案件の取り方が変わるのは、広告動画制作で数字を語れるようになってから


この記事のポイント
- ✓広告動画制作の案件の取り方を
- ✓営業のテクニックではなく数字の観点から整理しました
- ✓編集できますでは差別化できない理由
広告動画制作の案件の取り方について、結論から書きます。応募数を増やすことでも、提案文のテンプレートを磨くことでもありません。「編集できます」から「数字を動かせます」に自己紹介が変わったとき、案件の取り方そのものが変わります。
この違いは、想像以上に大きい。前者は数百人の候補者の一人ですが、後者は代替が効きません。広告主が動画を発注する理由は、映像が欲しいからではなく、売上や問い合わせを増やしたいからです。この当たり前の前提が、制作者側の自己紹介に反映されていないケースが非常に多い。
この記事では、広告動画制作で案件を取るために必要な数字の扱い方、その数字を語れるようになるまでの手順、そして数字が語れるようになった後に案件の探し方がどう変わるかを整理します。
案件が取れない原因は、需要ではなく差別化にある
まず、市場の状況を確認します。動画の需要そのものは伸びています。SNS広告の主戦場が静止画から動画に移り、1つの商材に対して複数のクリエイティブを回す運用型の広告が主流になったことで、必要な本数は増え続けています。
にもかかわらず、案件が取れないという声は減りません。この矛盾について、動画編集のメディアが端的に書いています。
YouTubeやSNS動画の需要が急増している今、動画編集者の需要自体は高まっています。しかし、実際には案件を獲得できずに挫折してしまう人も多いのが現実です。 出典: movieru.jp
需要が高まっているのに獲得できない。これは供給側の増加が理由の一部ですが、それだけではありません。増えた供給のほとんどが、同じ自己紹介をしているからです。
「編集できます」が差別化にならなくなった理由
10年前であれば、動画編集ができること自体が希少でした。ソフトが高価で、扱えるパソコンも限られていた。今は事情が違います。編集ソフトは月額のサブスクリプションで使え、スマートフォンでもある程度の編集ができ、オンラインスクールが大量に修了生を送り出しています。
正直なところ、これはどうかと思うのですが、スクールの多くが「案件獲得までサポート」と謳いながら、教えているのは編集操作とポートフォリオの作り方までです。その結果、同じような自己紹介をする人が同じ案件に殺到する構造が生まれています。
ここで起きるのは価格競争です。差別化の材料がないと、比較軸は価格と納期しか残りません。単価が下がり、作業量で埋めようとして疲弊し、辞めていく。冒頭の「挫折してしまう人も多い」の中身は、たいていこの流れです。
発注側が本当に評価しているもの
広告動画を発注する側の視点に立つと、評価軸ははっきりしています。この動画で成果が出るかどうか、それだけです。
映像のクオリティは、成果に寄与する範囲でのみ評価されます。凝ったトランジションやシネマティックなカラーグレーディングは、SNS広告ではほとんど成果に影響しません。むしろ冒頭1秒でスクロールを止められるかのほうが、桁違いに重要です。
この評価軸を理解している制作者は、実は多くありません。だからこそ、理解しているだけで差がつきます。
広告動画で語るべき数字を、4つに絞る
数字を語ると言っても、あらゆる指標を追う必要はありません。制作側が言及すべきなのは、自分の制作物が直接影響する範囲の数字です。範囲外の数字まで約束すると、後で苦しくなります。
視聴維持率と、冒頭3秒の離脱
広告動画で最初に見るべき数字は、視聴維持率です。特に冒頭3秒でどれだけ残っているか。SNS広告では、この最初の数秒で大半が離脱します。
制作側がコントロールできるのは、まさにここです。冒頭に何を置くか、テロップをいつ出すか、動きをどこで作るか。この判断が離脱率を左右します。提案の場で「冒頭3秒の設計を変えたパターンを3本作ります」と言えるかどうかで、印象がまったく変わります。
CTR(クリック率)
CTRは、動画を見た人のうち何割がリンクをクリックしたかを示す数字です。広告動画の主要な評価指標のひとつで、クリエイティブの良し悪しが最も反映されやすい。
制作側が影響を与えられるのは、動画の後半でどう行動を促すか、テロップでどう訴求を言い切るか、CTAの表示タイミングをどこに置くかです。これも制作物の中で完結する要素なので、堂々と語ってよい範囲です。
CVR(コンバージョン率)とCPA(獲得単価)
CVRは、クリックした人のうち何割が申し込みや購入に至ったかの割合。CPAは1件の獲得にかかった広告費です。
ここは注意が必要です。CVRとCPAは、動画だけでなく遷移先のページ、商品そのもの、価格、競合の状況に大きく左右されます。制作者が単独で責任を負える数字ではありません。
だからこそ、提案の場では「動画側でできるのは、遷移前の期待値をずらさないことです」といった形で、責任範囲を明確にしたうえで言及するのが正しい。全部の数字を約束する人より、どこまでが自分の範囲かを分けて話せる人のほうが、発注側からは信頼されます。
数字を語るときの姿勢
指標を並べられることが偉いのではありません。重要なのは、数字を「制作の判断根拠」として使えることです。
「前回のクリエイティブは冒頭で商品名を出していましたが、視聴維持率が3秒地点で落ちていました。今回は使用シーンから入る構成を試させてください」
この一言が言えれば、あなたは編集者ではなく、広告のパートナーとして扱われます。案件の取り方が変わるというのは、こういうことです。
数字を語れるようになるまでの手順
では、実績がまだ少ない段階でどうやってここに至るか。順を追って書きます。
ステップ1:納品して終わりにしない
いちばん簡単で、いちばんやっていない人が多いのがこれです。納品から2週間ほど経ったら、結果を聞く。
「先日納品した動画ですが、その後の数字はいかがでしょうか。次回の制作に活かしたいので、差し支えない範囲で教えていただけると助かります」
この一文を送るだけです。教えてもらえないこともありますが、教えてもらえたときの価値は非常に大きい。自分の作ったものが、どの数字にどう効いたかを知っている制作者は、次の提案の質が変わります。
そして、この質問自体が営業になっています。納品して消える人と、結果を気にする人。次に発注するとき、どちらを思い出すかは明らかです。
ステップ2:仮説を添えて提案する
数字を教えてもらえたら、次の提案に反映します。反映するとは、数字を引用することではなく、数字から導いた仮説を添えることです。
「前回はCTRが目標を下回ったとのことでしたので、今回は訴求を価格から利用シーンに変えたパターンと、前回踏襲のパターンの2本をご用意します」
この形にすると、発注側は比較検討ができます。そして、比較検討したいという欲求は、広告運用者が常に持っているものです。
ステップ3:簡易的なレポートを添える
余裕が出てきたら、納品時に1枚のメモを添えます。書くのは3つだけ。今回の狙い、変更した点、次に試したい方向性。
これは分析レポートではありません。制作意図の共有です。ここに「なんとなく」が入っていないことが伝われば、次の案件の相談が来ます。実際、制作者から次の提案が出てくることを期待している発注者は多く、そこが空白になっているケースがほとんどです。
ステップ4:数えられる形で言語化しておく
自己紹介の文面も更新します。「動画編集ができます」ではなく、「SNS広告向けの縦型動画を制作しています。冒頭3秒の構成を変えた複数パターンの制作と、配信後の数字を見た改善提案までを行っています」と書く。
言っている内容は同じ作業ですが、受け取られ方はまったく違います。ポートフォリオの並べ方そのものについては、実績が少ない段階での見せ方を扱った記事があるので、そちらも参考にしてください。
初心者が最初の3ヶ月でやるべきこと
まだ受注実績がない段階の人向けに、順番を具体的に示します。ここを飛ばして応募数を増やしても、結果はほとんど変わりません。
最初の1ヶ月でやるのは、既存の広告動画を分解することです。SNSのタイムラインに流れてくる広告を、1日3本でいいので観察して、冒頭で何を見せているか、テロップがいつ出るか、何秒で商品名が出るか、最後に何を促しているかを記録します。これを30本もやると、当たっている広告に共通する型が見えてきます。分析ツールは要りません。メモアプリで十分です。
2ヶ月目は、その型を使って自分で作ります。実在の商品を題材に、同じ商材で構成違いを2本作る。1本だけ作るのではなく、必ず複数パターンにするのがポイントです。複数出せることが、後の提案の核になるからです。
3ヶ月目に応募を始めます。このとき、作った複数パターンを「なぜこの2案なのか」の説明とセットで提出します。作れることの証明ではなく、考えられることの証明として使う。ここが、多くの初心者が取り違えている点です。
この3ヶ月で得られるのは、技術ではなく語彙です。広告の話をする語彙を持っているかどうかで、面談での会話がまったく変わります。
案件の探し方は、段階によって変わる
数字を語れるようになると、探すべき場所も変わります。ここを取り違えたまま応募を続けても、労力に見合いません。
クラウドソーシングは入り口として使う
クラウドソーシング型のサービスには、広告動画の案件が集約されています。
広告動画の仕事・案件一覧ページです。クラウドソーシング・アウトソーシングに強いランサーズでは、広告動画の仕事情報の検索から納品、報酬の受け取りまで、すべて完結します。時間や場所にとらわれず、在宅や副業などさまざまな働き方を実現可能です。 出典: lancers.jp
案件が探しやすく、決済まで完結するのは大きな利点です。ただし、この種のサービスには手数料がかかります。年間の受注額が大きくなるほど、差し引かれる金額も無視できなくなる。
だから、入り口としては合理的でも、そこに居続けるのは合理的ではありません。最初の数本で実績と数字を作り、そこから外に出るのが自然な流れです。
業務委託のマッチングサービスと直接取引
実績と数字が語れる段階になったら、手数料が引かれない形の取引に移す価値が出てきます。同じ制作物でも、中間の取り分がないぶん受け取る額が変わるからです。
在宅ワークの業務委託マッチングサービスには、SNS運用や広告運用に紐づく形で動画制作の募集が出ています。ここで重要なのは、「動画編集」というキーワードだけで探さないことです。広告動画は、広告運用やマーケティングの一部として発注されるため、目的側の職種の募集の中に埋もれています。
どんな職種でどんな仕事が発注されているかを俯瞰するには、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、マーケティング領域の仕事内容を整理したページを見ておくと視野が広がります。動画がどの文脈で必要とされているかがわかると、応募先の選び方が変わります。
制作会社の外注先として入るルート
もうひとつ、安定性の高いルートがあります。映像制作会社やデザイン会社の外注先として登録することです。
制作会社は、大型案件を受注したときに工程を分けて外に出します。撮影は撮影チーム、編集は編集者、モーショングラフィックスは別の担当。ここに入れると、営業をしなくても仕事が回ってきます。
このルートの利点は、進行管理を制作会社がやってくれることです。要件が整理された状態で依頼が来るため、制作に集中できる。欠点は、間に会社が入るぶん単価が抑えられることと、広告の数字が自分まで届きにくいことです。数字が見えない環境が続くと、この記事で書いてきた提案力が育ちません。
したがって、このルートは収入の土台として持ちつつ、直接取引の案件を並行して育てるという使い方が合理的です。どちらか一方に寄せる必要はありません。
広告運用者を経由するルート
見落とされがちですが、有効なルートがあります。広告運用の代行をしているフリーランスや小規模な会社と接点を持つことです。
広告運用者は、クリエイティブの制作に困っています。数字を見て改善したいのに、動画を作り替えられる人が手元にいない。ここに「数字の話ができる制作者」が現れると、継続的に発注が来ます。しかも、彼らは複数のクライアントを抱えているので、1人とつながると案件が連続します。
このルートは、数字を語れない段階では成立しません。逆に言えば、数字を語れるようになると急に開くルートでもあります。案件の取り方が変わる、と冒頭に書いたのはこの意味です。
応募と提案の実務
探す場所が決まったら、次は応募文です。ここは細部が結果を分けます。
応募文に書くべきこと、書かなくていいこと
書かなくていいのは、意気込み、学習期間、使用ソフトの列挙です。読み手はこれらを判断材料にしていません。
書くべきなのは3つ。募集内容を読んだうえでの具体的な理解、自分が担当できる範囲、そして提出できる近い事例です。
たとえば、こう書きます。
「募集内容を拝見しました。美容系の商材で、Instagram のリール向けに月4本という前提と理解しています。私は縦型の短尺広告を中心に制作しており、冒頭3秒の構成を変えた複数パターンの提出を標準にしています。近い形式の制作物を2点お送りできます」
読み手が知りたいことに、順番に答えている。それだけです。テンプレートを貼り付けた応募文とは、通過率がまったく違います。
補足すると、募集文に書かれている固有の条件を1つ引用するだけで、読まれた感が伝わります。商材のジャンル、媒体、本数、尺。どれか1つで構いません。逆に、どの募集にも当てはまる文面は、読んでいないことの証明として機能してしまいます。この差は数十秒の手間しかありませんが、選ばれるかどうかを分けます。
もうひとつ、送る時間帯も無視できません。発注側が募集を確認するのは平日の日中です。深夜に送ると、朝には他の応募に埋もれています。平日の午前中に送るだけで、目に触れる確率が上がります。
初回は範囲を狭く、2本目で数字の話をする
新しい取引先との初回は、範囲を狭く受けるのが定石です。理由は2つあります。
ひとつは、認識のずれが必ず起きるから。1本目は相手の好みや社内の承認プロセスを学ぶ期間だと考えたほうがいい。もうひとつは、初回から広く受けると、後から範囲を狭められないからです。
2本目の相談が来たときに、初めて数字の話を持ち出します。「1本目の数字を教えていただければ、次はそこを踏まえた構成にします」と。この順番が自然で、押しつけがましくなりません。
契約の形と、条件の確認
案件を受ける際は、業務範囲、修正回数、納期、支払い条件を文書で確認します。口頭の合意は、あとで必ずずれます。
事業者間の取引条件については、公的機関が事業者向けの情報を公開しています。取引の公正さに関する基本的な考え方を確認したい場合は公正取引委員会のサイトが参考になります。書類の書き方そのものに不安がある方は、ビジネス文書検定のような資格の出題範囲を眺めるだけでも、見積書や請求書の型が整理できます。
特に確認しておきたいのが修正回数です。広告動画は当たるまで作り替える性質があるため、修正が無制限だと工数が読めなくなります。「初稿から2回まで、それ以降は別途」という形で最初に書いておけば、揉めずに済みます。回数の話は、値切られる話ではなく、進行を整理する話として持ち出すのが自然です。実際、広告運用の担当者は本数と回数で予算を組んでいるので、こちらから明示したほうが話が早い場面が多い。
案件獲得でつまずく典型的なパターン
相談を整理していくと、つまずき方には型があります。よくある4つを挙げます。
1つめは、応募数を増やすことで解決しようとするパターンです。通過率が1%の応募文を100件送っても、届くのは1件です。同じ労力を、応募文の中身と応募先の選定に振り分けたほうが効率がよい。正直なところ、応募数を成果指標にしている時点で、方向がずれています。
2つめは、値下げで勝とうとするパターンです。価格で勝った案件は、価格で失います。より安い誰かが現れた時点で終わるからです。しかも、単価が低い案件ほど発注側の広告予算が小さく、数字が動きにくいため、実績としても弱い。ここは覚えておく価値があります。
3つめは、幅広く対応できると書いてしまうパターンです。「動画編集、サムネイル制作、SNS運用、なんでもやります」という自己紹介は、専門性がないという宣言になります。広告動画で案件を取りたいなら、広告動画に絞って書いたほうが強い。
4つめは、成果指標のない案件ばかりを受け続けるパターンです。数字を管理していない発注者と取引していると、いつまで経っても語れる数字が手に入りません。実績が増えているのに提案の質が上がらないという状態は、たいていこれが原因です。
このうち、いちばん影響が大きいのは4つめだと考えます。数字が手に入らない環境にいる限り、この記事に書いたことは実行できないからです。案件を選ぶ段階で、数字を追っている相手かどうかを確認してください。
単価が上がる仕組みを理解する
案件の取り方の話は、最終的に単価の話に行き着きます。ここも構造で理解しておくと、動き方が決まります。
単価が上がるのは、次の3つのいずれかが起きたときです。
1つめ、担当する工程が増えたとき。編集だけから、構成の立案まで担うようになると単価は上がります。構成を考える工程には、編集とは別の時間がかかるため、当然の対価です。
2つめ、代替が難しくなったとき。数字を見て改善提案ができる制作者は、単純に数が少ない。需給の問題として単価が上がります。
3つめ、中間の取り分が消えたとき。これは自分の仕事が変わらなくても手取りが増える唯一の方法です。同じ制作物でも、手数料が引かれる経路と引かれない経路では、受け取る額が変わります。
3つのうち、いちばん早く効くのは3つめですが、いちばん効果が持続するのは2つめです。両方を進めるのが合理的だと考えます。
なお、コンテンツ制作全般の対価水準を知っておくと、自分の単価が適正かどうかの判断がつきます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場は、制作系の職種の報酬レンジを把握する材料になります。
稼ぐ額を、本数ではなく構造で組み立てる
副業として広告動画制作をやる場合、収入の組み立て方には2つの考え方があります。
ひとつは、単価に本数を掛ける発想です。わかりやすいのですが、上限が時間で決まります。副業で使える時間は限られているので、この方向だけを追うと早い段階で頭打ちになります。
もうひとつは、継続案件の本数で組み立てる発想です。月に一定の本数を制作する契約を1つ持てば、営業の時間がほぼゼロになります。空いた時間を、もう1つの継続案件の獲得か、単価を上げるための提案づくりに使える。
案件を取ることが目的化している人ほど、前者の発想から抜けられません。取ることではなく、取り続けなくて済む状態を作ることが目的です。この視点で見ると、初回の案件をどう終わらせるかが最も重要になります。納品して結果を聞き、次の提案を添える。この3手で、単発は継続に変わります。
提案書は1枚で足りる
継続の相談が来たときに用意するものは、分厚い企画書ではありません。1枚にまとめます。
書く項目は4つ。今回の商材で狙う数字、そのために変える要素、制作する本数とパターン、そして納期です。デザインは要りません。テキストで箇条書きにして送るだけで、受け取る側の判断は進みます。
長い企画書を作る時間があるなら、その時間で構成違いをもう1本作ったほうが、意思決定は速くなります。広告の現場では、議論より実物のほうが強い。
運営者として見てきた、案件が続く人の特徴
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、案件が途切れない人には共通点があります。営業がうまいわけでも、応募数が多いわけでもありません。「この人に渡すと、こちらが考えなくて済む」という状態を作っている人です。
発注する側の負担は、実は作業を頼むこと自体ではなく、指示を出すことにあります。何を作るか決めて、素材を揃えて、修正点を言語化する。この一連を発注側が全部やる前提だと、外注しても楽になりません。
数字を語れる制作者が重宝されるのは、この負担を肩代わりできるからです。前回の結果から次の方向を提案してくれる相手には、発注側は指示を出す手間をかけずに済む。結果として、他を探す理由がなくなります。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、中間に人が入らない直接取引をしている人ほど、無理な値下げを受け入れずに済んでいる傾向があります。仲介の手数料が乗らない取引では、同じ予算でも発注側はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなる。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の多寡そのものより、1本あたりに割ける時間が確保できるという点です。時間が確保できれば、数字を見て考える余裕が生まれ、その余裕が次の提案の質になります。
独自データから見える、案件の探し方の実際
在宅ワークの募集を横断して見ていくと、広告動画に関わる仕事の分布には明確な特徴があります。
第一に、「動画編集」という職種名で立っている募集より、SNS運用代行、Web広告運用の補助、ECの商品ページ制作といった募集の業務内容に動画制作が含まれている例のほうが多い。これは、動画が目的ではなく手段として発注されていることの表れです。職種名で絞って探している人は、市場の一部しか見ていないことになります。
第二に、動画制作を含む募集は、継続契約の形を取ることが多い。運用型広告は継続的にクリエイティブを差し替えるため、月ごとの本数が決まった契約になりやすいからです。単発の案件を追い続けるより、継続案件を1つ確保するほうが、営業にかける時間は圧倒的に少なくて済みます。
第三に、募集文に成果指標が書かれている案件ほど、単価が高い傾向があります。「CTRの改善を目指しています」「CPAの目標があります」といった記載がある募集は、発注側が広告の数字を管理している証拠です。こうした相手は、数字の話ができる制作者を評価します。逆に、指標の記載がまったくない募集は、価格と納期だけで比較される可能性が高い。
案件の取り方を変えたいなら、応募する母集団を変えるのが最も効果的です。数字が書かれている募集を選び、数字で応答する。この2つを揃えるだけで、通過率は変わります。技術を磨く前に、まず自分がどの土俵で戦っているかを確認したほうが早い。広告動画制作という仕事は、映像制作であると同時に、広告の一部です。この当たり前を自己紹介に反映させることが、案件の取り方を変える最短の道だと考えます。
よくある質問
Q. 広告動画制作の案件が取れないのは、実績が少ないからですか?
実績の量よりも、自己紹介の内容が原因であることが多いです。編集ができるという説明は他の候補者と同じになるため、比較軸が価格と納期だけになります。冒頭3秒の構成を変えた複数パターンを出せる、配信後の数字を見て改善提案ができる、といった形で担当範囲を具体的に示すと通過率が変わります。
Q. 制作者が語るべき数字は、どれを押さえればよいですか?
視聴維持率(特に冒頭3秒の離脱)とCTRの2つが中心です。CVRやCPAは遷移先のページや商品そのものに大きく左右されるため、制作者が単独で責任を負う数字ではありません。責任範囲を分けて説明できることが、かえって信頼につながります。
Q. 数字を知るには、どうすればよいですか?
納品から2週間ほど経った時点で、差し支えない範囲で結果を教えてほしいと依頼するのが基本です。教えてもらえた数字は次回提案の根拠になりますし、この問い合わせ自体が次の発注を思い出してもらうきっかけにもなります。
Q. クラウドソーシングと直接取引は、どう使い分けますか?
実績と数字がまだ手元にない段階では、案件が集まっているクラウドソーシングを入り口として使うのが合理的です。ただし手数料が差し引かれるため、数本の実績と語れる数字ができたら、手数料が引かれない業務委託のマッチングや直接取引へ移していくと、同じ制作量でも手取りが変わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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