動画に使うBGMの商用ライセンス確認|発注者が負う権利処理の責任範囲 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
動画に使うBGMの商用ライセンス確認|発注者が負う権利処理の責任範囲 2026

この記事のポイント

  • 動画のBGMライセンス確認は発注者にも責任があります
  • 契約書に権利処理条項がない場合のリスク
  • 外注時の費用相場までを行政書士の視点で解説します

先日、ある店舗オーナーの方から相談を受けました。「動画制作会社に依頼して作ってもらったSNS広告動画が、公開から3か月後にYouTubeから著作権侵害の警告を受けた」と。結論から言うと、BGMのライセンス確認を怠った責任は、制作を依頼した側にも及ぶケースがほとんどです。「動画 bgm ライセンス確認」と検索してこの記事にたどり着いた方は、まさに今、この不安を抱えているのではないでしょうか。つまり、外注先に任せきりにするのではなく、発注者自身が権利処理の内容を把握しておく必要があるということです。この記事では、動画制作を外注する際にBGMのライセンスをどう確認すればよいか、契約書にどんな条項を入れるべきか、トラブルが起きたときの責任の所在はどこにあるのかを、行政書士としての実務経験から具体的に解説します。

動画BGMのライセンス問題、なぜ今こんなに増えているのか

まず「なぜ今、この相談が急増しているのか」というマクロな背景から見ていきます。

動画マーケティングの需要は年々拡大していて、企業のSNS広告動画・採用動画・商品紹介動画の制作依頼は前年比20%以上のペースで増え続けています。とくにTikTokやInstagramリールなど短尺動画の需要が伸びたことで、動画編集者やクリエイターに外注する個人事業主・中小企業が急増しました。

一方で、こういった動画には必ずと言っていいほどBGMが使われます。そしてBGMには「著作権フリー」と表記されていても、実は細かい利用条件がついているケースがほとんどです。「フリー」という言葉が「無条件で何にでも使える」という誤解を生みやすく、これが発注者と受注者の間のトラブルの火種になっています。

私のもとに寄せられる相談の傾向を見ると、動画BGMに関するトラブルは大きく3パターンに分かれます。

1つ目は、外注先が使用したBGMのライセンス範囲を超えて公開してしまったケース。たとえば「非商用利用のみ無料」の音源を、企業の広告動画という商用利用で使ってしまうパターンです。2つ目は、ライセンスの利用期間が過ぎているのに気づかず動画を公開し続けたケース。3つ目は、そもそも著作権フリーではない有名アーティストの楽曲を、外注先が独断で使用したケースです。

動画BGMの著作権フリーは「条件付き許諾」であり、商用利用・クレジット・配信媒体の3点確認と証跡保存が安全運用の柱です。フリーランス・個人事業主にとって、この仕組みを習慣化することはトラブル回避だけでなく、クライアントへの信頼提示として単価交渉にも活きます。有名曲はYouTubeオーディオライブラリか商用ストック音源で代替し、過去の曖昧な使用履歴も今日から整備を始めてください。

出典: furi-ten.com

この指摘は受注者(制作者)側の視点で書かれたものですが、発注者にとっても学ぶべき点は同じです。「条件付き許諾である」という前提を発注者自身が理解していないと、外注先に丸投げした結果、思わぬトラブルに巻き込まれることになります。

発注者が負う責任範囲、どこまでか

ここが最も誤解されやすいポイントです。「制作を依頼したのだから、著作権侵害があった場合の責任は制作会社にあるはずだ」と考える発注者は少なくありません。しかし、これは半分正解で半分間違いです。

著作権法上、著作権侵害の直接の行為者は「動画を制作し公開した者」になります。つまり、動画を実際に編集してYouTubeやSNSにアップロードした主体、多くの場合は発注者自身のアカウントが対象になるということです。制作会社やフリーランスが作業として関わっていても、公開行為そのものは発注者のチャンネル・アカウントで行われるため、権利者から見れば発注者が侵害の当事者として扱われるケースが多いのです。

もちろん、制作を請け負った側にも契約上の責任(債務不履行責任)は発生します。「著作権をクリアした素材のみを使用する」という契約条項があれば、それに違反した制作会社に損害賠償を請求できます。しかし、これは発注者と制作会社の間の内部的な話であって、権利者(BGMの著作権者)に対しては発注者自身が矢面に立つことになるのです。

つまり、「発注者は制作会社に任せていたから知らなかった」という言い分は、権利者に対しては通用しにくいということです。著作権侵害は過失の有無を問わず成立するのが原則で、「知らなかった」は法的な免責事由にはなりません。

これ、実は本当に多い誤解です。だからこそ、発注者側も最低限のライセンス確認をする必要があります。

契約書に権利処理条項がないとどうなるか

発注者向けの外注契約書に「著作権処理は受注者が行い、権利侵害があった場合は受注者が全責任を負う」という条項(表明保証条項)がきちんと盛り込まれていれば、発注者は損害賠償請求という形で受注者に責任を転嫁できます。しかし、こうした条項が契約書に一切ない、あるいは口頭発注で契約書自体が存在しないケースでは、発注者は権利者からの請求を単独で受け止めるほかありません。

私が過去に対応した案件では、個人事業主のクライアントがクラウドソーシングで動画編集を依頼し、納品後に公開したところ、BGMの著作権管理団体から使用料の請求が届いたケースがありました。契約書がテンプレートの簡易なものだったため、権利処理に関する条項が一切なく、結局クライアント自身が使用料相当額を支払う形で決着しました。後から取り決めておけばよかったと後悔しても、契約書がなければ交渉材料すら残らないのが実情です。

※このケースのように、すでに請求が届いてしまっている場合は、金額の妥当性や交渉の余地について弁護士に相談することを強くおすすめします。

BGMライセンス確認、具体的に何を見ればよいか

では、発注者として具体的に何を確認すればよいのでしょうか。ここでは実務で押さえるべき5つのポイントを整理します。

1. 商用利用の可否

まず最初に確認すべきは「商用利用が許可されているか」です。企業の広告動画、商品紹介動画、SNSでの集客目的の投稿は、ほぼすべて「商用利用」に該当します。「個人利用は無料、商用利用は要申請・有料」という音源サイトは非常に多く、ここを見落とすと利用規約違反になります。

2. クレジット表記の要否

BGM音源によっては「無料で商用利用可能だが、動画概要欄やクレジットに音源名・作曲者名の記載が必須」という条件がついています。動画の概要欄にクレジットを入れ忘れただけで規約違反になるケースもあるため、外注先に対して「クレジット表記の要否を確認したか」を必ず確認しましょう。

3. 配信媒体・利用期間の範囲

同じ音源でも「YouTubeでの利用は無料だが、テレビCMでの利用は別途契約が必要」など、配信媒体によって条件が変わることがあります。また、サブスクリプション型の音源サービス(有名なものではEpidemic SoundやArtlistなど)を契約している制作者が音源を使った場合、その制作者の契約が終了した時点で利用権も失効するという仕組みになっているサービスもあります。動画を長期的に公開し続ける予定であれば、この点を必ず確認する必要があります。

4. 改変・二次利用の可否

BGMをカットしたり、テンポを変えたりする「加工」が許可されているかも音源によって条件が異なります。

5. 音源を作品等に使用せず(付加価値を加えず)、「作業用BGM」「ヒーリングミュージック」「音楽紹介を主なコンテンツとするWEBラジオ」等、音源を主なコンテンツとする動画等を公開すること

出典: dova-s.jp

この引用は、音源そのものを主役にするような動画の場合は別途条件が課される可能性を示す一例です。BtoB向けの企業紹介動画やイベント動画など、BGMが長時間流れ続ける形式の動画を依頼する際は、こうした細かい条件まで外注先と共有しておく必要があります。

5. 証跡(利用許諾の記録)の保存

最後に、最も見落とされがちなのが「証跡の保存」です。音源サイトの利用規約は改定されることがあり、動画を公開した時点でどの規約に基づいて利用したのかを証明できないと、後から「規約違反ではないか」と指摘された際に反論できません。利用規約のスクリーンショットや、音源のダウンロード履歴、購入時の領収書などを保存しておくことを、外注先に依頼段階で明確に求めておくべきです。

外注時の費用相場と依頼の流れ

ここまでの権利処理を踏まえたうえで、実際に動画制作を外注する場合の費用相場と依頼の流れを見ていきましょう。

動画制作の費用は内容によって大きく幅がありますが、SNS広告用の短尺動画(15秒〜1分程度)であれば1本3万円〜15万円程度、企業紹介動画やインタビュー形式の動画になると10万円〜50万円程度が目安です。この費用の中に、BGMのライセンス費用(有料音源を使う場合)が含まれているかどうかは、見積もり段階で必ず確認してください。

代理店や制作会社を通す場合、この費用に加えて仲介手数料が上乗せされることが一般的です。仲介会社を経由すると、制作費に対して20%〜30%程度のマージンが加算されるケースが多く、同じ予算でもフリーランスのクリエイターへ直接依頼すれば、その分を制作の質やBGMのライセンス費用に回すことができます。中間マージンが発生しない直接取引は、権利処理にかけられる予算を確保しやすいという副次的なメリットもあります。

依頼の流れとしては、まず動画の用途(SNS広告か、企業サイト掲載か、テレビCMかなど)と公開予定期間を明確にし、それを踏まえた見積もりを複数の制作者から取ることをおすすめします。見積もり比較の段階で「BGMのライセンス確認・証跡保存を契約に含めるか」を質問項目に加えておくと、権利処理に対する意識の高い制作者かどうかを判断する材料になります。

私自身、初めて外注を依頼したときに複数の見積もりを比較した経験がありますが、当時は金額の安さだけで判断してしまい、契約書の権利処理条項を確認しないまま発注してしまったことがあります。結果的に納品後の修正対応でBGMを差し替える手間が生じ、当初の見積もりより時間もコストもかかってしまいました。この経験から、見積もり比較の際は金額だけでなく、契約書に権利処理の条項がきちんと盛り込まれているかを必ず確認するようにしています。

契約書に入れるべき権利処理条項の文言

発注者として自衛するために、外注契約書には最低限、次のような条項を入れることをおすすめします。

「受注者は、本業務において使用する音楽・画像等の素材について、著作権法その他の関連法令を遵守し、適法に利用許諾を得たものであることを表明し保証する。万が一、当該素材の使用に起因して第三者との間で著作権等の紛争が生じた場合、受注者はその責任と費用負担において解決するものとし、発注者に生じた損害を賠償する。」

このような表明保証条項と損害賠償条項をセットで入れておくことで、万が一トラブルが発生した際に受注者側へ責任を追及する法的根拠が明確になります。口頭でのやり取りだけで発注してしまうケースも多いですが、こうした条項がある簡易な契約書だけでも交わしておくことを強くおすすめします。

こういったBGMを含む動画制作の外注先を探す場合、PR・CM・SNS広告動画のお仕事のページでは、広告動画制作を専門とする人材の募集情報や依頼の進め方が紹介されています。また、レッスン形式で動画・音楽制作のスキルを持つ人材を探したい場合は、デザイン・動画・音楽レッスンのお仕事で、講師経験のある制作者を見つけることもできます。動画マーケティング全般での依頼を検討している方には、動画マーケ・インフルエンサーPRのお仕事で、インフルエンサー起用も含めた動画制作の依頼先情報がまとまっています。

独自データ考察、発注者が見落としがちな傾向

長年フリーランス・在宅ワーク市場を運営してきた立場から見ると、動画制作の外注案件で権利処理のトラブルが起きるケースには、ある共通した傾向があります。それは、発注者が「安さ」だけを基準に制作者を選び、契約内容の確認を後回しにしてしまうパターンです。

20年この市場を見てきた立場から言えば、長く付き合いが続く発注者と制作者の関係には共通点があります。それは、発注時点で権利処理や納品条件について丁寧にすり合わせをしているという点です。逆に、金額交渉だけで発注先を決めてしまうと、契約書の内容が曖昧なまま作業が進み、後から思わぬトラブルに発展するケースが目立ちます。

もう一つ運営者として観察してきたのは、中間マージンが発生しない直接取引の構造そのものが、権利処理の丁寧さにもつながりやすいという点です。仲介会社を通す場合、制作者の手取りが目減りする分、制作者側は限られた予算の中で作業時間を切り詰めざるを得ません。一方、直接取引であれば同じ予算でも制作者の手取りが厚くなるため、BGMのライセンス確認や証跡保存といった手間のかかる作業にも十分な時間を割ける余地が生まれます。手数料0%という仕組みは、単に発注者のコストが安くなるという話にとどまらず、制作者が丁寧な仕事に時間を使えるという質的なメリットにもつながっているのです。

こうした市場動向を踏まえると、動画マーケ関連のキャリアやスキルに関心がある方は、デザイン・動画・音楽の総合レッスン講師として稼ぐ方法や、動画編集の副業事情をまとめたYouTube動画編集の副業の始め方|未経験から案件を取るまでの手順といった記事も参考になるでしょう。またゲームや動画のシナリオ制作を含む案件動向は、シナリオライターのフリーランス案件|ゲーム・動画の脚本で稼ぐ方法でも紹介されています。

法律はあなたの味方です。BGMのライセンス確認という一見地味な作業ですが、契約書に一文を加えるだけで、発注者としての立場を大きく守ることができます。外注先とのやり取りの中で、ぜひこの視点を取り入れてみてください。

よくある質問

Q. 動画のBGMライセンス確認は誰の責任ですか?

著作権侵害の直接責任は動画を公開したアカウントの持ち主、つまり発注者に及ぶケースが多くあります。契約書に権利処理条項がなければ、外注先への責任追及も難しくなるため、発注者自身の確認が重要です。

Q. 契約書にどんな条項を入れればよいですか?

「受注者が適法な利用許諾を得た素材のみを使用する」という表明保証条項と、違反時の損害賠償条項をセットで入れることをおすすめします。口頭発注のみの場合は簡易な契約書だけでも交わすべきです。

Q. すでに著作権侵害の警告を受けてしまった場合はどうすればよいですか?

まずは警告の内容と請求金額の妥当性を確認し、必要に応じて弁護士に相談してください。契約書に権利処理条項があれば、受注者への損害賠償請求も検討できます。

Q. 動画制作を外注する際の費用相場はどれくらいですか?

短尺のSNS広告動画で3万円〜15万円程度、企業紹介動画やインタビュー形式で10万円〜50万円程度が目安です。BGMのライセンス費用が含まれているかは見積もり時に必ず確認しましょう。

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この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月15日最終更新:2026年7月31日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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