めます。袋の口をテープで留め、見た目を整えます。
次に直売所へ向かい、店内の端末で品目と値段を入力してバーコードラベルを印刷します。ラベルを1袋ずつ貼り、売り場の決められた棚に並べます。棚の場所が出荷者ごとに決まっている直売所もあれば、品目ごとに並べる直売所もあります。
日中は、売上の速報を確かめられる仕組みがあれば、売れ行きを見て追加で出荷するかどうかを判断します。夕方には直売所に戻り、売れ残った品物を引き取ります。引き取った野菜は、自分の家で食べるか、翌日に出せる状態かを見極めます。
この流れの中で、袋詰めとラベル貼りは思った以上に時間がかかる作業です。たとえば、ほうれん草を30袋出荷するなら、収穫、根元の泥落とし、計量、袋詰めの各段階に時間がかかります。最初は少ない袋数から始めて、自分の作業の速さをつかんでおくと、無理のない出荷の量が見えてきます。
最初の1年の計画の立て方
直売所への出荷を始めたら、最初の1年は「学ぶ年」と考えて計画を立てるのがおすすめです。
春から夏にかけては、出荷者が多い品目が重なりやすい時期です。最初の夏は、育てやすい品目を少量ずつ出しながら、売り場にどんな品目が多く、どの時期にどの品目が足りなくなるのかを観察します。売り場の棚を毎回見て、メモを取っておくだけでも、翌年の作付けを考える材料になります。
秋から冬にかけては、根菜類や葉物が中心になります。寒い時期は出荷者が減ることもあり、品目によっては売れやすくなることがあります。夏の経験を踏まえて、どの品目に力を入れるかを決めていきましょう。
1年を通して、品目ごとに「出荷した袋数」「売れた袋数」「値段」「かかった費用」「作業にかかった時間」を記録しておきます。1年が終わったときにこの記録を見返すと、時間あたりで手元に残りやすい品目と、手間のわりに残りにくい品目がはっきりします。2年目からは、その結果をもとに品目を選び直すと、同じ畑と同じ時間で、より納得のいく結果につながりやすくなります。
手数料と、お金の流れ
直売所に出荷したときのお金の流れも、事前に知っておきたいところです。
直売所では、売れた品物の代金から販売手数料を差し引いた額が、出荷者に支払われます。販売手数料の割合、年会費、ラベルの発行にかかる費用、袋や資材の代金は、直売所ごとに決められています。手数料の割合は直売所によって違い、JAの組合員かどうかで変わるところもあるので、登録の前に必ず確かめておきましょう。
代金の支払いは、月に1回や2回など、締め日を決めてまとめて口座に振り込まれる形が一般的です。直売所によっては、売れた数を出荷者が確かめられるように、売上の速報をメールや専用のサイトで知らせる仕組みを用意しています。昼の時点で売り切れていれば追加で出荷する、といった動き方ができます。
売上の計算では、次の費用も忘れずに考えておきましょう。
・種や苗、肥料、農薬の費用 ・袋、テープ、ラベルなどの資材の費用 ・直売所までの往復のガソリン代 ・売れ残りの引き取りにかかる時間
売上の額だけを見ていると、思ったより手元に残らないことがあります。最初の数か月は、品目ごとに売上と費用を記録し、どの品目が手元に残りやすいかを確かめるとよいでしょう。
売り場で選ばれやすくするコツ
直売所には、同じ時期に同じ野菜がたくさん並びます。夏にはトマトやナス、キュウリが売り場を埋め尽くすことも珍しくありません。その中で選ばれるためのコツを整理します。
品目と時期をずらす
多くの出荷者が同じ時期に同じ品目を出すと、価格が下がり、売れ残りが増えます。少し早く、あるいは少し遅く収穫できるように種まきの時期をずらす、ほかの人があまり出していない品目を育てる、といった工夫が効きます。直売所の担当者に「不足している品目はありますか」と聞いてみるのも有効です。
量と大きさを買う人に合わせる
一人暮らしや二人暮らしの家庭が増えているので、少量のパックが選ばれやすいことがあります。大きなキャベツ1玉より半分にカットしたものが売れる、というように、買う人の暮らしに合わせた量を考えましょう。ただし、カットすると加工の扱いになるかどうかは直売所のルールで確かめます。
見た目と鮮度
朝に収穫し、土を落とし、袋の中で品物がきれいに見えるように詰める。それだけでも手に取ってもらえる確率は上がります。しおれやすい葉物は、収穫の時間と並べる時間をできるだけ近づけましょう。
名前を覚えてもらう
直売所では、出荷者の名前がラベルに印字されることが多くあります。毎回きれいな品物を出していると、「この人の野菜なら買う」というお客さんがついていきます。食べ方を書いた小さなカードを添えるのも、選ばれる理由になります。
出荷者どうしのルールと、トラブルを避ける心がけ
直売所は、たくさんの出荷者が1つの売り場を分け合う場所です。自分だけが得をしようとすると、ほかの出荷者との関係がこじれ、長く続けにくくなります。ここでは、出荷を始めた人がつまずきやすい点を整理します。
1つ目は値段のつけ方です。直売所によっては、品目ごとに最低価格の目安を決めていたり、極端に安い値付けを控えるよう求めていたりします。売れ残りを避けたい気持ちから値段を大きく下げると、同じ品目を出しているほかの出荷者の売れ行きにも影響します。最初は売り場に並んでいる同じ品目の値段を見て、大きく外れない範囲でつけるのが無難です。
2つ目は表示の間違いです。品目を選び間違えてラベルを印刷してしまった、産地の表示を付け忘れた、といったミスは、慣れないうちに起きやすいものです。気づいた時点で直売所の担当者に伝え、売り場の品物を差し替えましょう。間違った表示のまま売られると、買った人からの問い合わせにつながります。
3つ目は品質への問い合わせです。買った野菜が傷んでいた、虫が入っていた、という連絡が直売所に寄せられることがあります。多くの直売所では、担当者が出荷者に連絡し、対応を相談する流れになっています。袋詰めの前に1つずつ状態を確かめる、傷みやすい品目は出荷の量を控えめにする、といった日ごろの心がけが、問い合わせを減らす一番の方法です。
4つ目は出荷者の会の活動です。出荷者協議会や生産者部会では、売り場の清掃当番、イベントの手伝い、総会への出席などを求められることがあります。負担に感じることもありますが、ほかの出荷者と話せる貴重な機会でもあります。育て方のコツや、売れ筋の品目の情報は、こうした場で得られることが少なくありません。
副業として続けるときの注意点
会社員が副業として直売所に出荷する場合や、年金を受け取りながら畑をしている場合に、知っておきたい点をまとめます。
まず、税金です。直売所での売上から費用を差し引いた額は所得になり、規模や継続の度合いによって、事業所得や雑所得として扱われます。国税庁の案内では、給与を1か所から受けている人で、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告をしなくてよいとされています。ただし、この20万円の線は所得税の話で、住民税の申告は別に必要になることがあります。所得の区分や申告が必要かどうかは、売上の規模や事情で変わるので、税務署やお住まいの市区町村の窓口で確かめてください。
次に、勤め先の就業規則です。副業を届け出制にしている会社では、届け出が必要になることがあります。農業は副業として認められやすい分野ですが、自分の会社のルールは確かめておきましょう。
そして、無理のない量から始めることです。畑の作業、収穫、袋詰め、出荷、売れ残りの引き取りは、思った以上に時間がかかります。特に朝の出荷は、出勤前の短い時間に行うことになります。最初は1品目か2品目、出荷する日も週に数日から始め、生活のリズムに合うかどうかを確かめながら広げていくのが続けるコツです。
JA以外の売り場との比べ方
JAの直売所の条件が合わないときや、もっと別の売り方も試したいときは、ほかの売り場と比べてみましょう。
道の駅の売り場は、自治体が施設を持ち、運営を民間の会社や第三セクターに任せていることが多くあります。出荷者の条件は運営する団体ごとに決められていて、JAの組合員でなくても登録できるところもあります。観光客が多い場所では、地域の特産品や加工品がよく売れる傾向があります。
スーパーの地場野菜コーナーは、近くの農家の野菜を委託で販売する形が多く、毎日多くの買い物客が訪れるのが強みです。JAが仲介して出荷する形もあれば、スーパーと直接契約する形もあります。
無人販売所は、自分の畑の前などに小屋を置いて販売する方法です。手数料はかかりませんが、代金の回収や盗難への備えが必要です。また、無人販売でも表示のルールは同じように守る必要があります。
インターネットでの販売は、全国の人に届けられる反面、発送の手間と送料、梱包の資材費がかかります。生鮮品は傷みやすいので、品目選びと発送のタイミングに工夫が必要です。
どの売り場にも向き不向きがあります。まずは近くのJAの直売所で出荷の流れを覚え、売れる品目や量の感覚をつかんでから、ほかの売り場に広げていくと、失敗が少なくて済みます。すでにJAの直売所に出荷している実績があると、ほかの直売所でも登録がスムーズに進むことがある、という話もよく聞かれます。
運営者の視点から見た、小さく売る副業の続け方
在宅ワークや副業の仲介を長く見てきた立場から言えば、長く続く副業には共通点があります。それは、最初から大きく稼ごうとせず、手間と収入の釣り合いを確かめながら少しずつ広げていることです。直売所への出荷も同じで、最初に品目を絞り、売れる量と時間のかけ方を確かめた人ほど、何年も続けています。
もう1つの共通点は、仲介の手数料を意識していることです。直売所の販売手数料は、売り場と集客の対価として払うものですが、同じ売上でも手数料が違えば手元に残る額は変わります。文章やデザインのような在宅の仕事でも同じで、手数料0%で受発注できる仕組みを選べば、同じ報酬額でも手取りは厚くなります。
畑の仕事と在宅の仕事を組み合わせる人も増えています。売り場のPOPや商品紹介の文章を書く力を在宅の仕事に生かしたい方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で文章の仕事の収入の目安を確かめられます。SNSでの発信や集客の仕事に興味がある方は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、どんな仕事があるのかを見ておくとよいでしょう。自宅でできる仕事に役立つ資格を知りたい方は、在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるも参考になります。
よくある質問
Q. JAの組合員でなくても、JAの直売所に出品できますか?
出荷者の条件は直売所ごとに決められています。多くのJAの直売所では組合員であることを条件にしていますが、准組合員でも出荷できるところや、組合員の家族を認めているところもあります。最寄りのJAの窓口か直売所の事務所に、出荷者の条件を問い合わせてみてください。
Q. 家庭菜園で育てた野菜でも出品できますか?
受け入れている直売所もありますが、一定の面積以上の農地で生産していることを求める直売所もあります。家庭菜園の野菜でも、出荷する以上は名称と原産地の表示、農薬の使用基準を守ることが必要です。栽培記録の提出を求められることも多いので、日ごろから記録を付けておきましょう。
Q. 漬物やジャムを直売所で売るには何が必要ですか?
漬物やジャムのような加工品は、食品衛生法で保健所の営業許可が必要になることが多くあります。漬物製造業は令和3年6月の見直しで許可の対象になりました。許可を受けるには基準を満たした施設が必要で、家庭の台所をそのまま使えないことがほとんどです。地域の保健所に相談してください。
Q. 直売所の売上は確定申告が必要ですか?
給与を1か所から受けている会社員で、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。所得は売上から種や肥料、資材などの費用を差し引いた額です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。事情によって扱いが変わるので、税務署や市区町村の窓口で確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
上野 琴音@SOHO編集部
オンライン教育コンテンツクリエイター
元小学校教師。オンライン家庭教師や教育コンテンツ制作のフリーランスに転身。教育・講師・オンラインスクール系の記事を執筆しています。
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