フリーランスの経費にできるもの一覧【2026年版】|判断基準と注意点

織田 莉子
織田 莉子
フリーランスの経費にできるもの一覧【2026年版】|判断基準と注意点

この記事のポイント

  • フリ��ランスが経費にできるものを勘定科目別に一覧で解説
  • 経費にできないものの具体例
  • 領収書がない場合の対処法まで

「これって経費にしていいの?」

会計事務所で10年以上フリーランスの方をサポートしてきたけど、この質問は間違いなく一番多い。経費を正しく計上すれば課税所得が下がり、所得税と住民税が減る。逆に計上漏れがあると、余計な税金を払うことになる。知っているかどうかで年間数万円から数十万円の差がつく。

私が担当していた中で最も経費計上漏れが多かったのは、フリーランス歴3年のWebライターのユウト。年間売上480万円に対して計上していた経費はわずか18万円だった。通信費、自宅家賃の按分、書籍代など、経費にできるものを洗い出したところ、年間で約120万円の経費が追加できた。所得税と住民税の合計で約30万円の節税。「なんで早く教えてくれなかったんですか」と言われたけど、そもそも誰かに相談するという発想がなかったらしい。

確定申告は、多くのフリーランスにとって大きな負担だ。しかし、この負担を「事業への投資」と考え、日頃から経費管理を徹底することで、手元に残るお金は確実に増える。この記事では、経費の基本原則から具体的な勘定科目ごとのポイント、そして税務署から指摘されないための管理術まで、税理士の視点で徹底解説する。

経費の判断基準は「事業との関連性」

税務上、経費として認められるのは「事業の遂行に必要な支出」。この定義が曖昧に感じられるかもしれないが、判断の肝は「事業に直結しているかどうか」だ。迷ったら、自分にこの2つを聞いてみてほしい。

  1. この支出がなければ、仕事に支障が出るか?
  2. 税務署に「なぜこれが経費なのか」と聞かれたら、合理的かつ客観的に説明できるか?

たとえば、Webデザイナーがデザインツールを契約するのは必要不可欠な支出だ。しかし、個人的な趣味で購入したアニメのBlu-rayを「感性を磨くため」と言い張るのは無理がある。このように、主観的な言い訳ではなく、誰が見ても納得できる説明ができるかどうかが分かれ道となる。

また、フリーランスの場合、「仕事用」と「プライベート用」の境界が曖昧になりがちだ。特に自宅兼事務所の場合、この線引きを明確にすることが、税務調査における最強の防御策となる。

勘定科目別・経費にできるもの一覧

経費の計上は勘定科目ごとに行う。それぞれの科目の特性と、計上のポイントを詳しく見ていこう。

通信費

リモートワークが主戦場のフリーランスにとって、最も重要な経費のひとつ。

項目 経費にできる範囲 注意点
インターネット回線 事業使用割合で按分 基本的に全額の50%程度を上限に按分することが多い
携帯電話料金 事業使用割合で按分 業務通話が多い場合は70〜80%も可能
レンタルサーバー代 全額OK 業務サイト用であれば全額経費
ドメイン代 全額OK 同上
Zoom等のツール利用料 全額OK 業務に必要なライセンスは全額経費

注意すべきは、光回線などの固定費は「事業割合」を算出する根拠を持つことだ。たとえば、「1日のうち何時間仕事で使い、何時間プライベートで使っているか」を記録しておくだけで、税務署への説得力が段違いになる。

消耗品費(10万円未満の物品)

文房具、プリンターインク、コピー用紙、USBメモリ、マウス、キーボード、デスクライト、ヘッドセットなど、比較的単価の低い事務用品。細かいものが積み重なると結構な額になるため、レシートや領収書は月ごとに封筒へまとめておこう。

特に注意したいのが、10万円という金額の判定だ。消費税の経理方式(税込経理か税抜経理か)によって、この判定基準となる金額が変わるため、自分の申告方法に合わせて正しく判断する必要がある。

地代家賃

自宅兼事務所の家賃は家事按分で経費にできる。最も節税効果が高い項目の一つだ。

按分方法 計算例
面積比 仕事部屋10畳 ÷ 全体30畳 = 33.3%
時間比 1日8時間仕事 ÷ 24時間 = 33.3%

家賃月10万円で按分率33%なら、月3万3,000円、年間39万6,000円を経費にできる。さらに、管理費や共益費も同様に按分可能だ。ただし、駐車場料金や、賃貸契約に含まれない固定資産税分などを含めないよう、賃貸借契約書をしっかり確認すること。

水道光熱費

電気代、ガス代、水道代も家事按分が可能。パソコンやエアコンの使用時間、あるいは仕事部屋の面積に基づいて、20〜40%程度で按分するのが一般的。特に冬場の暖房代や夏場の冷房代など、事業時間帯と重なる時期は按分率を少し高く設定することも合理的だ。

旅費交通費

打ち合わせ先への電車・バス・タクシー代、出張時の宿泊費・航空運賃。 仕事で使う自家用車のガソリン代や駐車場代、高速代も含まれる。ただし、自家用車は家事按分が必須となる。業務での走行距離とプライベートでの走行距離を走行記録簿(日報)で管理しておくことが重要だ。

接待交際費

取引先との打ち合わせ時の飲食代、お中元・お歳暮、仕事上の付き合いでの会食費。 ここでの最大のNGは、「1人での食事」を交際費に入れること。これはどんなに仕事の話を考えていても経費にはならない。また、会食の際は「誰と」「何の目的で」「どこの会社と」といった情報を領収書の裏面や会計ソフトの摘要欄にメモしておくことが必須。

新聞図書費

仕事に関連する書籍・専門誌、有料ニュースサイトの購読料、オンライン講座の受講料。 自己投資は積極的に経費にしよう。たとえば、ライターであれば資料代、エンジニアであれば技術書の購入費は正当な経費だ。ただし、漫画や小説など、明らかに趣味の範囲である書籍は避けること。

外注費

他のフリーランスへの業務委託費、デザイン・翻訳・プログラミングなどの外注費。 ここでの注意点は、源泉徴収が必要なケースがあること。デザインやライティングなどの業務を個人に外注する場合、支払時に所得税を差し引いて納付する義務がある。この手続きを忘れると、後から追徴課税されるリスクがある。

減価償却費

10万円以上の資産は、購入した年に一括で経費にせず、耐用年数に応じて分割して経費にする。

資産 耐用年数 10万円の場合の年間経費
パソコン 4年 2万5,000円
デスク・椅子 8年〜15年 6,667円〜12,500円
カメラ 5年 2万円

ただし、青色申告なら30万円未満の資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」がある(年間合計300万円まで)。これは本当に使い勝手が良い。パソコンなどの買い替えサイクルが早いものは、この特例を活用して利益が出た年に一括経費にして節税するのが賢い方法だ。

その他

振込手数料、クレジットカード年会費(事業用カード)、税理士への報酬、損害保険料(事業用)、屋号用の印鑑代、コワーキングスペースの利用料など。意外なところでいうと、事業に関連する資格試験の受験料や研修費用も経費となる。

経費にできないもの

「これはさすがに無理だろう」というものや、よくある勘違いを整理しておく。

  • 所得税、住民税、国民健康保険料(控除は可能だが経費ではない)
  • 生活費全般(食費、被服費、娯楽費)
  • 罰金、反則金(駐車違反の反則金など、事業用であっても経費にならない)
  • 私的な旅行(出張と称して家族を連れて行くなど)
  • 事業に無関係な飲食

特に間違えるのが国民健康保険料。これは経費ではなく「社会保険料控除」として所得から差し引くもの。結果的に税金は減るが、帳簿上の扱いが全く異なる。

NG例: 国民健康保険料を「経費」として帳簿に記入。確定申告の際に二重計上になり、修正申告が必要に。実際にこのミスをしている方、年に2〜3人は必ず見かける。

OK例: 国民健康保険料は帳簿には記入せず、確定申告書の「社会保険料控除」欄に記入する。

領収書がない場合の対処法

電車賃やバス代など、領収書が出ない支出もある。その場合は諦める必要はない。「出金伝票」に日付・金額・相手先・内容を記載すれば、立派な証拠として認められる。

最近ではSuica・PASMOのICカード利用履歴や、交通系アプリのスクリーンショットも証拠として有効。これらを印刷して保存しておくか、デジタルデータとしてクラウド上にバックアップしておこう。

フリーランスは確定申告が必要ですが、経費を上手く活用すると税金を安くすることができます。経費で税金が安くなる理由を理解し、正しく計上することが重要です。 — 出典: 個人事業主・フリーランスが知るべき経費一覧Workship MAGAZINE)

フリーランスの経費率の目安

「経費率が高すぎると税務調査が来る」という話を聞くことがあるが、業種によって経費率は大きく異なる。

職種 経費率の目安
Web制作・デザイン 20〜40%
ライター・編集 10〜30%
コンサルタント 10〜20%
動画編集 30〜50%

これらの目安から大きく外れている場合、単に税務署から「何かあるのでは?」と疑われるきっかけになる。経費を増やすことばかりに目を向けず、利益をしっかり出す経営をすることが、結局は一番の節税になる。

@SOHOのお仕事ガイドでは、14大分野・99小分野にわたる各職種の業務内容や必要な設備を解説している。どんなツールや設備が必要かを把握しておくと、経費の計上漏れ防止にもつながる。

お仕事ガイドで職種別の必要設備を確認する

税務調査に備える「鉄壁の記録術」

もし税務調査が入った場合、最も重要なのは「領収書の有無」ではなく「記録の整合性」だ。

  1. 領収書・レシートは最低7年保管: デジタル化しても紙の原本は捨てるな。
  2. 会計ソフトの摘要欄を埋める: 「〇〇商事様と打ち合わせ」「〇〇案件用書籍」など、誰が見てもわかるように記述する。
  3. クレジットカードの明細と照合する: 経費の支払いは極力クレジットカードにし、明細と領収書をセットで管理する。
  4. 売上の入金日と領収書の日付をチェックする: 整合性が取れていないと、「架空経費」を疑われる。

これらの習慣があるだけで、税務調査の心理的・時間的負担は大幅に減る。

なぜ「経費の把握」で未来が変わるのか

最後に、経費管理の最大のメリットについて話そう。それは「自分の仕事の利益率が可視化されること」だ。

経費を記録し続けると、「この案件は売上は高いけど、経費がかさみすぎて利益率が低い」「あの外注費を削減すれば、もっと手元にお金が残る」といった分析ができるようになる。これは節税のためだけでなく、より高い収益を目指すための経営分析そのものだ。

ユウトの例のように、経費を知ることは、自分の労働に対する適正な対価を受け取り、その価値を最大限に活かすことにつながる。最初は面倒かもしれないが、月1回の「経費見直しタイム」を設けてみてほしい。それがあなたのフリーランス生活を安定させる第一歩になる。

よくある質問

Q. レシートがない場合、経費にできますか?

交通費(電車・バス)など、レシートが出ない支出は「出金伝票」を作成すれば経費にできます。日付、金額、相手先、目的を記載してください。ただし、高額な支出の場合は領収書がないと税務調査で否認されるリスクがあります。

Q. 開業前の支出は経費にできますか?

はい、開業準備のために使った費用は「開業費」として経費にできます。PC購入、セミナー受講料、名刺作成費などが該当します。開業届を出す前の支出でも、開業のための支出であれば遡って計上可能です。開業費は繰延資産として、好きなタイミングで経費化(任意償却)できるのが特徴です。

Q. カフェでの作業代は経費にできますか?

仕事のために利用したカフェの飲食代は「会議費」や「雑費」として経費にできます。ただし、毎日のように高額なカフェ代を計上していると、税務調査で指摘される可能性があります。1回あたり500〜1,000円程度が目安です。

Q. 経費率の目安はどれくらいですか?

職種によりますが、ITエンジニアやライターは15〜25%、デザイナーや動画編集者は20〜30%、コンサルタントは20〜35%が目安です。極端に高い経費率(50%以上)は税務署の注目を集める可能性があるため、正当な理由がある場合は説明資料を準備しておきましょう。

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織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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