手作りジャムを販売するまでの手順|必要な設備と表示のきまり

中西 直美
中西 直美
手作りジャムを販売するまでの手順|必要な設備と表示のきまり

この記事のポイント

  • 手作りジャム 販売するにはどうすればいいのか
  • 製造場所の確保から保健所への事前相談
  • そしてマルシェ・委託販売・ネット販売・委託製造という販売先の選び方までを

「庭の梅やいちごが毎年余ってしまう」「友人に配ったジャムを、思いのほか喜んでもらえた」。そんなところから、手作りジャムを販売するにはどうすればいいのだろう、と調べ始める方はとても多いです。

そして多くの方が、最初の検索でつまずきます。「許可が必要らしい」「自宅の台所ではだめらしい」「ラベルの決まりが細かいらしい」。情報が断片的に飛び込んできて、結局どこから手をつければいいのか分からなくなる。大丈夫です。順番さえ分かれば、そんなに複雑な話ではありません。

この記事では、手作りジャムを販売するまでの流れを、実際に動く順番どおりに整理します。特に力を入れて書くのは「どこで売るか」の部分です。マルシェへの出店、お店に置いてもらう委託販売、ネット販売、そして自分で工房を持たずに許可を持つ工房へ製造を任せる方法。この4つは、必要な準備も初期費用もまったく違います。ここを先に決めておくと、設備の話も表示の話も一気に見通しがよくなります。

手作りジャムの販売は「どこで売るか」から逆算すると迷わない

多くの方は「まず許可を取らないと」と考えて、いきなり保健所のサイトを読み始めます。これ自体は間違いではないのですが、順番としてはもったいないのです。

理由はシンプルで、必要な許可も設備も表示も、すべて「誰に、どこで、どれくらいの量を売るか」で変わってくるからです。年に数回、地域のマルシェで100個ほど売りたい人と、ネットで通年販売して全国に発送したい人では、そろえるべきものがまるで違います。

たとえば、自分の工房を持たずに、菓子製造業などの営業許可を持つ工房へレシピを預けて作ってもらう方法を選べば、設備投資はほぼゼロになります。一方、自宅の一角を許可の下りる仕様に改装するなら、給湯設備や手洗い、区画の分離など、それなりの工事が必要になります。

「どちらが正解か」ではありません。あなたが年間どれくらい作りたいのか、どれくらいの時間をかけられるのか、いくらまでなら投資できるのか。そこから逆算するのが、いちばん遠回りに見えて近道です。

私がご相談を受けるとき、最初にお聞きするのはいつも「作ることと売ること、どちらの時間を増やしたいですか」です。この問いへの答えで、選ぶべき道はかなり絞れます。

この記事で扱う範囲と、扱わない範囲

先に整理しておきます。この記事の主題は、販売までの手順と、販売先の選び方です。

営業許可の細かい区分の判定や、食品表示ラベルに書くべき項目の一つひとつについては、記事の中で概要には触れますが、深掘りはしません。理由は、その2つが自治体や商品の内容によって運用が分かれる領域で、一般論を長く書くほど、かえって読者を誤らせるリスクがあるからです。

とりわけ営業許可と施設基準は、同じ都道府県の中でも保健所ごとに解釈や運用が異なることがあります。ネットで見つけた他県の事例をそのまま自分に当てはめて設備を整えてしまい、あとから作り直しになった、という話は本当によく聞きます。

必ず、あなたの製造場所を管轄する保健所に事前相談してください。これは面倒な手続きではなく、無料で受けられる、いちばん確実な情報源です。図面を持たずに、手書きのメモと「こういうものを作って、こう売りたい」という説明だけでも相談に乗ってもらえます。

マクロ視点で見る、手作りジャムの販売という選択肢

まず、市場の空気感を確認しておきましょう。感覚ではなく、構造として押さえておくと、値付けや売り先の判断がぶれにくくなります。

ジャム・スプレッド類は、国内では成熟した食品カテゴリです。大手メーカーの製品がスーパーの棚を占め、価格帯は200円台から500円前後が中心。ここで真正面から価格勝負をしても、個人が勝てる余地はほとんどありません。

一方で、個人や小規模生産者が作るジャムは、まったく別の棚に置かれています。1,000円前後から2,000円近い価格帯で、贈答用や自分へのごほうびとして買われる。ここでは「誰が、どこの果物で、どう作ったか」という物語が価格の一部になります。

この構造を支えているのが、いくつかの追い風です。地域の農産物を加工して付加価値をつける取り組みが各地で広がり、加工施設の貸し出しやシェアキッチンが増えました。ネットショップの開設費用は無料から始められるようになり、少量生産でも全国に届けられるようになりました。ギフト需要も、季節の限定品や小容量の詰め合わせに向かっています。

つまり、大量に安く作る勝負ではなく、少量を丁寧に作って、価値の分かる相手に届ける勝負なら、個人にも十分な余地があるということです。

ただし、誤解しないでいただきたいのは、これは「簡単に稼げる」という話ではないという点です。果物の仕入れ、瓶と資材、加工場所の利用料、送料。原価はしっかりかかります。作る時間も、想像よりずっと長い。ここを甘く見積もると、売れているのに手元にお金が残らないという状態になります。数字の話は記事の後半で具体的に扱います。

手作りジャムを販売するまでの5ステップ

全体像を先に出します。細部はこのあとで一つずつ広げていきます。

第1に、作るものと売る相手を決めます。何の果物を、どれくらいの量、誰に売りたいのか。第2に、製造場所を決めます。自宅改装、レンタルキッチン、貸し工房、委託製造の4択です。第3に、管轄の保健所へ事前相談します。第4に、必要な設備をそろえ、営業許可の申請と施設検査を受けます。第5に、表示ラベルを整え、販売チャネルを開きます。

この順番には意味があります。特に第2と第3を入れ替えないでください。設備を買いそろえてから相談に行くと、「その配置では許可が出ません」と言われたときに投資が無駄になります。相談が先、投資が後です。

では、手作りジャムをネットで販売するには、どのような資格や許可がいるのでしょうか。資格・許可の面をはじめ、手作りジャムをネット販売するときに押さえておきたいポイントを解説します。 出典: shop-pro.jp

ステップ1 作るものと売る相手を決める

ここで決めるのは3つです。素材、容量、想定する買い手。

素材は「手に入り続けるもの」を選ぶのが鉄則です。知人の畑からもらえるいちごが美味しいからと看板商品にしたら、翌年その畑が縮小して仕入れが途切れた、という話は珍しくありません。年間を通じて確保できるルートがあるか、なければ季節で商品を切り替える設計にするか。ここは最初に考えておいてください。

容量は、意外に売れ行きを左右します。一般的な家庭用は200g前後ですが、初めての相手に買ってもらうなら100g前後の小瓶のほうが手に取られやすい。逆にギフトセットなら小瓶を3個組み合わせる構成が定番です。瓶の単価は容量が小さいほど内容量あたりでは割高になるので、原価計算とセットで考えます。

想定する買い手は、できるだけ具体的に。「40代の女性」では粗すぎます。「自分用には買わないけれど、友人の手土産には1,500円くらいまで出す人」「朝食のパンにこだわりがあって、市販品では物足りない人」。このくらいまで絞ると、あとで売り先を選ぶときに判断が速くなります。

ステップ2 製造場所を4択から決める

ここが最大の分岐点です。詳しくは次の章でそれぞれ解説しますが、選択肢は自宅の改装、レンタルキッチンやシェアキッチンの時間借り、地域の加工施設や貸し工房の利用、そして許可を持つ工房への委託製造の4つです。

判断軸は、初期費用、月あたりの稼働時間、作れる量の3つ。この3つを紙に書き出して比べると、たいていの方は自然に答えが出ます。

ステップ3 管轄の保健所に事前相談する

製造場所の候補が決まったら、その場所を管轄する保健所へ相談に行きます。電話で「食品の製造販売を考えているので相談したい」と伝えれば、担当窓口につないでもらえます。

持って行くと話が早いのは、製造場所の見取り図(手書きで構いません)、作る予定の商品の内容、想定する製造量、販売の方法です。ここで「その内容ならこの許可が要ります」「この設備を追加してください」と具体的に教えてもらえます。

繰り返しになりますが、施設基準の運用には自治体差があります。他県の事例やネット記事を根拠に工事を進めるのは避けてください。相談は無料で、たいてい1回30分ほどです。この30分が、あとの数十万円を守ります。

ステップ4 設備をそろえて申請する

保健所から示された基準に沿って設備を整え、申請書を提出し、施設検査を受けます。検査に通れば営業許可証が交付されます。申請から交付までの期間は自治体によりますが、検査の日程調整を含めて2週間から1ヶ月程度をみておくと安心です。

あわせて、食品衛生責任者の資格が必要になります。各地の食品衛生協会が開催する養成講習会を1日受ければ取得できるもので、栄養士や調理師などの資格をお持ちの方は講習が免除されることがあります。申し込みから受講まで日数がかかる地域もあるので、早めに動いておくと全体のスケジュールが詰まりません。

また、2021年の食品衛生法改正で、原則としてすべての食品等事業者にHACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められるようになりました。小規模事業者向けには簡略化された手引書が用意されており、業界団体が公開しているものを使って記録を残す形が一般的です。制度の概要は厚生労働省のサイトで確認できます。

ステップ5 表示ラベルを整えて売り先を開く

包装して販売する食品には、食品表示法にもとづく表示が必要です。名称、原材料名、添加物、内容量、賞味期限、保存方法、製造者の氏名と所在地、そしてアレルゲンや栄養成分に関する事項などを、決められた様式で表示します。

ジャムで特につまずきやすいのは、糖度による名称の区分、酸味料やペクチンを使った場合の添加物表示、そして製造者住所の記載です。自宅を製造場所にする場合、住所がラベルに載ることになるので、この点は事前に家族と相談しておいたほうがいいでしょう。

表示の詳細は商品ごとに判断が分かれるため、保健所や消費生活センターの表示相談窓口で、実際のラベル案を見てもらうのが確実です。ラベルを大量に印刷してから間違いが見つかると、そのまま損失になります。

製造場所の4つの選択肢を比べる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。多くの方が「自宅で作れないなら無理だ」と諦めてしまうのですが、選択肢はもっとあります。

自宅の一角を許可仕様に改装する

自宅に営業許可を取る方法です。ポイントは、家庭用の台所とは別に、製造専用の区画を確保することにあります。生活空間と明確に区切られていること、専用の手洗い設備があること、給湯できること、床や壁が清掃しやすい素材であること。このあたりが典型的な要件です。

メリットは、いったん整えてしまえば移動時間がゼロで、思い立ったときに作れること。家事や育児の合間に少しずつ進められるのは、在宅で仕事をする方にとって大きな価値です。

デメリットは初期費用です。既存の部屋を転用できる場合でも、シンクの増設や内装工事で数十万円、水回りから新設するなら100万円を超えることもあります。賃貸住宅の場合は、そもそも工事の許可が下りないケースが多い点にも注意が必要です。

レンタルキッチン・シェアキッチンを時間借りする

営業許可を取得済みの調理施設を、時間単位で借りる方法です。都市部を中心に、この数年でかなり増えました。

料金は地域や設備によって幅がありますが、1時間あたり1,000円から3,000円程度が一つの目安です。初期費用がほぼかからず、試作段階から本番まで同じ場所で進められるのが最大の利点です。

注意点が2つあります。1つは、施設が持つ営業許可の区分に、あなたが作りたいものが含まれているかどうか。もう1つは、施設の許可とは別に、あなた自身の営業許可が必要になる場合があるという点です。ここは施設側と保健所の両方に確認してください。

もう1つ実務的な注意を挙げると、器具や仕込みの持ち込みと持ち帰りに、想像以上の時間がかかります。片道の移動と搬入搬出で2時間が消える、というのはよくある話です。予約枠は余裕をもって押さえてください。

地域の農産物加工施設や貸し工房を使う

自治体や農業関連団体が運営する加工施設を、登録して利用する方法です。地域の農産物を加工して販売する取り組みを支援する目的で整備されているところが多く、利用料が民間のレンタルキッチンより抑えられている場合があります。

大型の釜や充填機、殺菌設備など、個人ではそろえにくい機材が置かれていることも多く、一度に作れる量が段違いに増えます。年間である程度まとまった数を作りたい方には有力な選択肢です。

探し方としては、お住まいの市区町村や都道府県の農林部局、地域の農業協同組合、産業振興センターなどに問い合わせるのが確実です。ウェブに情報が出ていない施設もあるため、電話で聞くほうが早いことが多いです。

菓子製造業などの許可を持つ工房へ委託製造する

自分では作らず、許可を持つ工房にレシピを預けて製造してもらう方法です。いわゆるOEMと呼ばれる形です。

この選択肢は、あまり知られていないわりに、実は現実的な解になるケースが多いと感じています。設備投資が不要で、営業許可の取得も自分では要りません。あなたがやるのは、レシピの設計、素材の選定、パッケージやラベルの用意、そして売ることです。

最小ロットは工房によりますが、100個程度から受けてくれるところもあれば、500個以上でないと受けないところもあります。1個あたりの製造単価は自作より高くなりますが、設備投資と自分の作業時間を金額に換算すると、少量多品種でなければ委託のほうが安く済むこともあります。

デメリットは、細かな味の調整がしにくいこと、そして「自分の手で作っている」という物語が弱くなることです。手作りであることを前面に出したいブランドとは相性が悪い場合があります。ただし、素材の産地や配合を自分で決めているなら、そこを軸に語ればいいだけです。

私が以前ご相談を受けた方で、自宅の改装費を工面できずに諦めかけていた方がいました。その方に委託製造という選択肢を伝えたところ、まずは小ロットで作って地域のイベントで反応を見て、手応えがあってから自分の工房を考えると決められました。「作れないから無理」ではなく、「今は作らない道を選ぶ」と考えられたことで、前に進めたのだと思います。

販売先の選び方が、いちばん収支を左右する

ここからが本題です。同じジャムでも、どこで売るかによって、手元に残る金額も、必要な作業時間も、まったく変わります。

マルシェ・イベント出店

地域のマルシェ、朝市、クラフトフェア、寺社の縁日など、対面で売る場です。

出店料は規模によりますが、地域のマルシェなら1日3,000円から10,000円程度、大規模なクラフトイベントでは2万円を超えることもあります。売上に対する歩合を求められる形式もあります。

最大の価値は、売れることそのものより「反応が見えること」にあります。どの味が手に取られるか、どの価格帯で財布が開くか、パッケージのどこを見られるか。ネット販売では絶対に得られない情報が、1日で大量に入ってきます。

初めて売るなら、まずここから始めるのを強くおすすめします。理由は、在庫リスクが小さく、失敗しても学びが残るからです。

注意点としては、イベントによっては保健所への出店届が別途必要になること、常温での陳列条件が指定されることがあります。主催者の案内を必ず確認してください。また、当日の売上は天候に大きく左右されます。雨のマルシェで売上が3分の1になるのは、珍しいことではありません。

委託販売(道の駅、直売所、雑貨店、カフェ)

商品をお店に置いてもらい、売れた分だけ精算する方法です。

販売手数料は、道の駅や農産物直売所で15%から20%程度、雑貨店やセレクトショップでは30%から40%程度が目安です。買い取りではなく委託なので、売れ残りは自分に返ってきます。

この方式の良いところは、自分が現場にいなくても売れることです。作る時間を確保しながら販路を持てるのは、副業として続けるうえで大きい。

一方で見落とされがちなのが、賞味期限の管理と補充の手間です。棚に置いた商品が動いているか、期限が近づいていないか、定期的に確認して入れ替える必要があります。店舗数が増えるほど、この巡回が負担になります。最初は2店舗から3店舗に絞って、回せる範囲を確かめるのが現実的です。

置いてもらう交渉のコツは、「置いてください」ではなく「この棚に合うと思って持ってきました」と伝えることです。そのお店が何を大事にしているかを見てから話を持っていくと、通る確率が変わります。

ネット販売(自社カート、モール、ハンドメイドマーケット)

インターネットで売る方法は、大きく3種類に分かれます。

1つ目は、自分でネットショップを開設する方法です。初期費用と月額が無料で始められるサービスがあり、売れたときの決済手数料などを差し引く形が主流です。手数料の合計はおおむね3%から7%程度に収まることが多く、利益率という点ではもっとも有利です。ただし、自分で集客しないと1個も売れません。

2つ目は、大手モールへの出店です。集客力は圧倒的ですが、月額固定費と販売手数料の両方がかかり、価格競争にも巻き込まれやすい。少量生産の個人が最初に選ぶ場としては、ハードルが高めです。

3つ目は、ハンドメイド作品や産地直送品を扱うマーケットプレイスです。手数料は10%から20%程度が中心。作り手を探しに来ている買い手が集まっているので、無名でも見つけてもらえる可能性があります。

食品をネットで売る場合の実務的な注意は、送料と梱包です。ガラス瓶は重く、割れます。緩衝材と外箱をきちんと用意すると、1個あたりの梱包資材費で100円から200円はかかります。送料を商品価格に含めるか別途にするかで、売れ行きも利益も変わるので、ここは早めに決めておいてください。

また、ネットで通信販売を行う場合は、特定商取引法にもとづく表示をショップ内に掲載する必要があります。氏名または名称、住所、電話番号などを表示する義務があるため、自宅住所を出したくない場合の対応は事前に検討しておきましょう。

卸・ギフト・法人向け

数量がまとまってきたら、買い取りでの卸や、法人のギフト需要という道もあります。

卸の場合、掛け率は60%から70%程度が一般的です。委託より利益率は下がりますが、売れ残りリスクを負わずに済み、まとまった数が一度に動きます。

企業の周年記念品、ホテルのアメニティ、ブライダルの引き出物など、法人向けのギフトは単価も数量も安定します。ただし、納期を守れる生産体制と、一定の品質のばらつきの少なさが求められます。委託製造を選んでいる場合は、この領域と相性がいいです。

販売チャネルの比較

販売先 手数料の目安 初期費用 向いている段階
マルシェ・イベント 出店料3,000円〜2万円 什器代のみ 立ち上げ直後、反応を見たい時期
委託販売(直売所) 15〜20% ほぼ不要 定番商品ができた段階
委託販売(雑貨店) 30〜40% ほぼ不要 ブランドを見せたい段階
自社ネットショップ 3〜7% 無料から可能 既に知ってくれる人がいる段階
ハンドメイドマーケット 10〜20% 無料から可能 新規の買い手を探す段階
卸・法人ギフト 掛け率60〜70% 不要 安定生産できる段階

この表を見て、「手数料の低いネットショップが一番いいのでは」と思われたかもしれません。でも実際には、知ってくれている人がゼロの状態でネットショップを開いても、注文は来ません。

順番としては、まずマルシェで顔を合わせて売り、そこで買ってくれた人にネットショップの存在を伝え、リピートをネットで受ける。この流れがもっとも自然です。委託販売は、その両方が回り始めてから足していくと負担が少なくて済みます。

原価と価格を、感覚ではなく数字で押さえる

ここを飛ばすと、忙しいのにお金が残らない状態になります。簡単でいいので、必ず一度計算してください。

内訳は大きく5つです。果物と砂糖などの材料費、瓶とフタとラベルの資材費、加工場所の利用料または設備の償却、自分の作業時間、そして販売先に払う手数料。

たとえば200g入りのジャムを1,200円で売るとします。材料費が250円、瓶とラベルで150円、加工場所の利用料を1個あたりに割ると100円。ここまでで500円です。雑貨店に手数料35%で置いてもらうと420円が引かれ、手元に残るのは280円

この280円から、自分の作業時間の対価を出すことになります。仕込みから瓶詰め、ラベル貼りまでを含めて1回の作業で40個作れたとして、作業が6時間かかったなら、時給換算はおよそ1,860円です。悪くない数字に見えますが、ここには材料の買い出しや店舗への納品、経理の時間が入っていません。

多くの方が最初に驚くのは、材料費より資材費と時間のほうが効いてくるという事実です。瓶は安くありませんし、ラベル貼りは思った以上に時間を食います。だからこそ、価格を下げすぎない設計が大事になります。

価格を決めるときは、周りの手作りジャムを見て「これくらいかな」と決めるのではなく、この計算をしてから決めてください。そして、計算の結果が厳しいなら、値段を上げるか、容量を変えるか、販売先を変えるかの3択で調整します。値下げは最後の手段です。

つまずきやすいポイントと、その避け方

ご相談を受けていて、繰り返し出てくるパターンをいくつか挙げておきます。

1つ目は、設備を先に買ってしまうことです。「これがあると便利」とネットで見た機材を買いそろえてから保健所に行き、配置がだめだと言われる。相談が先です。

2つ目は、ラベルの作り直しです。表示に不備が見つかって、印刷済みのラベル1,000枚が使えなくなる。最初は少部数で刷って、確認してもらってから量産してください。

3つ目は、季節の見誤りです。ジャムは秋から冬にかけて動きが良く、夏は鈍ります。夏に大量の在庫を抱えて焦る、という流れは典型的です。賞味期限と季節性をセットで考えてください。

4つ目は、頑張りすぎることです。作って、売って、発送して、SNSも更新して、と全部を一人でやろうとすると、半年ほどで疲れが出ます。これは本当に多いです。最初から全部やらないでください。売り先は1つか2つに絞って、回るようになってから足す。それで十分間に合います。

5つ目は、家族との合意です。自宅を製造場所にするなら、生活空間と住所の扱いについて、事前に話しておくこと。あとから摩擦になると、事業そのものが続けにくくなります。

準備期間の収入をどう支えるか

正直にお伝えすると、許可を取って、商品を整えて、売り先を開くまでには時間がかかります。早い方でも数ヶ月、じっくり進める方なら1年近く。その間、収入がゼロというのは、精神的にかなりこたえます。

だからこそ、準備期間を支える別の収入源を持っておくことを、私はいつもおすすめしています。在宅でできる仕事と組み合わせておくと、焦って安売りしたり、納得できない条件で卸したりせずに済みます。

在宅で働くリズムをどう作るかについては、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。家事や家族の予定と仕事の時間をどう配置しているか、実際の1日の流れが載っているので、ジャム作りの仕込み時間を組み込むときの下敷きになります。

作業時間そのものを短くしたい方には、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが役に立ちます。ラベル貼りのような単純作業をどう区切ると疲れにくいか、考え方として応用できます。

これから在宅の仕事を探す段階なら、在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説を先に読んでおくと、遠回りが減ります。怪しい募集の見分け方も書かれているので、初めての方ほど目を通しておく価値があります。

商品説明文やショップのプロフィールを自分で書くことになるので、文章の基礎を整えておくのも遠回りではありません。ビジネス文書検定は、取引先とのやりとりや納品書、案内文の書き方を体系的に学べる資格で、卸や委託販売の交渉場面でそのまま効いてきます。文章を書く仕事そのものの相場感を知りたい方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別のデータがまとまっています。

開業にあたって資金が必要になる場合は、日本政策金融公庫の創業関連の融資制度を調べておくと選択肢が広がります。自己資金だけで無理に工事を進めるより、条件を確認してから判断したほうが安全です。

市場を長く見てきた立場からの観察

ここからは、フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場からの、現場の実感を書きます。

長く続く人と、途中で止まってしまう人の違いは、腕の良し悪しではありません。売り先との関係を、単発の取引ではなく継続の関係として設計できているかどうかです。

運営者として見てきた限りでは、うまくいく方は「1回売る」ことより「もう一度声をかけてもらえる状態」に時間を使っています。納品の期日を守る、在庫の連絡をこちらから入れる、季節の商品を先に提案する。派手さはありませんが、こういう積み重ねが、翌年の棚を確保します。逆に、味には自信があっても、連絡が遅かったり在庫を切らしたりする方は、いつのまにか棚から消えていきます。

もう1つ、20年この市場を見てきた立場から言えることがあります。それは、中間に人が挟まるほど、作り手の手取りは薄くなるという単純な事実です。

同じ1,200円の商品でも、間に何段階も入れば、作り手に残るのは数百円になります。一方で、買い手と直接つながっている場合は、同じ予算でも作り手の手取りが厚くなり、買い手のほうも同じ金額でより多く手に入れられる。この構造は、ジャムでも、在宅の仕事でも、まったく同じです。

在宅ワークの世界でも、手数料0%で直接つながれる場は、金額の大小ではなく「手取りが厚い」という質の面で効いてきます。同じ仕事量でも手元に残る額が違えば、続けられる期間が変わる。続けられる期間が変われば、たどり着ける場所が変わります。ジャムの販売先を選ぶときも、目先の売上ではなく、手数料を引いたあとに何が残るかで比べてみてください。

そしてもう1つ。これは20年見てきて、はっきり言えることです。最初から完璧を目指した方より、小さく始めて直し続けた方のほうが、結果的に遠くまで行っています。

データから見える、続けられる人の共通点

在宅で働く方の相談を受けてきた中で、続いている方には共通する行動があります。

第1に、作業時間を記録していること。何にどれだけ時間がかかっているかを知らないと、値付けも、やめる判断もできません。ノートでも表計算でも構わないので、月に一度は見返してください。

第2に、収入の柱を2本以上持っていること。ジャムだけに賭けている方より、在宅の仕事と組み合わせている方のほうが、明らかに長く続いています。これは稼ぎの多さの問題ではなく、心の余裕の問題です。1本しかないと、どうしても目先の判断が焦ります。

第3に、相談できる相手がいること。同じように小さく作って売っている人と、月に一度でも話す場があるかどうか。孤独な状態で悩みを抱え込むと、判断が内向きになっていきます。マルシェで隣り合った出店者と連絡先を交換しておく、というだけでも違います。

第4に、休む日を先に決めていること。「売れたら休む」ではなく「この日は作らない」と先に決めておく。これができている方は、繁忙期を越えたあとも失速しません。

手作りジャムの販売は、許可や設備の話が前面に出るせいで、事務手続きの話に見えがちです。でも実際に続けるうえで効いてくるのは、こうした働き方の設計のほうです。

あなたが今、どの段階にいても大丈夫です。まずは管轄の保健所に電話をかけて、相談の予約を取るところから始めてみてください。その一歩で、見えている景色がかなり変わります。

よくある質問

Q. 自宅の台所で作ったジャムを販売してもいいですか?

家庭用の台所をそのまま使って販売することは原則できません。生活空間と区切られた製造専用の区画、専用の手洗い設備、給湯設備などを備え、営業許可を取得する必要があります。基準の運用は自治体ごとに異なるため、工事や設備の購入を進める前に、必ず管轄の保健所へ事前相談してください。相談は無料です。

Q. 自分で工房を持たずにジャムを販売する方法はありますか?

あります。菓子製造業などの営業許可を持つ工房にレシピを預けて製造してもらう委託製造なら、設備投資も自分の営業許可も不要です。最小ロットは工房により100個程度から500個以上までさまざまで、1個あたりの単価は自作より高くなります。ほかに、許可を取得済みのレンタルキッチンや地域の農産物加工施設を時間単位で借りる方法もあります。

Q. 販売先はどこから始めるのがいいですか?

まずは地域のマルシェやイベント出店をおすすめします。出店料は1日3,000円から2万円程度で在庫リスクが小さく、どの味が手に取られるか、どの価格帯で売れるかという反応がその日のうちに分かります。そこで買ってくれた人にネットショップを案内してリピートを受け、回り始めてから委託販売を足していく流れが無理がありません。

Q. 販売にかかる手数料はどれくらい見ておけばいいですか?

販売先によって大きく違います。自社のネットショップは合計3%から7%程度、ハンドメイドマーケットは10%から20%程度、農産物直売所は15%から20%程度、雑貨店やセレクトショップでの委託販売は30%から40%程度が目安です。卸は掛け率60%から70%が一般的です。材料費と資材費に手数料を足したうえで、手元にいくら残るかを計算してから価格を決めてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月19日最終更新:2026年8月3日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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