建築業で入る国民健康保険組合の中身

前田 壮一
前田 壮一
建築業で入る国民健康保険組合の中身

この記事のポイント

  • ✓建築国保(建設業の国民健康保険組合)の保険料の決まり方
  • ✓市町村の国民健康保険との違い
  • ✓法人化しても続けられる適用除外承認の仕組み

まず、安心してください。建築国保について調べ始めた段階で不安になるのは、「所得が増えたら保険料も跳ね上がるのか」「法人にしたら追い出されるのか」という二点だと思います。結論から書くと、建築業の国民健康保険組合の保険料は、多くの組合で年齢と家族の人数だけで決まり、所得では変わりません。そして、法人にしたり従業員が5人以上になったりしても、所定の承認を受ければそのまま残れる道が用意されています。この記事では、建築国保という仕組みがどう成り立っているのか、保険料はいくらなのか、市町村の国民健康保険や会社員の健康保険と何が違うのかを、公的な資料と組合の公表資料にもとづいて順番に整理します。

建築国保とは何か。市町村の国保とは別の「組合」

日本の公的医療保険は、会社員が入る健康保険、公務員などが入る共済組合、そして自営業者や無職の人が入る国民健康保険に大きく分かれます。この国民健康保険には、実は二つの運営主体があります。一つは市区町村、もう一つが国民健康保険組合です。建築国保はこの後者に当たります。

厚生労働省の制度概要には、組合の位置づけがはっきり書かれています。

国民健康保険組合は、同種の事業又は業務に従事する者で組織する団体で、市町村が行う国民健康保険事業の運営に支障を及ぼさないと認められるときに限って、都道府県知事の認可を受けて設立することができる。 出典: mhlw.go.jp

つまり、同じ業種で働く人たちが集まって作った、国民健康保険法にもとづく公法人です。任意団体でも民間の共済でもありません。組合員の保険料と国からの補助金で運営されます。建築・建設の分野では、全国規模の組合、都道府県単位の組合、連合組織の組合など複数が存在し、名称も「建設国保」「建築国保」「土建国保」などとまちまちです。読者が普段耳にする呼び名はどれか一つだと思いますが、法律上はすべて同じ「国民健康保険組合」です。

医療の給付内容そのものは、市町村の国民健康保険と大きくは変わりません。窓口での自己負担は義務教育就学前が2割、小学生以上70歳未満が3割、70歳以上は所得に応じて2割または3割です。高額療養費制度も同じように使えます。違いが出るのは、保険料の決め方と、組合が独自に上乗せしている給付・補助の部分です。ここが建築国保を調べる価値のある場所になります。

保険料は所得ではなく年齢と人数で決まる

いちばん知りたいのは金額だと思います。建設業の組合の一つである建設連合国民健康保険の場合、組合員本人の保険料は年齢で段階が分かれています。19歳以下が月11,200円、20歳から24歳が13,200円、25歳から29歳が16,200円、30歳から39歳が20,200円、40歳から49歳が23,200円、50歳から64歳が25,900円、65歳以上が26,100円です。家族の保険料は1歳から18歳が1名につき5,200円、19歳から64歳が6,600円、65歳以上が7,600円で、0歳児は免除されます。40歳から64歳の人には介護保険料として1名につき月3,700円が加わります。

この金額表には注意書きが付いています。

※組合員保険料等には、組合費(月額3,000円)が含まれています。※医療保険料には、後期高齢者支援金/子ども・子育て支援納付金(19歳未満の家族の方を除く)が含まれています。 出典: kenseturengo.com

組合費が保険料の中に含まれている形なので、表の金額を払えば別途の会費は発生しないという建て付けです。組合によってこのあたりの内訳は違うので、比べるときは「表に書かれた額のほかに何を払うのか」を確認してください。

重要なのは、この表のどこにも所得が出てこないことです。組合の説明も「保険料は被保険者の年齢と人数により一律に決定。世帯所得や就労状況で保険料額は変動しません」と明記しています。稼ぎが増えても保険料は変わらず、逆に仕事が減った年も同じ額を払い続けることになります。この性質が、建築国保を選ぶかどうかの分かれ目そのものです。

なお、すべての建設系の組合が完全定額というわけではありません。組合によっては所得割を取り入れているところ、事業主と従業員で等級が分かれているところもあります。加入を検討する組合の保険料表を、必ず自分の目で確かめてください。

市町村の国保と比べると、どこで差が出るのか

市区町村の国民健康保険は、所得割、均等割、平等割を組み合わせて計算します。所得割がある以上、稼ぎが増えれば保険料も増えます。所得が伸びてきた個人事業主ほど負担感が強くなる仕組みです。ある業界向けの解説では、次のような例が挙げられています。

市区町村の国保では、年収が高くなるほど所得割が増加し、保険料も跳ね上がります。例えば年収800万円の個人事業主の場合、市区町村国保の保険料は年間90万円を超えることもあります。 出典: topconpositioning.asia

保険料には上限(賦課限度額)があるため青天井ではありませんが、限度額そのものがほぼ毎年引き上げられてきました。所得が伸びている人にとって、定額の建築国保が有利になる場面は確かにあります。

ただし、リスクは正直に書いておきます。逆の状況では不利になります。仕事が減って所得が落ちた年、市町村の国保なら保険料も下がりますし、一定以下の所得なら軽減措置も受けられます。定額の建築国保は下がりません。独立したばかりで売上が読めない時期、体調を崩して稼働が落ちた時期に、月2万円台の固定費がそのまま乗り続けるのはそれなりの重さです。

もう一つ見落とされがちなのが家族の扱いです。会社員の健康保険なら、収入が少ない配偶者や子どもは被扶養者として保険料がかかりません。国民健康保険にはこの被扶養者という考え方がなく、家族も一人ずつ保険料がかかります。建築国保も同じで、家族が1名増えれば月5,200円から7,600円が上乗せされます。夫婦と子ども2人の世帯で計算すると、市町村国保と比べてどちらが安いかは所得と人数の組み合わせで簡単にひっくり返ります。4人世帯で試算して初めて答えが出る、という前提で比べてください。

加入できるのは誰か。建設業29業種という線引き

建設連合国民健康保険を例にとると、加入資格は4つの条件で示されています。組合の所在する都道府県に住んでいること、建設業法に規定される建設業29業種または建設関連業種(設計業、測量業、地質調査業)に従事していること、法人格を持たない個人事業所の事業主か、事業所に属していない一人親方か、法人格を持たない従業員5人未満の個人事業所の従業員であること、そして75歳未満であることです。

建設業29業種というのは、建設業法で定められた業種区分です。土木工事、建築工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事が並びます。設計や測量、地質調査を建設関連業として加えている組合が多いのも特徴です。

「建築の仕事をしている」という自己認識だけでは足りず、この分類のどれに当たるかが問われます。加入手続きでは、確定申告書の控え、請求書や契約書、建設業許可の写しなど、実際にその業種で働いていることを示す書類の提出を求められるのが普通です。名義だけで入ることはできません。

住所の要件も見落とされがちです。組合には地区(エリア)が定められていて、そこに住んでいることが条件になります。引っ越して地区の外に出ると、資格を失って市町村の国民健康保険に移ることになります。都道府県をまたぐ移転を考えている人は、加入前に組合の地区を確認しておくことをおすすめします。

法人にしても続けられる。適用除外承認という制度

ここが建築国保の話でいちばん誤解の多い部分です。個人事業から法人に切り替えると、法律上はその事業所が健康保険の適用事業所になります。従業員5人以上の個人事業所(特定16業種)も同じです。適用事業所になれば、そこで働く人は原則として健康保険に入ることになり、国民健康保険組合からは抜けることになります。

ただし例外が用意されています。日本年金機構の資料には、次のように書かれています。

ただし、例外として、国民健康保険組合に加入している者が働く個人事業所が法人事業所になった場合などに、国民健康保険組合への加入を継続できるよう、加入している国民健康保険組合の理事長と厚生労働大臣の承認(適用除外承認)を得れば、引き続き国民健康保険組合に加入できることとしています。 出典: nenkin.go.jp

この「健康保険被保険者適用除外承認」を受ければ、法人化しても、従業員が5人以上になっても、そのまま組合に残れます。申請できるのは4つの場合です。組合の被保険者を使用する事業所が法人または従業員5人以上の事業所となり健康保険の適用事業所になる日に、現に組合の被保険者である人。組合の被保険者が法人や従業員5人以上の事業所を設立して適用事業所になる場合のその人。これらに当たって承認を受けた人が使用する事業所に新たに使われることになった人。そして組合の被保険者が健康保険の適用事業所に勤めた場合のその人です。

期限が厳しいので、ここは強調しておきます。申請は、これらの事実が発生した日から14日以内に行う必要があります。法人設立の登記が済んでから慌てて動くと間に合わないことがあります。法人化を考え始めた時点で組合の支部に連絡し、必要書類と提出の段取りを先に確認しておいてください。年金事務所への健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届と、適用除外承認申請書を同時に出す流れになります。

なお、適用除外が使えるのは健康保険の部分だけです。厚生年金保険は別で、法人になれば代表者も含めて加入することになります。医療は組合、年金は厚生年金という組み合わせになる点は押さえておいてください。

組合独自の給付と補助。ここが選ぶ理由になる

保険料が定額であること以上に、加入者が価値を感じているのが組合独自の給付です。建設連合国民健康保険が公表している内容を見ると、市町村の国民健康保険にはあまり無いものが並んでいます。

傷病手当金が用意されている点は大きな違いです。組合員本人が病気やケガで3日以上入院して仕事ができなかった場合に、1日につき5,000円、最高40日間が見舞金として支給されます。市町村の国民健康保険では傷病手当金は任意給付とされていて、実際に支給している自治体はほとんどありません。体を使う仕事で入院が長引いたときに、日額の支えがあるかどうかは家計への影響が違います。ただし、初診日が加入前だった場合は加入月を含む3か月間は支給されないという条件が付いています。

出産育児一時金は新生児1名につき500,000円です。産科医療補償制度に加入していない分娩機関での出産の場合は488,000円になります。加えて、産前産後期間に相当する4か月分(多胎の場合は6か月分)の保険料が還付され、未就学児のいる世帯には1名につき12,000円の保険料還付があります。0歳児は家族保険料が免除されます。子育て世代の負担を軽くする設計になっているのが見て取れます。

健康診断まわりの補助も手厚めです。40歳から74歳の人が組合の集団健診を受けた場合、年度内1回に限り13,000円を限度に全額補助。一般健診や人間ドック、脳ドックを医療機関で受けた場合は、13,000円以内なら全額、超える場合は30,000円を限度に費用の7割を補助します。インフルエンザの予防接種は年度内6,000円を限度に実費補助、契約保養施設に泊まれば1名4,000円の補助が年度内2回までという具合です。

これらは組合ごとに内容が違います。傷病手当金の金額も日数も、健診補助の上限も、組合によってまるきり別物です。「建築国保は給付が手厚い」と一括りにせず、自分が入れる組合の給付一覧を取り寄せて、市町村の国保との差額と突き合わせてください。

事業主が保険料を負担してくれる場合もある

従業員の立場でこの記事を読んでいる人は、保険料を誰が払うのかが気になると思います。会社員の健康保険は労使折半で、会社が半分を負担します。国民健康保険組合にはこの折半のルールがありません。原則として組合員が自分で払います。

ただし、事業主が福利厚生として補助することは可能です。

もちろん、健康保険のように会社が福利厚生の一環として半額もしくは任意の額を支給し、従業員の負担を軽減することは可能です。実際に、そのように取り扱う事業者も一定数存在します。 出典: topconpositioning.asia

義務ではないので、求人票に書かれていなければ確認が必要です。入ってから「全額自己負担でした」と分かると、手取りの見込みが月に2万円近くずれます。仕事を選ぶ段階で、保険料の扱いを口頭でなく書面で確かめておくほうが後の揉め事が減ります。

保険料の納付方法も組合によって違います。建設連合国民健康保険の場合、収納代行機関に対応した銀行口座からの口座振替のみで、振替日は毎月27日(休業日なら翌営業日)です。事業所単位でまとめて引き落とす組合もあります。残高不足で止まると資格に影響することがあるので、口座の管理は自分で握っておいてください。

加入と脱退で気をつけること

加入の手続きは、組合に連絡して資料を取り寄せ、必要書類をそろえて支部に提出し、審査を経て資格が発生する、という流れが一般的です。所定の手続きが組合で確認できないと、加入できなかったり加入月がずれたりします。月の途中で申し込んでも、資格の発生日は組合の規約で決まっているため、思っていた月から始まらないことがあります。

市町村の国民健康保険から移る場合は、組合の資格が確定してから市区町村の窓口で国民健康保険の脱退手続きをします。この順番を逆にすると、どちらの保険証も無い期間ができてしまいます。逆に、組合を抜けて市町村の国保に入る場合も、組合の資格喪失証明書を持って14日以内に市区町村へ届け出ます。届け出が遅れると、保険料をさかのぼって請求されることになります。

会社員になったときも忘れずに届け出てください。健康保険に加入したのに組合の資格をそのままにしておくと、二重加入の状態になり、後から保険料の精算が発生します。医療機関で古いほうの資格を使って受診していた場合、医療費の返還を求められることもあります。

75歳になると後期高齢者医療制度に移ります。組合によっては、本人が「後期高齢者の組合員」として資格を続けることで、75歳未満の家族や従業員組合員が引き続き組合に残れる仕組みを置いているところもあります。世帯の中で年齢がばらけている場合は、この扱いを先に確認しておくと慌てずに済みます。

払った保険料は確定申告でどう扱うか

保険料を年間で数十万円払うことになるので、税金の扱いも押さえておきます。国民健康保険組合に払う保険料は、事業の必要経費ではありません。確定申告で所得から差し引く社会保険料控除の対象です。

国税庁は社会保険料控除の対象を列挙しており、その中に「国民健康保険の保険料または国民健康保険税」と「介護保険法の規定による介護保険料」が明記されています。国民健康保険組合に払う保険料も、この国民健康保険の保険料に当たります。控除できる金額は、その年に実際に支払った金額の全額です。上限はありません。

見落とされやすいのが、家族の分の扱いです。国税庁の説明では、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に控除を受けられるとされています。世帯主が家族全員分をまとめて口座振替で払っているなら、その全額を世帯主の申告で控除できることになります。夫婦それぞれが事業をしていて所得が分かれている場合は、どちらが払ったことにするかで税額が変わるので、所得の高いほうにまとめるのが一般的な考え方です。ただし実際の判断は所得の構成で変わるため、金額が大きくなる年は税務署か税理士に確認してください。

申告のときは、組合から届く保険料の納付額を証明する書類を手元に置いておきます。国民健康保険の保険料については、国民年金の保険料のような添付義務は課されていませんが、金額を間違えると修正が必要になります。1月から12月までに実際に引き落とされた額を集計してください。年度単位ではなく暦年単位である点を取り違える人が多い場所です。

ついでに、労災保険の特別加入者として払う保険料も、国税庁の列挙の中に社会保険料控除の対象として入っています。こちらも経費ではなく控除で処理します。建築国保と一人親方労災の両方に入っている人は、二つとも同じ欄で合算して申告する形になります。

建築の現場から離れる可能性も込みで考える

40代で独立を考える人と話していると、保険の話は後回しになりがちです。仕事が取れるかどうかのほうが先に来るからで、それは自然なことだと思います。ただ、建築国保は「建設業に従事していること」が資格の条件なので、仕事の中身が変わると資格そのものが揺らぎます。現場を離れて設計や積算の比重が増えた、体を痛めて施工から管理に移った、事務所仕事と在宅の受託が半々になった。こうした変化は、40代以降にはよくあります。

運営者として在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言うと、建設分野の人が現場以外の収入源を持つケースはこの数年で目立って増えました。図面のデータ化、施工写真の整理、積算の代行、建材メーカー向けの技術文書作成。現場で覚えた知識がそのまま値段の付く仕事になります。中間に手数料が乗らない直接取引なら、同じ予算で依頼する側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の取引が効いてくるのは、月々の固定費を確実に払い続けたい時期です。

自分の経験がいくらで売れるかを確かめたいときは、職種別の単価データが目安になります。技術文書を書く仕事に興味があるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、システム側に寄せたいならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。どんな仕事が業務委託で動いているかを俯瞰したいときは、アプリケーション開発のお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事のガイドが、必要な経験と発注の形を職種ごとに整理しています。

書類の書き方を整えたい人にはビジネス文書検定のような資格ガイドも役に立ちます。見積書や報告書の形が整っているだけで、発注側の信頼の付き方が変わるのは、長く現場を見てきた実感です。

保険料の経費処理も気になるところだと思います。国民健康保険組合の保険料は事業の経費ではなく、確定申告で社会保険料控除として所得から差し引く扱いになります。この区別を取り違えると申告をやり直すことになるので、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で、経費にできる保険と控除で処理する保険の違いを先に確かめておいてください。医療保険と生命保険の位置づけを整理したい場合は生命保険おすすめ比較【2026年版】|年代別の選び方も判断材料になります。個別の金額や扱いは所得や家族構成で変わるため、最終的には税務署か税理士、保険料の条件は加入予定の組合に確認してください。

世帯の形ごとに実額を置いてみる

表の数字だけ見ても実感がわかないと思うので、建設連合国民健康保険の保険料表をもとに、世帯の形ごとに月額を出してみます。組合が公表している金額をそのまま足しただけの計算です。

まず、35歳の一人親方が単身で加入する場合。組合員保険料は30歳から39歳の区分で月20,200円、家族はいないので合計は月20,200円です。介護保険料は40歳からなので、この年齢ではかかりません。年額にすると242,400円です。

次に、45歳の事業主、専業の配偶者(43歳)、子ども2人(12歳と9歳)の4人世帯。組合員保険料が40歳から49歳の区分で23,200円、配偶者は19歳から64歳の家族区分で6,600円、子ども2人は1歳から18歳の区分で5,200円ずつの10,400円。ここに、40歳以上の本人と配偶者の介護保険料が1名3,700円ずつで7,400円加わります。合計は月47,600円、年額571,200円です。

さらに、55歳の事業主と配偶者(52歳)の2人世帯。組合員保険料が50歳から64歳の区分で25,900円、配偶者が6,600円、介護保険料が2名分で7,400円。合計は月39,900円、年額478,800円です。

この計算で見えてくるのは、家族の人数が保険料に直接効くということです。子どもが1人増えるごとに年62,400円、配偶者が加わると年79,200円が乗ります。市区町村の国民健康保険にも均等割があるので人数の影響は同じ方向に働きますが、所得が低い年には軽減が入る点が違います。所得が読みにくい時期に大家族で定額の組合に入ると、負担が重く出る年が来ます。反対に、所得が安定して伸びてきた単身や夫婦のみの世帯では、定額の効きが素直に出ます。

なお、この金額は一つの組合の例です。組合が違えば表も違います。自分が入れる組合の表を取り寄せて、同じ手順で家族を全員足してみてください。ここまで出してから市区町村の窓口で試算を頼むと、比較が一度で終わります。

一人親方なら労災保険の特別加入も同時に考える

建築国保を調べている人の多くは一人親方です。そして一人親方には、医療保険と並んでもう一つ、考えておくべき制度があります。労災保険の特別加入です。

労災保険は本来、雇われて働く人のための制度なので、一人で現場に入る人は対象外です。そこに例外を設けたのが特別加入制度で、労働者を使用しないで建設の事業を行う人は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通して申し込めば、国の労災保険に入れます。労働者を使う日が年間100日に満たない場合も、一人親方等として加入できます。

保険料は、給付基礎日額(3,500円から25,000円までの16段階から選ぶ)に365日を掛けた算定基礎額に、業種ごとの保険料率を掛けて計算します。建設の事業の料率は1000分の17です。給付基礎日額を1万円にすると、年間保険料は62,050円になります。治療費は原則として自己負担なしで、休業4日目以降は給付基礎日額の60パーセントに特別支給金20パーセントが上乗せされます。

医療保険と労災保険は役割が違います。建築国保が効くのは、私生活での病気やケガ、家族の医療費です。仕事中や通勤中のケガは、原則として健康保険では扱えず、労災保険の領域になります。建築国保だけ入って特別加入をしていないと、いちばん確率の高い現場でのケガが、どちらの保険でも十分に支えられない状態になります。建設系の組合の多くが一人親方労災の取り扱いを併設しているのは、このためです。加入を相談するときは、医療と労災の両方の窓口を同じ組合で押さえられるかを聞いてみてください。

組合を選ぶときに見る6つの点

建設系の国民健康保険組合は一つではありません。地域や職域で複数の選択肢があることも珍しくありません。比べるときに見る点を6つに絞ります。

1つ目は保険料表そのものです。年齢区分の切り方、家族保険料の額、介護保険料の扱い、組合費が保険料に含まれるか別か。ここが最大の差になります。

2つ目は地区です。組合には事務処理を行う地区が定められています。住んでいる場所が地区の中かどうか、将来引っ越す可能性のある地域が含まれるかを確認します。

3つ目は加入できる業種の範囲です。建設業29業種に加えて設計業や測量業、地質調査業を含めている組合もあれば、もっと狭い組合もあります。自分の仕事が確実に含まれるかを、業種名で照らし合わせてください。

4つ目は独自給付です。傷病手当金の有無と金額と日数、出産育児一時金の額、健診や人間ドックの補助額、予防接種の補助。使う予定のあるものだけを数えます。使わない補助は、金額差を埋める理由になりません。

5つ目は適用除外承認への対応です。法人化や従業員5人以上を視野に入れているなら、組合が適用除外の手続きに慣れているかどうかが効いてきます。14日という期限の中で理事長の承認を取り、年金事務所へ書類を出す段取りが必要になるからです。

6つ目は保険料の納付方法と、滞納したときの扱いです。口座振替のみか、事業所単位でまとめるのか、振替日はいつか。残高不足が続くと資格に影響することがあります。

この6点を一覧にして、候補の組合ごとに埋めていけば、どれを選ぶかは自然に決まります。パンフレットの見た目や加入者数の多さで決めないでください。効くのは、自分の世帯の実額と、自分が実際に使う給付だけです。

判断の順番を決めておく

最後に、迷ったときの見方を整理します。まず、自分と家族の人数・年齢で、建築国保の保険料を表から計算します。次に、直近の確定申告をもとに市区町村の窓口で国民健康保険料を試算してもらいます。この二つを並べて、年額でいくら違うかを出します。ここまでは誰でもできます。

そのうえで、金額差に加えて三つを見ます。一つ目は、所得が上下したときにどう動くか。定額は所得が伸びる局面で有利、落ちる局面で不利です。二つ目は、傷病手当金や健診補助といった独自給付が、自分の生活で実際に使うものかどうか。使わない補助は金額差を埋めません。三つ目は、これから法人にする予定があるか。予定があるなら、適用除外承認の14日という期限を段取りに組み込んでおく必要があります。

保険は、入る前より辞めるときに面倒が出る仕組みです。焦って決めず、組合の資料を取り寄せて、家族の人数を入れた実額で比べてから動いてください。急いで得をする性質のものではありません。

よくある質問

Q. 建築国保の保険料は所得が増えると上がりますか?

多くの建設系の国民健康保険組合は、年齢と家族の人数だけで保険料を決めており、所得では変わりません。建設連合国民健康保険の場合、組合員本人は年齢区分で月11,200円から26,100円、家族は1名5,200円から7,600円です。ただし所得割を取り入れている組合もあるため、加入先の保険料表で確認してください。

Q. 法人にしたら建築国保は抜けなければいけませんか?

抜ける必要はありません。国民健康保険組合の理事長と厚生労働大臣の承認(健康保険被保険者適用除外承認)を受ければ、法人化しても従業員5人以上になっても組合に残れます。ただし申請は事実が発生した日から14日以内という期限があるので、法人化の計画段階で組合と年金事務所に相談してください。

Q. 誰でも加入できますか?

できません。組合の地区内に住んでいること、建設業法の建設業29業種または設計業・測量業・地質調査業に従事していること、法人格のない個人事業所の事業主か一人親方か従業員5人未満の個人事業所の従業員であること、75歳未満であることなどが条件です。確定申告書や契約書で実態の確認を求められます。

Q. 市町村の国民健康保険とどちらが得ですか?

世帯の人数と所得で逆転します。所得が伸びている単身や夫婦のみの世帯は定額の組合が有利になりやすく、所得が低い年や家族が多い世帯は軽減のある市町村国保が有利になることがあります。組合の保険料表で家族全員分を足し、市区町村の窓口で試算を取って年額で比べてください。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月28日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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