フローチャートの記号の意味|よく使う図形と使い分け


この記事のポイント
- ✓フローチャートの記号の意味を
- ✓端子・処理・判断・入出力などよく使う図形ごとに整理しました
- ✓JISで決められた記号の考え方
フローチャートの記号の意味が分からないまま図を描くと、読む人ごとに受け取り方が変わり、せっかくの図が説明の役に立たなくなります。とはいえ、覚える記号はそれほど多くありません。実務で使う図形の大半は、始まりと終わり、処理、判断、入出力の4つで足ります。この記事では、よく使う記号の意味と形、使い分けの決まり、業務フローを描くときの手順、作るためのツールまでを順に説明します。描いたフローを実際の仕事の担当と期限に移すときに使えるPinatecaのような道具にも、後半で触れます。
フローチャートの記号は何のために決まっているのか
フローチャートとは、仕事や処理の手順を、決まった形の図形と矢印でつないで表す図のことです。日本語では「流れ図」とも呼ばれます。文章で「申込書が届いたら内容を確認し、不備があれば差し戻し、なければ受付番号を発行する」と書くと、読み手は頭の中で順番と分かれ道を組み立て直さなければなりません。図にすると、どこで判断が入り、どこで流れが分かれるのかが一目で分かります。
図形の形に意味を持たせているのは、描いた人以外が読んでも同じように理解できるようにするためです。ひし形を見れば「ここで何かを判断している」、角丸の長方形を見れば「ここが始まりか終わり」と、説明がなくても伝わります。これが記号を覚える一番の理由です。
日本では、フローチャートの記号は日本産業規格(JIS)で決められています。日本産業規格とは、製品や情報処理のやり方について国が定めた共通の決まりのことです。フローチャートについては「JIS X 0121」という規格があり、日本産業標準調査会(JISC)のデータベースでは、規格の名称が次のように登録されています。
JISX0121 情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号 出典: 日本産業標準調査会(JISC)
名前のとおり、もとはコンピュータの処理手順を描くための規格です。国際規格の ISO 5807 と対応していて、海外のソフトウェアの資料でも同じ形の図形が使われています。ただ、今では事務や営業、接客の手順を描く業務フロー図でも、同じ記号がそのまま使われています。
規格には細かな図形が数多く並んでいますが、すべてを覚える必要はありません。業務の改善や引き継ぎの資料を作る程度であれば、次の節で説明する基本の図形と、入出力に関わるいくつかの図形を知っていれば十分です。大切なのは、正しい形を選ぶことよりも、同じ職場の中で同じ意味で使うことです。
まず覚えたい基本の4つの記号
フローチャートの記号で、最初に覚えるべきものは4つです。始まりと終わりを表す「端子」、作業を表す「処理」、分かれ道を表す「判断」、順番を表す「流れ線」です。この4つだけで、ほとんどの手順は描けます。
| 記号の名前 | 形 | 意味 | 中に書く言葉の例 |
|---|---|---|---|
| 端子 | 角丸の長方形(楕円) | 流れの始まりと終わり | 開始、終了、申込書が届く |
| 処理 | 長方形 | 1つの作業や計算 | 内容を確認する、請求書を作る |
| 判断 | ひし形 | 条件による分かれ道 | 不備はあるか、金額は10万円以上か |
| 流れ線 | 線と矢印 | 処理の順番 | 矢印の脇に「はい」「いいえ」 |
端子:始まりと終わりを示す
端子は、角を丸くした長方形、または横長の楕円で描きます。フローの最初と最後に1つずつ置くのが基本です。中には「開始」「終了」と書いてもよいのですが、業務フローでは「申込書が届く」「顧客に完了の連絡をする」のように、何がきっかけで始まり、どうなったら終わるのかを書くと、図の範囲がはっきりします。
処理:1つの作業を書く
処理は、ふつうの長方形です。フローチャートの中で最も多く登場します。1つの長方形には1つの作業だけを書き、「内容を確認する」「見積書を作る」のように、動詞で終わる短い言葉にします。「確認して修正して送る」のように複数の作業を1つに詰めると、どこで止まっているのかが図から読み取れなくなります。
判断:分かれ道を作る
判断は、ひし形で描きます。中には「はい」か「いいえ」で答えられる問いを書き、出口の線を2本以上出して、それぞれに答えを添えます。「書類に不備はあるか」「在庫は足りているか」のような書き方です。条件が3つ以上に分かれるときも、問いを2つに分けて判断を2回続けると、読み手が迷いにくくなります。
流れ線:順番をつなぐ
流れ線は、図形と図形をつなぐ線です。上から下、左から右へ流れるのが決まりで、この向きであれば矢印を省くこともできます。逆向きに戻る線や、横から合流する線には必ず矢印を付けます。線が交差すると読みにくくなるので、配置を工夫して交差を減らします。
入出力と書類・データの記号
基本の4つに次いでよく使うのが、情報の出し入れを表す記号です。業務フローでは「どの書類を受け取り、どこに記録し、何を相手に渡すのか」を示す場面が多いため、ここを押さえると図の説明力が上がります。
| 記号の名前 | 形 | 意味 | 使う場面の例 |
|---|---|---|---|
| データ(入出力) | 平行四辺形 | 情報の受け取りと出力 | 注文を受け付ける、結果を出力する |
| 書類 | 下の辺が波打った長方形 | 紙や帳票 | 請求書、申込書、見積書 |
| 手操作入力 | 上の辺が斜めの四角形 | 人がキーボードなどで入力する | 顧客情報を入力する |
| 表示 | 左が尖り右が丸い形 | 画面に表示する | 確認画面を表示する |
| 記憶データ | 円筒形や側面が丸い形 | データベースやファイルへの保存 | 顧客台帳に登録する |
データ(平行四辺形)
平行四辺形は、情報を受け取ったり出したりする場面を表します。プログラムの流れ図では「キーボードから値を読み込む」「計算結果を出す」の意味で使われてきました。業務フローでは「メールで注文を受け付ける」「集計結果を報告する」のように、外とのやり取りを示すときに使うと、処理の長方形と区別がつきます。
書類
書類の記号は、長方形の下の辺を波線にした形です。紙の帳票や、ファイルとして渡す文書を表します。請求書や納品書がどの時点で作られ、誰に渡るのかを示したいときに便利です。同じ書類が複数枚あるときは、記号を少しずらして重ねて描く書き方もあります。
手操作入力と表示
手操作入力は、人が手で入力する場面を表します。システムに自動で取り込まれるのか、担当者が打ち込むのかで手間とミスの起き方が変わるため、業務の見直しでは区別して描く価値があります。表示の記号は、画面に結果を見せる場面です。この2つは使わなくても図は成り立つので、入力の手間を議論したいときに足す、という扱いで十分です。
記憶データ(データベース)
データベースやファイルへの保存は、円筒形で描くのが一般的です。顧客台帳や受注の記録など、処理の結果がどこに残るのかを示します。図の中にこの記号が出てくると、読み手は「ここで記録が残る」と分かり、後から探すときの手がかりになります。
繰り返しと、別の図にまとめた処理の記号
手順の中には、同じ作業を何度も繰り返す部分や、別の図で細かく説明している部分があります。こうした場面のために、もう少しだけ記号があります。
ループ端:繰り返しの始まりと終わり
ループ端は、長方形の上の角を切り落とした形(始まり)と、下の角を切り落とした形(終わり)を対にして使います。2つの記号の間に挟んだ処理が繰り返されます。始まりの記号には「全件を処理するまで」「10回繰り返す」のように、繰り返す条件を書きます。
繰り返しは、判断のひし形と、上へ戻る流れ線で描くこともできます。こちらのほうが直感的に分かる人も多いので、職場で読み慣れている描き方に合わせるとよいでしょう。どちらを選ぶにしても、1つの図の中では同じ描き方にそろえます。
定義済み処理:細かい手順は別の図へ
定義済み処理は、長方形の左右に縦線を1本ずつ足した形です。「この処理の中身は別の図で説明している」という意味です。たとえば「与信の審査」が10の手順からなるなら、全体の図には定義済み処理を1つ置き、中身は別の図に描きます。全体の図が細かい手順で埋まらず、流れを俯瞰できるようになります。
準備
準備の記号は、横長の六角形です。プログラムの流れ図では、繰り返しの前に値を初期化する場面などで使われます。業務フローではあまり出てきませんが、「作業の前に必要な資料をそろえる」のような段取りを示すのに使われることがあります。
ページをまたぐときの結合子と、注釈の記号
フローが長くなると、1枚の紙や1画面に収まらなくなります。そのときに使うのが結合子です。
結合子
結合子は小さな円で描き、中に「A」「1」のような記号を書きます。同じ記号の結合子同士がつながっている、という意味です。流れ線を長く引き回すかわりに、出口と入口に同じ記号の結合子を置けば、線の交差を減らせます。ページをまたぐ場合に、五角形のホームベースの形を使う書き方もあります。
結合子を多用すると、読み手は図の中を行ったり来たりすることになります。1つの図で結合子が3組を超えるようなら、図そのものを分けることを考えます。定義済み処理を使って、全体の図と詳細の図に分けるのが整理しやすい方法です。
注釈
注釈は、片側が開いた角括弧のような形で描き、点線で図形とつなぎます。「月末は締め日のため翌営業日に処理」「担当者が不在のときは課長が代行」のように、図形の中に書ききれない補足を添えるときに使います。注釈がないと、例外の扱いが口頭の説明にしか残らず、引き継ぎで抜け落ちやすくなります。
業務フロー図で記号をどう使い分けるか
業務フロー図は、仕事の流れを部署や担当ごとに描いた図です。プログラムの流れ図と同じ記号を使いますが、目的が「誰が何をしているか」を見えるようにすることなので、使い方の勘所が少し違います。
記号の種類は絞る
業務フローでは、記号の種類を増やすほど読み手の負担が増えます。図を作る側は正確に描き分けたくなりますが、読む側は記号の意味を調べながら読むことになります。上位の解説記事でも、同じ考え方が示されています。
フローチャート記号を調べる人の多くは、「どの図形をどう使い分ければよいか」を最短で知りたいはずです。特に業務フローでは、記号の数を増やしすぎるより、意味が伝わる基本図形を揃える方が実務では役立ちます。 出典: kashika.biz
目安としては、端子、処理、判断、流れ線の4つに、書類とデータ(入出力)を加えた6つ程度で始めると、多くの業務を描けます。それ以外の記号は、図の目的に必要になったときに追加すれば足ります。
スイムレーンで担当を分ける
業務フロー図でよく使われるのが、スイムレーンという描き方です。スイムレーンとは、図を競泳のコースのように縦または横の帯に分け、帯ごとに担当者や部署を割り当てる描き方のことです。「営業」「経理」「顧客」の帯を並べ、それぞれの帯の中に処理を置くと、仕事がどこで担当から担当へ渡るのかが分かります。
担当の境目は、待ち時間や伝達漏れが起きやすい場所です。スイムレーンで描くと、帯をまたぐ流れ線の数がそのまま受け渡しの回数になるので、「この受け渡しは減らせないか」という見直しの議論につなげやすくなります。
凡例を付ける
社外の人や新しく入った人が読む図には、使った記号の一覧を図の隅に付けておくと親切です。凡例とは、図の中の記号が何を表すかをまとめた小さな表のことです。職場ごとの描き方の癖があっても、凡例があれば読み違いを防げます。凡例には記号の形と名前だけでなく、「平行四辺形はメールでのやり取り」「円筒形は顧客台帳」のように、その職場での使い方まで書いておくと、図を受け取った人がすぐに読み始められます。取引先と業務の流れを確かめ合う場面でも、凡例のある図は説明の手間を減らしてくれます。
フローチャートを描くときの基本のルール
記号の意味を知っていても、描き方の決まりを守らないと読みにくい図になります。次のルールを押さえておくと、初めて描く図でも整って見えます。
- 流れは上から下、左から右へ進める。戻る線にだけ矢印を付ける
- 開始の端子と終了の端子をそれぞれ置き、図の範囲を決める
- 1つの処理の図形には1つの作業だけを書き、動詞で終える
- 判断のひし形には、はいかいいえで答えられる問いを書き、出口のすべてに答えを添える
- 線の交差を避け、どうしても交差するなら結合子を使う
- 図形の大きさと間隔をそろえる
- 細かい手順は定義済み処理で別の図に分ける
特に見落としやすいのが4つ目です。判断の出口に「はい」「いいえ」を書き忘れると、読み手はどちらの線がどちらの答えかを推測しなければなりません。また、「いいえ」の先が描かれていない判断もよく見かけます。判断を置いたら、すべての出口の行き先が図の中にあるかを確かめます。
もう1つ大事なのは、描く前に「どこから、どこまで」を決めることです。範囲を決めないまま描き始めると、関連する作業をどこまでも書き足してしまい、図が大きくなりすぎます。最初に開始と終了の端子に書く言葉を決めてから描き始めると、図の大きさが収まります。
描く前に、担当者から手順を聞き取る
業務フロー図で一番時間がかかるのは、記号を並べる作業ではなく、実際の手順を正しく集める作業です。手順は担当者の頭の中にあり、マニュアルに書かれていることと実際のやり方が違っていることも珍しくありません。聞き取りの段階で抜けがあると、どれだけ記号を正しく使っても、図は現場と合わないものになります。
聞き取りでは、次の問いを順に投げかけると、図に必要な要素がそろいます。
- この仕事は、何がきっかけで始まりますか(端子に書く言葉)
- 最初に何をしますか。その次は何をしますか(処理の並び)
- 途中で、人によって対応が変わる場面はありますか(判断のひし形)
- どの書類やデータを受け取り、何を作って誰に渡しますか(書類とデータの記号)
- どこに記録を残しますか(記憶データの記号)
- 何がそろったら、この仕事は終わりですか(終了の端子)
「ふだんはこうするが、たまにこういうこともある」という例外の話が出てきたら、その場で注釈として書き留めておきます。例外の扱いは担当者が当たり前だと思っていて、聞かれないと話さないことが多い部分です。
聞き取った内容は、いきなり清書せず、付せんや手書きの下書きにして担当者に見せます。「この順番で合っていますか」「抜けている作業はありませんか」と確かめてもらうと、話の中では出てこなかった手順が見つかります。担当者の確認を一度通してからツールで清書すると、描き直しの手間が少なく済みます。
例:請求書を発行する流れを記号で描く
ここまでの記号を使って、小さな事業所でよくある「請求書を発行する流れ」を描く手順を、言葉で追ってみます。
- 端子に「月末の締め日になる」と書く
- 処理に「当月の納品記録を集める」と書く
- 判断に「納品記録と受注の内容は一致しているか」と書く
- 「いいえ」の出口から処理「営業担当に確認する」へ進み、確認後は手順3に戻る線を引く(戻る線には矢印を付ける)
- 「はい」の出口から処理「請求書を作る」へ進む
- 書類の記号に「請求書」と書き、処理の横に置く
- 判断に「請求額は社内で決めた金額以上か」と書き、「はい」なら処理「上長が内容を確認する」を挟む
- データ(入出力)の記号に「請求書を顧客に送る」と書く
- 記憶データの記号に「売上台帳に登録する」と書く
- 端子に「入金の確認待ちになる」と書いて終える
この例では、記号は端子、処理、判断、書類、データ、記憶データの6種類しか使っていません。それでも、どこで確認が入り、どこで差し戻しが起き、何が記録として残るのかが読み取れます。
スイムレーンを使うなら、「経理」「営業」「上長」「顧客」の4つの帯を作り、手順4の確認は営業の帯に、手順7の確認は上長の帯に置きます。こうすると、経理の担当者が他の人の確認を待つ場面が2か所あることが図から分かります。業務の改善を考えるときは、こうした待ちの場所が最初の検討対象になります。
よくある間違いと直し方
初めて描いたフローチャートには、よく似た間違いが出てきます。描き上げたら、次の点を見直します。
判断の中に作業を書いてしまう
ひし形に「内容を確認する」と書いてしまうのはよくある間違いです。確認は作業なので処理の長方形に書き、その結果どうなったかを判断のひし形に問いとして書きます。「内容を確認する」の次に「不備はあるか」と続けるのが正しい形です。
1つの処理に作業を詰め込む
「見積書を作成し上長の承認を得て顧客に送付する」を1つの長方形に書くと、どこで仕事が止まっているのかが図から読めません。作成、承認、送付の3つに分け、承認は判断と組み合わせて描きます。
終わりのない流れがある
判断の「いいえ」の先が描かれていない、差し戻した後にどこへ戻るのかが分からない、という図はよくあります。すべての流れ線が、最後は終了の端子にたどり着くかを指でなぞって確かめると、抜けが見つかります。
記号の意味が人によって違う
同じ職場で、ある人は平行四辺形を「入力」、別の人は「書類」の意味で使っている、ということが起こります。図を共有する前に凡例を付けるか、職場で使う記号の一覧を1枚にして配っておくと防げます。
プログラムの流れ図と業務フロー図の違い
同じ記号を使っていても、プログラムの流れ図と業務フロー図では、描く目的と細かさが違います。違いを知っておくと、資料を読む場面でも描く場面でも戸惑いが減ります。
プログラムの流れ図は、コンピュータに実行させる手順を正確に表すための図です。変数に値を入れる、条件で分岐する、決まった回数だけ繰り返す、といった1つ1つの命令が図形になります。省略が許されないので、準備やループ端の記号も細かく使い分けます。情報処理の試験の問題で見かける図は、こちらの描き方です。
業務フロー図は、人と組織の仕事の流れを関係者で共有するための図です。読み手はシステムの担当者だけでなく、営業や経理、ときには顧客も含まれます。1つ1つの命令ではなく「見積書を作る」「上長が承認する」のような仕事の単位で描き、担当の境目が分かるようにスイムレーンを使うことが多くなります。
| 比べる点 | プログラムの流れ図 | 業務フロー図 |
|---|---|---|
| 読む人 | プログラムを書く人、試験の受験者 | 業務に関わる人全員 |
| 1つの図形の単位 | 1つの命令や計算 | 1つの仕事 |
| よく使う記号 | 端子、処理、判断、ループ端、準備 | 端子、処理、判断、書類、データ |
| 担当の表し方 | 表さないことが多い | スイムレーンで帯に分ける |
どちらを描くかで迷ったら、図を読む人を先に決めます。社内の手順を新人に伝えるための図なら、業務フロー図の描き方で、記号の種類を絞ったほうが伝わります。システム会社に仕組みを作ってもらうための図なら、業務フロー図で全体を描いたうえで、システムが受け持つ部分だけを細かく描き足すと、話が食い違いにくくなります。
描いた図を使って業務を見直す手順
フローチャートは描いて終わりではありません。描いた図を眺めると、ふだんは気づかない無駄や危うい場所が見えてきます。業務の見直しに使うときは、次の順で図を読みます。
- 判断のひし形を数える。判断が多い場所は、担当者の経験に頼っている場所であることが多い
- スイムレーンをまたぐ流れ線を数える。受け渡しが多いほど、待ち時間と伝達漏れが起きやすい
- 戻る矢印を探す。差し戻しが起きる場所は、最初の段階で確認を加えれば減らせることがある
- 同じ書類が何度も出てくる場所を探す。転記が起きている可能性がある
- 注釈に書いた例外を読む。例外が多い手順は、決まりそのものを見直す余地がある
たとえば、先に描いた請求書の例では、納品記録と受注の内容が合わないときに営業担当へ戻る矢印がありました。この差し戻しが月に何度も起きているなら、納品の時点で営業担当が記録を確かめる手順を加えるほうが、月末の手戻りを減らせます。図にすると、こうした改善の候補を関係者と同じ画面を見ながら話し合えます。
見直した後の図は、日付を入れて保存しておきます。業務の手順は少しずつ変わっていくので、半年に1回程度、図と実際の仕事が合っているかを担当者と確かめると、図が古くなって誰も見なくなる事態を防げます。改訂のたびに変えた場所を注釈で残しておくと、なぜその手順になったのかを後から追えます。
フローチャートを作れるツールと選び方
フローチャートは、手書きでも、身近なソフトでも描けます。目的と、図を誰と共有するかで選びます。
紙とホワイトボード
最初の下書きは、紙や付せん、ホワイトボードで描くのが早道です。関係者が集まって「この次は何をしますか」と聞きながら付せんを並べると、担当者しか知らない手順が出てきます。清書は後からツールで行えば十分です。
Excel、PowerPoint、Word、Googleスライド
会社のパソコンに入っている Excel や PowerPoint、Word には「図形」の機能があり、フローチャートの図形が一覧から選べます。図形の上にマウスを合わせると「フローチャート:判断」のように名前が出るので、記号の名前を覚えていなくても選べます。Googleスライドや Googleドキュメントの図形描画でも同じように描けます。追加の費用がかからず、社内の誰でも開けるのが利点です。
作図の専用ツール
図形の数が多い業務フローや、スイムレーンを何枚も描く場合は、作図専用のツールのほうが楽です。図形をつなぐ線が自動で追従し、図形を動かしても線が切れません。無料で使えるものも多くあります。料金や無料の範囲はツールごとに違い、改定もあるので、使い始める前に各社の公式の料金ページを確かめます。
選ぶときは、次の3点を見ると失敗しにくくなります。
- 図を共有する相手が、同じツールを持っていなくても見られるか
- PDF や画像に書き出せるか
- 複数人で同時に編集する必要があるか
社内で使うツールを1つに決めておくことも大切です。部署ごとに別のツールで描いていると、ほかの部署の図を開けない、図形の形が微妙に違う、といった食い違いが起こります。描いた図は、元のファイルと PDF の両方を決まったフォルダに保存し、ファイル名に作成日と版の番号を入れておくと、どれが最新の図かで迷いません。手順書や業務マニュアルに図を貼り付けるときも、元のファイルの保存場所を書き添えておくと、次に直す人が探さずに済みます。
描いたフローを、担当と期限の管理に移すとき
フローチャートは、仕事の流れを決めるための図です。ところが、実際の仕事が始まると「この案件はいま手順のどこにいるのか」「誰が持っているのか」を追う必要が出てきます。図は流れを示しますが、個々の案件の進み具合までは示しません。
1人で回している仕事や、件数が少ない仕事なら、フローチャートの手順を Excel やスプレッドシートの列見出しにして、案件ごとに行を作り、進んだ列に日付を入れていくだけで管理できます。追加の道具は要りません。
複数人で担当を分け、期限と進み具合を共有したい場面では、手順をそのままボードの列にできるプロジェクト管理の道具が向いています。その1つが、カンバンやガントチャートなどのボードで仕事を進めるPinatecaです。公式の案内では、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが無料プランから使え、5人まで、ボード10個までは無料で、クレジットカードの登録も不要とされています。6人目、または11個目のボードからは、1人あたり月額500円(税抜)のスタンダードプランになります。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
フローチャートの処理の図形を、カンバンの列(たとえば「受付」「確認中」「上長確認」「送付済み」)に置き換えれば、1件ごとのカードがどの手順にあるかが見えるようになります。判断で差し戻しになった案件は、カードを前の列に戻せば済みます。
記号を覚えた先にある、図を描ける人の仕事
在宅ワークとフリーランスの仲介を長く続けてきた運営者として見てきた限りでは、フローチャートや業務フロー図を描けることは、職種を問わず仕事の幅を広げます。システム開発の要件を詰める場面でも、業務改善の提案でも、マニュアルの作成でも、まず「いまの流れ」を図にするところから始まるからです。図を描ける人は、聞き取った話を整理して相手に返せる人として信頼されやすく、継続の依頼につながっていく傾向があります。
たとえば、生成AIを仕事に取り入れたい企業を支援する仕事では、どの手順をAIに任せるかを決める前に、業務の流れを図にして洗い出す作業が欠かせません。仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で、案件の種類や求められるスキルとともに説明しています。同じように、アプリを作る仕事でも、画面の遷移や処理の分岐をフローチャートで共有してから作り始めるのが一般的です。開発の案件の全体像はアプリケーション開発のお仕事で確かめられます。
業務の流れを図にして改善を提案する力は、経営の助言を行う国家資格でも重視されています。企業の課題を分析して助言する中小企業診断士の試験や実務では、業務の流れを整理して問題の場所を特定する考え方が繰り返し出てきます。また、IT の基礎を体系的に学びたい人には、情報処理推進機構(IPA)が実施する基本情報技術者試験があり、処理の流れを読み解く力が問われます。
図を見やすく整える力は、デザインの仕事とも重なります。資料の図解や業務マニュアルの図版を作る仕事の報酬の目安は、デザイナーの年収・単価相場で確かめられます。記号の意味を覚えたら、まずは身近な仕事を1つ選んで、開始と終了を決め、基本の4つの記号で描いてみてください。1枚描き上げると、どこで判断が入り、どこで待ちが生まれているのかが見えてきます。
よくある質問
Q. フローチャートの記号は全部覚える必要がありますか?
全部を覚える必要はありません。実務の多くは、端子(始まりと終わり)、処理、判断、流れ線の4つで描けます。業務フローなら、これに書類とデータ(入出力)を加えた6つ程度で十分です。それ以外の記号は、図の目的に必要になったときに調べて追加すれば足ります。大切なのは、職場の中で同じ記号を同じ意味で使うことです。
Q. フローチャートの記号に決まった規格はありますか?
日本では日本産業規格の JIS X 0121「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号」で決められています。国際規格の ISO 5807 と対応しており、海外の資料でも同じ形の図形が使われます。もとはコンピュータの処理手順のための規格ですが、業務フロー図でも同じ記号が広く使われています。
Q. 判断のひし形には何を書けばよいですか?
はいかいいえで答えられる問いを書きます。「書類に不備はあるか」「在庫は足りているか」のような形です。「内容を確認する」のような作業は処理の長方形に書き、その結果をひし形で問います。出口の線にはそれぞれ「はい」「いいえ」を添え、すべての出口の行き先が図の中にあるかを確かめます。
Q. フローチャートは無料で作れますか?
作れます。Excel や PowerPoint、Word の「図形」の機能にはフローチャート用の図形がそろっており、Googleスライドの図形描画でも描けます。図形の数が多い業務フローなら、作図専用のツールのほうが線の付け替えが楽です。専用ツールの無料の範囲や料金は改定があるので、使い始める前に公式の料金ページで確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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