動画編集の機材はパソコンと編集ソフトから始めて後から足す

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
動画編集の機材はパソコンと編集ソフトから始めて後から足す

この記事のポイント

  • 動画編集に必要な機材を在宅ワーク前提で整理しました
  • 最低限そろえるべきPC・ストレージ・音声環境から
  • 収入が安定してから足せばよい機材まで

「動画編集 必要な機材 在宅」で検索している方の多くは、実のところ機材の型番を知りたいわけではありません。知りたいのは「いくら用意すれば仕事を受けられる状態になるのか」「いま持っているノートPCで戦えるのか」という一点だと思います。結論から書きます。在宅で動画編集の仕事を受けるために最低限必要なのは、PC・編集ソフト・外付けストレージ・音声を確認する道具・安定した回線の5つだけです。カメラも照明もマイクも、撮影を伴う案件を受けると決めるまでは不要です。

この記事では、まず市場の実勢と機材相場を整理し、次に「絶対に要るもの」と「後から足せばいいもの」を分けて解説します。予算15万円で始める場合と40万円かける場合で何がどう変わるのかも、具体的な線引きで書きます。正直なところ、「動画編集を始めるならこれを全部そろえましょう」と20点以上の機材リストを並べる記事は、読者の初期投資を無意味に膨らませていると感じます。そういう記事は書きません。

在宅の動画編集市場はいま何が起きているか

まず前提を共有します。動画編集を在宅の仕事として考えるなら、機材選びの前に「どんな案件が実際に流通しているか」を知っておくべきです。機材は案件の種類で決まるからです。

現在、個人が受注しやすい動画編集案件は大きく3層に分かれています。第1層はYouTubeの通常動画編集。カット、テロップ、BGM、簡単な効果音入れまでを1本単位で請け負う形式で、単価は3,000円〜1万5,000円程度のレンジに集中しています。第2層はショート動画(TikTok・YouTube Shorts・Instagramリール)の編集で、1本1,500円〜5,000円程度ですが、本数がまとまって出るのが特徴です。第3層は企業のプロモーション動画やセミナー動画、ウェビナーの再編集で、1案件3万円〜20万円のレンジになります。

この3層のうち、第1層と第2層は「素材が支給される」案件がほとんどです。つまり撮影機材は要りません。第3層になって初めて、撮影から請け負うケースが出てきます。在宅で始める人の9割以上が第1層と第2層から入るので、最初に撮影機材をそろえるのは順序として間違っています。

編集案件の需要はなぜ増えているのか

背景として、企業の広報予算が紙・展示会からデジタル動画へ移り続けている流れがあります。BtoB企業でも製品説明動画やウェビナーのアーカイブ編集が常態化し、社内に編集できる人がいないため外注する、という構図が定着しました。加えて、個人・法人問わずショート動画の投稿頻度が上がり、1つのチャンネルで週に何本も編集が必要になっています。編集者1人が抱える本数が物理的に足りず、外部委託が増えるのは自然な流れです。

一方で、参入者も同じスピードで増えています。動画編集は「PCとソフトがあれば始められる」と広く言われた結果、第2層のショート動画編集は特に競争が激しくなりました。ここで差がつくのは、機材のスペックではなく納品スピードとコミュニケーションの安定性です。この点は後述の作業環境の項で詳しく書きます。

機材にいくらかけるべきかの相場感

競合記事を10本ほど読み込むと、「総額30万円〜50万円」と書いているものが目立ちます。ただ、その内訳を見ると撮影用のミラーレスカメラ、レンズ、ジンバル、照明、ピンマイクが含まれていることが多い。撮影を請け負う前提の金額です。

編集だけに絞るなら、必要な総額はもっと下がります。実務的な線引きはこうなります。

構成 概算総額 受けられる案件
最小構成 12万〜18万円 ショート動画、YouTube通常編集(4K素材なし)
標準構成 25万〜35万円 上記+4K素材、複数カメラ、企業案件の一部
撮影込み 45万〜80万円 撮影から納品まで一気通貫

最初は最小構成で十分です。むしろ、案件を1件も受けていない段階で標準構成以上に投資するのは、リスクの取り方として合理的ではありません。動画編集は向き不向きがはっきり出る仕事で、実際にやってみて「細かいテロップ調整が苦痛で続かない」と気づく人が一定数います。まず最小構成で3本ほど完走してから、足りない部分だけを買い足すのが最も損の少ない進め方です。

最低限そろえる5つの機材

ここからが本題です。在宅で動画編集を受注するために、実務上どうしても必要なものを5つに絞って解説します。

PC:CPUよりメモリとストレージが効く

最も高額で、最も判断を間違えやすいのがPCです。動画編集用PCの選び方で押さえるべきは3点あります。

第1にメモリ。フルHDの編集なら16GBが実質的な下限です。8GBでも起動はしますが、編集ソフトとブラウザとチャットツールを同時に開いた瞬間に固まります。4K素材を扱うなら32GBを推奨します。ここをケチると作業時間が1.5倍に伸びるので、結果的に時給が下がります。

第2に内蔵ストレージ。SSDで512GB以上。動画編集ソフトはキャッシュファイルを大量に生成するため、空き容量が減ると急激に動作が不安定になります。1TBあれば安心です。HDDしか積んでいないPCは、値段が安く見えても編集用途では選ばないほうがいい。プレビューのカクつきが常態化します。

第3にGPU。ここは意見が分かれますが、実務では「あれば書き出しが速くなる」程度の位置づけです。Adobe Premiere ProもDaVinci Resolveも、近年はCPUの内蔵グラフィックスでも一応動きます。ただしエフェクトを多用する案件では書き出し時間に明確な差が出ます。予算に余裕があれば独立GPU搭載機を選ぶ、余裕がなければ後からデスクトップに乗せ換える、という判断で問題ありません。

WindowsとMacの選択については、結論として「どちらでも仕事は取れる」です。ただし傾向は分かれます。Adobe Premiere Pro中心のワークフローならWindowsでコストパフォーマンスの高い構成が組めます。Final Cut Proを使うならMac一択です。近年のApple Silicon搭載Macは動画のエンコード処理が速く、ノート1台で完結させたい在宅ワーカーには相性がいい。私が実際に見てきた範囲では、クライアントから「Macで作ってください」と指定されることはまずありません。納品ファイルの形式が合っていれば、制作環境は問われないのが実情です。

一つだけ注意点を書いておきます。中古のノートPCで始めようとして、5年以上前のモデルを買ってしまう人がいます。これは高い確率で失敗します。CPUの世代が古いと、いまの編集ソフトが要求する処理に追いつかず、書き出しに実時間の何倍もかかる。最初に触った編集作業が「待ち時間ばかり」だと、それだけで挫折します。予算が厳しいなら、中古でも直近2〜3世代以内のモデルを選ぶべきです。

編集ソフト:月額と買い切りの損益分岐

編集ソフトは大きく3つの選択肢があります。

Adobe Premiere Proは業界標準です。月額は年間プラン契約で3,000円前後、Creative Cloudコンプリートプランなら7,000円前後。クライアントからプロジェクトファイルをそのまま渡されるケースがあり、その場合はPremiere Proでないと開けません。企業案件を狙うなら実質必須です。

DaVinci Resolveは無料版が非常に強力です。カット、カラーグレーディング、音声処理まで無料版でこなせます。有料版(Studio)は買い切りで4万円台。ノイズ除去などの一部機能が解放されます。コストを抑えて始めるなら、無料版のDaVinci Resolveから入るのが最も合理的です。

Final Cut ProはMac専用の買い切りで4万5,000円前後。動作が軽く、YouTube系の編集では根強い人気があります。

月額と買い切りの損益分岐は、Premiere Proの年間プランを基準にすると約14か月です。つまり1年以上続ける前提ならFinal Cut ProやDaVinci Resolve Studioのほうが総額は安い。ただし、Premiere Proでないと受けられない案件があるという事実は無視できません。私の考えでは、最初の3か月はDaVinci Resolve無料版でスキルを固め、Premiere Pro指定の案件が来たタイミングで契約する、という順序が無駄がありません。

外付けストレージ:SSDとHDDを役割で分ける

これを軽視して痛い目を見る人が本当に多い。動画素材は容量を食います。1時間分の4K素材が50GB〜100GBになることもざらで、内蔵ストレージだけでは数案件で埋まります。

分け方はシンプルです。作業中のプロジェクトは外付けSSDに置く。納品済みのアーカイブは外付けHDDに移す。SSDは読み書きが速いのでプレビューが快適になり、HDDは容量単価が安いので長期保管に向いています。

容量の目安は、外付けSSDが1TB、外付けHDDが4TBあたり。SSDは1TBで1万円台、HDDは4TBで1万円前後が相場です。合わせて3万円弱の投資ですが、ここは削らないほうがいい。

アーカイブについて実務的な注意を書きます。クライアントから「半年前に納品したあの動画、元素材を送ってください」と依頼されることが実際にあります。契約書に保管義務が書かれていないことも多いのですが、素材を出せる編集者は明らかに信用されます。逆に「もう消しました」を繰り返すと、次の依頼が来なくなる。HDDへのアーカイブは、営業活動の一部だと考えたほうが正確です。

音声環境:ここが最も差がつく

これは私自身が最初に失敗した部分なので、少し丁寧に書きます。

編集を始めた頃、手元にあったのがノイズキャンセリング付きの高価なワイヤレスイヤホンでした。それで音量を調整して納品したところ、クライアントから「BGMが大きすぎてナレーションが聞き取れない」と指摘されました。原因は明快で、高性能なイヤホンは音を整えて聞かせてしまうため、視聴者の環境で起きる音のつぶれが分からなかったのです。

この点について、参考になる指摘があります。

あおさん(動画編集CAMPの青笹社長)が言うには、高性能イヤホンで調整した音は、動画視聴者の視聴環境には適さなかったりするとのこと。なので、「(視聴者は)しょぼいスピーカーで聴くから、有線イヤホンのほうが編集している時の体感と視聴者の体験がズレにくい」そうです。面白いなぁ。 出典: note.com

視聴者の大半はスマートフォンの内蔵スピーカーか、数千円のイヤホンで動画を見ます。編集者だけが高解像度の音場で作業していると、その差が納品物の欠陥として表面化する。だから実務的な正解は「安い有線イヤホン」と「モニタースピーカー」を併用し、最後にスマホの内蔵スピーカーで確認する、という3段構えです。

必要な投資額は驚くほど小さい。有線イヤホンは3,000円〜5,000円のもので十分機能します。むしろ高価なものを買う必要がありません。ワイヤレスイヤホンを編集に使ってはいけない理由がもう一つあって、Bluetoothは遅延が発生します。音と映像がわずかにずれた状態で編集すると、テロップのタイミングが全体的にずれた納品物ができあがります。これは致命的です。

クライアントとの打ち合わせ用にマイクが必要になる場面もあります。ただし、これは撮影用マイクとは別物です。オンライン会議で声が明瞭に届けばよいので、5,000円〜1万5,000円程度のUSBコンデンサーマイクで足ります。音声を扱う案件そのものに興味があるなら、ミックス・マスタリングのお仕事のページで音声編集系の業務内容と求められるスキルを確認しておくと、機材投資の方向性を判断しやすくなります。

通信回線:アップロード速度が実務を左右する

見落とされがちですが、在宅の動画編集では回線が生命線です。理由は納品にあります。編集済みの動画ファイルは数GBになることがあり、これをクラウドストレージにアップロードして納品します。

ここで効くのはダウンロード速度ではなくアップロード速度です。多くの人が回線速度を測るとき、ダウンロード側の数字だけを見て「速いから大丈夫」と判断してしまう。しかし動画編集者にとって重要なのは上り側です。アップロードが10Mbpsを下回ると、5GBのファイル送信に1時間以上かかります。締切当日にこれが起きると詰みます。

実務上の目安は、上り30Mbps以上。光回線であれば通常クリアしますが、集合住宅のVDSL方式や、モバイル回線のみで運用している場合は要注意です。Wi-Fiルーターも古いモデルだと実効速度が出ないので、5年以上使っているなら買い替えを検討する価値があります。ルーターは1万円前後のもので十分改善します。

素材の受け取りにも同じ問題が絡みます。クライアントが50GBの4K素材をGoogleドライブに置いて「ダウンロードしてください」と言ってくるケースは普通にあります。回線が細いと、素材を落とすだけで半日消えます。

後から足せばいい機材と、その判断基準

ここからは「最初は要らないが、案件が増えたら効いてくる」機材です。買う順番を間違えなければ、投資は少しずつでかまいません。

外部モニター:作業効率への影響が最も大きい

追加機材で最初に買うべきはこれです。動画編集ソフトの画面は情報量が多く、タイムライン、プレビュー、エフェクト設定、素材一覧を同時に見る必要があります。ノートPCの画面1枚だと、常にパネルを切り替えながら作業することになり、単純に手数が増えます。

24インチ〜27インチのフルHDまたはWQHDモニターが1万5,000円〜3万円程度で手に入ります。ノートPCの画面をプレビュー専用、外部モニターをタイムライン専用にすると、体感の作業速度が明確に変わります。カラーグレーディングまで請け負うなら色再現性の高いモデルが必要になりますが、それは第3層の案件を受けるようになってからで間に合います。

モニターアームとPCスタンド:長時間作業の身体的コスト

動画編集は座り続ける仕事です。1本の編集に4時間、6時間と向き合うことが日常的にあります。姿勢が悪いまま続けると、首と肩に確実に来ます。

モニターアームは5,000円〜1万5,000円、ノートPCスタンドは3,000円前後。画面の高さを目線に合わせるだけで、首の角度が変わります。これは効率の話というより、この仕事を何年続けられるかという話です。在宅ワーク全般に言えることですが、身体を壊して離脱する人は思ったより多い。作業姿勢と集中の維持については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで、時間の区切り方を含めた実践的な方法を整理しています。

マウスとキーボード:ショートカットが単価を決める

動画編集の作業時間の大半は、カット位置の指定とテロップの打ち込みです。ここを速くすると、1本あたりの作業時間が短くなり、実質時給が上がります。

多ボタンマウスは4,000円〜1万円程度。サイドボタンに「カット」「一つ戻る」「再生停止」を割り当てるだけで、キーボードとマウスの往復が減ります。左手デバイス(プログラマブルキーパッド)は1万円前後で、よく使う操作を物理キーに割り当てられます。

ただし、これらは編集の型が固まってから買うべきです。まだ自分がどの操作を頻繁に使うか分かっていない段階でボタンを割り当てても、設定が定着しません。3本〜5本編集して「この操作、毎回やっているな」と分かってから導入するのが正解です。

撮影機材:本当に必要になったときだけ

カメラ、三脚、照明、ピンマイク。これらは撮影を伴う案件を受けると決めてから買うものです。

もし将来的に撮影まで請け負うなら、必要になるのはミラーレスカメラ(10万円〜25万円)、三脚(1万円〜3万円)、LEDライト(1万円〜5万円)、ピンマイク(1万円〜3万円)といった構成です。合計すると15万円〜35万円の追加投資になります。

正直なところ、編集と撮影は別のスキルです。撮影を含む案件は単価が上がりますが、現場に出向く必要があるため「在宅」の枠から外れます。在宅で完結させたいなら、撮影は請け負わないという判断も十分に合理的です。編集専門で単価を上げる道はあります。テロップデザインの質、構成提案力、納品スピード、この3つで差別化するほうが、在宅というスタイルとは相性がいい。

なお、撮影機材の話が出たついでに書いておくと、「編集を教える」という方向に展開する人も一定数います。編集スキルが身についた後の展開先として、デザイン・動画・音楽レッスンのお仕事のページには、レッスン形式の案件でどんな進め方が求められるかがまとまっています。機材投資を回収する経路として、選択肢に入れておく価値はあります。

予算別・現実的な構成プラン

ここまでの内容を、予算別に整理します。

予算15万円で始める最小構成

  • PC:中古または型落ちのノート(メモリ16GB、SSD512GB)……9万円〜11万円
  • 編集ソフト:DaVinci Resolve無料版……0円
  • 外付けSSD 1TB……1万2,000円
  • 有線イヤホン……4,000円
  • Wi-Fiルーター買い替え……1万円
  • 予備費……2万円

この構成でショート動画とYouTube通常編集は受けられます。4K素材の重い案件は厳しいですが、最初の数か月はこれで実績を作れます。

予算30万円の標準構成

上記に加えて、メモリ32GBのPCへグレードアップ(+8万円)、外部モニター(+2万円)、モニターアーム(+8,000円)、外付けHDD 4TB(+1万円)、Adobe Creative Cloud年間契約(+3万6,000円)。

このラインに達すると、企業案件を含めてほぼ断る理由がなくなります。逆に言えば、30万円を超える投資は「撮影を受ける」か「カラーグレーディングまで請け負う」と決めたときにだけ意味を持ちます。

買う順番の原則

機材投資の順番には原則があります。作業時間を短縮するものから買う、です。

外部モニターは作業時間を短縮します。多ボタンマウスも短縮します。メモリ増設も短縮します。一方、カメラや照明は作業時間を短縮しません。受けられる案件の種類を増やすだけです。仕事がまだ安定していない段階では、前者を優先するのが合理的です。

案件の受注量が読めない時期に、いきなり40万円のセットをそろえる必要はありません。この点について、参考になる考え方があります。

どこまで。っていう質問が多いのですが、 何がきても対処できるっていうくらいだと安心です。

仕事がこなければ、在宅ワークにならないとおもうけど・・・。 月100万くらいいったら切り替えてもいいかも。自己責任でw

身も蓋もない言い方ですが、本質を突いています。機材は仕事があって初めて意味を持つ。仕事が来る前に機材だけそろえても、減価するだけの資産になります。

機材以外に必要な「作業環境」の話

機材の話に終始する記事が多いのですが、在宅で編集を続けるには物理的な機材以外の環境整備が同じくらい重要です。

ファイル管理のルールを最初に決める

動画編集は素材ファイルが大量に発生します。撮影素材、BGM、効果音、フォント、書き出したプレビュー、修正版。1案件で数百ファイルになることも珍しくありません。

命名規則を決めていないと、修正依頼が来たときに「どれが最新版か分からない」という事態になります。実務では「案件名_日付_版数」の形式でフォルダを切り、書き出しファイルにも同じ規則を適用するのが標準です。地味ですが、これができていない編集者はほぼ確実にどこかで事故を起こします。

私が現場で見てきた限りでは、修正依頼への対応速度が速い人は例外なくファイル管理が整理されています。逆に「修正はできますが、素材を探すのに時間がかかります」と言い出す人は、そこで一段評価が落ちる。機材のスペックより、こういう運用の質のほうが継続受注に効きます。

バックアップは二重化する

外付けSSD1台にすべてを置いている状態は危険です。SSDは前触れなく壊れます。少なくとも、進行中の案件はPC内蔵ストレージと外付けの2箇所に置く。クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)を併用すればさらに安全です。

クラウドストレージの費用は月額1,000円〜1,500円程度で2TB前後が使えます。これは経費として計上できます。フリーランスとして開業届を出している場合、機材購入費も含めて必要経費の扱いになるため、確定申告の際の扱いは事前に確認しておくべきです。減価償却の基準額など、詳細は国税庁の情報を確認するのが確実です。10万円を超える機材は一括経費にできず減価償却が必要になるケースがあるため、PC購入時は特に注意が必要です。

作業スペースと生活時間の分離

在宅ワーク共通の課題ですが、動画編集は特に「作業が終わらない」状態に陥りやすい職種です。修正回数に上限を設けていない契約だと、際限なく作業が続きます。

物理的に作業場所を分けられるなら、それが最善です。難しい場合でも、作業する机とくつろぐ場所を分ける、作業終了時にPCを閉じてケーブルを抜くといった区切りの動作を決めておくと、切り替えがしやすくなります。在宅で働く人の1日の組み立て方については在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開に、実際の時間配分の例が具体的にまとまっています。編集業に限らず、在宅ワーク全般の時間設計の参考になります。

転職ではなく副業から始める選択

動画編集を本業にするか副業にとどめるかは、機材投資の額に直結します。

副業として始めるなら、最小構成で十分です。平日の夜と週末に週10時間程度作業すると、ショート動画なら月に15本〜25本、YouTube通常編集なら月4本〜8本程度が現実的な処理量です。ここから逆算すれば、機材にいくらかけるべきかが自然に決まります。

本業として転職を考えるなら話は変わります。編集会社に所属する道もありますが、その場合は機材が支給されることが多く、個人で高額な機材を持つ必要はありません。在宅フリーランスとして本業化する場合のみ、標準構成以上の投資が意味を持ちます。年収の水準を判断材料にしたいなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に編集職の相場データがまとまっているので、目安として確認しておくとよいでしょう。動画制作に近い技術職の水準を知りたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も比較対象になります。

独自データからみた編集案件の実態と、機材投資の考え方

在宅ワークの求人データを継続的に見ていると、動画編集案件にはいくつかの構造的な特徴が浮かび上がります。

第1に、機材スペックを応募要件に書いている案件は少数派です。多くの案件で書かれているのは「使用ソフト」と「納品形式」であって、PCのスペックではありません。クライアント側からすれば、納期どおりに指定形式で納品されればそれでよく、どんな機材で作ったかは関心の外にあります。この事実は、機材投資の優先順位を考えるうえで重要です。30万円のPCを持っていることは、受注においてほぼ何のアピールにもなりません。

第2に、継続案件と単発案件で求められる資質が違います。単発案件は成果物の質だけで判断されますが、継続案件はレスポンスの速さと修正対応の柔軟さで決まります。求人票の文言を追っていくと、「長期でお願いできる方」「レスポンスが早い方」という条件が明示されているケースが目立ちます。機材より先に整備すべきは、連絡が取れる時間帯を明確にしておくことだと分かります。

第3に、動画編集の案件は関連スキルへの横展開がしやすい構造を持っています。動画編集ができる人は、サムネイル制作、簡単なモーショングラフィックス、字幕翻訳の下準備、SNS運用の一部まで請け負えることが多い。実際の案件でどんな業務範囲が設定されているかは、動画編集(YouTube/TikTokなど)のお仕事のページに業務内容と求められるスキルの整理があります。案件の実態を先に把握してから機材を決めると、無駄が出にくくなります。

20年この市場を運営してきた立場から言えば、長く続く編集者と早く消える編集者の差は、機材ではなく関係の作り方に表れます。長く続く人は、単に依頼された作業をこなすだけでなく、「この構成なら視聴維持率が上がると思います」といった提案を1つ添える。クライアントからすると、指示を出す手間が減るので依頼が楽になります。結果として次も同じ人に頼む。この循環に入った人は、機材が最小構成のままでも安定して仕事があります。逆に、高価な機材をそろえたのに単発案件を延々と探し続けている人も見てきました。差はそこではないのです。

もう一点、運営者として見てきた限りで確かなことがあります。仲介手数料が引かれる取引と、直接取引では、同じ発注額でも受け手の手取りがはっきり変わります。仮に発注側が同じ予算を組んでいても、間に手数料が乗れば受け手に届く額は目減りする。逆に手数料0%の直接取引であれば、発注側は同じ予算でより多くの本数を頼めるし、受け手は1本あたりの手取りが厚くなります。この構造は、機材投資の回収スピードに直結します。月に10本編集する人にとって、1本あたりの手取り差が積み上がると、外部モニター1台分の差はすぐに埋まる。機材の話をしているときに見落とされがちですが、どの取引形態で受注するかは、機材選定と同じくらい投資回収に影響する要素です。

第4の特徴として、在宅ワーク全体の中で動画編集がどの位置にあるかも押さえておく価値があります。在宅で完結する職種は複数ありますが、動画編集は「初期投資がやや大きく、単価の上振れ幅も大きい」タイプに分類されます。データ入力やライティングは初期投資がほぼゼロですが、単価の上限も見えやすい。この違いを理解したうえで選ぶべきです。他の職種との比較は在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングにスキル別の整理があるので、動画編集が自分の状況に合っているかを判断する材料になります。

最後に、機材とは直接関係しませんが、資格の扱いについて触れておきます。動画編集に必須の資格はありません。ただ、企業案件を狙う場合、業務連絡の文書品質が評価に影響する場面があります。提案書や見積書を作る機会が増えるため、ビジネス文書検定のような文書作成の基礎を押さえておくと、クライアントとのやり取りで信頼を得やすくなります。同じ理由で、映像配信のインフラ側まで理解したい人にはCCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク系の知識が、大規模配信案件で活きるケースもあります。ただしどちらも優先度は低い。まずは機材を最小構成でそろえ、1本目を完走することが先です。

機材の話を長く書いてきましたが、要点は変わりません。PC、ソフト、ストレージ、有線イヤホン、回線。この5つがあれば、在宅の動画編集は今日から始められます。残りは仕事が来てから、必要になったものを1つずつ足していけばいい。それが最も損の少ない進め方です。

よくある質問

Q. 手持ちのノートPCで動画編集を始められますか?

メモリ16GB以上、SSD512GB以上、直近2〜3世代以内のCPUであれば、フルHDの編集は問題なくこなせます。メモリ8GBやHDDのみのモデルは、プレビューのカクつきと書き出しの遅さで作業効率が大きく落ちるため、買い替えを検討したほうが結果的に安くつきます。まずは手持ちの機種のスペックを確認してください。

Q. 編集ソフトは無料のもので仕事を受けられますか?

DaVinci Resolveの無料版はカット、テロップ、カラー調整、音声処理まで対応でき、実務でも十分使えます。ただしクライアントからPremiere Proのプロジェクトファイルを渡される案件は開けません。最初は無料版で始め、Premiere Pro指定の案件が来た時点で月額契約するのが無駄のない進め方です。

Q. 撮影用のカメラやマイクは最初から必要ですか?

必要ありません。個人が受注しやすいYouTube編集やショート動画編集は、素材が支給される案件がほとんどです。撮影機材をそろえると15万円から35万円の追加投資になりますが、撮影案件は現場に出向く必要があり在宅の枠から外れます。編集専門で単価を上げる道も十分にあります。

Q. 在宅で編集するとき回線速度はどのくらい必要ですか?

アップロード速度で30Mbps以上を目安にしてください。納品ファイルが数GBになるため、上りが10Mbpsを下回ると5GBの送信に1時間以上かかります。回線速度を測るときダウンロード側だけ見て安心する人が多いのですが、編集者にとって重要なのは上り側です。集合住宅のVDSL方式は特に注意が必要です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月12日最終更新:2026年9月12日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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