公認心理師の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓公認心理師 講師 副業の実態を整理しました
- ✓個人向け講座それぞれの依頼の形と報酬の決まり方
- ✓守秘義務や名称の扱いで確認すべき点まで具体的にまとめています
結論から書きます。公認心理師の資格を持つ人が副業として選べる仕事のなかで、時間あたりの報酬がもっとも高くなりやすいのは講師です。相談業務が1件ずつの積み上げになるのに対して、講師は1回の登壇で複数人に向けて話すため、報酬の構造そのものが違います。
ただし、講師の仕事は「話がうまい人」に依頼が来るわけではありません。依頼者が求めているのは、自分たちの組織で起きている問題に合わせて内容を組み立て直せる人です。既製のスライドをそのまま持ってくる講師は、一度は呼ばれても二度目がない。この傾向は、研修を発注する側の話を聞いていると非常にはっきりしています。
この記事では、公認心理師 講師 副業というテーマで、依頼の形、報酬の決まり方、最初の1本をどう取るか、そして資料をどう組み立てるかを整理します。資格の取り方や試験の話は扱いません。すでに資格を持っている人が、教える側に回るための話です。
講師の仕事は4つの型に分かれる
まず依頼の形を整理します。同じ「講師」でも、報酬の決まり方も準備にかかる時間もまったく違います。
企業研修
もっとも件数が多い型です。管理職向けのラインケア研修、全社員向けのセルフケア研修、ハラスメントの防止研修、新入社員向けのストレス対処研修といったテーマで依頼が来ます。
依頼の経路は2つあります。企業から直接呼ばれる場合と、研修会社や外部相談窓口の運営会社を通す場合です。直接の場合は単価が高くなりますが、日程調整や請求も自分でやることになります。仲介を通す場合は、単価は下がる代わりに案件が定期的に回ってきます。
実施時間は60分から180分が中心です。オンライン開催が定着したことで、地方の企業から呼ばれるハードルが下がりました。移動時間がゼロになったぶん、同じ日に2件受けることもできます。
自治体や学校の研修
教職員向けの研修、スクールカウンセラーの経験を踏まえた保護者向け講座、地域の子育て支援センターでの講座、民生委員や相談員向けの研修といった依頼です。
この領域は、単価は企業研修より低めに設定されることが多い。予算の枠が決まっているためです。ただし、年間の計画で動くため、一度実績ができると翌年も声がかかりやすいという特徴があります。安定性を求めるならこちらです。
外部の専門職を継続的に必要としている現場は、雇用の形でも募集を出しています。
八王子市からの受託事業で、生活困窮世帯や不登校などの小中高生に向けた家庭訪問型の学習支援員を募集しています。1コマ(130分)あたり4,000円(時給換算約1,846円)の高水準報酬で、週1日・午前中の短時間勤務が可能です。学習支援やコミュニケーション、外出同行支援などを通じて子どもたちの成長をサポートします。社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士、教員免許をお持ちの方、または学習指導や子ども支援の実務経験6ヶ月以上の方が対象です。 出典: 求人ボックス
この募集は講師ではなく支援員ですが、コマ単位で報酬が決まり、週1日から入れるという設計は講師の仕事と共通しています。公的な受託事業では、この形の募集が継続的に出ています。副業として入るなら、こうしたコマ単位の仕事を足がかりにして、研修の依頼につなげていく道筋もあります。
オンライン講座
自分で講座を作り、動画や資料として販売する型です。学習プラットフォームに載せる場合と、自分で申し込みを受け付ける場合があります。
この型の特徴は、作るときの労力が大きく、売れ始めるまでの期間が読めない点にあります。正直なところ、最初の副業としてここから入るのは効率が悪い。企業研修や自治体の講座で内容を固めてから、その素材を録画型に組み直すほうが確実です。実際、講座として売れているものは、対面で何度も実施して質問を集めた内容を再構成したものが多い。
一方で、いったん形になれば時間の制約から外れます。本業が忙しくて登壇の日程が取れない時期でも、収入が止まらないという利点があります。
個人向けの講座と勉強会
心理職を目指す人、資格を取ったばかりの人、対人援助職に就いている人などを対象に、少人数の勉強会や講座を開く型です。
ここは注意が必要な領域です。参加者の実務について助言する形になると、教育や指導の枠を超えて、個別の支援に近づいていきます。何を提供する場なのかを募集の段階で明示し、個別の相談は扱わないと決めておいてください。参加者から具体的なケースの話が出たときにどう扱うかを、あらかじめ自分の中で決めておく必要があります。
報酬はどう決まるか
講師料の決まり方には、いくつかのパターンがあります。提示される形が違うだけで、実質的な水準は変わらないこともあるので、比較できるようにしておきます。
時間単価で決まる場合
もっとも一般的です。研修1時間あたりで金額が決まり、実施時間を掛けます。外部の専門職に対する時給の水準としては、相談業務で時給2,000円前後という募集が見られます。
企業や組織の従業員を対象に、ハラスメント相談や職場の人間関係、仕事上の悩みなど、従業員のさまざまなSOSや相談を受け付ける外部相談窓口の相談員を募集しています。相談業務、報告書作成、適性に応じた研修講師業務を行います。臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士のいずれかの資格を所有し、業務従事3年以上の方で、週4日以上勤務でき、平日出社可能な方を求めています。時給は2,000円で、18時以降は時給アップがあります。 出典: 求人ボックス
これは雇用の形での相談業務の水準です。業務委託で講師として単発で呼ばれる場合は、これより高い水準で提示されるのが一般的です。理由は、準備の時間が報酬に含まれるためです。
1回いくらで決まる場合
「90分の研修で◯円」という形です。準備時間が見えなくなるので、必ず自分で実働を計算してください。
新規のテーマで90分の研修を作る場合、資料の作成に10時間から20時間かかることは珍しくありません。初回はこれを織り込むと時間あたりの報酬は低くなります。ただし、2回目以降は資料の修正だけで済むため、同じテーマを繰り返すほど効率が上がっていきます。だから、講師の仕事は「同じテーマを何回受けられるか」で採算が決まります。
教材制作費が別に付く場合
研修資料そのものを納品する契約が付くことがあります。この場合、資料の著作権をどう扱うかを必ず書面で確認してください。
「制作費を払ったのだから資料は自社のもの」という前提で、翌年から社内の担当者が同じ資料を使って研修をするという事態が起こり得ます。それを認めるなら金額に反映させる。認めないなら、利用の範囲を書面に書く。ここを曖昧にしたまま進めると、後から言えなくなります。
交通費と拘束時間の扱い
対面の研修では、交通費が別途支給されるか、報酬に含まれるかを確認します。地方への移動を伴う場合、移動と待機で半日以上が消えるため、実質の時間単価が大きく下がります。
オンライン開催が選べるなら、まずそちらを提案してください。依頼者側もコストが下がるため、断られることは少ない。
最初の1本をどう取るか
ここが最大の壁です。実績がないと呼ばれず、呼ばれないと実績ができないという構造は、講師の仕事でも同じです。突破の順番があります。
本業の中で1回やらせてもらう
もっとも早いのがこれです。今いる職場で、勉強会や研修の枠を1つもらう。社内向けであれば報酬は発生しませんが、実施した事実と資料が残ります。
ここで作った資料が、そのまま外部への提案材料になります。参加者からの質問も記録しておいてください。実際にどういう疑問が出るかを知っていることが、外部の依頼者に対する説得材料になります。
資料を先に作って提案する
実績がない段階では、「研修ができます」という提案は通りません。「この内容の研修を、90分でこの構成で実施できます」という具体的な提案なら、検討の土俵に乗ります。
必要なのは、目次と各パートの狙いを書いた1枚の資料です。所要時間、対象者、実施形式、参加人数の上限、必要な機材。これを書いた資料があるだけで、依頼者側は社内で検討できます。この1枚を作らずに営業している人が非常に多い。
仲介の枠から入る
研修会社や外部相談窓口の運営会社に登録し、案件を回してもらう方法です。単価は下がりますが、実績が作れます。
登録の段階で、対応できるテーマ、対応できる曜日と時間帯、オンラインの可否を明確に伝えておいてください。曖昧な登録者には案件が回りません。
在宅で受けられる業務委託の案件像を把握しておくと、自分がどの枠で提案できるかが見えてきます。企業の課題に対して専門知識を提供する形の仕事はITコンサルティング・講師のお仕事に整理されており、研修や講師の依頼がどういう文脈で発注されるかが分かります。キャリアや働き方に関する相談の枠はキャリア・副業・人生相談のお仕事にまとまっています。
継続の依頼に変える
1回目が終わったあとの動きが、2回目を決めます。実施後に、参加者から出た質問と、次に扱うと有効だと思うテーマを1枚にまとめて送る。これをやる講師は少数です。
依頼側は、来年も同じ内容でいいのか、変えるべきかを判断しかねています。そこに材料を出せば、翌年の企画に組み込まれます。
資料と進行をどう組み立てるか
内容の質は、話し方ではなく設計で決まります。90分の研修を例に、組み立ての考え方を書きます。
時間配分の基本形
導入に10分、説明に40分、演習に25分、質疑とまとめに15分という配分が扱いやすい。説明だけで90分を埋めると、参加者の集中が持ちません。
演習は、対面なら小グループでの話し合い、オンラインなら個人での書き出しが安定します。オンラインでグループ分けの機能を使う場合、参加者が慣れていない組織では時間が読めなくなるので、初回は避けたほうが無難です。
その組織の言葉に置き換える
汎用の研修と、その組織向けの研修を分けるのがこの作業です。事前に、業種、職種の構成、勤務の形態、直近で起きている課題を聞き取ります。
製造業の交代勤務の職場と、営業職中心の職場では、睡眠の話ひとつとっても前提が違います。事例を差し替え、使う言葉をその職場の言い方に合わせるだけで、参加者の受け取り方が変わります。この手間をかけるかどうかが、2回目の依頼を分けます。
個別の相談が出たときの扱いを決めておく
研修の場では、参加者から個人的な相談が出ることがあります。休憩時間や終了後に話しかけられる、質疑の場で自分の状況を話し始める、といった形です。
その場で個別の助言に踏み込むのは避けてください。研修という枠で契約している以上、個別の支援は契約の範囲外です。相談先を案内する形に留め、その場の対応の方針は事前に依頼者と共有しておきます。社内に産業医や相談窓口があるなら、そこに案内する。ないなら、公的な相談先を資料に載せておく。この準備があるかどうかで、当日の判断が変わります。
最後に、資料の使い回しについて一言だけ書いておきます。同じテーマを複数の依頼先で実施すること自体は何の問題もありません。ただし、ある企業向けに作った事例やデータを、その企業の情報と分かる形で別の場所で使うのは避けてください。研修の事前ヒアリングで聞いた社内の状況は、その企業の内部情報です。差し替えの手間を惜しむと、信頼を一度で失います。研修の依頼は、担当者どうしの紹介で広がることが多い分野です。ひとつの現場での不注意が、そのまま次の依頼を止めることになります。実務としては、汎用版の資料を軸に持ち、依頼ごとに差し替える部分を明確に分けておくのが安全です。
守秘義務と名称の扱いで確認すべきこと
講師の仕事では、資料と話す内容の両方に注意が要ります。
実務で知り得たことを事例にしない
公認心理師法は秘密保持義務を定めています(第41条)。研修で説得力を出そうとして実際のケースを話したくなる場面が必ず来ますが、ここは踏みとどまってください。
匿名化したつもりでも、業種、年代、職位、相談の内容を重ねると特定される可能性が残ります。特に、依頼元の企業で研修をする場合、その企業の従業員を対象に相談を受けた経験があるなら、事例の使用は避けるべきです。参加者の中に当人がいる可能性を常に想定してください。
代わりに使えるのは、公開されている調査結果、複数の文献に共通して出てくる典型的なパターン、そして架空の設定であることを明示した事例です。
肩書の表示について
研修の案内や資料に自分の資格名を載せる場面が来ます。公認心理師法には名称の使用について制限を定めた条文があります(第44条)。登録を受けている状態であれば表示できますが、肩書をどう書くか、他の資格とどう併記するかは、条文と関連する通知を確認したうえで判断してください。
また、研修の中で「この資格があればここまでできる」という説明をする場面では、断定を避けてください。心理に関する支援の範囲は、医師法をはじめとする他の法令との関係もあり、単純に線を引けるものではありません。所属先の規程や関係する行政の窓口に確認したうえで説明するのが安全です。
本業の勤務先との関係
副業として講師を受ける場合、勤務先の就業規則を必ず確認してください。医療機関や自治体に勤めている場合、副業に届出や許可が必要なことがあります。特に公務員に該当する立場では、営利企業への従事に制限がかかります。
契約や届出の書面の扱いに不安がある場合、書類作成を専門とする資格の業務範囲を知っておくと相談先の見当がつきます。行政書士のページでは、契約書や許認可に関する書類を扱う資格の中身が整理されています。
収入の見え方を数字で押さえる
講師の仕事は、単価が高い一方で件数が読みにくいという性質があります。年間でどう見るかを整理します。
月に2回、90分の研修を受けたとします。準備が済んでいるテーマであれば、1回あたりの実働は準備と実施と移動で4時間程度に収まります。月に8時間の稼働です。本業を持ちながらでも組める分量ですが、平日の日中に開催されることが多いため、日程の調整が最大の制約になります。
土日や夜間に開催される研修もあります。自治体の保護者向け講座、対人援助職の勉強会、オンラインのセミナーはこの時間帯に入りやすい。本業のある人が副業として組むなら、この枠を狙うのが現実的です。
報酬の水準を判断する材料としては、専門職の収入データを見ておくと比較の基準ができます。文章や情報を扱う職種の収入水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認でき、講師の仕事と組み合わせて受ける場合の全体像を把握しやすくなります。技術系の在宅案件の水準を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場も比較の材料になります。
なお、研修の内容を記事や教材に展開すると、同じ素材から複数の収入が生まれます。企業のメンタルヘルス関連のコンテンツは、マーケティング施策の一部として発注されることも多いため、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事に出ている案件の形も見ておくと、提案の幅が広がります。
よく依頼されるテーマと押さえどころ
依頼の中身は、実はそれほど分散していません。企業と自治体から来る依頼を並べると、次の5つに集約されます。それぞれ、依頼側が本当に解決したい問題が別にあるので、そこを外さないことが重要です。
管理職向けのラインケア
もっとも依頼が多いテーマです。表向きの依頼理由は「部下の不調に気づけるようになってほしい」ですが、実際に依頼側が困っているのは、管理職が動きすぎることと動かなすぎることの両極端が同居している点です。
踏み込みすぎて個人の事情に立ち入る管理職と、面倒を避けて何も言わない管理職。この両方に効く内容にする必要があります。具体的には、どこまでが上司の役割で、どこからが産業医や相談窓口の役割なのかという線引きを、その組織の体制に即して示します。汎用の「傾聴のしかた」を教えるだけでは、依頼側の問題は解けません。
セルフケアとストレス対処
全社員向けに実施されることが多いテーマです。参加が半ば強制で、関心の薄い人も含まれるため、構成の難易度は高い。
有効なのは、その職場に固有の負荷を最初に扱うことです。交代勤務があるなら睡眠、対面での応対が多いなら感情労働、在宅勤務が中心なら生活のリズムと孤立。冒頭で自分の職場の話だと分かれば、その後の一般論も聞いてもらえます。逆に、一般的なストレスの説明から入ると、最初の10分で聞くのをやめられます。
ハラスメントの防止
法令の説明は人事や法務が担当し、心理職には「なぜ起きるのか」「どう受け止められるのか」の部分が振られることが多い。役割分担を事前に確認してください。
このテーマでは、加害を責める構成にすると参加者が防御に回ります。認知の食い違いがどう生まれるかという説明に寄せたほうが、結果として行動が変わります。
相談を受ける人向けの研修
人事担当者、相談窓口の担当者、民生委員、教職員といった、専門職ではないが相談を受ける立場の人が対象です。
このテーマでいちばん求められているのは、抱え込まないための線引きです。どこまで聞いて、どの段階で誰につなぐか。つなぐ先が具体的に言えるかどうかで、研修の実用性が決まります。事前に、その組織や地域で使える相談先を調べておいてください。
保護者や地域向けの講座
自治体からの依頼で多い型です。参加者の前提知識に幅があり、専門用語がほとんど通じないと考えて設計します。
このテーマでは、参加者から個別の相談が出る割合が高くなります。終了後に話しかけられることを想定して、案内できる相談先を手元に用意しておいてください。
資格を取ったばかりの人向けの勉強会
心理職を目指す人や、資格を取ったばかりで実務経験の浅い人を対象にした勉強会も、依頼として出てきます。専門学校や資格スクールから講師として呼ばれる形と、自分で少人数の会を開く形の両方があります。
このテーマでの押さえどころは、参加者が知りたいのが知識ではなく「現場での判断のしかた」だという点です。教科書に書いてあることは自分で読めます。参加者が聞きたいのは、判断に迷う場面で何を基準にしたか、どこで他職種につないだか、記録をどう残したかという実務の中身です。
ただし、ここでも実際のケースをそのまま語ることはできません。判断の枠組みだけを取り出して、架空の設定に載せて示す形にしてください。手間はかかりますが、この作り込みができている勉強会は継続的に人が集まります。
オンライン研修で崩れやすい点
対面で成立していた研修を、そのままオンラインに移すと機能しなくなることがあります。原因はいくつかに絞られます。
参加者の反応が見えないため、進行の判断材料がなくなります。対面なら表情で分かっていたことが分からない。対策としては、チャットへの書き込みを求める場面を15分おきに入れて、反応を可視化します。
演習の時間も読めなくなります。グループ分けの機能を使う場合、移動と自己紹介だけで数分が消えるため、対面と同じ時間配分では足りません。オンラインでは、個人で書き出す形の演習のほうが安定します。
そして、録画の扱いです。研修を録画して社内で再利用したいという要望はよく出ます。応じるかどうかは自由ですが、応じる場合は利用の範囲と期間を書面で決めてください。無期限で社内配信されると、翌年以降の依頼がなくなります。
運営者として見てきたこと
在宅ワークの市場を20年見てきた立場から言うと、専門資格を持つ人が講師の仕事で伸びるかどうかは、最初の3回で決まります。
伸びる人に共通しているのは、実施のたびに資料を書き直していることです。参加者から出た質問、時間が足りなかった箇所、反応が薄かったパート。これを毎回反映していくと、5回目には別物になっています。逆に、完成した資料を持ち歩く形に固まった人は、依頼が広がりません。
もうひとつ気づくのは、長く続く人ほど単発の登壇ではなく関係づくりに時間を使っているということです。研修を1回やって終わりではなく、その組織で次に何が必要かを一緒に考える。そうすると、翌年の企画段階から声がかかるようになり、単価の交渉をしなくても条件が良くなっていきます。
そして手取りの話です。研修会社を何段階も経由する形では、依頼企業が出した予算のうち講師に届く金額は目減りします。仲介の手数料が乗らない直接の取引なら、同じ予算で依頼側はより多くの回数を組めて、受け手の手元に残る金額は厚くなる。手数料0%という条件は、金額の大小の話に見えて、実際には同じ登壇回数でいくら残るかという質の違いです。準備に時間がかかる仕事だからこそ、この差は年単位で効いてきます。
講師の仕事は、知識をそのまま渡す仕事ではありません。相手の現場で使える形に組み直して渡す仕事です。相談の場で何が起きているかを知っている人は、その組み直しができます。そこが、心理職が教える側に回ったときのいちばんの強みです。
よくある質問
Q. 公認心理師の資格があれば、講師の仕事はすぐ受けられますか?
資格だけで依頼が来ることはまれです。依頼者は、自分たちの組織の課題に合わせて内容を組み立て直せる人を探しています。まず本業の中で勉強会を1回実施して資料と実績を作り、目次と所要時間と対象者を書いた提案用の1枚を用意してから動くのが現実的です。
Q. 研修の報酬はどのくらいの水準ですか?
提示の形は時間単価と1回いくらの2種類があります。外部の専門職に対する相談業務では時給2,000円前後の募集が見られ、業務委託の講師はこれより高い水準で提示されるのが一般的です。ただし新規テーマは資料作成に10時間から20時間かかるため、初回は時間あたりの効率が下がります。
Q. 研修で実際の相談事例を話してもよいですか?
避けてください。公認心理師法は秘密保持義務を定めており(第41条)、匿名化しても業種や年代や職位を重ねると特定される可能性が残ります。特に依頼元の企業で研修をする場合、参加者の中に当人がいる可能性があります。公開された調査結果や、架空と明示した事例を使ってください。
Q. 本業を続けながら講師の副業はできますか?
可能ですが、勤務先の就業規則の確認が先です。医療機関や自治体に勤めている場合、届出や許可が必要なことがあり、公務員に該当する立場では営利企業への従事に制限がかかります。日程面では、土日や夜間に開催される自治体の講座やオンラインのセミナーが組みやすい枠になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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