個人事業主登録方法を分かりやすく解説!税務署に行かずにスマホで完了


この記事のポイント
- ✓個人事業主登録方法(開業届)をスマホで完結させる最新手順を行政書士が分かりやすく解説
- ✓税務署へ行かずに電子申請する方法や
- ✓社会保険の注意点まで網羅
フリーランスとして活動を始める際、最初の一歩となるのが「開業届」の提出です。結論から言うと、現在の個人事業主登録方法はかなり簡略化されており、マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、税務署に足を運ばずにオンラインで手続きできます。紙の書類を印刷し、押印し、平日の昼間に税務署へ持参するという方法だけが選択肢だった時代と比べると、開業のハードルは大きく下がりました。
ただし、開業届は「出せば終わり」の手続きではありません。提出のタイミング、同時に出すべき書類、控えの保管方法、屋号の決め方、事業開始日の考え方、青色申告の選択、健康保険や年金の切り替え、帳簿付けの準備など、実務上の注意点がいくつもあります。ここを曖昧にしたまま登録してしまうと、あとから「青色申告が使えない」「保険料が想定より高い」「事業用口座を作るときに控えが見つからない」といった困りごとにつながります。
個人事業主登録は、会社設立のように法務局で登記をする手続きではありません。税務署に「事業を開始しました」と届け出る税務上の手続きです。そのため、費用は原則としてかからず、資本金も不要で、最短ならその日のうちに完了します。一方で、法人のように社会保険や登記簿で信用を示せるわけではないため、契約書、請求書、帳簿、納税、実績管理を自分で整える必要があります。
本記事では、個人事業主登録の全体像を、オンライン申請を前提にわかりやすく解説します。スマホで完了する具体的な流れだけでなく、青色申告、社会保険、税金、契約実務、開業後に必要な準備まで、実務でつまずきやすいポイントを整理していきます。これから副業を本格化させる方、会社を辞めて独立する方、すでに売上が出ているのに開業届を出していない方は、手続きの意味を理解したうえで進めてください。
2026年のフリーランス市場とデジタル申請の現状
2026年現在、日本国内では副業、兼業、業務委託、フリーランス、ひとり法人など、多様な働き方が広がっています。企業に雇用される働き方だけでなく、自分のスキルを個人で提供し、複数の取引先から収入を得る人も珍しくありません。Web制作、ライティング、動画編集、SNS運用、プログラミング、AI活用支援、オンライン講師、コンサルティングなど、パソコンとインターネットを使って始められる仕事が増えたことも、個人事業主の増加を後押ししています。
この背景には、働き方の変化だけでなく、法制度や行政手続きの整備もあります。2024年には、フリーランスと発注事業者の取引適正化を目的とした法律が施行され、報酬の支払期日、募集情報の的確表示、ハラスメント対策など、個人で働く人を守るルールへの関心が高まりました。制度の詳細や最新情報は、厚生労働省や公正取引委員会の公式情報を確認するとよいでしょう。
行政手続きのデジタル化も急速に進んでいます。国税関係の手続きでは、国税庁やe-Taxを通じた電子申告、電子申請が一般化しつつあります。以前のように、平日の昼間に税務署へ行き、慣れない手書き書類と格闘する必要はかなり減りました。スマホでマイナンバーカードを読み取り、必要事項を入力して送信すれば、開業届や青色申告承認申請書をオンラインで提出できます。
個人事業主登録に関してよくある誤解は、「仕事を始める前に必ず登録が完了していないと売上を受け取れない」というものです。実際には、開業届の提出前に業務委託契約を結んだり、売上が発生したりすること自体はあり得ます。ただし、事業として継続的に収入を得る意思があるなら、開業届を出しておくことで税務処理や信用面が整理しやすくなります。
もう一つ多い誤解は、「開業届を出すと必ず税金が増える」というものです。開業届を出しただけで税金が発生するわけではありません。税金は、売上から必要経費や各種控除を差し引いた所得に対して計算されます。むしろ、開業届と青色申告承認申請書を適切に提出することで、青色申告特別控除や赤字の繰越しなど、節税につながる制度を使える可能性があります。
所得税法上、開業届は事業開始から一定期間内に提出することが求められています。遅れた場合の直接的な罰則は通常ありませんが、提出しないことで不利になる場面はあります。たとえば、青色申告承認申請書には提出期限があり、期限を過ぎるとその年は青色申告を使えない可能性があります。結果として、本来受けられた控除を逃し、納税額が増えることがあります。
副業の方も注意が必要です。会社員のまま副業収入を得ている場合、「まだ本業ではないから開業届は不要」と考える方がいます。しかし、継続的に案件を受け、収益化を目指しているなら、事業所得として扱われる可能性を検討する必要があります。一方で、単発の収入や趣味に近い収入は雑所得と判断されることもあります。判断が難しい場合は、税務署や税理士に確認しましょう。
デジタル申請の普及により、開業届そのものの作業時間は短くなりました。しかし、制度理解まで省略できるわけではありません。事業開始日をいつにするか、屋号をつけるか、納税地を自宅にするか事務所にするか、職業欄に何を書くか、青色申告を選ぶか。これらはあとから変更できるものもありますが、最初に整理しておくと開業後の事務が楽になります。
個人事業主登録(開業届)の具体的な方法とスマホ完結の手順
個人事業主として登録するための正式な書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」と言います。これを納税地を所轄する税務署長に提出することで、税務上、個人事業を開始したことを届け出ます。納税地は通常、自宅住所を選ぶ方が多いですが、事務所や店舗がある場合は別の場所を選択するケースもあります。どこを納税地にするかで提出先の税務署が変わるため、申請前に確認しておきましょう。
開業届には、氏名、生年月日、マイナンバー、住所、職業、屋号、事業の概要、開業日、給与等の支払状況などを記入します。職業欄は「Webデザイナー」「ライター」「システムエンジニア」「動画編集業」「コンサルタント」など、実態に合う表現で構いません。事業の概要は、税務署が業務内容を把握できる程度に具体的に書くのが基本です。たとえば「Webサイト制作、保守運用、広告用バナー制作」「企業向け記事制作、取材、編集業務」などです。
屋号は必須ではありません。個人名だけで事業を行うこともできます。ただし、請求書、Webサイト、名刺、銀行口座、店舗名などで事業名を使いたい場合は、屋号を設定すると管理しやすくなります。屋号を決める際は、他社の商標や有名ブランドに似た名称を避け、長く使える名前にすることが大切です。屋号を空欄にして提出しても、あとから使い始めることは可能です。
スマホで電子申請する3ステップ
- マイナンバーカードの準備: 電子署名のために必要です。署名用電子証明書の暗証番号(英数字6桁から16桁)を控えておきましょう。利用者証明用電子証明書の4桁暗証番号も求められることがあります。暗証番号を複数回間違えるとロックされ、自治体窓口で解除が必要になるため注意してください。
- 開業支援ツールの選択: e-Taxソフトを直接使う方法もありますが、初めての方には入力項目がわかりにくいことがあります。freee開業やマネーフォワード開業のような民間ツールを使うと、質問に答える形式で開業届や青色申告承認申請書を作成できます。最終的にはe-Tax連携や電子申請機能を使って提出する流れになります。
- マイナポータル連携と送信: スマホのNFC機能、つまりマイナンバーカード読み取り機能を使い、マイナポータルやe-Taxと連携してデータを税務署に送信します。受信通知が届いたら、受付番号や送信結果を必ず保存してください。紙の受付印に代わる大切な控えになります。
これだけで手続き自体は完了します。税務署までの往復時間や待ち時間を考えると、オンライン申請のメリットは非常に大きいです。特に会社員の副業や、平日に時間を取りにくい方にとっては、スマホで完結できることが大きな助けになります。
ただし、スマホ申請でつまずきやすいポイントもあります。まず、マイナンバーカードの読み取り位置です。スマホの機種によって読み取り位置が違うため、カードをかざしても反応しない場合があります。次に、ブラウザやアプリの切り替えです。マイナポータル、e-Tax、開業支援ツールの連携中に画面を閉じると、最初からやり直しになることがあります。申請前にスマホの充電を十分にし、通信環境の安定した場所で作業しましょう。
開業届を提出したら、控えの保存が非常に重要です。銀行で屋号付き口座を作るとき、補助金申請をするとき、賃貸オフィスやレンタルオフィスを契約するとき、取引先から事業実態の確認を求められたときに、開業届の控えや受信通知が必要になることがあります。PDFとして保存し、クラウドストレージとローカルの両方に保管しておくと安心です。
紙で提出する場合は、開業届を2部用意し、1部を提出用、1部を控え用にします。税務署の窓口で控えに受付印を押してもらうか、郵送の場合は返信用封筒を同封します。スマホ申請が不安な方は紙提出でも問題ありませんが、控えの取得を忘れないようにしてください。
開業届とセットで出すべき「青色申告承認申請書」の重要性
個人事業主登録をする際、絶対に忘れてはいけないのが「所得税の青色申告承認申請書」の同時提出です。開業届は事業開始の届出ですが、青色申告承認申請書は「青色申告をしたいです」と税務署に申請する書類です。開業届だけを出しても、自動的に青色申告になるわけではありません。ここを勘違いしている方は少なくありません。
青色申告を使うには、原則として期限内に承認申請書を提出する必要があります。新たに開業した場合は、開業日から2か月以内が一つの目安です。すでに事業を行っている方がその年から青色申告をしたい場合は、通常その年の3月15日までに提出する必要があります。期限は状況によって変わることがあるため、必ず国税庁の最新情報を確認してください。
青色申告の絶大なメリット
青色申告には、主に以下の3つの特典があります。
- 青色申告特別控除: 一定の要件を満たすと最大65万円を所得から差し引けます。
- 純損失の繰越し: 赤字を最大3年間繰り越し、翌年以降の利益と相殺できます。
- 青色事業専従者給与: 一定の要件を満たせば、同居家族への給与を必要経費にできます。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
青色申告特別控除の効果は、金額で見ると理解しやすくなります。たとえば、売上300万円、経費100万円で所得が200万円の個人事業主がいるとします。青色申告の要件を満たして65万円控除を受けられれば、課税対象となる所得を大きく圧縮できます。所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料の算定にも影響する可能性があるため、単純な所得税額以上に効果を感じることがあります。
ただし、65万円控除を受けるには、複式簿記での帳簿付け、貸借対照表と損益計算書の作成、期限内申告、電子申告または電子帳簿保存などの要件があります。帳簿付けに自信がない方でも、会計ソフトを使えば日々の入力はかなり簡単になります。売上、経費、口座、クレジットカードを連携し、月1回は内容を確認する習慣を作ると、確定申告前に慌てずに済みます。
青色申告のもう一つの強みは、赤字の繰越しです。開業初年度は、パソコン、ソフトウェア、机、椅子、名刺、Webサイト、広告費、研修費などで支出が先行し、赤字になることがあります。白色申告では赤字を翌年以降に持ち越せないのが基本ですが、青色申告なら一定の条件で翌年以降の黒字と相殺できます。創業期の資金負担を考えると、これは大きな安心材料です。
青色事業専従者給与も、家族に実際に事業を手伝ってもらう場合には重要です。たとえば、配偶者が経理、受注管理、発送、顧客対応を継続的に担当している場合、要件を満たせば給与を必要経費にできます。ただし、形式だけの給与や実態のない支払いは認められません。事前届出、業務実態、金額の妥当性を整える必要があります。
以前、あるWebライターが「開業から半年経って稼げるようになったので、今から青色申告に変えたい」と相談したケースがありました。残念ながら、青色申告は提出期限を過ぎるとその年は受けられないことがあります。その方は結局、白色申告しかできず、本来なら抑えられた可能性のある税金を余分に負担することになりました。こういうケースは本当にもったいないです。
開業届を出すなら、青色申告承認申請書も同時に出す。これは個人事業主登録の基本セットとして覚えておきましょう。たとえ初年度の売上見込みが小さくても、あとから急に案件が増えることはあります。最初に選択肢を確保しておくことが大切です。
個人事業主になるメリットとデメリット:法務・実務の視点から
登録方法を理解したところで、改めて「個人事業主」という法的な立場を選択するメリットとデメリットを整理しましょう。個人事業主は、法人と比べて始めやすく、運営コストも低い一方で、信用、責任、社会保障、税務管理の面では自分で対応すべき範囲が広くなります。開業届は簡単に出せますが、事業者としての責任はその日から始まります。
メリット:自由度と節税の権利
最大のメリットは、自分の裁量で仕事を選び、必要経費を計上できる権利を得ることです。会社員は給与所得者として会社から給与を受け取りますが、個人事業主は売上を得て、そこから事業に必要な経費を差し引き、所得を計算します。つまり、収入を得るために必要な支出を、税務上きちんと整理できる立場になります。
個人事業主になると、必要経費の計上や青色申告などによって税負担を抑えられる一方で、注意すべき点もあります。実際の手取り額に影響するため、以下の2点を踏まえて判断することが重要です。
具体的には、自宅の一部を仕事場としている場合の家賃按分や、業務に使用するPC、通信費、ソフトウェア利用料、クラウドサービス費、書籍代、セミナー参加費、交通費、打ち合わせ費用などを必要経費として計上できる可能性があります。たとえば自宅の20%を事業用スペースとして使っている場合、家賃や電気代の一部を合理的な基準で按分することが考えられます。
ただし、経費は「なんでも落とせる」ものではありません。事業との関連性、支出の必要性、金額の妥当性、証拠書類が必要です。プライベートの支出を事業経費に混ぜると、税務調査で否認されるリスクがあります。領収書、請求書、クレジットカード明細、契約書、納品書などは、日頃から整理して保管しましょう。
個人事業主の自由度は、働き方にも表れます。どの案件を受けるか、単価をいくらにするか、どの時間帯に働くか、どのスキルへ投資するかを自分で決められます。会社員のように人事評価や部署異動に左右されにくく、自分の専門性を直接収入につなげられる点は大きな魅力です。
一方で、自由度は責任とセットです。価格交渉、納期管理、契約書確認、請求、入金確認、税金、保険、営業、顧客対応まで、自分で判断する場面が増えます。自分の裁量で動けることは魅力ですが、事業の数字を見ずに自由だけを追うと、資金繰りで苦しくなります。
デメリット:自己責任と社会保障の弱さ
一方で、会社員時代に享受していた「守り」は弱くなります。
- 社会保険料の全額自己負担: 健康保険と厚生年金が、国民健康保険と国民年金に切り替わることが多くなります。会社負担がなくなるため、支払額が増える割に、将来の年金受給額は減る可能性があります。
- 失業保険がない: 事業が立ち行かなくなっても、雇用保険による失業給付は原則として受けられません。
- 事務作業の増加: 確定申告や帳簿付けなど、本業以外の雑務が確実に増えます。
会社員の場合、所得税の源泉徴収、年末調整、社会保険料の手続き、労災、雇用保険など、多くの事務を会社が担っています。個人事業主になると、これらの多くを自分で管理します。毎月の売上が安定していても、納税資金を別に確保していないと、確定申告後や住民税通知の時期に資金繰りが苦しくなることがあります。
また、個人事業主は病気やケガで働けない期間の収入減に備える必要があります。会社員なら傷病手当金や有給休暇が使える場合がありますが、国民健康保険には会社員の健康保険のような傷病手当金が原則としてありません。所得補償保険、生活防衛資金、複数取引先の確保など、自分なりのリスク管理が必要です。
信用面でも法人とは違いがあります。個人事業主でも大企業と取引することは可能ですが、取引先によっては法人格、実績、契約体制、情報管理体制を重視します。契約書の整備、事業用メールアドレス、Webサイト、請求書の形式、開業届の控え、過去実績などを整えておくと、個人でも信頼を得やすくなります。
個人事業主を選ぶか、法人化を目指すかは、売上規模、利益、取引先、社会保険、消費税、採用予定によって変わります。開業初期は個人事業主として始め、利益が安定してきたら法人化を検討する流れが一般的です。最初から法人化する必要はありませんが、将来的な選択肢として頭に入れておくとよいでしょう。
登録後に直面する「社会保険」と「税金」の落とし穴
個人事業主として活動を始めると、税務署以外の各所での手続きや判断が求められます。開業届を出したら終わりではなく、健康保険、年金、住民税、事業税、消費税、帳簿、契約、請求、資金管理が始まります。特に会社を退職して独立する場合、退職日の前後で手続き期限が集中するため、事前にチェックリストを作っておくことをおすすめします。
見落としやすいのが、健康保険の選択肢です。退職後は自動的に最適な保険へ切り替わるわけではありません。自分で市区町村や健康保険組合に確認し、期限内に手続きする必要があります。
1. 国民健康保険への加入
自治体が運営する健康保険です。退職して会社の健康保険を抜けた場合、多くの人が国民健康保険に加入します。保険料は前年の所得、世帯構成、自治体の料率などによって決まるため、会社員時代の年収が高い1年目は保険料が高額になりやすい傾向があります。独立初年度は売上がまだ安定しない一方で、前年所得をもとに保険料が決まるため、資金繰りに注意が必要です。
国民健康保険の加入手続きは、通常、市区町村の窓口で行います。退職を証明する書類、本人確認書類、マイナンバー確認書類などが必要になることがあります。自治体によって必要書類や期限が異なるため、退職前に住んでいる自治体の公式サイトを確認しておきましょう。
2. 任意継続被保険者
退職前の会社の健康保険を最大2年間継続できる制度です。保険料は会社負担分がなくなり全額自己負担になりますが、保険料に上限が設定されている場合があり、国民健康保険より安くなるケースがあります。ただし、退職から20日以内に手続きが必要です。1日でも遅れると原則として加入できないため、退職日が決まったらすぐに比較しましょう。
任意継続を選ぶか国民健康保険を選ぶかは、前年所得、扶養家族の有無、自治体の保険料、健康保険組合の保険料上限によって変わります。独立前に、国民健康保険の概算額と任意継続の保険料を両方確認し、安いほうを選ぶのが基本です。扶養家族がいる場合は、特に差が大きくなることがあります。
3. 健康保険組合への加入(文芸美術国民健康保険など)
特定の職種、たとえばデザイナー、イラストレーター、ライター、編集者などであれば、職能団体を通じて加入できる健康保険組合があります。所得に関わらず定額に近い保険料で加入できるケースがあり、一定以上の所得がある方には有利になることがあります。ただし、加入には職種、団体加入、実績、審査などの条件があります。
健康保険のほか、年金も切り替えが必要です。会社員を辞めると、厚生年金から国民年金第1号被保険者になるのが一般的です。国民年金だけでは将来の受給額が会社員時代より少なくなる可能性があるため、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済などを組み合わせて、自分で老後資金を準備する視点が必要になります。
また、万が一の備えとして「小規模企業共済」についても知っておくべきです。
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者が利用できる共済制度です。事業をやめたり退職したりした際に、その後の生活や事業の再建を図るための資金を、あらかじめ準備することができます。
毎月1,000円から7万円の範囲(500円単位)で自由に積み立て、廃業時に「共済金」として受け取れる仕組みです。
積立金は全額が所得控除の対象として認められるため、節税にもつながります。
つまり、退職金のない個人事業主にとって、自分自身で積み立てる退職金制度のような役割を果たします。しかも掛金が全額所得控除の対象になるため、所得が増えてきた個人事業主にとっては節税効果も期待できます。制度の詳細や加入条件は、中小機構の公式情報を確認してください。
税金面では、所得税、住民税、個人事業税、消費税を意識する必要があります。所得税は確定申告で計算し、住民税は確定申告の内容をもとに自治体から通知されます。個人事業税は、一定の事業所得を超える場合に発生することがあります。消費税は、原則として基準期間の課税売上高などによって納税義務が判定されますが、インボイス制度への登録有無も関係します。
開業初年度にありがちな失敗は、売上をすべて使ってしまい、納税資金を残していないことです。入金があったら、そのうち20%から30%程度を税金や社会保険料用の口座に移しておくと安心です。実際の必要額は所得や控除によって変わりますが、最初から別口座で管理しておくと、確定申告後の支払いに慌てにくくなります。
正確な契約書の締結
最近需要が急増しているAIコンサルなどの分野では、クライアント側の機密情報に深く触れるため、法務知識に基づいた契約締結能力が必須スキルとなっています。業務委託契約では、業務範囲、納期、報酬、支払期限、修正回数、著作権、秘密保持、再委託、契約解除、損害賠償、成果物の検収条件を確認しましょう。
口約束だけで仕事を始めると、あとから「どこまでが作業範囲か」「追加料金は発生するのか」「納品後の修正は何回までか」で揉めることがあります。個人事業主は自分で自分を守る必要があります。最初は簡単な発注書や業務委託契約書でも構いませんので、金額と範囲を文書で残す習慣をつけましょう。契約や法律情報を調べる際は、e-Govや法務省の公式情報も参考になります。
市場価値の正確な把握
自分のスキルが市場でいくらで取引されているかを客観的に知ることも、事務管理の一環です。
個人事業主として長く続けるには、単価設定が重要です。売上があるのに手元にお金が残らない場合、経費や税金だけでなく、そもそもの単価が低すぎる可能性があります。時給換算で考えると、打ち合わせ、見積もり、契約、調査、修正、請求、入金確認も仕事時間に含まれます。制作時間だけをもとに価格を決めると、実質時給が想定より低くなります。
たとえば、5万円の案件でも、制作に20時間、打ち合わせに3時間、修正に5時間、事務に2時間かかれば合計30時間です。時給換算では約1,666円になります。ここから税金、社会保険料、ソフト代、通信費、学習費を負担することを考えると、継続可能な価格かどうかを見直す必要があります。市場相場を知ることは、強気に値上げするためではなく、事業を続けるための最低ラインを守るために必要です。
スキルの証明と資格
個人事業主として信頼を得るためには、公的な資格や業界資格も有効です。
契約書の作成やメールのやり取りにおいて、基礎的なビジネス文書力があることは大きな武器になります。提案書、見積書、議事録、請求書送付メール、納品連絡など、個人事業主は文章で信用を積み上げる場面が多いからです。
ITインフラ系のフリーランスとして独立する際、この資格があるだけで案件獲得率が変わることがあります。もちろん資格だけで受注できるわけではありませんが、未経験領域や新規取引先に対して、最低限の知識を示す材料になります。
登録手続きはゴールではなく、あくまで「スタート」です。開業届を出したからといって、明日から自動的に仕事が入るわけではありません。登録という法的なセットアップを済ませたら、次はWebマーケターのフリーランスの始め方やWordPress案件の受注方法などを参考に、具体的な集客戦略を練る必要があります。
開業直後にやるべきことは、意外と多くあります。事業用メールアドレスを作る、請求書テンプレートを整える、会計ソフトを設定する、事業用口座やクレジットカードを検討する、プロフィールやポートフォリオを作る、契約書ひな形を用意する、SNSやWebサイトの導線を整える。これらはすべて、仕事を受けてから慌てるより、開業直後に少しずつ準備したほうが楽です。
個人事業主になるということは、自分自身の「経営者」になるということです。少し大変に感じるかもしれませんが、正しく知れば制度はあなたを縛るものではなく、守ってくれる道具になります。開業届、青色申告、社会保険、契約、帳簿を一つずつ整えれば、独立後の不安はかなり小さくできます。
(本論終了)
公的機関・関連参考情報
本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。
よくある質問
Q. 個人事業主の登録(開業届)には、どのくらいの費用がかかりますか?
開業届の提出自体に費用はかかりません。税務署への届け出は原則無料です。2026年現在はマイナンバーカードとスマートフォンがあれば、オンラインで自宅から無料で手続きを完了させることができます。
Q. 開業届を提出したら、すぐに税金を支払う必要がありますか?
いいえ、開業届を出した直後に税金が発生するわけではありません。税金は、1月1日から12月31日までの1年間の所得(売上から経費や控除を引いた額)に対して計算され、翌年の確定申告時期に支払うことになります。
Q. 副業で収入が少ない場合でも、開業届は出すべきでしょうか?
継続的に事業として収益を得る意思があるなら、収入の多寡にかかわらず提出することをお勧めします。開業届と同時に「青色申告承認申請書」を出しておくことで、将来的に利益が増えた際、最大65万円の特別控除などの節税メリットを逃さずに受けることができます。
Q. オンラインで登録した際、「控え」はどうやって受け取ればいいですか?
e-Taxなどのオンライン申請の場合、送信完了後に「受信通知(メール詳細)」が発行されます。これが紙の受付印に代わる正式な控えとなります。銀行口座の開設やオフィスの契約などで必要になることが多いため、必ずPDF形式で保存し、大切に保管しておきましょう。
Q. 屋号(事業名)は必ず決めなければなりませんか?
屋号の設定は必須ではありません。個人名のみで活動することも可能です。屋号は開業届の提出後でも設定や変更ができるため、決まっていない場合は空欄のまま提出しても問題ありません。
@SOHOでキャリアを加速させよう
@SOHOなら、あなたのスキルを求めているクライアントと手数料無料で直接つながれます。
@SOHOで関連情報をチェック
お仕事ガイド
年収データベース
資格ガイド

この記事を書いた人
長谷川 奈津
行政書士・元企業法務
企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師
看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師
薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド







