訪問看護ステーションの1年目をどう乗り切るか|最初につまずく場面はどこか


この記事のポイント
- ✓新卒で訪問看護師になる人へ
- ✓訪問看護ステーションの1日の流れと小さな組織の人員体制
- ✓1年目がつまずきやすい単独訪問
新卒でいきなり訪問看護ステーションに入る。数年前までは「まず病院で3年」と言われるのが普通でしたが、いまは卒業と同時に在宅の現場を選ぶ人が少しずつ増えています。
結論から言うと、新卒の訪問看護師は「無理」ではありません。ただし、1年目につまずく場面ははっきり決まっていて、それは技術の不足よりも、病院と組織の形がまったく違うことから生まれます。どこでつまずくのかを先に知っておけば、準備のしようがあります。
この記事では、訪問看護ステーションの1日と人員体制を整理したうえで、病院と何が違うのか、1年目が最初につまずきやすい場面はどこか、そして職場を選ぶ段階で育成の実態をどう見分けるかをまとめます。
新卒で訪問看護を選ぶ人が増えている背景
まず、訪問看護を取り巻く状況から見ておきます。背景を知ると、新卒を受け入れるステーションが何を考えているのかが読めるようになります。
訪問看護ステーションの数は、ここ10年ほどで大きく増えました。全国の事業所数は1万5千か所を超え、毎年増加が続いています。高齢化が進み、病院で最期を迎えるのではなく、自宅で療養したい、自宅で看取りたいという人が増えていることが背景にあります。国の方針としても、入院期間を短くし、住み慣れた地域で医療と介護を受けられる仕組みづくりが進められています。
需要が伸びる一方で、訪問看護師の確保は追いついていません。看護職員全体のうち、訪問看護で働く人の割合は1割にも届かず、多くの看護師は今も病院で働いています。ステーションの側から見ると、経験者の中途採用だけでは人が足りない状態です。
そこで、新卒の採用に踏み切るステーションが出てきました。看護協会や訪問看護の業界団体などが、新卒の訪問看護師を育てるための研修や育成の手引きを公表しており、受け入れる側の準備も少しずつ整ってきています。
今回は、新卒訪問看護師の育成に長年携わってきた経験をもとに、新卒には難しいと言われる背景を解説します。新卒だからこそ発揮できる強みについても、詳しく解説します。 出典: update-inc.jp
このように、新卒で訪問看護師としてキャリアを始め、その後に育成や経営に携わる人も出てきています。「新卒には難しい」という見方と、「新卒だからこそ伸びる」という見方が、両方ある状態です。
一方で、正直なところ、新卒を受け入れるステーションすべてに育成の仕組みがあるわけではありません。人手不足だから新卒でも採るというステーションと、計画的に新卒を育てるステーションが混在しています。この違いが、1年目を乗り切れるかどうかを大きく左右します。後半で、その見分け方を詳しく書きます。
新卒の強みとしてよく挙げられるのは、病院のやり方に染まっていないことです。病院の看護は、医師がすぐそばにいて、物品がそろい、患者さんが病院のルールに合わせる環境で成り立っています。在宅では逆に、看護師が利用者さんの生活に合わせます。最初から在宅の考え方で学ぶ新卒は、この切り替えに苦労しにくいという見方です。
訪問看護ステーションの1日の流れ
次に、訪問看護ステーションの1日がどう動くのかを見ておきます。病院の日勤とは、時間の使い方が大きく違います。
典型的な1日は、次のような流れです。
| 時間帯 | 主な動き |
|---|---|
| 8時30分 | 出勤。朝のミーティングで、前日の訪問の報告と当日の予定、オンコール中の出来事を共有 |
| 9時〜12時 | 午前の訪問。2件前後。移動は車、自転車、バイクなど |
| 12時〜13時 | ステーションに戻って昼休憩。訪問先の近くで休む場合もある |
| 13時〜16時30分 | 午後の訪問。2〜3件 |
| 16時30分〜17時30分 | 帰所。記録、医師やケアマネジャーへの連絡、翌日の準備 |
1日の訪問件数は、4件から5件程度が一般的です。1件あたりの滞在時間は、利用者さんの状態と契約内容によって30分から90分ほど。訪問と訪問の間には移動時間があり、都市部では渋滞や駐車場探しに、郊外では長い移動距離に時間をとられます。
訪問先で行う看護は幅広く、次のような内容が含まれます。
・血圧、脈拍、体温、呼吸、酸素飽和度などの観察 ・服薬の管理と、飲み残しや副作用の確認 ・点滴、在宅酸素、胃ろう、人工呼吸器、カテーテルなど医療機器の管理 ・床ずれの予防と処置、排泄のケア、入浴や清拭の介助 ・リハビリの視点を取り入れた日常動作の支援 ・終末期の症状の緩和と、家族への看取りの支援 ・家族の介護負担の相談
訪問の予定は、利用者さんごとに曜日と時間がおおむね決まっています。「月曜と木曜の午前10時」「毎日の夕方に30分」といった形です。1年目のうちは、担当する利用者さんの数を少なめにし、同じ方のお宅に繰り返し伺うように組んでもらうことが多く、ここで一人ひとりの普段の様子を覚えていきます。予定表は管理者や事務職員が組むことが多いものの、急な入院や体調の変化で、当日に組み替えることも珍しくありません。
病院の日勤と比べて特徴的なのは、1日の大半を「移動」と「1対1の時間」で過ごすことです。ナースステーションに先輩がいて、困ったらすぐ声をかけられる環境ではありません。訪問中に判断に迷ったとき、相談の手段は電話になります。
もう1つの特徴が、オンコールです。多くのステーションでは、夜間や休日にも利用者さんや家族から連絡を受ける体制をとっており、看護師が交代で携帯電話を持ちます。電話で状態を聞き取り、必要があれば緊急で訪問します。1年目からオンコールを担当するかどうかはステーションによって違い、ここは入職前に必ず確かめたい点です。
小さな組織の人員体制と、1年目の位置
訪問看護ステーションで1年目がつまずく理由の多くは、組織の小ささにあります。人員体制を具体的に見ておきましょう。
訪問看護ステーションを開くためには、看護職員を常勤換算で2.5人以上置くことが基準になっています。つまり、法律上は看護師が3人ほどいれば運営できるということです。実際には、看護職員が常勤換算で5人に満たない小規模なステーションが少なくありません。
小規模なステーションの職員構成は、たとえば次のような形です。
・管理者(看護師。自分も訪問に出る) ・常勤の看護師が数人 ・パートの看護師が数人 ・理学療法士や作業療法士(在籍する場合) ・事務職員(いない場合は看護師が事務も担う)
病院の病棟であれば、看護部長、看護師長、主任、プリセプター、そして同期の新人が何人もいます。教育担当の部署があり、年間の研修計画が組まれています。訪問看護ステーションでは、この役割を管理者と数人の先輩が兼ねることになります。
これが1年目にとって何を意味するかというと、次の3点です。
1つ目は、教える側に余裕がないことです。先輩も1日4件、5件の訪問を抱えています。新人の同行訪問に入ると、その分だけ先輩の訪問件数が減り、ステーションの収入に影響します。小規模なステーションほど、「教える時間」を確保することが経営上の負担になります。
2つ目は、同期がいないことです。新卒を1人だけ採用するステーションが多く、同じ立場で悩みを話せる相手が職場にいません。病院の新人研修で同期と励まし合う経験は、思っている以上に支えになっています。
3つ目は、1人の休みが全体に響くことです。職員が少ないため、誰かが体調を崩すと、残りの職員で訪問を振り分けます。新人が「まだ一人では行けない」段階だと、その調整が難しくなります。
一方で、小さな組織だからこそ、管理者との距離が近く、自分の悩みや進み具合を直接伝えやすいという良さもあります。育成に力を入れているステーションでは、この近さを生かして、1人ひとりに合わせた進め方を組んでいます。
複数のステーションを運営している法人に入る場合は、事情が少し変わります。法人の中に教育担当の看護師がいたり、系列のステーションどうしで新人研修を合同で行ったりしているところがあります。同じ年に入った新人が別のステーションにいれば、同期として話せる相手にもなります。求人を見るときは、ステーション単体の規模だけでなく、運営している法人の規模と、法人としての教育の仕組みがあるかどうかも合わせて確認しておくと、1年目の環境をより正確に想像できます。
病院と何が違うか
ここで、病院の病棟と訪問看護ステーションで、1年目に任される範囲がどう違うのかを並べておきます。
| 項目 | 病院の病棟 | 訪問看護ステーション |
|---|---|---|
| ケアの場 | 病院の設備がそろった病室 | 利用者さんの自宅 |
| 医師との距離 | 同じ建物にいて、すぐ相談できる | 主治医は別の医療機関にいる。電話やFAXで連絡 |
| 物品 | 必要なものがそろっている | 自宅にあるものと持参したもので工夫する |
| 判断 | 先輩や医師に確認しながら進める | 訪問中は基本的に一人で判断する |
| 関わる時間 | 24時間の交代制で入院中を見る | 週に数回、1回30分から90分 |
| 家族との関係 | 面会時の関わりが中心 | 家族も支援の対象。生活の中に入る |
| 連携先 | 院内の多職種 | ケアマネジャー、ヘルパー、薬局、主治医など外部の事業所 |
| 保険の仕組み | 看護師が意識する場面は少ない | 医療保険と介護保険のどちらで入るかで訪問の回数や内容が変わる |
この表でいちばん大きな違いは、「判断」の行です。病棟では、1年目は先輩の確認を受けながら業務を進めるのが当たり前です。訪問看護では、同行訪問の期間が終われば、利用者さんの自宅で一人になります。
もう1つ、見落とされやすいのが、ケアの主導権が利用者さんと家族にあることです。病院では、治療のために決まった時間に食事をとり、薬を飲み、安静にしてもらいます。自宅では、利用者さんが「今日はお風呂に入りたくない」と言えば、それを尊重したうえで看護を組み立て直します。家族の生活リズムや、家の中のルールにも合わせる必要があります。
保険の仕組みも、病院では意識しなかった部分です。訪問看護は、主治医が出す訪問看護指示書に基づいて行います。介護保険で入る場合は、ケアマネジャーが作るケアプランにも沿って訪問します。病状が急に悪化したときは、主治医が特別な指示書を出すことで、一定期間、訪問の回数を増やすことができます。こうした仕組みを知らないと、利用者さんから「もっと来てほしい」と言われたときに、何ができて何ができないのかを説明できません。
つまり、訪問看護の1年目は、看護の技術と同時に、「在宅での考え方」「制度の仕組み」「外部との連携」の3つを並行して覚える期間だということです。
最初につまずく場面1:一人で玄関に立つとき
ここからは、1年目がつまずきやすい場面を具体的に見ていきます。最初の山は、同行訪問が終わり、一人で訪問に行くようになったときです。
多くのステーションでは、入職後の数か月は先輩と一緒に訪問する同行期間があります。最初は先輩のケアを見学し、次に先輩が見ている前で自分がケアをし、最後に一人で行く、という段階を踏みます。期間はステーションによって違い、3か月ほどで一人での訪問を始めるところもあれば、半年から1年かけて少しずつ担当を増やすところもあります。
一人での訪問で最初につまずくのは、「いつもと違う」と気づいたときの判断です。
・血圧がいつもより高いが、本人は元気だと言っている ・食事の量が減っていると家族が話しているが、発熱はない ・床ずれが少し広がっている気がする
病院であれば、先輩に「見てもらえますか」と声をかければ済みます。自宅では、自分がその場で「様子を見てよいのか」「主治医に連絡すべきか」「救急車を呼ぶべきか」を決めなければなりません。
「現場で一人で判断しなければならないのは怖い」。訪問看護につきまとうこんな不安を、小倉さんたちケアプロの新卒訪問看護師はあまり感じたことがないのだそう。 出典: kango-roo.com
この記事で紹介されているように、一人で判断する怖さをあまり感じずに済んでいる新卒もいます。その差を生んでいるのは、本人の度胸ではなく、ステーションの仕組みです。
不安を感じにくい職場に共通しているのは、次のような仕組みです。
・訪問中に迷ったら、すぐ電話で相談してよいという約束が明確にある ・相談を受ける先輩が、その時間帯に決まっている ・利用者さんごとに、「この値を超えたら連絡」という目安が共有されている ・訪問の前に、その日に見るべき点を先輩と確認する時間がある
私が以前、在宅医療の取材で話を聞いた訪問看護師の方は、「1年目のころ、電話をかけるのが申し訳なくて、迷っても自分で抱えていた。結果として報告が遅れ、管理者に『電話は迷惑じゃない、遅れるほうが困る』と言われたのが転機だった」と話していました。正直なところ、この遠慮はほとんどの新人が持つものです。職場の側が「相談してよい」を仕組みとして示しているかどうかで、1年目の不安は大きく変わります。
自分の側でできる準備もあります。訪問の前に、その利用者さんの前回の記録を読み、「今日確かめること」を3つほど書き出しておくことです。玄関に立つ前に見るべき点が決まっていれば、その場で慌てずに済みます。そして訪問から出たあと、車や自転車に戻ったところで、気になった点を1行だけでもメモに残す。この習慣が、次の訪問で「いつもと違う」に気づく力を育てます。
最初につまずく場面2:医師とケアマネジャーへの連絡
2つ目の山は、外部の人への報告と連絡です。訪問看護では、主治医もケアマネジャーも、同じ建物にはいません。
病院では、医師への報告は、同じ病棟にいる医師に口頭で伝えることが多く、先輩が横で補ってくれることもあります。訪問看護では、診療所の医師に電話をかけ、限られた時間で状況を伝えます。相手は外来診療の合間に電話を受けていることが多く、要点が伝わらないと「で、どうしてほしいの」と聞き返されます。
1年目がつまずきやすいのは、次のような点です。
・観察したことを時系列で全部話してしまい、何を相談したいのかが伝わらない ・数値は伝えたが、普段の値と比べてどう違うのかを伝えていない ・自分がどう考えているのかを言わず、判断を丸投げしてしまう
医療現場でよく使われる報告の型に、「状況、背景、評価、提案」の順で伝える方法があります。訪問看護の電話報告でも、この順番で話すと伝わりやすくなります。たとえば、「○○さんの件です。今日の訪問で37.8度の発熱がありました。普段は36度台で、3日前から痰が増えていました。肺炎の可能性を心配しています。受診が必要か、指示をいただけますか」という形です。
ケアマネジャーとの連絡も、1年目には難しい部分です。ケアマネジャーは、訪問看護だけでなく、ヘルパーやデイサービス、福祉用具など、利用者さんのサービス全体を調整しています。看護師が「最近歩くのが不安定になっている」と気づいたら、それをケアマネジャーに伝えることで、手すりの設置やサービスの見直しにつながります。
つまり、訪問看護師の報告は、その場の医療的な判断だけでなく、利用者さんの生活全体を動かすきっかけになるということです。この感覚をつかむまでに、1年目は時間がかかります。
乗り越えるためには、先輩の電話を横で聞くことが一番の近道です。同行期間のうちに、先輩が医師やケアマネジャーにどう伝えているのかを意識して聞き、自分用の報告の型をメモにしておきましょう。慣れるまでは、電話をかける前に伝える内容を紙に書き出してから話すと、落ち着いて伝えられます。
主治医によって、連絡の方法の好みが違うことも覚えておきましょう。急ぎでなければFAXや連絡用のノートで伝えてほしい医師もいれば、どんなことでも電話で直接話したい医師もいます。診療時間中のどの時間帯なら電話に出やすいのかも、診療所ごとに違います。こうした情報は、ステーションの中で利用者さんごとに共有されていることが多いので、担当が決まったら先輩に聞いておくと、連絡のたびに迷わずに済みます。
最初につまずく場面3:記録、保険、オンコール
3つ目の山は、訪問そのものではなく、その前後にある仕事です。
記録
訪問看護の記録は、看護の内容を残すだけでなく、報酬を請求する根拠にもなります。訪問した時間、行ったケア、利用者さんの状態を、決められた形式で正確に書く必要があります。1年目は、訪問から帰ったあと、記録に時間がかかって帰りが遅くなりがちです。最近はタブレットやスマートフォンで記録するステーションが増え、訪問先や移動中に入力できる環境も広がっています。
保険の仕組み
先ほども触れたとおり、訪問看護は医療保険と介護保険のどちらで提供するかによって、訪問できる回数や、算定できる内容が変わります。利用者さんの病名や状態によって、どちらの保険になるかが決まる仕組みもあります。1年目にすべてを覚える必要はありませんが、「なぜこの人は週3回で、あの人は毎日なのか」を先輩に聞いて理解していくと、利用者さんや家族への説明に自信が持てるようになります。
オンコール
オンコールは、1年目にとって大きな心理的負担になります。夜中に電話が鳴り、自分の知らない利用者さんの家族から「息が苦しそう」と連絡が来る場面を想像すると、不安になるのは自然です。
オンコールの体制は、ステーションによって大きく違います。
・1年目はオンコールを担当しない ・1年目の後半から、先輩と2人体制で担当する ・入職半年ほどで一人での担当を始める
新卒を計画的に育てているステーションでは、最初からいきなり一人でオンコールを持たせることはほとんどありません。担当する場合でも、判断に迷ったら管理者に電話できる二段構えの体制を用意しているところが多いです。
オンコールには手当がつくことが多く、待機するだけで支払われる手当と、実際に出動したときに支払われる手当に分かれている場合があります。給与の見え方にも関わるので、求人票の手当欄と合わせて確認してください。
移動
見落としがちですが、移動も1年目の負担になります。車での訪問が中心のステーションでは、運転免許が必要で、狭い道や駐車場所に慣れるまで気をつかいます。自転車での訪問が中心の都市部では、雨の日や夏の暑さが体力を奪います。
求人票と見学で、育成の実態を見分ける
ここまで見てきたつまずきの多くは、ステーションの育成体制でかなり軽くできます。では、応募する前にどうやって見分けるのか。求人票と見学で確かめたい点を整理します。
新卒の受け入れ実績
「新卒歓迎」と書かれていても、実際に新卒を受け入れたことがあるかどうかは別の話です。これまでに何人の新卒が入り、今も何人が働いているかを聞いてみましょう。受け入れた経験があるステーションは、つまずきやすい場面を知っています。
同行訪問の期間と進め方
一人での訪問を始めるまでの期間と、どういう段階で担当を増やしていくのかを聞きます。「人によって違う」という答えでも構いませんが、その場合は「何ができるようになったら次に進むのか」を確認してください。目安が言葉にされているステーションは、育成を仕組みとして考えています。
相談の体制
訪問中に迷ったとき、誰に電話すればよいのか。その人は訪問中でも電話に出られるのか。管理者が訪問の多い日はどうなるのか。具体的に聞くと、実態が見えてきます。
オンコールの開始時期
1年目にオンコールを担当するのか、担当する場合は一人か二人体制か、判断に迷ったときの相談先はあるのかを確認します。
教育の時間の確保
外部研修への参加を認めているか、参加費を出してくれるか、事例を振り返る勉強会があるかを聞きます。小規模なステーションでも、法人内の他のステーションや、地域の訪問看護の研修を活用しているところがあります。
規模と職員の定着
職員の人数と、ここ数年の退職の状況を聞いてみましょう。人の入れ替わりが激しいステーションでは、教える側が常に足りていない可能性があります。
見学に行ったら、可能であれば同行訪問をさせてもらいましょう。先輩が利用者さんとどう話しているか、移動中にどんな会話をしているか、帰所後の雰囲気はどうかを見ると、求人票には書かれない職場の空気が分かります。
給与の水準を比べるときは、訪問看護だけで比べるのではなく、病院で働いた場合との差も見ておくと判断しやすくなります。公的な統計をもとに年齢や地域ごとの相場をまとめた看護師の年収・単価相場を見ると、訪問看護の求人に書かれた月給が、夜勤のない働き方としてどの位置にあるのかがつかめます。訪問看護は夜勤手当がない代わりにオンコール手当がつくことが多く、単純な月給の比較では実態が分からない点に注意してください。
1年目を乗り切るために、今日からできること
最後に、1年目を乗り切るために、入職前後にできる具体的な行動をまとめます。
入職前に、自宅での生活を想像できるようにしておく
訪問看護の現場は、利用者さんの生活の中にあります。学生時代の在宅看護の実習の記録を読み返し、自宅で療養する人の1日がどう動いているのかを思い出しておきましょう。家族の介護を経験している身近な人に話を聞くのも、在宅の視点をつかむ助けになります。
同行期間は「先輩のケア」ではなく「先輩の判断」を見る
同行期間に見るべきなのは、先輩の手技だけではありません。玄関を入ってから、何を見て、何を聞いて、何を判断しているのか。移動中に「今日のあの方、どう思った」と聞き、先輩の頭の中にある判断の筋道を言葉にしてもらいましょう。
利用者さんごとの「普段の状態」をメモに残す
訪問看護の判断は、「いつもと比べてどうか」で決まります。担当する利用者さんの普段の血圧、食事の量、話し方、表情をメモに残しておくと、変化に気づきやすくなります。
電話を遠慮しない
先ほど書いたとおり、報告の遅れは、相談の多さより大きな問題になります。迷ったら電話する。これを自分のルールにしてしまいましょう。
ケアマネジャーやヘルパーと顔を合わせる機会を大事にする
利用者さんの自宅で開かれるサービス担当者会議には、できるだけ出席させてもらいましょう。関わる人の顔と名前が一致すると、電話での連絡もずっと楽になります。
一人で抱え込まない場所を持つ
職場に同期がいない場合は、地域の訪問看護の研修や、新卒訪問看護師どうしの交流の場を探しましょう。職場の外に相談できる相手がいるだけで、1年目の孤独はやわらぎます。
体力の配分を自分で決める
訪問看護は、移動と訪問を繰り返すため、1日の終わりに想像以上の疲れが残ります。病院の日勤のように休憩室で座って過ごす時間は短く、昼休憩も移動に削られることがあります。最初の数か月は、休日に予定を詰め込まず、睡眠と食事の時間を先に確保しておきましょう。体調を崩して休むと、先ほど書いたとおり、小さな組織では周りの訪問の振り分けに影響します。自分の体を守ることも、1年目の大切な仕事の1つです。キャリアそのものに迷ったときは、職業選択の相談に乗る国家資格であるキャリアコンサルタントの役割を知っておくと、第三者に相談するという選択肢が見えてきます。
運営者として見てきた、在宅の現場で長く続く人
最後に、在宅ワークやフリーランスの市場を長く見てきた運営側の立場から、在宅の医療と介護の現場について感じていることを書きます。
訪問看護は、看護師の働き方の中でも、一人ひとりの裁量が大きい仕事です。同じ時間に同じ場所に集まって働くのではなく、それぞれが利用者さんの自宅に向かい、戻ってきて情報を共有する。この形は、場所を選ばずに仕事をするフリーランスや在宅ワーカーの働き方と、構造が似ています。
運営者として見てきた限りでは、こうした一人で動く時間の長い仕事で長く続く人ほど、「この人に任せると安心」という関係を、周りの人と丁寧に作っています。訪問看護で言えば、ケアマネジャーに要点を短く伝える、ヘルパーさんが気づいたことを受け止める、主治医に判断材料をそろえて相談する。技術の高さよりも、周りとの信頼の積み重ねが、仕事のしやすさを決めていく傾向が見られます。
訪問看護の現場は、介護職との連携なしには成り立ちません。利用者さんの自宅で日々の生活を支えているヘルパーさんの働き方や給与の水準を知っておくと、連携の相手の事情への理解が深まります。介護職員の年収・単価相場には、訪問介護を含む介護職の相場がまとめられています。
また、在宅の医療と介護で経験を積んだ看護師の中には、将来、個人で相談の仕事を受けたり、講師として研修に関わったりする人も出てきます。個人で仕事を受けるときには、仲介の手数料が引かれない直接の取引のほうが、同じ依頼額でも手元に残る額が厚くなり、依頼する側も支払った分がそのまま担い手に届きます。手数料0%で直接つながる仕組みの価値は、金額の大小ではなく、この双方にとって納得のいく関係の作りやすさにあると考えています。
新卒の訪問看護師の1年目は、看護の技術、在宅の考え方、制度の仕組み、外部との連携を同時に覚える期間です。つまずく場面は、一人で判断するとき、外部に連絡するとき、記録とオンコールに向き合うときの3つに集中します。職場を選ぶ段階で、同行訪問の進め方と相談の体制を確かめておけば、その3つの山はずっと越えやすくなります。
よくある質問
Q. 新卒で訪問看護ステーションに就職するのは無理ですか?
無理ではありません。新卒の受け入れと育成に取り組むステーションも増えています。ただし、育成の仕組みはステーションによって差が大きいため、新卒の受け入れ実績、同行訪問の期間、訪問中に相談できる体制、オンコールの開始時期を応募前に確かめることが大切です。
Q. 新卒の訪問看護師は、いつから一人で訪問しますか?
ステーションによって異なり、3か月ほどで一人での訪問を始めるところもあれば、半年から1年かけて少しずつ担当を増やすところもあります。期間の長さよりも、何ができるようになったら次の段階に進むのかという目安が明確かどうかを確認すると、育成の実態が分かります。
Q. 1年目からオンコールを担当する必要がありますか?
必ずしも担当するわけではありません。1年目は担当しない、後半から先輩と2人体制で始める、半年ほどで一人で担当するなど、体制はステーションごとに違います。担当する場合は、判断に迷ったときに管理者へ相談できる二段構えの体制があるかを確認してください。
Q. 訪問看護師になる前に、どんな準備をしておくとよいですか?
在宅看護の実習の記録を読み返し、自宅で療養する人の1日の流れを想像できるようにしておくと役立ちます。入職後は、同行訪問で先輩の手技だけでなく判断の筋道を聞き、利用者さんごとの普段の状態をメモに残しましょう。医師への報告の型を練習しておくのも効果的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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