個人事業主向け小規模企業共済とは?退職金の作り方やiDeCo併用・貸付制度の活用法

織田 莉子
織田 莉子
個人事業主向け小規模企業共済とは?退職金の作り方やiDeCo併用・貸付制度の活用法

この記事のポイント

  • フリーランス・個人事業主のための小規模企業共済を徹底解説
  • 掛金・節税シミュレーション
  • iDeCoとの使い分けを紹介します

フリーランスには退職金がない。この事実、独立する前にちゃんと考えましたか?

会社員なら、20年勤めれば数百万〜数千万円の退職金をもらえます。でもフリーランスはゼロ。65歳で事業をたたむことになった時、手元にあるのは貯金だけです。

そこで知っておいてほしいのが小規模企業共済。これは、フリーランスが自分で自分の退職金を積み立てられる国の制度です。しかも、掛金は全額所得控除。年間最大84万円の控除が受けられるので、節税しながら退職金を準備できる。フリーランスにとって最も「やらない理由がない」制度だと、私は考えています。

小規模企業共済とは

小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金積立制度です。

項目 内容
運営 独立行政法人中小企業基盤整備機構
加入資格 個人事業主、小規模企業の役員等
掛金 月額1,000〜70,000円(500円単位)
掛金の変更 いつでも可能
共済金の受取 廃業時、65歳以上、死亡時等
予定利率 1.0%
所得控除 全額が小規模企業共済等掛金控除の対象

加入資格

加入できる人 加入できない人
個人事業主(フリーランス) 会社員・公務員
個人事業主の共同経営者 副業の個人事業主(本業が会社員)
小規模企業の役員 従業員

注意:会社員をしながら副業でフリーランスをしている方は加入できません。あくまで「本業が個人事業主」の方が対象です。

Xでの反応

小規模企業共済の節税効果について、税理士のスガワラさんの投稿が話題です。

「MAX利息55%のような感覚」。これは少し誤解を招く表現ですが、要するに「積み立てた金額に対して、節税額の割合が非常に高い」ということです。数字で見ていきましょう。

「やらない選択肢はない」。私もまったく同感です。特に、後述する貸付制度の存在を知ると、iDeCoより先に小規模企業共済に加入すべき理由がわかります。

節税シミュレーション

年間所得400万円・掛金月額70,000円の場合

項目 金額
年間掛金 840,000円
所得税の節税額(税率20%) 168,000円
住民税の節税額(税率10%) 84,000円
年間の節税合計 252,000円

年間84万円の積み立てに対して、25.2万円が税金として戻ってくる。実質58.8万円の自己負担で84万円の退職金が積み上がる計算です。

年間所得300万円・掛金月額30,000円の場合

項目 金額
年間掛金 360,000円
所得税の節税額(税率10%) 36,000円
住民税の節税額(税率10%) 36,000円
年間の節税合計 72,000円

20年間の積立シミュレーション(月額50,000円の場合)

項目 金額
20年間の総掛金 1,200万円
共済金A(廃業時の受取額) 約1,330万円(予定利率1.0%)
20年間の節税額合計(所得400万円の場合) 約360万円
実質リターン 掛金1,200万円 → 受取1,330万円 + 節税360万円 = 実質1,690万円

小規模企業共済の最大の強み:貸付制度

ここ、多くの方が見落としているポイントです。

小規模企業共済には貸付制度があり、積み立てた掛金の範囲内でお金を借りることができます。これがiDeCoとの最大の違いです。

貸付の種類 貸付限度額 金利 特徴
一般貸付 掛金の7〜9割 年1.5% いつでも借りられる
緊急経営安定貸付 掛金の7〜9割 年0.9% 経営環境悪化時
傷病災害時貸付 掛金の7〜9割 年0.9% 病気・災害時
福祉対応貸付 掛金の7〜9割 年0.9% 福祉目的

一般貸付の金利は年1.5%。民間のビジネスローン(年3〜15%)と比べて圧倒的に低金利です。しかも、商工中金の窓口で申し込めば、即日〜数日で融資を受けられます。

フリーランスは収入の波が大きいため、「今月の支払いが厳しい」という場面がどうしても出てきます。そんな時に自分の積立金から低金利で借りられるのは、大きな安心材料です。

私のクライアントさんでも、確定申告の納税資金が足りない時に小規模企業共済の貸付を利用して乗り切った方が何人もいます。

共済金の受取パターン

受取パターン 適用される税制 具体的なケース
共済金A 退職所得 廃業、死亡
共済金B 退職所得 65歳以上
準共済金 退職所得 法人成りして解約
解約手当金 一時所得 任意解約

重要:任意解約(自分の都合でやめる場合)は「一時所得」として課税されます。退職所得に比べて税負担が重くなるため、できるだけ解約ではなく「廃業」または「65歳到達」で受け取るのがベストです。

加入年数と解約手当金の関係

加入年数 解約手当金の割合
12ヶ月未満 0%(掛け捨て)
1〜3年 80〜85%
5年 90%
10年 95%
20年以上 100%以上

12ヶ月未満の任意解約では、掛金が全額戻りません。最低でも1年以上は続けるつもりで加入してください。

加入手順

  1. 必要書類を準備する
  2. 申込窓口に提出
  3. 掛金の引き落とし開始

Step 1: 必要書類を準備する

書類 入手先
小規模企業共済の契約申込書 中小機構のHP、商工会議所、金融機関
確定申告書の控え 税務署・e-Tax
開業届の控え(開業1年目の場合) 税務署
本人確認書類

Step 2: 申込窓口に提出

窓口 特徴
商工会議所・商工会 対面で相談できる
金融機関(銀行・信金) 取引銀行で手続き可能
中小機構のHP オンラインで申込書の請求が可能

Step 3: 掛金の引き落とし開始

申込から約1〜2ヶ月で共済手帳が届き、翌月から掛金の引き落としが始まります。

iDeCoと小規模企業共済の併用がベスト

項目 小規模企業共済 iDeCo
掛金上限 月70,000円 月68,000円
所得控除 全額 全額
途中引き出し 貸付制度あり 原則不可
運用リスク なし(予定利率) あり(自己運用)
受取時の課税 退職所得控除 退職所得控除
おすすめ順 先にこちら 余裕があれば追加

私の推奨は「小規模企業共済を先に、iDeCoを後に」です。理由は、小規模企業共済には貸付制度があり、万が一の時にお金を引き出せるから。iDeCoは60歳まで引き出せないため、フリーランスにとってはリスクが高い面があります。

両方に最大額を積み立てると、月額138,000円(年間165.6万円)の所得控除になります。年間所得600万円の方なら、所得税+住民税で約50万円の節税が可能です。

iDeCoの詳細ガイド

外部参考情報

中小企業基盤整備機構によると、2025年3月時点の小規模企業共済の在籍者数は約168万人で、共済資産残高は約10兆円です。個人事業主の加入率は年々上昇しており、フリーランスの間でも認知度が高まっています。

出典:中小機構 - 小規模企業共済

出典・参考

項目 出典
小規模企業共済 公式 中小機構
小規模企業共済等掛金控除 国税庁
退職所得の税金 国税庁
貸付制度の詳細 中小機構 貸付制度

よくある質問

Q. 小規模企業共済とはどのような制度ですか?

国の機関(中小機構)が運営する、フリーランスや個人事業主、中小企業役員のための「退職金制度」です。廃業時や老後の生活資金を積み立てる目的で利用され、掛金の全額が所得控除になるため非常に高い節税効果を得られます。

Q. 小規模企業共済の貸付制度はすぐに使えますか?

加入期間や掛金納付実績に応じて利用可能です。一般貸付であれば、最短で即日融資が可能なケースもありますが、事前に利用条件をよく確認しておくことをお勧めします。

Q. 小規模企業共済とiDeCoはどちらを優先すべきですか?

両方並行が理想ですが、片方のみなら事業状況の変化に対応しやすい小規模企業共済が優先されやすい傾向にあります。iDeCoは60歳までの引き出し制限があるため、事業資金の流動性を確保したい個人事業主には、小規模企業共済の柔軟性が使いやすいです。

Q. 廃業時の共済金はいつ受け取れますか?

廃業届の写しや事業廃止の証明書を中小機構に提出後、1〜2ヶ月で共済金が振り込まれます。受取方法(一括・分割・併用)は廃業時に選択できます。

Q. 小規模企業共済の加入手続きは、窓口に行かなくてもできますか?

はい、現在は「小規模企業共済オンライン手続きポータル」を通じて、24時間いつでも自宅のパソコンやスマートフォンから加入申込みが可能です。

@SOHOでキャリアを加速させよう

@SOHOなら、あなたのスキルを求めているクライアントと手数料無料で直接つながれます。

@SOHOで関連情報をチェック

お仕事ガイド

年収データベース

資格ガイド

織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理