フリーランスの損害賠償リスク|知っておくべきケースと備え方


この記事のポイント
- ✓フリーランスが直面しうる損害賠償リスクを解説
- ✓納期遅延など具体的なケースと
- ✓保険での備え方まで詳しく紹介します
「フリーランスでも損害賠償を請求されることがあるんですか?」——はい、あります。しかも、会社員時代には考えもしなかったような金額を、個人で背負うことになります。
会計事務所でさまざまな企業の紛争案件を見てきた経験から断言できますが、フリーランスの損害賠償リスクは決して他人事ではありません。
この記事では、フリーランスが知っておくべき損害賠償のケースと、自分を守るための備え方を解説します。
フリーランスに損害賠償が発生するケース
ケース1:納品物の不具合による損害
エンジニアのAさんが開発したECサイトにバグがあり、決済処理が正しく動作しませんでした。クライアントは3日間にわたって売上を失い、損害額は約150万円に。
Aさんの受注金額は80万円でしたが、損害賠償請求は150万円。受注金額を大幅に上回る請求でした。
ケース2:情報漏洩
ライターのBさんは、取材で得たクライアント企業の未発表製品情報を、うっかりSNSに投稿してしまいました。
NDA(秘密保持契約)違反として、損害賠償300万円を請求されました。
ケース3:納期遅延による機会損失
デザイナーのCさんは、広告キャンペーン用のバナーの納品が1週間遅れました。キャンペーン開始日に間に合わず、クライアントは広告出稿のタイミングを逃しました。
広告費の損失として200万円の賠償を求められました。
ケース4:著作権侵害
デザイナーのDさんが納品したロゴが、他社の商標に酷似していたことが後から発覚。クライアント企業はロゴの変更を余儀なくされ、名刺・封筒・看板などの作り直し費用として250万円を請求されました。
ケース5:第三者への損害
Webサイトを制作したフリーランスのEさん。そのサイトのセキュリティ脆弱性から、サイト訪問者の個人情報が漏洩。クライアントが訪問者への賠償・対応に費やした費用のうち、制作者の責任分として500万円を請求されました。
損害賠償額の相場感
| ケース | 賠償額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 納品物の修正・やり直し | 受注金額と同額程度 | 最も軽いケース |
| 納期遅延による損害 | 数十万〜数百万円 | 機会損失の算定次第 |
| 情報漏洩(NDA違反) | 数百万〜数千万円 | 漏洩した情報の価値による |
| 著作権侵害 | 数十万〜数百万円 | 商標権侵害を含むと高額に |
| 第三者への損害 | 数百万〜数千万円 | 最も高額になりうる |
ここ、意外と見落としがちなんですが、損害賠償は受注金額とは無関係に、実際の損害額が基準になります。5万円の案件で500万円の賠償を請求されることもありえます。
損害賠償リスクを減らす5つの備え
備え1:契約書に賠償上限を設ける
最も重要な備えは、契約書に損害賠償の上限額を明記することです。
推奨条項例:
本契約に関連して乙がを甲に対して負う損害賠償の
上限額は、本業務に係る報酬総額を上限とする。
また、間接損害、逸失利益、特別損害については
賠償の責を負わないものとする。
| 賠償上限の設定パターン | 推奨度 |
|---|---|
| 報酬総額を上限とする | 推奨 |
| 報酬総額の2倍を上限とする | 許容範囲 |
| 上限なし(一切の損害を賠償) | 危険 |
備え2:フリーランス向け賠償責任保険に加入する
万が一の事態に備えて、フリーランス向けの賠償責任保険に加入しておくことを強くお勧めします。
主なフリーランス向け保険:
| 保険 | 月額保険料目安 | 賠償限度額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| フリーランス協会の保険 | 会費込み約830円/月 | 最大5,000万円 | 年会費10,000円で自動付帯 |
| FREENANCE あんしん補償 | 無料〜 | 最大5,000万円 | 口座開設で自動付帯 |
| 個人事業主向け賠責保険 | 2,000〜5,000円/月 | 最大1億円 | カスタマイズ可能 |
月額1,000〜3,000円程度の投資で、数百万円〜数千万円のリスクをカバーできます。
備え3:納品前のチェック体制を整える
損害賠償の多くは、納品物の品質問題から発生します。
- コードレビュー・テストの実施(エンジニア)
- 商標調査の実施(デザイナー)
- ファクトチェック(ライター)
- 著作権侵害がないかの確認(全職種)
備え4:プロジェクト管理の証跡を残す
トラブル発生時に「言った・言わない」を防ぐために、以下の記録を残しておきます。
- クライアントからの指示内容(メール・チャットのログ)
- 仕様変更の合意記録
- 納品物の確認・検収の記録
- 修正依頼と対応の履歴
備え5:間接損害・逸失利益の免責条項を入れる
直接損害(成果物の修正費用等)に比べて、間接損害(売上減少、機会損失等)は金額が青天井になりがちです。
契約書に間接損害と逸失利益は賠償範囲に含めないという条項を入れることで、リスクを大幅に限定できます。
よくある質問
Q. 損害賠償を請求されたらどうすればいい?
まず冷静に対応してください。すぐに弁護士に相談することをお勧めします。初回相談料は30分5,000〜10,000円程度です。感情的に対応したり、相手の言いなりに支払うのは避けてください。
Q. 契約書がない場合、賠償責任は発生しますか?
はい、民法の不法行為や債務不履行に基づいて賠償責任が発生する可能性があります。むしろ、契約書がないほうが不利になるケースが多いです(賠償上限の定めがないため)。
Q. フリーランス保護新法で何か変わりますか?
2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化法により、発注者には書面での取引条件明示が義務付けられました。ただし、損害賠償の上限設定は自分で交渉する必要があります。
まとめ:備えがあれば怖くない
損害賠償リスクはフリーランスの宿命ですが、適切な備えをすれば恐れる必要はありません。
最低限やるべき3つのこと:
- 契約書に賠償上限条項を入れる
- フリーランス向け賠償責任保険に加入する
- 納品物のチェック体制を整える
この3つだけで、リスクの大半はカバーできます。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスではありません。損害賠償に関する具体的な問題については、弁護士にご相談ください。
@SOHOでリスクを抑えたフリーランス取引を
@SOHOは手数料0%でクライアントと直接取引。契約条件を自分で設定できるから、損害賠償の上限条項もしっかり盛り込めます。

この記事を書いた人
織田 莉子
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。











