イラスト系の資格は仕事に役立つか|在宅のイラストの依頼で見られる点


この記事のポイント
- ✓イラスト系の資格は在宅のイラストの仕事に役立つのかを
- ✓Illustrator・Photoshopクリエイター能力認定試験
- ✓色彩検定の公式の情報で整理します
イラストを仕事にしたいと考えたとき、何か資格を取っておいたほうがよいのか、という疑問は多くの人が通る道です。描くことは好きでも、自分の力を客観的に示す材料がないと、依頼を受けられるのか不安になります。イラスト系の資格を調べると、ソフトの操作を問う試験、CGの知識を問う検定、色の知識を問う検定と、性格の違うものが並んでいて、どれが役に立つのかが分かりにくいのも悩みどころです。
結論から書くと、イラストレーターとして仕事をするために必ず必要な資格はありません。在宅のイラストの依頼で、依頼する側が最初に見るのは、資格よりもポートフォリオ(これまでの作品をまとめたもの)です。ただし、イラスト系の資格がまったく役に立たないわけではありません。Illustratorクリエイター能力認定試験やPhotoshopクリエイター能力認定試験のように、ソフトを指示どおりに使いこなせることを示す資格は、データの納品の形式が決まっている仕事で安心材料になります。色彩検定やCGクリエイター検定は、作品の説明や提案の場面で知識の裏付けになります。この記事では、各試験の公式の情報(2026年10月7日時点)をもとに、イラスト系の資格の中身と、仕事での生かし方を整理します。
数字で見るイラスト系の資格の位置づけ
最初に、イラスト系の資格がどのくらい受けられているのかを数字で見てみます。
Illustratorクリエイター能力認定試験を実施するサーティファイの公式サイトによると、この試験の累計の受験者数は120,897人(2026年3月31日時点)で、2025年度の平均の合格率は72.1%です。同じくPhotoshopクリエイター能力認定試験は、累計の受験者数が114,271人、2025年度の平均の合格率は73.0%と公表されています。
合格率が7割を超えているのは、意外に思う人もいるかもしれません。これは、この試験が「ふるい落とすための試験」ではなく、「ソフトを一定の水準で使えることを確かめる試験」として設計されていることを表しています。言い換えると、合格したこと自体で大きな差はつきにくく、どの級を持っているか、そのうえでどんな作品を作れるかが問われる、ということです。
イラストの仕事に資格が必須ではない点について、デザインのスクールを運営するデジタルハリウッドの記事は次のように書いています。
「え?」と思われるかもしれませんが、イラストレーターになるためには「必ず必要な資格」というものはありません。実際にイラストを描けるスキルが重要視されるため、求人に応募する際も応募条件に必須資格が入っている事はほぼありません。 出典: school.dhw.co.jp
この記事はスクールを運営する立場から書かれていますが、資格が必須でないという点は、イラストの仕事の実態と合っています。弁護士や看護師のように、資格がないとその仕事ができない「業務独占」の資格は、イラストの分野にはありません。
ここで考えたいのは、「必須ではない」ことと「役に立たない」ことは別だという点です。データ分析の世界でも、統計の資格がなくても分析の仕事はできますが、資格を持っていると「この人は基本を押さえている」と相手が判断する材料になります。イラスト系の資格も同じで、作品の代わりにはならないものの、作品を補う材料にはなります。
イラスト系の資格は3つの種類に分けられる
イラスト系の資格として名前が挙がるものは、何を証明するかで3つに分けると整理しやすくなります。
| 種類 | 代表的な資格 | 証明するもの |
|---|---|---|
| ソフトの操作 | Illustratorクリエイター能力認定試験、Photoshopクリエイター能力認定試験、アドビ認定プロフェッショナル | 制作ソフトを指示どおりに、または目的に合わせて使いこなせること |
| CGと映像の知識 | CGクリエイター検定(CG-ARTS) | 2次元CGと3次元CG、デザイン、映像制作の知識 |
| 色の知識 | 色彩検定 | 配色、色の心理、色のユニバーサルデザインなどの知識 |
ソフトの操作の資格は、実技で作品を作らせる試験が多く、仕事の現場に近い力を測ります。CGと色の検定は、筆記(マークシートなど)で知識を問う試験で、作品を作る力そのものではなく、作品の裏にある理屈を理解しているかを測ります。
どの種類が自分に合うかは、どんな仕事を受けたいかで変わります。印刷物やWebの素材の制作を受けるなら、ソフトの操作の資格。ゲームや映像のCGに関わりたいならCGの検定。配色の提案や、商品のデザインの相談まで受けたいなら色彩検定、という分け方が基本になります。
Illustrator・Photoshopクリエイター能力認定試験の中身
サーティファイが実施するIllustratorクリエイター能力認定試験とPhotoshopクリエイター能力認定試験は、イラスト系の資格の中でも、仕事の現場に近い形で出題される試験です。
公式サイトによると、Illustratorクリエイター能力認定試験は、Illustratorを使ったDTP(印刷物のデータ作り)のファイルやWebデザインの部品の作成、問題の指示に従って1つの作品を作り上げる表現力などを認定する試験です。Photoshopクリエイター能力認定試験は、画像編集の技術に関する知識を持ち、Photoshopを使って提示されたテーマと素材から仕様に従ってコンテンツを作る能力を認定します。
2つの試験の概要は次のとおりで、受験料と試験時間は同じです。
| 項目 | エキスパート | スタンダード |
|---|---|---|
| 認定の基準 | クライアントのニーズに対応した創造性の高いコンテンツ制作ができる | 指示どおりの作業を正確かつ合理的に行うことができる |
| 試験時間 | 第1部50分、第2部90分 | 第1部40分、第2部90分 |
| 受験料(税込) | 9,100円 | 8,100円 |
| 合格の基準 | 知識問題・実技問題の得点率65%以上、かつ実践問題の得点率70%以上 | 実技問題の得点率65%以上、かつ実践問題の得点率70%以上 |
受験資格に学歴や年齢の制限はありません。受け方は2つあり、近くのパソコンスクールなどの認定会場で受ける「随時試験」と、サーティファイが運営する全国一斉の「公開試験」です。公開試験はリモートWebテストという在宅で受ける形式で、Illustratorの公開試験は2026年7月5日に行われ、次は2027年1月24日(申込は2026年11月10日から2027年1月10日まで)と案内されています。スタンダードとエキスパートは同じ日に両方受けることもでき、合否は試験日から1か月後をめどに通知されます。
公式サイトでは、Photoshopの試験について「Illustratorクリエイター能力認定試験と同時に受験される方が多い試験」と紹介されています。イラストの仕事では、線画や図形はIllustrator、塗りや写真の加工はPhotoshopと、2つのソフトを行き来することが多いため、両方を受ける人が多いのは自然な流れです。
なお、サーティファイは2026年9月18日に「コンテンツガイドライン」と「生成AI利用ポリシー/受験規約」を策定したと告知しています。画像を作るAIが広まる中で、試験での扱いにも決まりが設けられつつあります。受ける前に最新の規約を確かめておくと安心です。
CGクリエイター検定と色彩検定の中身
CGクリエイター検定
CGクリエイター検定は、公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS)が実施する5つの検定の1つです。公式サイトでは、デザインや2次元CGの基礎から、構図やカメラワークといった映像制作の基本、モデリングやアニメーションなどの3次元CGの制作の手法まで、表現に必要な多様な知識を測る検定と説明されています。
| 項目 | ベーシック | エキスパート |
|---|---|---|
| 測るもの | 2次元CGと3次元CG、デザインの基礎的な理解と、静止画の制作に知識を使う力 | 3次元CGと映像制作の専門的な理解と、3次元CGの映像制作に知識を応用する力 |
| 検定料(税込) | 6,050円 | 7,150円 |
2026年は前期が7月12日、後期が11月29日(申込は9月1日から10月23日まで)に行われます。誰でも受けられ、マークシート形式で大問10問(約40設問)が出題されます。過去2回分の試験問題と解答が公式サイトで公開されているので、どのような知識が問われるかを事前に確かめられます。
想定される職種として、CGデザイナー、ゲームクリエイター、CGアニメーター、グラフィックデザイナーなどが挙げられています。ゲームや映像の分野でイラストを描きたい人にとっては、作品づくりの裏にある理屈を体系立てて学べる検定です。
色彩検定
色彩検定は、公益社団法人色彩検定協会が実施する、色の知識を問う検定です。級と検定料は次のとおりです。
| 級 | 検定料 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 3級 | 7,000円 | 色の三属性、色の心理効果、色彩調和、配色イメージなど色彩の基本 |
| 2級 | 10,000円 | 色のユニバーサルデザイン、配色技法、ビジュアルデザインなど |
| 1級 | 15,000円 | 色彩調和論、測色、色彩とビジネスなど(1次と2次の試験) |
| UC級 | 6,000円 | 色のユニバーサルデザイン(色の見え方の違いに配慮した配色) |
受検の資格に制限はなく、誰でも、何級からでも受けられます。3級と2級とUC級は夏期(6月)と冬期(11月)の年2回、1級は冬期のみの実施です。2026年度の冬期検定は11月8日に行われ、申込は10月1日で締め切られています。
イラストの仕事で色彩検定が生きるのは、配色の理由を言葉で説明する場面です。「なぜこの色にしたのか」と聞かれたとき、感覚ではなく、色の心理効果や配色の理論で説明できると、依頼する側は安心して任せられます。UC級で学ぶ色のユニバーサルデザインは、色の見え方が人によって違うことに配慮した配色の考え方で、教材や案内図、アプリの画面のイラストなど、多くの人が見る絵を描くときに役立ちます。
在宅のイラストの依頼で、依頼する側が見ている点
ここからは、在宅でイラストの仕事を受ける場面に絞って、依頼する側が実際に何を見ているかを整理します。
ポートフォリオの絵柄と幅
最初に見られるのは、ポートフォリオです。依頼する側は、自分が頼みたい絵柄に近い作品があるかを確かめます。かわいい系のキャラクター、ビジネス資料向けのシンプルな図解、リアルな背景など、求める絵柄ははっきりしていることが多いので、作品の数より「頼みたい絵柄の作品があるか」が決め手になります。
納品のデータの扱い
次に見られるのが、納品するデータの扱いです。印刷物に使うならCMYK(印刷向けの色の形式)で、指定のサイズと解像度で書き出せるか。Webに使うなら、背景を透明にした画像や、拡大しても荒れないベクター形式(Illustratorで作る、線や面を数式で描く形式)で渡せるか。こうした形式の指定に正確に応えられるかは、依頼する側にとって作品の質と同じくらい大切です。Illustrator・Photoshopクリエイター能力認定試験が「作業指示書に基づいた制作ができる」ことを認定基準に入れているのは、まさにこの部分です。
やりとりの速さと分かりやすさ
在宅の仕事では、顔を合わせずに文章だけでやりとりすることがほとんどです。ラフ(下書き)を出すタイミング、修正の回数、納期の確認を、分かりやすい文章で伝えられるかが見られます。質問に対する返事が早く、内容が整理されている人は、それだけで次の依頼につながりやすくなります。
料金と条件の明確さ
依頼する側は、料金に何が含まれるのかを気にします。修正は何回まで含むのか、著作権の扱い(商用利用の範囲、二次利用の可否)はどうなっているのか、データの形式ごとに料金が変わるのか。これらを最初から書いておくと、依頼する側は比較しやすく、後から食い違いが起きにくくなります。
このように見ていくと、資格が直接効くのは「納品のデータの扱い」と「配色などの説明」の部分で、それ以外は作品とやりとりの力で評価されることが分かります。
資格が評価される場面と、評価されない場面
イラスト系の資格が評価される場面と、そうでない場面を整理します。
評価されやすい場面
・実績がまだ少なく、作品の数で判断してもらえない段階 ・印刷物やWebの素材のように、データの形式や仕様が細かく決まっている仕事 ・企業や制作会社に応募するときに、ソフトの操作の水準を示す材料が欲しい場合 ・配色の提案や、色の見え方に配慮したデザインの相談を受ける仕事 ・ゲームや映像の制作会社で、CGの基礎知識を持っていることを示したい場合
評価されにくい場面
・絵柄やキャラクターの魅力が決め手になる仕事(SNSのアイコン、挿絵、キャラクターデザインなど) ・すでに十分な実績とポートフォリオがある場合 ・資格の名前だけを並べて、作品で裏付けられていない場合
絵柄やキャラクターの魅力が決め手になる仕事では、依頼する側は「この絵が好きかどうか」で選びます。ここで資格の有無が判断を変えることはほとんどありません。こうした仕事を受けたいなら、資格の勉強よりも、得意な絵柄の作品を増やし、SNSなどで見てもらう機会を作るほうに時間を使ったほうが、依頼に結びつきやすくなります。
特に注意したいのは、資格の名前だけを並べてしまうことです。「Illustratorクリエイター能力認定試験エキスパート合格」と書くだけより、「印刷用のCMYKデータとWeb用の透過PNGを、指定どおりに納品できます」と、資格で身につけた力を仕事の言葉で書いたほうが、依頼する側に伝わります。
データ分析の仕事を始めた頃、統計の資格を名刺代わりに出しても反応が薄く、過去の分析の事例を1枚の図にして見せたとたんに相談が増えた、という経験はよく聞く話です。資格は入口の安心材料で、決め手は成果物だという構図は、分野が変わっても同じです。
資格より先に整えておきたい3つの準備
資格を受けるかどうかを決める前に、在宅でイラストの仕事を受けるための土台を整えておくと、資格の効果も生きてきます。
1つ目は、作品を10点ほどにしぼったポートフォリオです。描いた作品をすべて並べるより、受けたい仕事の絵柄に近いものを選んで並べたほうが、依頼する側は判断しやすくなります。作品ごとに、用途の想定(挿絵、アイコン、チラシなど)と、使ったソフト、制作にかかった時間を一言添えておくと、仕事を頼んだときの姿を想像してもらいやすくなります。
2つ目は、料金と条件の表です。1点あたりの料金、修正の回数、納品のデータの形式、納期の目安、商用利用の範囲をあらかじめ決めておくと、問い合わせに素早く答えられます。最初は相場を調べながら決め、受けた仕事の実際の作業時間を記録して、少しずつ見直していくのが現実的です。
3つ目は、作業の記録です。1点の制作にどのくらいの時間がかかったか、修正は何回あったかを記録しておくと、料金の見直しや、受けられる仕事の量の見積もりに使えます。データ分析の考え方でいえば、自分の仕事の「数字」を持っておくことで、感覚ではなく根拠を持って判断できるようになります。
この3つが整っていれば、資格は「さらに安心してもらうための材料」として効いてきます。逆に、ポートフォリオがない状態で資格だけを取っても、依頼にはつながりにくいのが実情です。
資格を取る順番と、学習にかける時間の考え方
イラスト系の資格を取るなら、どの順番で受けるのが効率的かを、目的別に整理します。
印刷物やWebの素材の仕事を受けたい人
- Illustratorクリエイター能力認定試験のスタンダードで、指示どおりにデータを作る力を固める
- Photoshopクリエイター能力認定試験のスタンダードで、画像の加工と書き出しを押さえる
- 慣れてきたらエキスパートに進み、目的に合わせて表現を選ぶ力を示す
公開試験は在宅で受けられ、スタンダードとエキスパートは同じ日に受けることもできます。最初はスタンダードで出題の形に慣れ、次の回でエキスパートに挑む、という受け方が無理のない進め方です。
ゲームや映像のイラストに関わりたい人
- CGクリエイター検定のベーシックで、2次元CGと3次元CG、デザインの基礎を学ぶ
- 作品づくりと並行して、エキスパートで3次元CGと映像制作の知識を深める
配色の提案まで受けたい人
- 色彩検定の3級で色の基本を押さえる
- 2級で配色技法やビジュアルデザインを学ぶ
- 多くの人が見る絵を描くなら、UC級で色のユニバーサルデザインを学ぶ
学習にかける時間の配分も大切です。資格の勉強に時間をかけすぎて、作品を作る時間がなくなっては本末転倒です。目安として、学習の時間の多くは作品づくりに使い、資格の勉強は試験の前の一定の期間に集中させる、という配分が現実的です。資格の勉強で学んだ機能や理論は、すぐに作品で使ってみると身につきやすくなります。
資格の勉強をポートフォリオに変える方法
資格の勉強は、そのまま作品づくりの材料になります。勉強で終わらせずにポートフォリオに変える工夫をすると、資格の効果は何倍にもなります。
Illustratorクリエイター能力認定試験やPhotoshopクリエイター能力認定試験の実践問題は、提示されたテーマと素材から、仕様に従って1つのコンテンツを作る形式です。これは、実際の仕事で依頼を受けて納品するまでの流れとよく似ています。試験の対策で作った練習の作品を、自分のテーマに置き換えて作り直せば、「指示書どおりに作れる」ことを示す作品がポートフォリオに加わります。
色彩検定で学んだ配色の理論は、同じイラストを配色だけ変えて3パターン作り、それぞれの印象の違いを説明する、という見せ方に使えます。依頼する側から見ると、この人は色を感覚だけでなく意図を持って選んでいる、と伝わります。
CGクリエイター検定で学んだ構図やカメラワークの知識は、1枚のイラストでも、視線の流れや奥行きの作り方として生かせます。作品の横に、構図の意図を短い文章で添えておくと、知識を持っていることが自然に伝わります。
データ分析の仕事でも、資格の勉強で使ったデータセットを使って分析の事例を作り、それを実績として見せる人がいます。学んだことを、相手が見て分かる成果物の形に変えるという考え方は、イラストでも同じように効きます。
依頼の文面から、求められている力を読み取る
在宅のイラストの依頼は、募集の文面に、依頼する側が何を重視しているかが表れます。文面を読むときに確かめたい点を整理します。
用途と掲載先
「Webサイトの挿絵」「チラシ」「SNSの投稿」「動画のサムネイル」など、用途が書かれていれば、必要なデータの形式とサイズの見当がつきます。印刷物ならCMYKと解像度、Webなら軽さと透過の扱いが問われます。用途がはっきりしない依頼は、応募の前に質問して確かめると、後の食い違いを防げます。
絵柄の参考
参考の画像や「やわらかいタッチ」「ビジネス向けのシンプルな絵」といった説明があれば、ポートフォリオからそれに近い作品を選んで提示します。絵柄が合わない依頼に無理に応募するより、合う依頼に絞って応募したほうが、選ばれる確率は上がります。
数量と期間
「10点を2週間で」のように数量と期間が書かれていれば、1点あたりにかけられる時間が計算できます。自分の作業の速さと照らし合わせて、無理のない計画が立つかを確かめてから応募することが大切です。
権利の扱い
商用利用の範囲や、著作権を譲渡するかどうかが書かれているかも確かめます。書かれていない場合は、契約の前に必ず確認します。
こうした読み取りができると、資格の有無よりも先に「この人は依頼の意図を理解している」と評価されます。応募の文面に、用途とデータの形式を踏まえた一言を添えるだけでも、他の応募者との差になります。
著作権と生成AIの扱いを確かめておく
イラストの仕事では、作品の権利の扱いを避けて通れません。納品したイラストの著作権を譲渡するのか、利用を許諾するだけなのか、どの範囲で使ってよいのかは、契約によって変わります。ポートフォリオに納品した作品を載せてよいかどうかも、依頼する側の了解が必要になることがあります。契約の前に、これらの点を文書で確かめておくと、後のトラブルを防げます。
もう1つ、最近増えているのが、画像を作るAIの扱いです。AIを使って下絵を作ってよいのか、AIで作った素材を含めてよいのかは、依頼ごとに方針が違います。先に触れたとおり、資格の試験を実施するサーティファイも、2026年9月に生成AIの利用に関する方針を定めています。試験でも仕事でも、AIの扱いの決まりを先に確かめることが、信頼を損なわないための基本になっています。
個別の契約の内容や権利の判断に迷う場合は、弁護士などの専門家や、公的な相談窓口に相談してください。判断を急いで後から食い違いが起きるより、最初に確かめる手間のほうがずっと小さく済みます。
受験にかかる費用を比べる
資格を取るときは、費用も比べておきたいところです。この記事で取り上げた試験の受験料(税込)を並べると次のようになります。
| 試験 | 級 | 受験料 |
|---|---|---|
| Illustratorクリエイター能力認定試験 | スタンダード/エキスパート | 8,100円/9,100円 |
| Photoshopクリエイター能力認定試験 | スタンダード/エキスパート | 8,100円/9,100円 |
| CGクリエイター検定 | ベーシック/エキスパート | 6,050円/7,150円 |
| 色彩検定 | 3級/2級/1級/UC級 | 7,000円/10,000円/15,000円/6,000円 |
たとえば、IllustratorとPhotoshopのスタンダードを両方受けると16,200円、エキスパートを両方受けると18,200円です。色彩検定の3級と2級を受けると17,000円になります。ここに公式テキストや問題集の費用が加わります。
費用をかける前に、無料で使える材料を確かめておくと無駄がありません。サーティファイはサンプル問題を公開していて、CG-ARTSは過去2回分の試験問題と解答を公開しています。まずはこれらを解いてみて、今の力でどの程度できるかを確かめてから、受ける級と準備の期間を決めると、受け直しの費用を抑えられます。
資格の名前を、仕事の言葉に置き換える
資格を取ったら、それをどう見せるかで効果が変わります。ポートフォリオやプロフィールに書くときは、資格の名前に続けて、その資格で身につけた力を仕事の言葉で書き添えるのが効果的です。
| 資格 | プロフィールに書き添える例 |
|---|---|
| Illustratorクリエイター能力認定試験 | 印刷用のデータを、指定のサイズとCMYKで納品できます |
| Photoshopクリエイター能力認定試験 | 写真の切り抜きや合成、Web用の画像の書き出しに対応できます |
| 色彩検定 | 配色の意図を、色の心理効果にもとづいて説明できます |
| 色彩検定UC級 | 色の見え方が違う人にも伝わる配色を提案できます |
| CGクリエイター検定 | 3次元CGの制作の流れを踏まえて、ゲームや映像向けの素材を作れます |
こうした書き方をすると、依頼する側は「この人に頼むと何をしてもらえるのか」が具体的に分かります。資格は、それ自体を見せるものではなく、自分が提供できる価値を説明するための根拠として使うものです。
また、提案書や見積もりの文章を整える力も、在宅の仕事では差になります。文書の基本を体系立てて確かめたい人には、ビジネス文書検定のような資格で、相手に伝わる文書の型を学ぶ方法もあります。
在宅のイラストの仕事を見てきた立場からの観察
在宅のイラストの仕事は、SNSのアイコン、記事の挿絵、資料の図解、商品のパッケージ、アプリの画面の部品まで、依頼の種類が幅広い分野です。AIで画像を作る道具が広まった今、依頼する側の意図をくみ取って仕上げる仕事や、修正に柔軟に応える仕事は、人に頼む理由として残りやすい部分です。
20年にわたってフリーランスや在宅ワークの市場を見てきた立場から言えば、長く続くイラストレーターは、絵の上手さだけでなく、依頼する側の手間を減らす工夫を積み重ねています。ラフの段階で方向性をすり合わせる、納品のデータの形式を最初に確かめる、修正の回数と範囲を明確にする。こうした段取りの良さが「この人に任せると楽」という評価になり、継続の依頼につながります。仲介の手数料が上乗せされない直接の取引で継続の依頼を受けられると、同じ予算でも受け手の手取りが厚くなり、依頼する側もより多くの仕事を頼めるという、双方にとって無理のない関係が生まれます。
ポートフォリオの見せ方は、イラストの仕事でも文章の仕事でも共通する部分が多くあります。Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】では、実績の見せ方と、依頼する側に伝わる構成の考え方を紹介しています。作品の並べ方や説明の付け方は、イラストのポートフォリオにもそのまま応用できます。
イラストを描く力に、文章を書く力や企画の力を組み合わせると、受けられる仕事の幅が広がります。たとえば、記事の挿絵と本文を両方引き受ける、図解と説明文をまとめて作る、といった仕事です。文章の仕事の相場は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。
アプリやWebサービスの画面に使うイラストやアイコンの仕事に関心がある人は、アプリケーション開発のお仕事で、開発の現場でどのような制作物が求められているかを知っておくと、提案の幅が広がります。また、広告やSNSの運用に使う画像の制作は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事の分野とも重なります。イラスト系の資格は、こうした仕事に踏み出すときの安心材料の1つです。資格と作品の両方をそろえて、依頼する側が判断しやすい形で自分の力を示してください。
よくある質問
Q. イラストレーターになるのに資格は必要ですか?
必須の資格はありません。イラストの仕事には、資格がないとできない業務独占の資格はなく、依頼する側が最初に見るのはポートフォリオです。ただし、Illustratorクリエイター能力認定試験のように、ソフトを指示どおりに使えることを示す資格は、データの形式が決まっている仕事や、実績が少ない段階で安心材料になります。
Q. Illustratorクリエイター能力認定試験の難易度はどのくらいですか?
実施するサーティファイの公式サイトでは、2025年度の平均の合格率は72.1%と公表されています。スタンダードは指示どおりに正確に作業できること、エキスパートはクライアントのニーズに対応した創造性の高い制作ができることが認定の基準です。受験料はスタンダード8,100円、エキスパート9,100円(いずれも税込)です。
Q. 色彩検定はイラストの仕事に役立ちますか?
配色の理由を言葉で説明する場面で役立ちます。色彩検定では色の心理効果や配色技法、色のユニバーサルデザインなどを学ぶため、提案の場面で根拠を示しやすくなります。受検資格に制限はなく、何級からでも受けられます。色の基本から学ぶなら3級(検定料7,000円)が入口になります。年2回、夏期と冬期に実施されています(1級は冬期のみ)。
Q. イラスト系の資格は在宅で受験できますか?
Illustrator・Photoshopクリエイター能力認定試験の公開試験は、リモートWebテストという在宅で受ける形式で行われています。近くのパソコンスクールなどの認定会場で受ける随時試験も選べます。色彩検定は全国に設けられた公開会場で受ける形式です。CGクリエイター検定は年2回の実施日が決まっているので、受け方と会場を公式サイトで確かめてから申し込んでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
杉山 リュウ@SOHO編集部
フリーランスデータアナリスト
外資系コンサルでデータ分析を担当後、フリーランスに独立。Python・SQL・BIツールを駆使し、データ分析・BI・統計系の記事を執筆しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







