医療機器メーカーで求められる資格|無くても入れる範囲はどこまでか【2026年版】

中西 直美
中西 直美
医療機器メーカーで求められる資格|無くても入れる範囲はどこまでか【2026年版】

この記事のポイント

  • ✓医療機器メーカーで求められる資格を
  • ✓法律で置くことが決まっている責任者の要件と
  • ✓転職で評価されやすい資格に分けて整理しました

「医療機器メーカーに転職したいけれど、何か資格がないと応募できないのでは」。

こういうご相談、本当によくあります。医療の世界は資格の世界、というイメージがありますよね。病院では、医師、看護師、臨床工学技士と、ほとんどの人が国家資格を持って働いています。

でも、大丈夫ですよ。医療機器メーカーの仕事の多くは、資格が無くても始められます。

ただし、1つだけ知っておいてほしいことがあります。医療機器メーカーには、「法律で、会社が置かなければならないと決まっている責任者」がいます。そして、その責任者になるための要件は、試験に合格することよりも、学んできた分野と実務経験の年数で決まっているのです。

この記事では、医療機器メーカーの資格を2つに分けて整理します。1つは、法律で置くことが決まっている責任者の要件。もう1つは、転職で評価されやすい資格とスキルです。そのうえで、資格が無くても入れる範囲はどこまでか、取るか迷ったときにどう考えればよいかを、順番にお話しします。

まず全体像:医療機器メーカーの資格は2種類に分かれる

資格の話で迷子にならないために、最初に地図を広げておきましょう。

種類1:会社が「置かなければならない」責任者

医療機器は、医薬品医療機器等法(いわゆる薬機法)で、作ること、売ること、修理することのそれぞれに国の許可や登録が必要です。そして、許可や登録を受けた会社は、決められた要件を満たす責任者を置かなければなりません。

代表的なのは、次の4つです。

・医療機器等総括製造販売責任者:製品を市場に出す会社(製造販売業者)で、品質と市販後の安全管理を統括する人 ・医療機器責任技術者:製品を作る製造所ごとに置き、製造の管理を統括する人 ・医療機器修理責任技術者:医療機器を修理する事業所に置く人 ・高度管理医療機器等営業所管理者:体への影響が大きい医療機器を販売・貸与する営業所に置く人

ここで大切なのは、これらは「個人が趣味や自己研鑽で取る資格」というより、「会社がその人を責任者として置く」ための要件だという点です。要件を満たしていても、会社に置かれなければ役割にはなりません。

種類2:転職や仕事で評価される資格

もう1つは、応募の条件や、仕事の中で評価の材料になる資格です。

・臨床工学技士、看護師、薬剤師などの医療系の国家資格 ・日本医療機器学会が認定する医療機器情報コミュニケータ(MDIC) ・普通自動車の運転免許 ・英語の検定 ・品質マネジメントの規格に関する研修、設計ソフトやプログラミングのスキル

こちらは、持っていると有利になる場面がありますが、多くの職種では「必須」ではありません。

この2つを分けて考えるだけで、「何を取ればいいのか分からない」という不安は、ぐっと小さくなります。

資格が無くても入れる範囲はどこまでか

では、具体的に、資格が無くても入れる仕事はどこまでなのでしょう。職種ごとに見ていきます。

営業職:運転免許があれば、応募できる求人が多い

医療機器メーカーの営業職の求人で、応募条件としてよく書かれているのは「普通自動車の運転免許」です。病院を営業車で回る会社が多いためです。

医療系の資格は、ほとんどの営業職の求人で必須ではありません。入社後に、製品の知識、解剖や疾患の基礎、関係する法律や業界のルールを研修で学びます。

クリニカルスペシャリスト:資格は強みだが、必須とは限らない

手術や検査の場で機器の使い方を支えるクリニカルスペシャリストは、看護師や臨床工学技士の経験者が歓迎されやすい職種です。病院の中で医療チームと話すため、医療の言葉が分かることは大きな強みになります。

ただ、求人を見ると「医療従事者としての経験があれば尚可」と、歓迎条件にとどめている会社も少なくありません。資格よりも、現場で見てきた経験を、機器の使い方の説明にどう活かせるかが見られます。

サービスエンジニア:電気や機械の経験が先

病院の機器を点検・修理するサービスエンジニアは、電気や機械、設備の保守の経験が重視されます。資格が必須になっていない求人も多くあります。

入社後に修理の実務を積むと、後で触れる修理責任技術者の要件につながっていきます。

品質保証・薬事・安全管理:経験と、学んできた分野

品質保証や薬事の職種は、資格よりも、他の業界での品質管理の経験や、書類を正確に扱う経験が評価されます。未経験から入る場合は、アシスタントの立場から始めることが多いです。

ここで効いてくるのが、大学や高校で何を学んできたかです。後で詳しくお話ししますが、責任者の要件には「物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学又は歯学」に関する専門の課程を修了したかどうかが関わってきます。

開発職:学歴とスキルが中心

開発職は、機械、電気、ソフトウェアなどの専門知識と、設計の経験が中心です。設計ソフトの操作やプログラミングのスキルは、資格の有無より、実際に何を作ってきたかで評価されます。

マーケティング・学術:知識は入社後に積み上げる

製品の販促資料を作ったり、学会での展示を企画したり、医療従事者向けの勉強会を運営したりするマーケティングや学術の仕事も、資格が必須になっていることはあまりありません。

求められるのは、医学的な内容を正確に読み取る力と、それを分かりやすく伝える力です。論文や添付文書を読み、誤解を招く表現がないかを確かめながら資料を作ります。医療機器の広告には法律上のルールがあるため、社内の薬事部門と何度もやり取りしながら仕上げていくのが、この職場の日常です。

医療系の学部の出身者や、他業界で専門性の高い商材のマーケティングを経験した人が、入社後に製品と疾患の知識を積み上げていく形が多く見られます。

製造・営業事務・コールセンター:資格は不要なことがほとんど

製造の組立や検査、営業事務、利用者向けの問い合わせ窓口などは、資格を求めない求人がほとんどです。手順を守って正確に作業を続けられること、ミスを隠さず報告できることが大切にされます。

資格が「実質的に必要」になる場面

一方で、資格が実質的に必要になる場面もあります。

・病院に勤めて医療機器を操作・管理する臨床工学技士として働く場合(こちらはメーカーではなく病院の仕事です) ・体外診断用医薬品(検査に使う試薬など)を扱う会社の責任者の一部。法令では原則として薬剤師を置くことが求められています ・前の章で触れた、法律で置くことが決まっている責任者のポスト

つまり、「医療機器メーカーに入る」ことに資格はほとんど要りません。資格や要件が効いてくるのは、入ったあとに「責任者の立場に就く」ときです。

法律で置くことが決まっている責任者と、その要件

ここからは、少し細かい話になります。でも、長く医療機器メーカーで働くつもりなら、とても大切な話です。ゆっくり読んでみてください。

医療機器等総括製造販売責任者

製品を市場に出す会社に置かれる、品質と安全管理の統括者です。高度管理医療機器や管理医療機器を扱う場合、医薬品医療機器等法施行規則第114条の49で、次のいずれかに当てはまる人とされています。

・大学等で、物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学又は歯学に関する専門の課程を修了した人 ・高校等でこれらの専門の課程を修了したあと、医薬品、医療機器、再生医療等製品の品質管理または製造販売後安全管理の業務に3年以上従事した人 ・これらの品質管理または製造販売後安全管理の業務に5年以上従事したあと、国の登録を受けた機関が行う講習を修了した人 ・厚生労働大臣が同等以上の知識経験を持つと認めた人

一般医療機器だけを扱う場合は、要件がもう少し緩やかになっています。

医療機器責任技術者

製品を作る製造所ごとに置かれる責任者です。施行規則第114条の52では、同じように、大学等での専門課程の修了、高校等での専門課程の修了後に医療機器の製造に関する業務に3年以上、あるいは製造に関する業務に5年以上従事したあとに登録講習を修了、といった要件が定められています。

設計だけを行う製造所では、会社が設計部門の責任者として指定する人を責任技術者にできる、という定めもあります。

この講習を行っている公益財団法人医療機器センターは、講習の案内の中で次のように説明しています。

また、すでに資格を取得している方や、これまで医療機器の製造に関する業務で従事経験のない方は、勉強のために本講習会をご活用することもできます。 お申し込みの際は、受講区分「研修受講」をお選びください。受講後は、修了証の代わりに、受講証明書を発行します。 出典: 公益財団法人医療機器センター「医療機器製造業責任技術者講習会」

つまり、実務経験が足りない人でも、勉強のために講習を受けることはできる、ということです。ただし、その場合は責任者の要件を満たす修了証ではなく、受講証明書になります。同じページでは、講習後の試験に合格して得た資格は、取り消されない限り生涯有効で更新制度はない、とも案内されています。

医療機器修理責任技術者

医療機器を修理する事業所に置かれる責任者です。施行規則第188条では、医療機器の修理に関する業務に3年以上従事したあとに基礎講習を修了した人、とされています。特に保守管理が重要な医療機器(特定保守管理医療機器)の修理を行う場合は、基礎講習に加えて専門講習の修了も必要です。

サービスエンジニアとして修理の実務を積むと、この要件に近づいていきます。

高度管理医療機器等営業所管理者

体への影響が大きい医療機器を販売・貸与する営業所に置かれる管理者です。施行規則第162条では、高度管理医療機器等の販売等に関する業務に3年以上従事したあとに基礎講習を修了した人、とされています。

さらに、第168条では、会社はこの管理者に、届出を行った機関の研修を毎年度受講させなければならないと定められています。つまり、一度要件を満たして終わりではなく、学び続けることが前提の役割です。

要件から見えてくること

こうして並べてみると、1つの共通点が見えてきます。

どの責任者も、「実務経験の年数」が中心にあるということです。そして、理系の専門課程を修了しているかどうかで、必要な年数が変わります。

文系の学部を出た人でも、道が閉ざされているわけではありません。品質管理や安全管理の業務に5年以上従事し、講習を修了するという道があります。焦らなくて大丈夫です。

※ここで紹介した要件は法令の条文の要点です。実際に責任者になれるかどうかは、従事した業務の内容やその証明の仕方にもよるので、勤務先の薬事部門や、講習の実施機関に確認してください。

職場の中で、責任者の要件はどう使われているか

要件の話だけだと、少し遠い世界のことに感じるかもしれません。ここでは、医療機器メーカーの職場の中で、責任者がどんな場面で役割を果たしているのかを見てみましょう。自分が数年後にどの立場にいたいかを考える手がかりになります。

製造所:品質に問題が出たときに、止める人

製造所の責任技術者の役割は、施行規則第114条の53で、製造管理と品質管理の業務を統括し、品質不良など製品の品質に重大な影響が及ぶおそれがある場合には、所要の措置が速やかに取られているかを確認し、必要に応じて改善を指示することなどと定められています。

現場の感覚でいうと、ふだんは作業の記録や検査の結果が上がってくるのを確認し、何か異常があったときに「このロットは出荷を止める」「原因を調べてから再開する」と判断を下す人です。製造の班長や作業者が困ったときに、最後に相談が集まる場所でもあります。

修理の事業所:記録を守る人

修理責任技術者は、修理と試験に関する記録を作成し、原則として3年間保管することが施行規則第190条で求められています。サービスエンジニアが病院で行った修理の内容が、あとから誰が見ても分かる形で残っているか。それを管理するのが、この役割です。

サービスエンジニアとして現場を回る日々から、記録と人を管理する立場に移っていく。修理の分野での、1つのキャリアの形です。

営業所:苦情や回収のときに、原因を調べる人

高度管理医療機器等営業所管理者は、施行規則で、販売した医療機器の品質などについて苦情があったときに原因を究明させる役割や、回収を行う場合の対応などを担うとされています。

営業所の中では、営業担当が病院から受けた「機器の調子がおかしい」という声を、個人の対応で終わらせず、会社としての対応につなげる要の位置にいます。

小さな会社ほど、要件を満たす人が貴重になる

大手のメーカーでは、要件を満たす人が社内に複数いて、異動や退職があっても代わりがいます。一方、中堅や小規模のメーカーでは、1人の責任者が複数の役割を兼ねていることもあり、その人が退職すると、会社は急いで要件を満たす人を探さなければなりません。

これは、働く側から見ると、要件を満たす経験を積んだ人が、小さな会社ほど頼りにされるということでもあります。求人票に「総括製造販売責任者の要件を満たす方歓迎」と書かれているのは、そうした事情があるからです。

転職で評価されやすい資格とスキル

次に、応募の段階や、入社後の仕事で評価されやすい資格とスキルを見ていきましょう。

臨床工学技士

臨床工学技士は、生命維持管理装置の操作や保守点検を行う国家資格です。病院で透析装置や人工心肺、人工呼吸器などを扱ってきた経験は、そうした機器を作るメーカーの営業、クリニカルスペシャリスト、サービスエンジニア、製品トレーニングの担当などで評価されます。

「病院の臨床工学技士が、どこで困るのか」を知っていることは、メーカーにとって大きな価値です。

看護師

看護師の経験は、手術で使う機器や、病棟で使う機器を扱うメーカーで活きます。クリニカルスペシャリストや、医療従事者向けの教育担当として迎えられることがあります。病院で働く看護師の収入の水準は看護師の年収・単価相場にまとまっているので、メーカーの求人の条件と比べるときの目安にしてください。

薬剤師

医療機器そのものの責任者に薬剤師の資格は必要ありませんが、検査に使う試薬などの体外診断用医薬品を扱うメーカーでは、薬剤師が責任者として求められる場面があります。医薬品と医療機器の両方を扱う会社では、薬事部門で重宝されることもあります。薬剤師の報酬の水準は薬剤師の年収・単価相場で確認できます。

医療機器情報コミュニケータ(MDIC)

日本医療機器学会が認定する資格です。学会の案内では、不具合情報や適正な使用、保守管理に必要な知識などを、製造販売業者や販売・修理業者と、病院の医療安全の担当者や医師、看護師、臨床工学技士などの利用者との間で共有し、患者の安全に貢献する担当者を育てることがねらいとされています。認定セミナーと検定試験があり、更新のためのポイントの制度もあります。

メーカーや販売業者の側で働く人も想定された制度なので、未経験からメーカーの営業職を目指す人が、業界の基礎を体系的に学ぶ手段として考えることもできます。ただ、応募の必須条件になっている求人は多くありません。入社前に取るか、入社後に会社の支援を受けて取るかは、応募先の方針を確かめてから決めても遅くありません。

医療事務の資格や、病院の事務の経験

病院の事務の流れや、医療保険の仕組みを知っていることは、メーカーの営業事務やマーケティングの仕事で役に立つことがあります。病院が機器を購入するときの手続きや、保険の点数との関係を理解していると、営業担当との会話がスムーズになります。医療事務の資格の内容は医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)で確認できます。

普通自動車の運転免許と英語

営業職やサービスエンジニアでは、運転免許が応募条件になっていることが多いです。ペーパードライバーの場合は、入社前に練習しておくと安心です。

外資系メーカーでは、英語の文書を読む力が求められます。検定のスコアは目安になりますが、面接では「どんな英語の文書を、どのくらいの頻度で読んできたか」を具体的に聞かれることが多いです。

品質マネジメントの規格に関する研修

品質保証を目指す人がよく検討するのが、医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 13485や、その内部監査に関する研修です。これらは国家資格ではなく、民間の研修機関が行う講座の修了という形になります。

国のQMS省令は、この国際規格と整合する形で作られているため、規格の考え方を知っていると、医療機器メーカーの品質保証の仕事の全体像がつかみやすくなります。他業界でISO 9001の内部監査を経験した人は、その経験と組み合わせて伝えると、未経験からでも話が通じやすくなります。

ただし、研修の修了証そのものより、「規格の要求を、自分の職場の手順にどう落とし込んだか」を話せるかどうかが、面接では見られます。

資格より大切なスキル

最後に、資格ではないけれど、どの職種でも評価されるスキルを挙げておきます。

・決められた手順に沿って、正確に記録を残す力 ・ミスや異変に気づいたとき、すぐに報告する力 ・専門職の人と、落ち着いて対等に話す力

この3つは、医療機器メーカーの面接で必ずと言っていいほど確かめられます。これまでの仕事の中で、この力を使った場面を思い出して、言葉にしておいてください。

取るか迷ったときの考え方と、手順

「結局、私は何か資格を取ったほうがいいの?」。そう迷ったときの考え方を、手順にしてお伝えします。

手順1:目指す職種を1つに絞る

まず、医療機器メーカーの中で、どの職種を目指すのかを決めます。営業、サービスエンジニア、品質保証、薬事、開発、事務。職種によって、必要なものがまったく違うからです。

手順2:求人票を10件集めて、「必須」と「歓迎」を数える

目指す職種の求人票を10件ほど集めて、応募条件に書かれている資格を、「必須」と「歓迎」に分けて数えてみてください。

多くの場合、「必須」は運転免許や学歴、実務経験で、資格はほとんど「歓迎」にとどまっていることが分かります。10件中7件以上で必須になっている資格があれば、それは取る価値が高い資格です。

手順3:実務経験が効く資格は、入社後に回す

責任者の要件のように、実務経験の年数が前提になっているものは、入社前に準備しようがありません。まずは入社して、経験を積むことが先です。

入社後に、会社が講習の費用を負担してくれることもあります。面接の逆質問で「将来、責任者の要件を満たすための講習を受ける機会はありますか」と聞いてみるのもよいでしょう。

手順4:無料で使える情報源で、基礎を固める

資格を取る前に、無料で使える情報源で業界の基礎を学んでおくことはできます。

・e-Gov法令検索:医薬品医療機器等法や施行規則の条文を読めます ・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療機器の添付文書等情報検索:製品の使い方や注意事項が分かります ・厚生労働省のウェブサイト:医療機器の制度に関する資料が公開されています

条文を全部読む必要はありません。応募先の主力製品の添付文書を1つ読んでみるだけでも、面接で話せることが増えます。

手順5:費用と時間を、生活と照らし合わせる

資格の勉強には、お金と時間がかかります。今の仕事や家庭の状況と照らし合わせて、無理のない計画を立ててください。資格の勉強で疲れ切ってしまい、肝心の転職活動に力が残らない、というのは本末転倒です。

手順6:入社したら、自分の業務の記録を残しておく

責任者の要件で「業務に3年以上従事した」「5年以上従事した」と言うとき、その業務が品質管理や製造販売後安全管理、製造、修理、販売のどれに当たるのかは、実際に担当した仕事の中身で判断されます。

転職を重ねる人ほど、あとから「前の会社で何年、どんな業務をしていたか」を説明する場面が出てきます。そのときに役立つのが、自分で残しておいた記録です。所属部署、担当した業務、期間、関わった手順書や記録の種類を、年に一度でいいので書き留めておいてください。

会社の人事や薬事部門に、在籍期間と業務内容の証明を依頼できる場合もあります。退職するときに、その手続きがあるかを確かめておくと、将来の自分を助けることになります。

資格より先に見られていること

最後に、少し気持ちの話をさせてください。

資格を集めてから応募しようとしていた方の話

以前、こんなご相談がありました。事務職から医療機器メーカーの営業事務に移りたいという方で、「医療の知識がないと相手にされないと思うので、資格を3つ取ってから応募します」とおっしゃっていました。

一緒に求人票を見てみると、その方が取ろうとしていた資格は、どの求人でも必須にはなっていませんでした。代わりに多く書かれていたのは、「受発注の経験」「正確なデータ入力」「電話対応の経験」でした。どれも、その方がすでに持っていた経験です。

その方は、資格の勉強をいったん脇に置いて応募し、入社してから業界の勉強を始めました。「資格を取るまで待っていたら、1年は遅れていた」と話してくれました。

資格は、あなたの価値を証明する方法の1つにすぎません。これまでの経験も、立派な証明です。

年収と資格の関係

資格を取れば年収が上がるのか、という質問もよく受けます。会社によっては、責任者の立場や特定の資格に手当を設けていることがあります。ただ、医療機器メーカーの年収を大きく左右するのは、資格そのものよりも、職種、担当する製品、役職、そして業績に応じた賞与です。

責任者の立場に就けば、その責任の重さに応じた処遇になることが多いですが、それは資格を取ったからではなく、経験を積んで信頼された結果です。資格は、その道のりを少し支えてくれるもの、と考えておくと、焦らずに済みます。

迷ったら、誰かと一緒に整理する

資格を取るべきか、今の経験で応募すべきか。一人で考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまうことがあります。そんなときは、キャリアの専門家と一緒に整理するのも1つの方法です。キャリアコンサルタントは、あなたの経験を棚卸しして、次に何をすればよいかを一緒に考える専門家です。どんな資格なのかはキャリアコンサルタントで確認できます。

運営者の視点から見た、資格と仕事の関係

在宅ワークやフリーランスの市場を20年近く見てきた立場から言えば、医療機器の分野で長く仕事を続けている人は、資格の数よりも、「規制の言葉が分かり、記録を正確に残せる人」として信頼を積み上げてきた人が多い印象です。

医療機器メーカーで品質保証や薬事の経験を積んだあとに、書類づくりの手伝い、取扱説明書の翻訳、社内教育の資料作成などを個人として請け負う人もいます。発注する側から見ると、制度の説明をしなくても話が通じる相手は、とても頼みやすいのです。そうした関係は、仲介を通さず直接つながれる場でこそ育ちやすく、同じ予算でも依頼する側はより多く頼め、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の直接取引は、経験そのものを仕事に変えるための、1つの選択肢です。

医療機器メーカーに入るために、資格はほとんど要りません。資格や要件が意味を持つのは、入ったあとに経験を積み、責任ある立場を目指すときです。まずは、あなたが今持っている経験を、医療機器メーカーの仕事の言葉に置き換えてみてください。

大丈夫。あなたの経験は、思っているよりずっと、この業界で役に立ちます。

よくある質問

Q. 医療機器メーカーに転職するのに資格は必要ですか?

営業職、営業事務、製造、コールセンターなど多くの職種は、医療系の資格が無くても応募できます。営業職やサービスエンジニアでは普通自動車の運転免許が条件になっていることが多いです。資格や要件が効いてくるのは、入社後に総括製造販売責任者や責任技術者などの責任者の立場に就くときで、その中心は実務経験の年数です。

Q. 医療機器の責任技術者になるにはどうすればいいですか?

医薬品医療機器等法施行規則では、大学等で工学や化学などの専門課程を修了した人、高校等で専門課程を修了したあと医療機器の製造に関する業務に3年以上従事した人、製造に関する業務に5年以上従事したあと登録講習を修了した人などが要件とされています。まずは製造所で実務経験を積み、勤務先の薬事部門に要件の確認をするのが近道です。

Q. 文系出身でも医療機器メーカーの品質保証や薬事の責任者を目指せますか?

目指せます。総括製造販売責任者の要件には、理系の専門課程の修了のほかに、品質管理または製造販売後安全管理の業務に5年以上従事したあと、国の登録を受けた機関の講習を修了するという道があります。まずはアシスタントの立場から実務を積み、従事した業務の内容を記録しておくことが大切です。

Q. 医療機器情報コミュニケータ(MDIC)は転職で有利になりますか?

MDICは日本医療機器学会が認定する資格で、医療機器の安全な使い方に関する知識を体系的に学べます。業界の基礎を学ぶ手段として役立ちますが、応募の必須条件になっている求人は多くありません。応募先の求人票で必須か歓迎かを確かめ、入社前に取るか、入社後に会社の支援を受けて取るかを決めるのがおすすめです。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月21日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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