ハンドメイド作品で購入者がケガをした時の責任|個人作家とPL保険 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
ハンドメイド作品で購入者がケガをした時の責任|個人作家とPL保険 2026

この記事のポイント

  • ハンドメイド作品の販売でPL保険はなぜ必要なのか
  • 加入時の注意点までを個人作家向けに整理して解説します

ハンドメイド作品を販売していて、「もし購入者がケガをしたらどうなるのか」と不安になったことはないでしょうか。結論から言うと、個人が趣味の延長で作った作品であっても、販売した時点で法律上の責任を問われる可能性があります。この記事では、ハンドメイド作家が知っておくべきPL法(製造物責任法)の基本と、PL保険(生産物賠償責任保険)の補償内容、加入時の注意点までを整理します。

PL保険とハンドメイド作家の関係を整理する

「PL保険」の意味を最初に押さえる

PL保険とは、Product Liability(生産物賠償責任)保険の略で、自分が製造・販売した製品が原因で他人の身体や財産に損害を与えた場合の賠償責任をカバーする保険です。企業向けの保険というイメージを持つ人が多いですが、実際には個人のハンドメイド作家も加入できる商品が複数存在します。年間数千円程度の保険料で、数千万円単位の賠償責任に備えられるプランが一般的です。

なぜハンドメイド作家にPL保険の話がついて回るのか

理由は明確で、ハンドメイド作品も「製造した物」として扱われるためです。手作りだから、個人だから、趣味だから、という理由で責任が軽くなるわけではありません。アクセサリーの金具が外れて誤飲した、キャンドルの容器が割れてやけどをした、といった事故は実際に報告されており、賠償請求に発展したケースも存在します。次章では、この責任の根拠となるPL法の内容を具体的に見ていきます。

ハンドメイド作品の販売とPL法(製造物責任法)の適用範囲

PL法(製造物責任法)とは何か

PL法は1995年に施行された法律で、製造物の欠陥によって生命・身体・財産に損害が生じた場合、製造業者が過失の有無にかかわらず賠償責任を負うことを定めています。通常の民法上の不法行為責任では被害者側が「製造者の過失」を証明する必要がありますが、PL法では「製品に欠陥があったこと」と「その欠陥によって損害が生じたこと」を証明すればよく、被害者にとってはハードルが下がる制度設計になっています。裏を返せば、作り手側にとっては過失がなくても責任を問われる可能性がある、ということです。

「製造」とみなされる行為の範囲

PL法上の「製造業者」には、原材料を加工して新たな製品を作り出した人が含まれます。アクセサリー作家がパーツを組み合わせてピアスやネックレスを作る行為、レザークラフト作家が革を裁断・縫製してバッグを作る行為はいずれも「加工」にあたり、PL法の対象になり得ます。単に既製品を仕入れて転売するだけであれば製造業者には該当しませんが、少しでも手を加えて新しい製品として販売する場合は注意が必要です。委託販売やハンドメイドマーケットプレイス経由での販売であっても、実際に製造した人が責任を負う点は変わりません。

個人でも法律上の責任は逃れられない

「個人の趣味だから」「営利目的ではないから」という理由でPL法の適用が除外されるわけではありません。継続的に販売行為を行っている場合、税務上は事業所得や雑所得として扱われることが多く、法律上も一事業者として扱われる可能性が高いといえます。副業としてハンドメイド作品を販売している人ほど、この点への理解が不足しがちなので、早い段階でリスクを把握しておくことが重要です。

PL保険(生産物賠償責任保険)の補償内容と仕組み

補償される損害の範囲

PL保険は、大きく分けて以下の損害を補償します。

・治療費などの人的損害(購入者がケガをした場合の治療費、通院費、慰謝料など) ・物的損害(作品が原因で他の家財や衣類などが破損した場合の損害賠償) ・訴訟対応費用(弁護士費用や訴訟にかかる諸経費)

補償の対象となるのは、あくまで「製品の欠陥が原因」で発生した事故です。購入者の誤った使用方法によるものや、経年劣化による損傷は補償対象外になるケースが多いため、契約前に約款をよく確認する必要があります。

保険料の相場とプランの違い

個人向けのPL保険は、年間2,000円から1万円程度の保険料で加入できるプランが多く見られます。補償限度額は1,000万円から1億円まで幅があり、限度額が高くなるほど保険料も上がる仕組みです。プラットフォーム(ハンドメイドマーケットや作家支援団体など)が提携している団体保険の場合、個人で単独契約するより割安になっていることもあります。年間の販売点数や取り扱う品目(食品に近いもの、子ども向け製品など)によってリスクの度合いが変わるため、自分の活動内容に合ったプランを選ぶことが大切です。

免責金額・支払い上限の考え方

多くのPL保険には「免責金額」が設定されており、少額の損害については自己負担になる仕組みです。たとえば免責金額が1万円のプランであれば、損害額がそれ以下の場合は保険金が支払われません。免責金額が低いプランほど保険料は高くなる傾向があるため、想定されるトラブルの規模感に応じてバランスを取る必要があります。また、1事故あたりの支払い上限と、保険期間中の総支払い上限(年間ベース)が別々に設定されていることが一般的なので、この2つの数字を混同しないよう注意しましょう。

実際に起きているトラブル事例から見る責任の重さ

アクセサリーの金属アレルギー

ハンドメイドアクセサリーで特に多いのが金属アレルギーのトラブルです。ニッケルフリーやサージカルステンレスといった低刺激性素材を使っていても、個人差によってアレルギー反応が出ることがあります。作品説明に使用素材を明記していなかった場合、購入者が事前に確認できなかったとして責任を問われるリスクが高まります。素材表示を丁寧に行うことは、PL保険加入と並んでリスク回避の基本といえます。

キャンドル・石鹸などの化学製品リスク

キャンドルや石鹸、アロマ製品などは、燃焼や化学反応を伴うため事故の危険性が相対的に高いジャンルです。容器の耐熱性が不十分で割れた、香料の配合ミスで肌トラブルが起きた、といった事例が報告されています。こうした製品を扱う作家は、一般的なアクセサリー作家よりも手厚い補償のプランを検討したほうがよいでしょう。

子ども用おもちゃ・ベビー用品の誤飲事故

ベビー用のおしゃぶりホルダーや布おもちゃなど、子ども向けの製品は誤飲事故のリスクが常につきまといます。パーツが外れて口に入る、縫製が甘くて中材が出てしまう、といった事故は重大な結果につながりかねません。子ども向け製品を扱う作家ほど、補償限度額の高いプランへの加入を強く検討すべき分野です。

PL保険加入時に押さえておきたい注意点

補償対象外になりやすいケース

PL保険は万能ではありません。以下のようなケースは補償対象外になりやすい点に注意が必要です。

・購入者が説明書や注意書きを無視した誤った使用方法によって発生した事故 ・製品自体の欠陥ではなく、経年劣化や自然消耗による損傷 ・故意または重大な過失によって発生した事故 ・保険契約前に発生していた事故

こうした除外条件は保険会社やプランによって細部が異なるため、契約前に約款を読み込み、不明点は問い合わせて確認しておくことをおすすめします。

イベント出店・委託販売先からの加入要請

近年は、ハンドメイドイベントの主催者や委託販売先(雑貨店、セレクトショップなど)が出店条件・取引条件としてPL保険加入を求めるケースが増えています。

ハンドメイドアクセサリーの展示会やイベント、委託販売先によっては、PL保険の加入が条件として規定されていることも少なくありません。インターネットで販売している方も、いつ賠償責任を請求されるかわかりません。加入しておくと安心して作家活動に専念できますよ。 出典: note.com

この指摘の通り、実店舗での対面販売だけでなくネット販売でもリスクは同様に存在します。イベント出店を予定している作家は、事前に主催者側の条件を確認し、必要であれば早めに加入手続きを進めておくとよいでしょう。

複数の販売チャネルをまたぐ場合の扱い

自分のオンラインショップ、ハンドメイドマーケットプレイス、委託販売、イベント出店など、複数のチャネルで販売している作家は少なくありません。保険プランによっては「対面販売のみ」「通信販売のみ」といった条件が付いている場合もあるため、自分の販売スタイルすべてをカバーできるプランかどうかを事前に確認しておく必要があります。

個人事業主・副業作家がPL保険を選ぶポイント

保険料と補償額のバランス

保険選びで最も重要なのは、自分の年間販売規模や取り扱う品目のリスク度合いに合った補償額を選ぶことです。副業として小規模に始めたばかりの段階であれば、補償限度額1,000万円程度のライトなプランでも十分なケースがあります。一方で、子ども向け製品や食品に近い製品を扱う場合は、限度額1億円クラスのプランを検討したほうが安心です。

今回は、ハンドメイド作品を販売している方に向けて、PL保険(生産物賠償責任保険)に関する基礎知識を分かりやすく紹介します。 出典: hokentimes.com

加入窓口(保険会社・共済・プラットフォーム提携)

PL保険の加入窓口は主に3つのパターンに分かれます。1つ目は損害保険会社の代理店を通じた個別契約、2つ目は作家団体や職人組合が窓口となる団体制度、3つ目はハンドメイドマーケットプレイスが提携している保険プログラムです。団体経由やプラットフォーム提携の場合、個別契約より保険料が割安になることが多いため、まずは自分が利用しているマーケットプレイスや所属団体に該当の制度がないか確認するのが効率的です。

おすすめの検討フロー

保険選びに迷った場合は、以下の順番で検討を進めると整理しやすくなります。

・自分の年間販売点数と主な販売チャネルを洗い出す ・取り扱っている品目のリスク度合い(誤飲・アレルギー・化学反応など)を確認する ・所属団体やプラットフォームの提携保険の有無を確認する ・提携保険がない場合は損害保険会社に個別で見積もりを依頼する ・補償範囲・免責金額・支払い上限を複数プランで比較する

この5ステップを踏むことで、必要以上に高い保険料を払うことも、逆に補償不足で無保険状態に陥ることも避けやすくなります。

マクロ視点で見るハンドメイド市場とリスク管理の動向

ハンドメイド作品の個人売買市場は、フリマアプリやハンドメイドマーケットプレイスの普及によってこの数年で大きく拡大しました。副業としてハンドメイド販売を始める人が増える一方で、リスク管理に対する意識は個人差が大きいのが実情です。特に会社員が副業として始めるケースでは、本業の就業規則や税務上の扱いには気を配っても、PL保険のような賠償責任リスクへの備えは後回しにされがちな傾向が見られます。

正直なところ、これはどうかと思います。作品が売れることばかりに意識が向き、「もし事故が起きたら」という視点が抜け落ちてしまうのは、継続的に活動を続けるうえでのリスクとして軽視できません。保険料は年間数千円程度で済むケースが多く、活動を続けるための必要経費と捉えて早めに検討しておくのが合理的です。

ハンドメイド作家に限らず、フリーランス全般で見ても賠償責任リスクへの備えは共通の課題です。業種を問わず、成果物や業務内容が第三者に損害を与えた場合の責任について、あらかじめ整理しておく姿勢が求められています。フリーランスの損害賠償リスク|賠償責任保険の必要性と選び方では、ハンドメイド以外の職種も含めたフリーランス全般の賠償責任リスクと保険の考え方を整理しています。またフリーランスの賠償責任保険ガイド|IT・デザイン・ライター向けでは、IT・デザイン・ライターなど職種別に必要な補償内容の違いを解説しており、複数の業務を掛け持ちしている人にも参考になります。

独自データ考察: フリーランス・副業人材市場から見るリスク管理の重要性

20年この市場を見てきた立場から言えば、長く活動を続けているフリーランス・副業人材ほど、目先の売上よりも「継続して安心して活動できる体制づくり」に時間を割いている傾向があります。ハンドメイド作家も例外ではなく、保険加入や取引条件の整備といった地味な準備を怠らない人ほど、結果的に長期的な取引関係を築けているという実感があります。

運営者として見てきた限りでは、副業からスタートした人が本業に近い規模まで活動を広げていく過程で、必ずと言っていいほど「リスク管理の見直し」というフェーズを通過します。作品や成果物のクオリティだけでなく、万が一のトラブル時にどう対応できる体制になっているかが、取引先や委託販売先からの信頼につながっているためです。仲介手数料が発生しない直接取引の場では、そのぶん手取りが厚くなる一方、責任の所在も作り手自身に直接及びやすくなります。中間マージンが乗らない構造は、依頼者・受注者双方にとって金額面でのメリットが大きい反面、リスク管理を自分の責任で整えておく必要性も同時に高まる、という点は理解しておきたいところです。

会計・税務まわりの整備を進めている作家であれば、日々の売上・経費管理を効率化しておくことも大切です。事業として継続する意識を持つうえで、会計ソフトを使った記帳の習慣化は保険加入と並んで基本的な備えといえます。実際、事業規模が拡大するにつれて経理業務の負担も増えていくため、早い段階からクラウド会計サービスを活用している作家は少なくありません。

副業からハンドメイド作家としての活動を軸足に移していく人の中には、周辺スキルを活かして別の仕事に挑戦するケースも見られます。制作物の魅力を伝える文章力を磨いてライター業に広げる人もいれば、AI技術を業務効率化に取り入れる人も増えています。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、文章を扱う仕事の年収・単価の目安をまとめており、制作活動と並行して発信力を伸ばしたい作家にも参考になります。またビジネス文書の基礎を体系的に身につけたい場合はビジネス文書検定の情報も役立つでしょう。委託先とのやり取りやイベント主催者との契約条件のすり合わせなど、書面でのコミュニケーション力はハンドメイド作家としての活動を安定させるうえでも意外と重要なスキルです。

ハンドメイド販売という活動は、作品を作る技術だけでなく、事業として継続していくための管理体制も含めて成り立っています。PL保険への加入は、その体制づくりの中でも比較的手軽に着手できる一歩です。年間数千円の保険料で、思わぬ事故による経済的な打撃を防げると考えれば、決して高いコストではありません。作品を作り続けたいと願うなら、リスクへの備えも創作活動の一部として位置づけておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. ハンドメイド作品を趣味程度にしか販売していなくてもPL保険は必要ですか?

販売点数が少なくても、製品の欠陥が原因で事故が起きればPL法上の責任を問われる可能性があります。継続的に販売している場合は、規模に関わらず加入を検討することをおすすめします。

Q. PL保険の保険料相場はどのくらいですか?

個人向けプランでは年間2,000円〜1万円程度が一般的な相場です。補償限度額や取り扱う品目のリスク度合いによって保険料は変動します。

Q. ハンドメイドマーケットプレイスで販売していればPL保険は自動的に付いていますか?

プラットフォームによっては提携保険制度がある場合もありますが、自動的に全員が加入している状態ではないケースがほとんどです。利用しているマーケットプレイスの規約や制度を個別に確認する必要があります。

Q. 過去に一度も事故が起きていなければ加入しなくても大丈夫ですか?

過去に事故がなくても、将来的なリスクがなくなるわけではありません。特にイベント出店や委託販売を予定している場合は、条件として加入を求められることもあるため早めの検討が安心です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月15日最終更新:2026年8月29日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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