フリーランスの法人化は売上より「所得」で判断!税金が変わる基準とベストな時期

織田 莉子
織田 莉子
フリーランスの法人化は売上より「所得」で判断!税金が変わる基準とベストな時期

この記事のポイント

  • フリーランスが法人化すべき売上・利益の目安を具体的な数字で解説
  • 法人化のメリット・デメリット
  • 実際の節税シミュレーションまで税務のプロが詳しく紹介します

フリーランスとして売上が伸びてくると、「そろそろ法人化したほうがいいのかな」と考え始める方が多いです。私も会計事務所で10年間、何十人ものフリーランスの方の法人化をサポートしてきましたが、よく聞かれるのが「売上いくらになったら法人化すべきですか?」という質問です。

結論から言うと、所得(売上から経費を引いた利益)が800万円を超えたあたりが一つの目安です。ただし、売上の金額だけで判断するのは危険で、利益率や事業の安定性、今後の見通しなど複数の要素を総合的に見る必要があります。

Gemstone税理士法人の代表がこう言い切るのは、実際に「法人化して失敗した」事例を多数見てきたからでしょう。私のクライアントのリクさん(35歳・フリーランスエンジニア)も売上900万円・所得600万円の段階で法人化しました。法人住民税均等割7万円、税理士顧問料月3万円(年36万円)、社会保険料の会社負担分が加わって、結局個人事業主のままのほうが手取りが約40万円多かった。リクさんは「もう1年待てばよかった」と言っていましたが、こういう後悔は珍しくありません。

法人化の判断基準は「所得」で考える

フリーランスの法人化を検討するとき、売上ではなく「所得(利益)」で判断することが重要です。

売上 経費率 所得(利益) 法人化の目安
1,000万円 20% 800万円 検討ゾーン
1,200万円 30% 840万円 検討ゾーン
1,500万円 50% 750万円 もう少し様子見
2,000万円 20% 1,600万円 法人化推奨

売上が1,000万円あっても経費が多ければ所得は低くなりますし、売上800万円でも経費が少なければ法人化のメリットが出てきます。

法人化で税金はどれくらい変わるのか

個人事業主の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります。一方、法人税の実効税率は中小法人で約23〜25%程度に収まります。

所得800万円の場合のシミュレーション:

項目 個人事業主 法人化後
所得税/法人税 約120万円 約80万円
住民税 約80万円 約30万円
事業税 約25万円 約15万円
社会保険料 国保+年金 約80万円 社保 約100万円
合計 約305万円 約225万円
差額 約80万円の節税

※社会保険料は法人化すると会社負担分が発生しますが、それを含めても所得800万円以上なら法人化のメリットが出やすい傾向にあります。

この法人化診断チェックリスト、わかりやすいです。特に「国民健康保険料が高すぎる」は多くのフリーランスが感じている悩みですよね。所得が上がるほど国保料は青天井で上がりますが、法人にすれば役員報酬の設定次第で社会保険料をコントロールできます。

売上だけじゃない、法人化すべき5つのサイン

所得以外にも、法人化を検討すべきタイミングがあります。

  1. 消費税の課税事業者になる

前々年の課税売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。法人化すると新設法人として最大2年間の免税期間を得られる場合があります。ただし、資本金1,000万円未満であることが条件です。

  1. 取引先から法人格を求められている

大企業や官公庁との取引では、法人でないと契約できないケースがあります。@SOHOの上場企業データベースを見ると、大手企業がクラウドソーシング経由で外注するケースは増えていますが、契約時に法人格を求める企業も少なくありません。

→ クラウドソーシングを活用する企業一覧を見る

  1. 従業員やパートナーを雇いたい

一人で受けきれない案件が増えてきたら、法人化のタイミングかもしれません。

  1. 事業資金の融資を受けたい

金融機関からの融資は、法人のほうが有利です。特に日本政策金融公庫の創業融資は法人向けメニューが充実しています。

5. 事業が3年以上安定している

法人化には設立費用や維持コストがかかるため、一時的に売上が伸びただけで法人化すると、翌年に赤字転落するリスクがあります。最低でも3年間の安定した売上実績が欲しいところです。

法人化のデメリットも知っておく

法人化はメリットだけではありません。以下のコストが発生します。

項目 金額の目安
設立費用(合同会社) 約6〜10万円
設立費用(株式会社) 約20〜25万円
法人住民税均等割 年間約7万円(赤字でも必要)
税理士顧問料 月額2〜5万円
決算申告費用 年間10〜20万円
社会保険の会社負担 給与の約15%

赤字でも法人住民税均等割の約7万円は必ず支払う必要があります。この固定コストを上回る節税メリットがなければ、法人化は早すぎるということです。

この記事を読めば、法人化に必要な内容が一通りわかるとともに、自分が今法人化すべきタイミングなのか、さらには法人化した先のステップまで検討できるようになっていますので、是非参考にしてみてください。 — 出典: フリーランスが法人化するメリット・デメリット、適切なタイミング(辻・本郷税理士法人)

辻・本郷税理士法人のガイドは網羅的で参考になります。法人化のメリットだけでなく、「法人化後のステップ」まで考えておくことが重要です。

法人化のベストタイミングは「1月」か「7月」

法人化するなら、事業年度の開始月を考慮しましょう。

1月設立: 個人事業の確定申告(1〜12月)と区切りがきれいに分かれるため、手続きがシンプルになります。

7月設立: 消費税の免税期間を最大限活用したい場合、課税売上が1,000万円を超えた年の翌々年の前に法人化すると有利です。

私がサポートしたフリーランスの方で最も多いのは1月設立です。年末年始にじっくり準備して、新年から法人としてスタートするパターンが精神的にも区切りがつきやすいようです。

まとめ:焦らず、数字で判断する

法人化は「なんとなく箔がつきそう」で決めるものではありません。以下の3つの条件が揃ったら、具体的に検討を始めましょう。

NG例: 「周りのフリーランス仲間が法人化したから自分も」「売上1,000万円超えたから」という理由だけで法人化。所得を計算せずに勢いで設立し、維持コストで手取りが減る。

OK例: 所得が800万円3年連続で超えていることを確認。税理士に個人・法人のシミュレーションを依頼し、年間50万円以上の節税メリットがあることを数字で確認してから設立。

  1. 所得が800万円を安定して超えている
  2. 事業が3年以上安定している
  3. 法人化の維持コスト(年間30〜50万円)を上回る節税メリットがある

逆に、所得500万円以下であれば、青色申告の特別控除や小規模企業共済を活用するほうが手軽で効果的です。

※税率や制度は変更される場合があります。法人化の最終判断は、必ず税理士にご相談ください。

株式会社か合同会社かの選び方

法人化を決断した次の段階で必ずぶつかるのが「株式会社にすべきか、合同会社にすべきか」という選択です。私が会計事務所で多くのフリーランスをサポートしてきた経験から言うと、この選択を誤ると後から組織変更の手間がかかります。一発で正解を選ぶための判断基準を整理します。

合同会社が向いているケース

設立費用が約6万円と安く、決算公告義務もないため、ランニングコストが抑えられる。フリーランスの法人化の8割は合同会社で十分対応できます。具体的には以下のような方が向いています。

1人または親族のみで経営する予定 外部から出資を受ける予定がない 社会的な「会社の格」を強く求められる業界ではない 将来的に上場や売却を考えていない

私の顧問先で年商3,000万円規模のITフリーランスが合同会社を選び、5年運営している事例があります。取引先からも特に「合同会社では困る」と言われたことはなく、銀行融資も問題なく受けられています。

株式会社が向いているケース

設立費用は約25万円と高額ですが、社会的信用度が高く、将来の選択肢を広げたい方には向いています。

大手企業や官公庁との取引が中心 将来的に複数の株主から出資を受けたい 事業承継・売却(M&A)の可能性がある 従業員を10名以上雇用する計画 業界の慣習として「株式会社」が当然視されている

私のクライアントで、コンサルティング業界に転身したフリーランスは「名刺交換時に株式会社代表のほうが商談がスムーズ」という理由で株式会社を選びました。設立費用の差約20万円は、半年間の営業効率向上で十分に回収できたそうです。

合同会社から株式会社への組織変更

「とりあえず合同会社で始めて、必要になったら株式会社に変更」というルートも可能です。ただし、組織変更には登記費用・専門家報酬・株式の発行手続きなどで合計30〜50万円かかります。最初から株式会社を設立するより、トータルコストは高くなる点に注意してください。

合同会社の社員(出資者)が一定の手続きを経て株式会社に組織変更することは法律上認められていますが、変更の決定は総社員の同意が必要で、変更計画書の作成、債権者保護手続、登記申請などの手順を踏む必要があります。 出典: moj.go.jp

法人化の手続きと初年度に直面する5つの壁

法人化を決めて設立まで進んでも、初年度は予想外のトラブルが続出します。私が顧問先で見てきた「初年度あるある」を5つお伝えします。事前に知っておくことで、焦らず対処できます。

壁1:法人口座の開設に2〜3か月かかる

メガバンクでの法人口座開設は、コロナ以降のマネーロンダリング対策強化により、審査が厳格化しています。設立直後の法人は実績がないため、メガバンクで開設できないケースが3割程度あります。

対策として、ネット銀行(GMOあおぞらネット銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行など)を最初から検討してください。審査が比較的緩やかで、最短1〜2週間で開設可能です。私の顧問先では、メイン口座はネット銀行、サブ口座でメガバンクという二段構えを推奨しています。

壁2:法人クレジットカードが作れない

法人カードも設立直後は審査が通りにくいです。代表者個人のクレジットヒストリーが審査の主な判断材料になります。個人カードでブラック履歴がある方は、法人カードも作れません。

対策として、設立前に「個人事業主向けのビジネスカード」を作り、半年間の決済実績を積んでから法人化に進むのがおすすめです。三井住友ビジネスカード for Owners、ライフカードビジネスなどは比較的審査が通りやすい部類です。

壁3:社会保険の手続きが煩雑

法人化と同時に、健康保険・厚生年金の加入手続きが発生します。代表者一人だけでも社会保険加入は義務です。年金事務所への書類提出、給与計算、毎月の保険料納付など、想像以上に事務作業が増えます。

私のクライアントには、給与計算と社会保険手続きはアウトソーシングを推奨しています。社労士に月額1〜2万円で依頼すれば、初年度の混乱を大幅に減らせます。

壁4:個人から法人への資産・契約の引き継ぎ

個人事業主時代に使っていた備品(パソコン、デスク、ソフトウェアライセンスなど)を法人に引き継ぐ際、適切な評価額で「資産譲渡契約書」を作成する必要があります。これを怠ると、税務調査で「役員からの不当な経済的利益供与」と指摘されるリスクがあります。

また、クライアントとの契約も、個人事業主名義から法人名義へ正式に切り替える手続きが必要です。私の顧問先では、設立後1か月以内に全クライアントへ「法人化のご報告と契約名義変更のお願い」という案内を送ることを推奨しています。

壁5:役員報酬の決定タイミング

役員報酬は、事業年度開始から3か月以内に金額を決定する必要があります。一度決めた金額は、原則として期中変更ができません(業績悪化改定事由など限定的な例外を除く)。

初年度の役員報酬設定は、税理士と慎重に相談すべきです。高すぎると個人の所得税負担が重くなり、低すぎると生活費に困ります。私の経験では、設立初年度は「個人事業主時代の最終年の所得 ÷ 12」を基準に、社会保険料負担を考慮して8〜9割の水準に設定するのが無難です。

法人化後5年を見据えた長期戦略

法人化は「節税」だけでなく「経営者としての成長機会」でもあります。設立後5年間でどう事業を発展させていくかの戦略を持つかどうかで、法人化の真価が決まります。私が長期的に成功している法人化フリーランスに共通する3つの戦略を紹介します。

戦略1:内部留保を計画的に積み立てる

法人化最大のメリットは「利益の社内留保」ができることです。個人事業主は所得=自分の収入ですが、法人は利益を会社に残しておき、必要なタイミングで使えます。

私が推奨しているのは「年間税引後利益の30%を内部留保」というルール。たとえば年間税引後利益が500万円なら、150万円を会社に残し、退職金準備・設備投資・事業拡大の原資にします。10年で1,500万円の留保ができれば、引退時の役員退職金として一括支給することで大幅な節税が可能です。

戦略2:法人ならではの節税商品を最大活用

法人化することで、個人事業主時代には使えなかった節税商品が活用できます。

  • 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済): 月額20万円まで全額損金、40か月以上の加入で全額返戻
  • 役員社宅制度: 自宅家賃の50〜80%を会社経費にできる
  • 出張日当規定: 出張日当として個人に非課税で支給可能
  • 法人向け生命保険: 一部の商品は経費計上しつつ将来の退職金原資に

これらを組み合わせると、年間100〜300万円の課税所得を圧縮できます。私の顧問先では、法人化2年目以降は税理士と協力して「節税スケジュール」を年初に立てるのが定番になっています。

戦略3:事業承継・売却(M&A)を視野に入れる

5〜10年スパンで考えるなら、事業承継や売却の選択肢を意識しておくべきです。フリーランスの個人事業は本人が止めれば終わりですが、法人化していれば事業の譲渡・売却が可能になります。

特にWeb・SaaS・コンサル業界では、年間営業利益500万円規模の事業でも、1,500〜3,000万円で売却できる事例が増えています。株式譲渡所得として20.315%の税率で完結するため、退職金や年金代わりの資産形成として極めて効率的です。

私の元クライアントで、ITフリーランスから法人化して8年運営した後、年商4,000万円・営業利益800万円の事業を、同業の中堅企業に2,800万円で売却した方がいます。設立当初は「節税のため」だった法人が、最終的には引退後の資産形成手段になりました。

法人化は、目先の節税効果だけでなく「10年後・20年後の自分の選択肢を広げる経営判断」として捉えることが大切です。所得800万円のラインを超えたとき、税理士と「向こう10年の事業計画」を共有しながら、慎重かつ大胆に決断してください。

よくある質問

Q. フリーランスが法人化した場合、これらの制度はどうなりますか?

法人化すると小規模企業共済は引き続き加入できますが、iDeCoの上限額が月23,000円に下がります(企業年金がない場合)。国民年金基金と付加年金は加入できなくなります。ただし、法人化すれば厚生年金に加入できるため、年金面ではメリットもあります。税金の仕組みについてはフリーランスの税金完全ガイドも併せてご覧ください。

Q. フリーランスの手取りは会社員時代より増えますか?

売上が同じであれば、手取りは減る可能性が高いです。会社員は社会保険料の半分を企業が負担しているため、フリーランスが同じ手取りを維持するには、会社員時代の給与の1.5倍〜2倍の売上を目指すのが一般的です。ただし、節税対策や経費計上の工夫次第で、自由に使えるお金を増やすことは十分に可能です。

Q. フリーランスの年収は会社員より本当に高いですか?

データ上は、大半の職種でフリーランスのほうが会社員より高い年収を得ています。ただし、福利厚生(社会保険の会社負担分、退職金、有給休暇など)を含めた「総報酬」で比較すると、差は縮まります。また、フリーランスは案件がない期間のリスクも自分で負う必要があります。

@SOHOでキャリアと年収を見直そう

職種別の年収データベースやお仕事ガイドで、あなたの市場価値を客観的に把握できます。@SOHOは手数料無料で直接案件とつながれるプラットフォームです。

@SOHOで関連情報をチェック

お仕事ガイド

年収データベース

資格ガイド

織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理