在宅ワーカーへ内職的な仕事を出す時のルール|家内労働法とフリーランス新法の使い分け 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
在宅ワーカーへ内職的な仕事を出す時のルール|家内労働法とフリーランス新法の使い分け 2026

この記事のポイント

  • 在宅ワーカー発注で家内労働法とフリーランス新法のどちらが適用されるか迷う担当者へ
  • 対象範囲・義務・契約書の作り方を行政書士が実務目線で解説します

「内職に仕事を頼みたいけれど、家内労働法という法律があるらしい。うちの発注はこれに当てはまるのか」。行政書士としてこういうご相談を受けることが増えました。在宅ワーカーへの発注を検討している個人事業主や中小企業の担当者にとって、家内労働法とフリーランス保護新法のどちらが自分の契約に適用されるのかは、正直かなり分かりにくい論点です。結論から言うと、この2つの法律は対象も義務の中身も違います。この記事では、発注者が最低限押さえておくべきルールと、失敗しない発注の流れを整理します。

在宅ワーカーへの発注が増えている背景

在宅ワーカーへの業務委託は、ここ数年で明らかに増えています。理由は大きく2つあります。1つは働き方の多様化です。育児や介護、体調の事情などで在宅での就業を選ぶ人が増え、企業側もそうした人材を活用しないと人手不足を解消できなくなっています。もう1つはクラウドツールの普及です。2024年11月にフリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されたこともあり、業務委託契約そのものへの社会的な関心も高まりました。

一方で「内職」と呼ばれる伝統的な在宅作業、つまり部品の組み立てや縫製、シール貼りといった物理的な作業を委託する仕組みには、フリーランス新法よりずっと前から家内労働法という法律が存在します。この法律は1970年に制定された古い法律ですが、いまも有効に機能しています。つまり発注者は「新法だけ見ておけばいい」わけではなく、業務の性質によっては家内労働法の義務も同時に負う可能性があるのです。これ、知らない人が本当に多いんです。

家内労働法とは何か。誰が対象になるのか

家内労働法の対象となる「家内労働者」の定義

家内労働法でいう「家内労働者」とは、簡単に言うと、自宅を作業場にして、委託者から材料や部品の提供を受け、1人(または家族と一緒に)で製造・加工などの作業を行い、その対価として工賃を受け取る人のことです。ポイントは「材料や部品の支給を受けているかどうか」です。自分で材料を仕入れて自分の判断で製品を作り、それを販売するのであれば、それは家内労働ではなく単なる製造業・販売業になります。

通常、自宅を作業場として、製造・加工業者や問屋などの委託者から、部品や原材料の提供を受けて、一人で(もしくは家族とともに)、物品の製造や加工などを行い、その労働に対して工賃を受け取っている人のことです。 通常、サービス業分野の在宅ワーカーは、家内労働法上の家内労働者には該当しませんが、例外として、フロッピーディスク等で納品するワープロ入力業務は、家内労働法の適用になります。 出典: skillup.yamagatanoukai.jp

この引用にもある通り、原則としてサービス業(データ入力、ライティング、デザイン、SNS運用代行など)は家内労働法の対象外です。対象になるのは、物品の製造・加工に近い作業。具体的には、アクセサリーの組み立て、袋詰め、縫製、電子部品の実装、シール貼りといった、手を動かして「モノ」を作る作業です。ただし例外として、フロッピーディスク等の記録媒体で納品するワープロ入力業務のように、古い法令上の解釈がそのまま残っているケースもあるため、境界線があいまいな業務は個別に確認する必要があります。

あなたの発注は家内労働法の対象になるのか

発注者の立場から見た判定基準は、おおむね次の3つです。

  1. 材料・部品・原材料を発注者側が支給しているか
  2. 完成品を発注者に納品し、その労働の対価として工賃を受け取る形になっているか
  3. 作業内容が「物品の製造・加工」に該当するか(サービス提供ではないか)

3つすべてに当てはまる場合、家内労働法上の「家内労働者」に業務を委託していることになり、発注者は「委託者」として法律上の義務を負います。逆に、SNS運用代行や記事執筆、経理事務代行、Web制作などのサービス業を在宅ワーカーに委託している場合は、家内労働法ではなくフリーランス保護新法(該当する場合は下請代金支払遅延等防止法)の対象になります。この切り分けを間違えると、必要な書面(家内労働手帳)を交付し忘れたり、逆に不要な手続きに時間を割いてしまったりします。※判定が難しいケースは、最終的には労働局や社会保険労務士、行政書士など専門家に個別相談することを強くおすすめします。

家内労働法で発注者(委託者)に課される義務

内職に関する基本的な事項は、家内労働法で定められています。始めに、この法律の対象となる「家内労働者(内職従事者)」「委託者(発注者)」について簡単にまとめてみました。 出典: skillup.yamagatanoukai.jp

家内労働法の対象になる発注をする場合、委託者(発注者)には主に次の義務が課されます。

家内労働手帳の交付

発注者は、家内労働者に対して業務を委託するたびに、工賃の額や支払期日、業務の内容などを記載した「家内労働手帳」を交付しなければなりません。口頭だけの発注はNGです。手帳は在宅ワーカー側が工賃の計算根拠を確認するための重要な書類であり、後々のトラブル防止にも直結します。

工賃の支払期日

工賃は、原則として物品を受領した日から起算して1か月以内に支払わなければならないとされています(都道府県ごとに工賃支払いに関する規則が定められている場合もあります)。フリーランス保護新法の「受領後60日以内」というルールとは支払期日の考え方が異なるため、両方の業務を発注している事業者は特に注意が必要です。

最低工賃とその他の義務

一部の業種・地域では、家内労働法に基づいて「最低工賃」が定められています。該当する業種でこの最低額を下回る工賃を設定することはできません。加えて、安全衛生の確保に関する努力義務、作業内容の変更時の通知義務なども発注者側に課されています。詳しい適用業種や最低工賃額は、厚生労働省や各都道府県の労働局が公表している情報を確認してください。

厚生労働省のサイトでは、家内労働法の対象業種や最低工賃の一覧が公開されています。自分の発注業務が該当するか迷ったら、まずここで一次情報を確認するのが確実です。

フリーランス保護新法との違いと使い分け

家内労働法とフリーランス新法、対象の線引き

ここが最も混同されやすいポイントです。家内労働法は「物品の製造・加工」を対象にした法律で、対象者は個人(家内労働者)に限られます。一方、フリーランス保護新法は「業務委託」全般(サービス業を含む)を対象にした法律で、対象者は「特定受託事業者」、つまり従業員を雇用していない個人または一人法人です。

つまり、在宅ワーカーに次のような業務を委託する場合はフリーランス保護新法の対象になります。

  • データ入力、事務代行、経理代行
  • Webライティング、記事執筆
  • SNS運用代行、広告運用代行
  • デザイン、Webサイト制作、アプリ開発

一方、アクセサリーの組み立てやシール貼り、縫製、部品の袋詰めといった「モノ」を作る内職的な作業は家内労働法の対象になります。同じ「在宅ワーカーへの発注」でも、業務の性質によって適用される法律がまったく違うわけです。これ、本当によく質問されます。

支払期日のルールはどう違うか

先ほど触れた通り、家内労働法では工賃を「受領日から1か月以内」に支払う義務があります。これに対してフリーランス保護新法では、給付を受領した日から起算して60日以内のできるだけ早い期日に報酬を支払う義務があるとされています。数字だけ見ると家内労働法のほうが支払期限が短いことになりますが、実務上は「発注書に明記した支払期日」を守ることが何よりも重要です。期日を明記しないまま口頭で発注し、後から「支払いが遅い」と揉めるケースは、私の相談でも本当に多く見てきました。

両方に該当するケースの実務対応

実務では「一部は物品の加工、一部はデータ入力」のように、1件の発注の中で両方の性質が混ざるケースもあります。例えば、手作りアクセサリーの組み立て(家内労働法の対象)と、その商品写真の撮影・SNS投稿用の加工(フリーランス新法の対象)をまとめて同じ在宅ワーカーに依頼するようなケースです。このような場合は、業務内容ごとに契約書や発注書を分けて、それぞれの法律が求める記載事項(家内労働手帳の交付、書面の交付義務など)を満たしておくのが安全です。判断に迷う契約は、必ず弁護士や社会保険労務士、行政書士などの専門家に一度見てもらってください。自己判断で進めて後から是正するのは、双方にとって手間もコストもかかります。

在宅ワーカーへの発注で失敗しないための実務チェックリスト

業務委託契約書に盛り込むべき項目

在宅ワーカーへ発注する際、契約書や発注書には最低限、次の項目を明記しておくべきです。

  1. 業務内容(何を、どのくらいの数量・分量、どんな品質基準で)
  2. 報酬(工賃)の額と計算根拠
  3. 支払期日と支払方法
  4. 納品方法と検収の基準
  5. 材料・部品の提供方法(家内労働法対象の場合)
  6. 契約解除の条件と予告期間
  7. 秘密保持(NDA)に関する条項

特に7のNDAは、事務代行やデータ入力を依頼する場合に忘れられがちです。顧客リストや売上データなど、機密性の高い情報を扱わせる場合は必ず盛り込んでください。

見積もり比較で見るべきポイント

在宅ワーカーへの発注は、複数の候補から見積もりを取って比較することが基本です。ここで気をつけたいのは、単純に「安いところ」を選ばないことです。実は私自身、行政書士事務所を開業した直後、書類のデータ入力作業を外注しようとして、見積もりの安さだけで発注先を決めてしまった経験があります。結果として、納品されたデータの入力ミスが多く、確認・修正の作業時間がかえって増えてしまいました。安さの裏には「経験が浅い」「チェック体制がない」といった理由が隠れていることも多いです。見積もりを比較するときは、金額だけでなく、実績・対応スピード・修正対応の可否まで含めて判断することをおすすめします。

直接依頼と仲介会社経由のコスト差

在宅ワーカーへの発注ルートは、大きく分けて2つあります。1つは代理店や制作会社などの仲介業者を通す方法、もう1つはフリーランスに直接依頼する方法です。仲介業者を通すと、案件のマッチングや進行管理を任せられる代わりに、中間マージンが報酬に上乗せされます。相場としては、仲介手数料が報酬の20%から50%程度上乗せされるケースも珍しくありません。

一方、仲介手数料0%の直接契約であれば、その分がまるごと在宅ワーカー側の手取りに回るか、発注者側の予算削減に回ります。同じ予算でより多くの作業量を依頼できる、あるいは同じ作業量でも予算を抑えられるというのが、直接依頼の最大のメリットです。ただし直接依頼は、契約書の作成や品質管理、支払い手続きをすべて発注者側で行う必要があるため、上で触れた契約書のチェックリストを自前で整えておくことが前提になります。

費用相場と依頼の流れ

在宅ワーカーへの発注費用は業務内容によって大きく異なります。データ入力であれば1件あたり50円から500円程度、事務代行であれば時給換算で1,200円から2,500円程度が相場とされています。物品の組み立てや加工といった家内労働法対象の内職的作業は、地域ごとの最低工賃を踏まえたうえで、個数単価や時間単価で設定するのが一般的です。

発注の流れとしては、おおむね次のステップになります。

  1. 業務内容と必要スキルを明確にする
  2. 家内労働法対象かフリーランス新法対象かを判定する
  3. 複数の候補から見積もりを取り、比較する
  4. 契約書・発注書を作成し、双方で確認する
  5. 業務委託を開始し、進捗と品質を確認する
  6. 検収後、契約書に記載した期日までに報酬を支払う

このステップの中でも、2の「どちらの法律が適用されるか」を最初に判定しておくことが、後々のトラブルを防ぐ一番の近道です。

在宅ワーカーに任せられる業務は、内職的な物品加工だけではありません。事務代行やデータ入力に加えて、より専門性の高い業務を在宅で依頼するケースも増えています。例えばAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、社内のAI活用を外部の専門人材に伴走してもらう発注形態として広がっていますし、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事ではマーケティング施策の設計から実行までを任せる依頼も一般的になっています。システム開発を伴う場合はアプリケーション開発のお仕事のように、要件定義から納品まで一括で依頼できる在宅ワーカーも増えており、こうした専門業務はフリーランス保護新法の対象として契約を組むことになります。

発注先の報酬水準を事前に把握しておきたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような年収データベースを参考にすると、見積もりが相場から極端にズレていないかを確認しやすくなります。また、事務代行やライティングを依頼する在宅ワーカーのスキルを見極める材料として、ビジネス文書検定のような資格の有無を判断基準に加える発注者も増えています。ITに近い業務であればCCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク系資格を持つ人材かどうかも、発注先選定の目安になります。

受発注そのものの仕組みをデジタル化したいという相談も増えています。FAXや紙の発注書でやり取りしている事業者は、受発注システムのクラウド化2026|FAXから脱却してIT導入補助金を活用する方法で紹介されているように、IT導入補助金を活用してクラウド化するのも一つの選択肢です。AI関連の開発業務を外注したい場合はAI開発をフリーランスに外注する方法|費用相場と発注のポイント、SNS運用の外注を検討している場合はSNS運用代行 フリーランスで稼ぐ!発注者視点で成功の秘訣と注意点を解説も、発注時の注意点を具体的に押さえるうえで参考になります。

独自データ考察:直接取引が生む「手取りの厚さ」という構造

20年近くフリーランス・在宅ワーク市場を見てきた運営者の立場から言えば、長く継続する発注関係ほど、単発の作業依頼で終わらせず「この人に任せると安心できる」という信頼関係の構築に時間をかけている傾向があります。工賃や報酬の額そのものよりも、支払期日を守る、業務内容を明確に伝える、フィードバックを具体的に返すといった、契約書に書ききれない部分の丁寧さが、結果的に良い在宅ワーカーとの継続的な関係につながっています。

もう一つ、運営者として見てきた実感があります。それは、中間マージンが乗らない直接取引が生む「手取りの厚さ」という構造です。仲介業者を挟まず発注者と在宅ワーカーが直接契約を結ぶと、同じ予算でも発注者はより多くの作業量を依頼でき、在宅ワーカー側は同じ作業量に対してより多くの手取りを得られます。金額の絶対値だけを見るのではなく、双方にとっての「手取りの厚さ」が増えるという質的な変化として捉えると、直接取引のメリットが実感しやすくなります。もちろん、直接取引には契約管理や品質確認といった手間が発生するため、この記事で紹介した契約書のチェックリストや支払期日のルールを、発注者側できちんと運用することが前提になります。

法律は、発注者にとって「守らなければならない義務」であると同時に、在宅ワーカーとの取引を安心して続けるための土台でもあります。家内労働法もフリーランス保護新法も、正しく理解して使い分ければ、決して発注のハードルを上げるものではありません。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 在宅ワーカーへの発注が家内労働法とフリーランス新法のどちらに当てはまるか分からない場合はどうすればいい?

まず材料・部品を発注者側が支給しているか、業務が「物品の製造・加工」かサービス業かを確認してください。判断が難しい場合は労働局や行政書士など専門家への相談をおすすめします。

Q. 家内労働法の対象になる発注で、口頭だけの依頼は問題になる?

問題になります。家内労働法では業務委託のたびに工賃額や支払期日などを記載した家内労働手帳の交付が義務づけられており、口頭のみの発注は法律違反にあたる可能性があります。

Q. 仲介会社を使わずフリーランスに直接発注する場合、何を準備すればいい?

業務内容・報酬・支払期日・検収基準・秘密保持条項を盛り込んだ契約書や発注書を用意してください。品質管理や進捗確認も発注者側で行う体制を整えておくと安心です。

Q. 家内労働法とフリーランス新法で支払期日のルールはどう違う?

家内労働法は物品受領日から原則1か月以内の支払いが基本です。フリーランス新法は給付受領日から60日以内のできるだけ早い期日に報酬を支払う義務があるとされています。

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この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月17日最終更新:2026年7月31日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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