フリーランス法で再委託はどう扱われるのか|下請けに出すときの決まり 2026


この記事のポイント
- ✓フリーランス法の再委託ルールを実務目線で整理しました
- ✓元委託支払期日から30日以内という支払期日の特例
- ✓特例を使うために必要な明示事項
受けた仕事の一部を誰かにお願いしたい。あるいは、自分が受けている仕事がそもそも誰かからの再委託らしい。フリーランス法と再委託の関係を調べている人の悩みは、だいたいこの2つのどちらかに集約されます。結論から言うと、再委託そのものは法律で禁止されていません。ただし再委託した瞬間、あなたは「発注者」としてフリーランス法の義務を背負う側に回ります。そして再委託には、通常の取引にはない支払期日の特例が用意されていて、その特例を使うには決められた事項をきちんと相手に伝えておく必要があります。ここを知らないまま再委託すると、資金繰りが読めなくなるか、逆に法律違反を指摘されるかのどちらかに転びます。
私はアパレルブランドのEC運営支援を主力にしていて、商品撮影のディレクションや商品説明文の作成、Instagram運用をまとめて請け負うことが多い立場です。1人で全部を回すのは物理的に無理なので、撮影はカメラマンに、バナー制作はデザイナーにお願いする。つまり日常的に再委託をしています。この記事では、法律の条文をなぞるだけでなく、実際に再委託する側・される側の両方に立ったときに何を確認し、何を書面に残すべきかを整理します。
フリーランス法における「再委託」とは何を指すのか
再委託という言葉は日常会話でも使いますが、フリーランス法の文脈では意味がかなり限定されます。まずここを揃えておかないと、後に出てくる支払期日の特例が誰に適用されるのか分からなくなります。
法律上の「再委託」は登場人物が3者いる構造
フリーランス法が想定している再委託は、次の3者が並ぶ構造です。1つ目が元委託者。仕事の一番上流にいる依頼主で、多くの場合は事業会社やブランド本体です。2つ目が中間にいる事業者。元委託者から仕事を受け、その一部または全部を第三者に流す立場で、法律ではこの人が「発注事業者」になります。3つ目が再委託を受けるフリーランス、つまり特定受託事業者です。
大事なのは、中間にいる人がどんな規模でも構わないという点です。従業員を100人抱えた制作会社でも、1人でやっているフリーランスでも、他のフリーランスに仕事を出した瞬間に発注者側の義務が発生します。「私も個人事業主だから、フリーランス法は自分を守る法律であって縛る法律ではない」という理解は誤りです。この点は多くの解説記事でも強調されています。
フリーランス法の施行によって新たな義務が生じることに対して、発注手続が煩瑣になり負担が重いと感じる発注者もあるかもしれない。しかし、フリーランス法は当該義務を、いわゆる大企業だけではなくフリーランス個人にも一律に課している。当該義務は、当事者間の力関係や資本金の大小を考慮することなく、すべての発注者に遵守が求められている、取引公正化のための最低限のルールである。 出典: hirayamalawoffices.com
下請法(2026年1月から中小受託取引適正化法という名称に改められています)が資本金の区分で適用範囲を切っていたのに対し、フリーランス法は資本金を一切見ません。従業員を使っているかどうかと、相手が従業員を使わない個人事業主か一人法人かどうか、この2点だけで適用が決まります。だから「うちは小さいから関係ない」という逃げ道が存在しないのです。
発注者側は2種類に分かれる
フリーランス法の発注者側は、義務の重さで2段階に分かれています。1つ目が業務委託事業者。従業員を使っていない発注者で、要するにフリーランスがフリーランスに発注するケースです。この場合に課されるのは取引条件の明示義務だけです。2つ目が特定業務委託事業者。従業員を使用している発注者で、こちらは明示義務に加えて、支払期日のルール、禁止行為、募集情報の的確表示、ハラスメント対策、育児介護への配慮、中途解除の予告と、義務が一気に増えます。
ここで言う「従業員」には、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人が該当します。短期のアルバイトを単発で雇っただけなら従業員を使用しているとは扱われません。一方、パートタイムでも週20時間以上で継続的に働いてもらっているなら、あなたは特定業務委託事業者です。自分がどちらに当たるかは、再委託を始める前に必ず確認してください。義務の範囲がまるごと変わります。
再委託とみなされない紛らわしいケース
実務でよく迷うのが、共同受注と再委託の区別です。3人のフリーランスが横並びでクライアントと個別に契約し、それぞれが自分の分の報酬を直接受け取っているなら、これは再委託ではありません。単に同じプロジェクトに複数の外部パートナーが参加しているだけです。
一方、あなたが1人で契約して報酬を全額受け取り、そこから他の人に支払っているなら、金額の大小にかかわらず再委託です。「お礼程度の金額だから」「友達だから」は関係ありません。事業として仕事を頼み、対価を払っている以上、業務委託です。私も最初のころ、知り合いのカメラマンに撮影をお願いするときに「今回はお互い様の助け合いだから」と口約束で進めてしまい、後から報酬の締め日と支払日の認識がずれてお互い気まずくなったことがあります。関係が近いほど、条件を文字にしておく価値があります。
再委託した場合の支払期日の特例(元委託支払期日から30日以内)
フリーランス法で再委託を語るとき、最大の論点がこの支払期日の特例です。ここだけは条文の構造を正確に押さえてください。
原則は「受領日から60日以内」
まず大前提として、特定業務委託事業者がフリーランスに仕事を出した場合、報酬の支払期日は「給付を受領した日、または役務の提供を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内」に定めなければなりません。この起算点は請求書を受け取った日でも、検収が完了した日でもありません。納品物を受け取った日、あるいはサービスの提供を受けた日です。ここを勘違いして「請求書を受け取った月の翌々月末払い」にすると、簡単に60日を超えます。
支払期日を定めなかった場合は受領日が支払期日とみなされ、60日を超える期日を定めた場合は受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。つまり長い支払サイトを契約書に書いても、法律上は無効になって60日に強制的に引き直されるということです。
再委託なら「元委託支払期日から30日以内」に緩められる
ここからが再委託の特例です。元委託者から受けた業務を再委託した場合に限り、支払期日を「元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内」に定めることが認められています。元委託支払期日とは、あなたが元委託者から報酬を受け取る期日のことです。
具体例で考えます。ブランド本体から3月10日に撮影ディレクションの仕事を受け、支払いは5月31日と決まっているとします。あなたはカメラマンに撮影を再委託し、納品を3月20日に受けました。原則ルールだけなら、支払期日は3月20日から60日以内、つまり5月19日までに設定しなければならず、元委託者からの入金より前に自腹で払う必要が出てきます。ところが特例を使えば、元委託支払期日である5月31日から30日以内、つまり6月30日までに支払えばよいことになります。
なぜこんな特例があるのかというと、理由はシンプルに資金繰りです。
フリーランス法に当該例外が設けられたのは、再委託の場合において元委託事業者から対価支払を受ける前に受注者への報酬支払日が到来してしまうと発注者の資金繰りが悪化してしまうという懸念に配慮するとともに、当該懸念への配慮を設けなければ発注者はフリーランスへの発注を忌避してしまいかねないという懸念もふまえたものであると説明されている。なお、再委託の例外は下請法には設けられていない。 出典: hirayamalawoffices.com
引用の最後にある通り、この特例は下請法にはありません。フリーランス法固有の仕組みです。だから下請法の実務に慣れている発注担当者ほど、この特例の存在自体を知らないことがあります。
特例が使えるのは「明示した場合」に限られる
ここが一番の落とし穴です。再委託だから自動的に30日ルールが使えるわけではありません。取引条件を明示するとき、次の3つを相手に伝えていることが特例の適用条件です。
1つ目が、その業務委託が再委託であること。単に「再委託です」と書けば足ります。2つ目が、元委託者の商号、氏名または名称。誰から受けた仕事なのかを開示する必要があります。3つ目が、元委託業務の対価の支払期日、つまり元委託支払期日そのものです。
この3点を明示せずに再委託した場合、特例は使えません。原則に戻って受領日から60日以内の支払いが義務になります。「後から口頭で伝えたからいいだろう」は通用しません。明示は発注時点で、書面か電磁的方法で行う必要があります。
実務上ここで詰まりやすいのが、2つ目の元委託者名の開示です。守秘義務契約があって元委託者名を出せないケースがあります。この場合の選択肢は2つです。元委託者に開示の許諾を取るか、特例をあきらめて原則の60日ルールで運用するか。私はアパレル案件でブランド名を伏せる条件が付くことがあるので、そういう案件では最初から原則ルールで組み、自分の運転資金でいったん立て替える前提でスケジュールを引いています。この判断を後回しにすると、支払い直前に「払えないけど法的には払期日が来ている」という最悪の状態になります。
特例を使うときの注意点
30日という数字は上限であって目標ではありません。条文は「30日以内のできる限り短い期間内」と書いています。元委託者からの入金が5月31日なら、実務的には6月10日や6月15日に設定するのが自然です。ぎりぎりまで引っ張ると、相手からの信頼を確実に失います。
もう1つ、元委託支払期日が変更されたときの扱いです。元委託者が支払いを遅らせた場合でも、いったん明示した支払期日を後から一方的に延ばすことはできません。報酬の支払遅延はフリーランス法違反として指導や勧告の対象になります。元委託の入金が遅れるリスクは、再委託した側が引き受けるべきリスクです。だからこそ、再委託を始める前に自分のキャッシュポジションを確認しておくことが重要になります。
再委託時に明示しなければならない取引条件
支払期日の特例と並んで重要なのが、3条による取引条件の明示義務です。これは従業員を使っていないフリーランスが発注する場合にも課される、例外なしの義務です。
すべての業務委託に共通する明示事項
再委託かどうかにかかわらず、フリーランスに仕事を出すときは次の事項を明示します。発注事業者と受注するフリーランスの名称または識別できる番号、業務委託をした日、給付の内容つまり何を作ってもらうか何をしてもらうか、給付を受領する期日または役務の提供を受ける期日、給付を受領する場所または役務の提供を受ける場所、検査を行う場合はその完了期日、報酬の額、支払期日、そして現金以外の方法で支払う場合はその手段に関する事項です。
給付の内容は特に丁寧に書く必要があります。「撮影一式」ではなく「商品カット30点、モデルカット10点、RAW現像済みJPEG納品、修正は2回まで」のように、後から「これも入っているはず」と言われない粒度まで落とします。ここが曖昧だと、後述する「不当な給付内容の変更・やり直し」の線引きができなくなり、双方が消耗します。
報酬の額は、具体的な金額を書くのが原則です。算定方法しか決められない場合、たとえば時間単価と稼働実績で決まる場合は、算定方法を明示したうえで、額が確定した後に速やかに額を明示する運用が必要になります。
再委託の場合に上乗せされる3つの事項
これが前章で触れた特例の適用条件です。再委託である旨、元委託者の商号・氏名・名称、元委託支払期日の3点を、上記の共通事項に加えて明示します。逆に言えば、特例を使わず原則の60日ルールで運用するなら、この3点の明示は義務ではありません。ただし実務上は、相手に「これは再委託案件です」と伝えておいたほうが、納期や修正回数の交渉がスムーズになります。元委託者のスケジュールに縛られていることを共有できるからです。
明示の方法と、後で困らないための残し方
明示の方法は書面または電磁的方法です。電磁的方法にはメール、チャットツール、SMS、Webフォームなどが含まれます。相手から書面での交付を求められた場合は、遅滞なく書面を交付する必要があります。
おすすめの方法は、発注書のテンプレートを1枚作って毎回それを使うことです。項目が固定されていれば書き漏らしが起きません。私は1枚のPDFに全項目を並べたテンプレートを作って、案件ごとに数値だけ差し替えています。チャットの文中に条件を散らして書くやり方は、後から「どこに書いたか分からない」状態になるので避けたほうがいいです。
保存についても触れておきます。フリーランス法では明示した内容の記録を作成し、5年間保存することが求められています。クラウドストレージに案件名フォルダを切って、発注書と請求書と納品物のリンクをまとめておくだけで十分です。ビジネス文書の型を体系的に押さえておきたいならビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。発注書や通知文の基本フォーマットを扱う資格で、独学でも短期間で押さえられる内容です。
再委託で起きやすいトラブルと7つの禁止行為
支払期日と明示義務をクリアしても、その後の運用でつまずくケースがあります。特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託を行う場合、次の7つの行為が禁止されます。
禁止される7つの行為
1つ目が受領拒否です。フリーランスに責任がないのに納品物の受け取りを拒むこと。2つ目が報酬の減額。あらかじめ定めた報酬を後から減らすこと。3つ目が返品。受け取った納品物をフリーランスの責任なく返すこと。4つ目が買いたたき。通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めること。5つ目が購入・利用強制。指定の商品やサービスを買わせること。6つ目が不当な経済上の利益の提供要請。金銭や役務を無償で提供させること。7つ目が不当な給付内容の変更・やり直し。フリーランスに責任がないのに作業内容を変えさせたり、追加費用なしでやり直させたりすることです。
再委託で特に発生しやすいのが1つ目、2つ目、7つ目です。元委託者から修正指示が飛んできたとき、それをそのまま無償の追加作業として再委託先に流してしまう。これが典型的な違反パターンです。元委託者との間で追加費用が取れていないなら、それはあなたと元委託者の間の問題であって、再委託先に負担させる理由にはなりません。
元委託が中止になったときにどうするか
一番シビアな場面がこれです。元委託者の都合でプロジェクトが飛んだ。すでに再委託先には作業を始めてもらっている。この場合、あなたは一方的に契約を打ち切れるでしょうか。
答えはノーです。フリーランスに責任のない事由による受領拒否は禁止されています。元委託者の都合はフリーランス側の責任ではないので、すでに発注した分の受領と報酬支払いは必要です。着手前であれば合意による解約の余地はありますが、その場合も相手の稼働実績に応じた精算を話し合うのが筋です。
さらに、6か月以上の継続的な業務委託を中途解除する場合や、更新しない場合には、原則として30日前までの予告が必要です。予告した日から解除日までの間に、フリーランスから理由の開示を求められたら、遅滞なく開示する義務もあります。長期の運用系案件を再委託しているなら、この30日前予告は必ず頭に入れておいてください。元委託契約が1か月前通知で切れる契約になっているのに、再委託側には30日前予告が必要という、期間の噛み合わせが問題になります。可能なら元委託側の予告期間を長めに交渉しておくのが安全です。
違反した場合に何が起きるか
フリーランス法の執行は公正取引委員会と厚生労働省が担っています。申出があれば報告徴収や立入検査が行われ、必要に応じて助言、指導、勧告が出されます。勧告に従わない場合は命令が出され、命令に違反すると50万円以下の罰金が科されます。命令が出された事実は公表される仕組みです。
罰金の額だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、実害は公表による信用毀損のほうが大きいです。制度の詳細や相談窓口は公正取引委員会と厚生労働省の公式サイトで確認できます。取引トラブルの相談先も両省庁のサイトから辿れます。
契約書の再委託条項をどう読むか
ここまでは「再委託する側の義務」の話でした。ここからは手前の論点、そもそも再委託していいのかという話に戻ります。
再委託禁止条項の3つのパターン
業務委託契約書における再委託条項は、おおむね3パターンに分かれます。1つ目が全面禁止型。「乙は本業務を第三者に再委託してはならない」と書かれているタイプです。2つ目が事前承諾型。「乙は甲の書面による事前の承諾を得た場合に限り、再委託することができる」というタイプで、実務では最も多いです。3つ目が自由型。「乙は本業務の全部または一部を第三者に再委託することができる」と明記されているタイプで、システム開発や制作系の契約で見かけます。
注意すべきは、契約書に再委託の記載が一切ない場合です。この場合、民法の原則では請負契約なら再委託は原則自由、準委任契約なら原則として本人が履行すべきという整理になります。ただし争いになりやすいので、記載がないなら発注者に確認して合意内容をメールで残しておくのが確実です。「書いていないからやっていい」と判断して後から発覚すると、契約違反を主張されるリスクがあります。
事前承諾を取るときの伝え方
事前承諾型の契約で承諾を取るとき、多くの人は「一部を外部にお願いしてもいいですか」とだけ聞いてしまいます。これだと発注者は判断材料がないので、とりあえず断るという反応になりがちです。
伝えるべき情報は4つあります。どの範囲を再委託するのか、再委託先はどういう人か、品質と納期の責任は誰が持つのか、秘密保持はどう担保するのかです。とくに3つ目が重要で、「再委託先の作業についても私が全責任を負います」と明言できるかどうかで承諾の通りやすさが大きく変わります。発注者が恐れているのは、責任の所在が曖昧になることだからです。
私の場合、撮影を外部に出すときは「撮影の実作業をカメラマンに依頼しますが、ディレクションと納品物の検品は私が行い、品質と納期の責任は私が持ちます。先方とは秘密保持契約を締結済みです」という形で伝えています。この伝え方に変えてから、承諾が下りないケースはほぼなくなりました。
秘密保持と個人情報の取り扱い
再委託で最も事故が起きやすいのが情報管理です。元委託者と結んだ秘密保持契約(NDA)には、多くの場合「第三者への開示禁止」が入っています。再委託先に資料を渡す行為は、この第三者開示に当たります。
対応としては、元委託者との契約で「再委託先に対して同等の秘密保持義務を課すことを条件に開示できる」という条項を入れてもらうのが基本です。そのうえで、再委託先とも必ずNDAを締結します。口約束は不可です。個人情報を含む場合は、個人情報保護法上の委託先監督義務も発生するので、アクセス権限の管理と作業終了後のデータ削除まで手順を決めておきます。
ECの案件だと顧客リストや購買データに触れることがあるので、私は「個人情報を含むファイルは再委託先に渡さない」というルールを最初から設けています。渡さなければ管理コストがゼロになるので、これが一番安全な設計です。
再委託する側の実務チェックリストと相場感
法律の話が続いたので、最後に実務側の判断材料をまとめます。
再委託先の選び方で見るべき4つのポイント
1つ目が納期の守り方です。過去の実績で納期遅延がないか、遅れそうなときに早めに連絡が来るタイプかを見ます。技術力より連絡の速さのほうが、再委託では圧倒的に重要です。あなたは元委託者に対して納期の責任を負っているので、直前に「間に合いません」と言われるのが最大のリスクだからです。
2つ目が請求書と契約対応のリテラシーです。インボイス登録の有無、請求書の様式、契約書へのサインが滞りなくできるか。ここが弱い相手だと、法律上の明示義務を果たすためのやり取りが毎回発生して、管理コストが報酬差益を食い潰します。
3つ目が守備範囲の明確さです。「何でもできます」と言う人より、「ここまではやる、ここからはやらない」を明言できる人のほうが結果的にトラブルが少ないです。守備範囲が曖昧だと、後から「それは聞いていない」が発生します。
4つ目がスキルの証明可能性です。ポートフォリオがあるか、関連する資格や認定を持っているか。インフラやネットワーク寄りの業務を再委託するならCCNA(シスコ技術者認定)のような客観的な指標がある人を選ぶと、スキル判定の手間が減ります。実務経験の裏付けが取りづらい領域ほど、資格の有無が判断材料になります。
再委託時の報酬設計と相場の考え方
再委託でよく聞かれるのが、いくらで出すのが適正かという問題です。原則として、自分が受け取る額から管理コスト分を差し引いた金額が再委託先への報酬になります。管理コストにはディレクション工数、検品工数、クライアント折衝の工数、そして支払いを立て替える資金コストが含まれます。
業界や職種によって相場は大きく違いますが、Web制作やコンテンツ制作の領域では、実作業を外部に出す場合の再委託比率は受注額の50から70パーセント程度に落ち着くことが多いです。ディレクション比重が高い案件ほど再委託比率は下がり、実作業をほぼ丸ごと出す案件では80パーセントを超えることもあります。
ここで絶対にやってはいけないのが、市場相場を大きく下回る額を提示することです。フリーランス法の買いたたき規制に触れる可能性があるうえ、そもそも良い相手が離れていきます。職種ごとの単価水準を把握しておくと、提示額が妥当かどうかを客観的に判断できます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では開発系職種の報酬レンジを職種別に整理していますし、ライティングや編集を外注するなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になります。相場から極端に外れた提示をしていないか、発注前に一度当ててみてください。
再委託のメリットとデメリットを正直に整理する
メリットは3つあります。受注できる案件の規模が上がること、自分の稼働時間の上限を超えて売上を作れること、そして自分が苦手な領域をカバーできることです。私自身、撮影を外注できるようになってから、受けられる案件が「SNS運用だけ」から「撮影込みのEC運営一式」に広がりました。
デメリットも3つあります。品質リスクを自分が背負うこと、資金繰りが複雑になること、そして管理工数が発生することです。とくに2つ目は軽視されがちです。元委託者からの入金が遅れても、再委託先への支払期日は動かせません。支払いを回すための運転資金がないなら、再委託の規模は自分のキャッシュで払える範囲に抑えるべきです。
管理工数についても現実的に見積もってください。発注書を作り、進捗を確認し、納品物を検品し、請求書を処理する。1件あたり2から4時間程度は見ておいたほうがいいです。この工数を織り込まずに再委託比率を決めると、手元に何も残らない結果になります。
再委託を受ける側が確認すべきこと
立場が逆で、あなたが再委託を受ける側なら、確認すべきことは3つです。1つ目が支払期日。60日ルールなのか30日の特例なのかで入金タイミングが変わるので、明示された条件をそのまま読みます。特例が使われているなら、元委託者名と元委託支払期日が明示されているはずです。書かれていないのに支払期日が受領日から60日を超えているなら、その時点で法律違反です。
2つ目が給付の内容と修正回数。元委託者からの指示が降りてくる構造なので、修正が無限に発生しやすい案件形態です。修正回数の上限と、それを超えた場合の追加費用を最初に決めます。
3つ目が連絡経路です。元委託者と直接やり取りするのか、必ず中間の事業者を経由するのか。ここを決めずに始めると、指示が二重になって手戻りが増えます。
市場データから見る再委託構造の考察
ここからは、フリーランス市場を長く見てきた立場からの観察を書きます。
手数料0%で直接つながる場を20年運営してきた立場から言えば、再委託が悪者扱いされるのは中間に立つ人が何も価値を足していないときだけです。単に仕事を右から左に流して差額を取るだけなら、依頼主は直接発注したほうが安く、受け手は直接受けたほうが手取りが厚い。この構造は誰の目にも明らかなので、そういう中間業者は時間とともに淘汰されていきます。
逆に、長く再委託を続けている人には共通点があります。品質の担保、スケジュール管理、要件の翻訳という3つの仕事を、目に見える形でやっていることです。とくに要件の翻訳は価値が高い。「なんかおしゃれな感じで」というブランド側の要望を、「背景は無彩色、被写体との距離感はこう、色温度はこの範囲」という実行可能な指示に変換する。この作業ができる人には、実作業者のほうから「この人経由の仕事はやりやすい」と評価が集まります。
運営者として見てきた限りでは、中間マージンが乗らない直接取引の価値は、金額の大小そのものより「手取りが厚い」という質の部分に出ます。同じ予算で依頼者はより多く頼め、受け手は同じ作業量でより多く残る。この双方が得をする構造があるからこそ、再委託する側も無理なマージンを取らずに済み、結果として再委託先との関係が長く続きます。長く続く人ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると楽」という関係づくりに時間を使っているというのが、現場を見てきた実感です。
案件の種類によって再委託のしやすさも変わります。要件が明確に切り出せる領域ほど再委託と相性が良く、アプリケーション開発のお仕事のように工程が分かれている分野では、設計と実装を別の人が担当する形が定着しています。一方、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、クライアントの業務理解そのものが価値の中心にある領域では、再委託しにくい構造です。ヒアリングの文脈が受け手に伝わらないと成果物が的外れになるからです。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような複合領域では、その中間で、分析と実装を分けるなど部分的な切り出しが行われています。自分の案件がどのタイプなのかを見極めてから再委託を設計してください。
再委託の契約面をさらに具体的に確認したい場合は、フリーランスの再委託ルール|下請けに出す際の契約・法的注意点で契約条項ごとの注意点を整理しています。クライアントへの伝え方や承諾の取り方に絞って知りたいならフリーランスの再委託(下請け)ルール|法的にOK?クライアントへの伝え方が実践的です。新しい技術領域で再委託を含むチーム受注を検討しているなら、Web3 フリーランスの年収と案件獲得術!2026年最新ガイドで市場動向と単価の傾向を確認しておくと、報酬設計の判断がしやすくなります。
最後にもう一度、実務上のポイントだけ確認しておきます。再委託は禁止されていません。ただし再委託した瞬間に発注者としての義務が発生します。支払期日の特例を使うなら、再委託である旨と元委託者名と元委託支払期日の3点を必ず明示してください。明示しなければ原則の60日ルールに戻ります。そして特例の30日は上限であって、できる限り短くするのが法の趣旨です。この4点を守れば、再委託は自分の受注可能領域を広げる有効な方法になります。
よくある質問
Q. フリーランス法では再委託そのものが禁止されているのですか?
禁止されていません。フリーランス法は再委託の可否を定めた法律ではなく、発注者が守るべき取引ルールを定めた法律です。ただし再委託すると、あなたが発注者側の義務を負います。再委託の可否は契約書の再委託条項で決まるので、事前承諾が必要かどうかを必ず確認してください。
Q. 再委託した場合の支払期日は何日以内にすればよいですか?
原則は納品物を受け取った日から60日以内です。再委託の場合は特例として、元委託者からの支払期日(元委託支払期日)から30日以内に設定できます。ただし特例を使うには、再委託である旨、元委託者の名称、元委託支払期日の3点を発注時に明示する必要があります。
Q. 元委託者の名前を守秘義務で出せない場合はどうすればよいですか?
支払期日の特例は使えません。元委託者名の明示が特例の条件だからです。対応は2つで、元委託者に開示の許諾を取るか、原則の60日ルールで運用して自分の資金で立て替えるかになります。案件を受ける前に、どちらで運用するかを決めておくのが安全です。
Q. 元委託の案件が中止になったら再委託を打ち切れますか?
すでに発注した分は打ち切れません。フリーランスに責任のない事由による受領拒否は禁止行為に当たるためです。着手前なら合意による解約の余地はありますが、稼働実績に応じた精算が必要です。6か月以上の継続的な委託を中途解除する場合は、原則30日前の予告義務もあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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