教員がYouTubeで収入を得るには服務規程の確認と申請が先

中西 直美
中西 直美
教員がYouTubeで収入を得るには服務規程の確認と申請が先

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この記事のポイント

  • 教員 副業 ユーチューバーの疑問に
  • 公立と私立の違いから答えます
  • 地方公務員法の営利企業従事制限

「教員が副業でユーチューバーをやったら、処分されるんでしょうか」。このご相談、ここ数年で本当に増えました。授業の準備をしながら、夜中にスマホでYouTubeの収益化条件を調べている。でも誰にも聞けない。管理職に相談したら、それだけで目を付けられそうで怖い。そんな状態で何ヶ月も止まっている方が、たくさんいらっしゃいます。

先に結論をお伝えします。公立学校の教員でも、YouTubeでの発信そのものは禁止されていません。禁止されているのは「無許可で営利企業に従事すること」です。つまり、動画を出すこと自体ではなく、収益が発生する形にしたときに、任命権者の許可という手続きが必要になる、という構造です。私立学校の教員はそもそも公務員ではないので、判断の土台がまったく違います。

大丈夫ですよ。順を追って整理すれば、自分の立場でどこまでやれるのかは、はっきり見えてきます。この記事では、根拠になっている法律と規程、許可申請の実務、収益化ラインと確定申告、そして現場でよく起きる失敗まで、順番にお話しします。

「教員 副業 ユーチューバー」と検索する人が本当に困っていること

検索している方の状況は、だいたい3つに分かれます。

1つ目は、すでに趣味で動画を上げていて、思いのほか再生数が伸びてきた方。「このまま収益化ボタンを押していいのか」で手が止まっています。2つ目は、教科指導や部活動のノウハウを外に出したいと考えている方。教育系の発信は社会的にも意義があるはずなのに、副業禁止の一言で止められるのが納得できない。3つ目は、収入面の不安から始めようとしている方です。

3つ目の方に、少しだけ寄り添わせてください。教員の給与は年功で上がる設計になっている一方、時間外の実務負担は制度上の枠に収まりきっていません。もう少し余白がほしい、という気持ちは、まったく後ろめたいものではありません。ただ、公務員の服務規程は「稼ぎたいかどうか」ではなく「公務の中立性と信用が守られるか」という別の物差しで動いています。この物差しの違いを理解しないまま突っ込むと、意図せず規程違反になってしまいます。

実際、私のカウンセリングでも「バレるかバレないか」を一番の関心事にしている方ほど、後で苦しくなります。隠しながら続けるという状態は、心理的にはかなりの負荷です。管理職とすれ違うたびに動悸がする、コメント欄に生徒らしき書き込みがあるだけで眠れない。そういう相談を何度も受けてきました。だからこそ、最初に「正面から通す道があるのか」を確認してほしいのです。

公立学校の教員に適用されるルールの全体像

公立学校の教員は、地方公務員です。したがって地方公務員法の服務に関する規定が全面的にかかります。関係するのは主に次の4つです。

営利企業への従事等の制限(地方公務員法第38条)

もっとも直接的に効いてくるのが、営利企業への従事等の制限です。職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むこと、報酬を得ていかなる事業や事務にも従事することができない、という趣旨の規定です。

ここで押さえてほしいのは、条文が「禁止」ではなく「許可を受けなければ」と書いている点です。つまり制度としては、許可という手続きを通す道が最初から用意されています。ゼロか百かではありません。法令の条文そのものはe-Govで確認できますので、自分の目で原文を読んでおくことをおすすめします。伝聞で「教員は副業禁止らしい」と理解している方が非常に多いのですが、原文を読むと印象が変わります。

そしてもうひとつ重要なのが、報酬の有無です。報酬を得ない活動、たとえば完全に非収益で動画を公開するだけなら、この条文が想定する「従事」には当たらないと整理されるのが一般的です。収益化ボタンを押した瞬間に、話が別の段階へ移る。ここが分岐点になります。

教育に関する兼職・兼業の特例(教育公務員特例法第17条)

教員には、一般の地方公務員にはない特例があります。教育公務員特例法には、教育に関する他の職を兼ねたり、教育に関する事業や事務に従事したりする場合、本務の遂行に支障がないと任命権者が認めるときは、給与を受け、または受けないで従事できる、という趣旨の規定があります。

これが、教育系の発信をしたい教員にとって現実的な足がかりになります。教科指導の解説、学習法の紹介、教育論の発信といった内容は「教育に関する事業」の枠で説明しやすい。一方で、ゲーム実況やガジェットレビュー、日常系Vlogは、この特例の枠には入りません。一般の営利企業従事として、より厳しく見られます。

自治体の運用実態を語ったブログでも、この温度差は指摘されています。

(理由)教員の副業は原則禁止だけど、「教育に関する副業」は奨励されている感じがあるから(許可は必要)。 出典: softtennis-blog.com

「奨励されている感じ」という表現が、実務の空気をよく表しています。教育に資する発信は歓迎される土壌がある。ただし、それでも許可という手続きは省略できません。ここを飛ばすと、内容が立派でも手続き違反になります。

職務専念義務(第35条)

勤務時間中は職務に専念しなければならない、という規定です。動画の撮影・編集・コメント返信を勤務時間内にやれば、内容が教育系であってもアウトです。学校のパソコン、学校のネットワーク、学校の備品を使って編集する行為も、当然ここに引っかかります。

意外と見落とされるのが、休憩時間の扱いです。休憩時間は職務専念義務が外れますが、職場の設備を私的な収益活動に使ってよいわけではありません。撮影も編集も、自宅の私物機材で、勤務時間外に。この線を最初に引いておくと、後で疑われる余地が減ります。

信用失墜行為の禁止(第33条)と守秘義務(第34条)

その職の信用を傷つけ、職員全体の不名誉となるような行為をしてはならない。そして職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。この2つは、許可の有無に関係なく常にかかります。

YouTubeでいちばん事故が起きやすいのが、この領域です。生徒の顔や名前、保護者とのやりとり、職員会議の内容、特定の学校を推測できる情報。これらは収益化していようがいまいが、出した時点で問題になります。むしろ「無収益だから自由に話していい」と思い込んでいる方のほうが、危ない発信をしがちです。

私立学校の教員は、判断の土台がまったく違う

ここが混乱しやすいところなので、はっきり分けます。

私立学校の教員は公務員ではありません。学校法人と労働契約を結んだ労働者です。したがって地方公務員法も教育公務員特例法もかかりません。副業を制限する根拠は、法律ではなく、勤務先の就業規則だけです。

つまり私立の場合、最初にやるべきことは条文を調べることではなく、自分の学校の就業規則を読むことです。副業に関する条項があるか、許可制か届出制か、そもそも規定がないのか。規定がなければ、労働時間外に何をするかは基本的に労働者の自由という考え方が原則になります。

厚生労働省が公開しているモデル就業規則は、2018年の改定で副業・兼業を原則容認する方向へ書き換えられました。現在のモデル就業規則には、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる、という趣旨の条文が入っています。制度改定から年数が経ち、これを取り込んだ学校法人も増えています。最新の考え方は厚生労働省のサイトで確認できます。

ただし、私立だから何でも自由というわけでもありません。実務でよく問題になるのは次の点です。

・競業に当たるケース。近隣の塾で教える、他校の生徒向けに有料指導をするといった活動は、学校の生徒募集と利益が衝突する可能性があります ・本務に支障が出るケース。深夜まで編集して翌日の授業に影響が出れば、副業そのものより勤務態度が問題になります ・学校の名誉を損なうケース。校名を出さなくても、発信内容が特定されて学校の評判に影響すれば、契約上の信義則の問題になり得ます

私立教員の副業可否について、実際に投げられている質問と、それに対する率直な回答を見ておきましょう。

「副業可能かどうかで教員になるかどうか決める」なら分かるんですが、現在もう教員なのでとりあえず無心でYoutubeやってみたらいいと思うんですが。半分以上の人はろくな収益もらえずYoutube辞めるのでまず自分にその能力があるか挑戦すればいいと思います。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

やや突き放した言い方ですが、実務的には的を射ています。収益が発生しない段階では、そもそも許可の対象になる「報酬を得て従事する」状態ではありません。まず作ってみて、続けられるかどうかを確かめる。収益化が視野に入った時点で手続きを踏む。この順番は、公立でも私立でも合理的です。

YouTubeの収益は、どの段階から「報酬を得て従事」になるのか

ここが技術的にわかりにくいところなので、段階で整理します。

段階1:動画を公開するだけ(収益ゼロ)

広告を有効にしていない、メンバーシップもスーパーチャットも受け取っていない状態です。この段階では収入が1円も発生しないため、営利企業従事の制限が想定する状況には当たりません。ただし信用失墜行為の禁止と守秘義務は、この段階からずっとかかっています。

段階2:YouTubeパートナープログラムの参加条件を満たす

広告収益を受け取るには、YouTubeパートナープログラムへの参加が必要です。2026年時点の主な条件は、チャンネル登録者1,000人に加えて、直近12か月の公開動画の総再生時間4,000時間、またはショート動画の直近90日間の視聴回数1,000万回のいずれかを満たすこと、とされています。

現実的な話をすると、この条件に到達するチャンネルは全体のごく一部です。多くの方が数十本出したところで手が止まります。ですから「収益化したらどうしよう」という不安で最初の一歩が踏み出せないのは、順番として少しもったいない。段階1で数ヶ月続けてみて、自分が発信を継続できるタイプかどうかを確かめるほうが先です。

段階3:収益が発生している

ここから、公立教員には任命権者の許可という手続きが必要になります。収益が月に数百円でも、報酬を得て事業に従事している状態です。金額の大小で自動的に免除されるわけではありません。

「年間20万円以下なら申告不要だから、許可も要らないのでは」という誤解が非常に多いのですが、これは税務のルールと服務のルールを混同しています。所得税の申告不要ラインと、地方公務員法の許可の要否は、まったく別の制度です。税務上の申告が不要でも、服務上の許可は必要になり得ます。ここは切り分けて覚えてください。

任命権者への許可申請は、実際どう進めるのか

「許可を取ればいい」と言われても、具体的にどう動けばいいのか見えないと思います。実務の流れをお話しします。

申請先と経路

公立学校の教員の任命権者は、都道府県教育委員会または政令指定都市の教育委員会です(市町村立学校の県費負担教職員の場合)。ただし申請書をいきなり教育委員会に送るのではなく、通常は校長を経由します。学校の事務室に兼職兼業の申請様式があるはずですので、まずそこで様式と提出ルートを確認するのが最短です。

自治体によって、様式の名称も審査の基準も違います。「営利企業等従事許可申請書」「兼職・兼業承認申請書」など呼び名はさまざまです。自治体独自の兼業許可基準が要綱として定められていることも多く、その中で認められる活動の類型が例示されている場合があります。所属自治体の人事関係の例規集を確認してください。

申請書に書く内容

一般的に求められるのは次の項目です。

・従事する事業の内容(チャンネルのテーマ、扱う題材、想定視聴者) ・従事する時間帯と頻度(週あたりの作業時間、勤務時間外に限る旨) ・報酬の見込み(金額または算定方法) ・本務への影響がないと考える理由 ・使用する設備(私物の機材のみである旨)

ここで大事なのは、盛らないことです。「教育の発展に寄与する」といった抽象的な意義だけを並べるより、週3時間以内で土日の午前に作業する、といった具体性のほうが通りやすい。審査する側が確認したいのは、本務に支障が出ないかどうかだからです。

審査で見られるポイント

私が相談を受けてきた範囲で、判断が分かれやすいのは次の3点でした。

1つ目は、内容の教育関連性です。教科の解説や学習法など、教育に関する事業と説明できる内容は、教育公務員特例法の特例の枠で検討しやすくなります。逆に教育とまったく関係のない娯楽系は、一般の営利企業従事として厳しく見られます。

2つ目は、収入の性質です。動画に広告が表示されて自動的に配分される収益と、企業から個別に依頼を受けて商品を紹介する案件では、後者のほうが慎重に扱われます。特定企業との利害関係が生じ、公務員の中立性に関わるためです。

3つ目は、身元の露出度です。現職教員であることを前面に出して発信するのか、職業を伏せるのか。前者は影響力が大きい分、学校や自治体への波及も大きくなります。

許可が下りなかったときの選択肢

申請が通らないこともあります。そのときに残る道は3つです。

収益化せずに続ける。これは最も現実的です。発信の意義が目的なら、収益をオフにすれば服務上の論点は大きく減ります。

内容や露出の仕方を変えて再申請する。娯楽色を薄めて教育寄りに再設計する、企業案件を受けない前提にする、といった調整で判断が変わることはあります。

活動時期を見直す。育児休業中や、退職を視野に入れた時期など、立場が変わるタイミングで改めて検討するという考え方もあります。

いずれにしても、無許可で収益化を続けるという選択だけは避けてください。後から発覚したときの負担は、想像よりずっと重くなります。

顔出し、学校名、生徒の映り込みをどう扱うか

法令の話とは別に、実務でいちばん事故が起きるのがここです。

生徒が特定できる情報は、収益の有無に関係なく出さない

生徒の顔、氏名、声、作品、答案、教室の様子。これらは守秘義務と個人情報の両面から、公開してはいけない領域です。「顔にモザイクをかけたから大丈夫」と考える方がいますが、制服、校章、部活動の大会名、地域の風景が写り込めば、特定は容易です。

保護者から同意を取れば大丈夫、という発想も危険です。学校の教育活動として撮影したものを、教員個人の収益活動に転用する構図になるためです。同意の範囲を超えます。

学校名と自治体名を出すかどうか

出さないほうが安全です。ただ、完全に隠し通せると思わないほうが現実的です。教科、担当学年、部活動、方言、通勤の話題。いくつか組み合わせれば、視聴者は容易に推測します。

ですから「バレない工夫」に力を注ぐより、「特定されても問題にならない内容だけを話す」ほうが、精神的にずっと楽になります。これは私がカウンセリングでよくお伝えしていることでもあります。隠す前提の活動は、続けるほどストレスが積み上がる構造になっているからです。

学校批判、同僚批判、保護者批判は避ける

再生数が伸びやすい題材ではあります。ただし信用失墜行為の禁止に最も近い領域でもあります。教育現場の課題を論じること自体は正当ですが、特定の人物や特定校への批判として読める形にすると、一気に危うくなります。

匿名の相談として、こういうケースがありました。教育現場の実情を伝えたいという善意で始めた発信が、回を重ねるうちに愚痴の色を帯びていき、コメント欄が過熱して収拾がつかなくなった。本人はやめたいのに、視聴者の期待に応えなければという気持ちで止められなくなっていました。発信の目的が途中ですり替わっていないか、定期的に自分で点検してください。

収益が出たあとの確定申告と住民税

収益が発生したら、税務の手続きが始まります。ここは服務の話とは完全に別建てです。

所得の区分

YouTubeの広告収益は、規模や継続性によって雑所得または事業所得に区分されます。教員として給与を得ながら、副業的な規模で行っている場合は、雑所得として扱われるのが一般的です。帳簿を備えて事業として継続的に営んでいると認められる規模になれば、事業所得の検討余地が出てきます。

必要経費として計上できるのは、撮影機材、編集ソフトの利用料、照明、マイク、資料代など、収益を得るために直接必要だった支出です。私物と兼用しているものは、使用割合で按分します。

申告が必要になるライン

給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が年20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要になります。ここでいう20万円は売上ではなく、売上から経費を引いた所得の金額です。

注意してほしいのは、この20万円ルールは所得税だけの話だという点です。住民税には同じ免除規定がありません。所得が20万円以下でも、市区町村への住民税の申告は必要です。ここを飛ばすと、後から問い合わせが来ることがあります。詳しい取り扱いは国税庁のサイトで確認してください。

住民税の徴収方法

住民税は通常、給与から天引き(特別徴収)されます。副業所得が加わると天引き額が変わり、勤務先の事務担当が気づく場合があります。確定申告書で住民税の徴収方法を自分で納付(普通徴収)に指定すれば分離できることもありますが、自治体によって運用が異なり、給与所得以外の所得についても特別徴収に一本化する運用の自治体もあります。

ここで大切なことを申し上げます。普通徴収の話を「バレない方法」として使わないでください。許可を取っていれば隠す必要はありませんし、許可を取らずに隠す前提で設計した活動は、いずれ苦しくなります。徴収方法の選択は、あくまで事務手続きの選択肢として理解してください。

帳簿と記録の残し方

収益の入金記録、経費のレシート、機材の購入履歴は、月ごとにまとめておくと申告時に慌てません。クラウド会計サービスを使えば、口座やカードの明細を自動で取り込めます。freeeマネーフォワードといったサービスが一般的に使われています。

よくある失敗パターンと、その手前で止まる方法

相談を受けてきた中で、繰り返し見てきた失敗を挙げます。

失敗1:収益化してから許可を申請する

順番が逆です。収益が発生した時点で、すでに無許可従事の状態が始まっています。「実績ができてから申請したほうが説得力がある」と考えた方がいましたが、審査では逆効果でした。申請は、収益化ボタンを押す前に出してください。

失敗2:勤務時間中に少しだけ触ってしまう

昼休みにコメントを返す、放課後に学校のパソコンでサムネイルを作る。1回あたりは数分でも、記録は残ります。学校のネットワークからYouTube Studioにアクセスした履歴が確認される事例もあります。作業は自宅の私物端末に完全に限定してください。

失敗3:教育系のつもりが、いつのまにか広告案件中心になる

教材メーカーや学習アプリからの依頼は、教育系チャンネルが伸びると自然に来ます。ただしこれは、特定企業との利害関係が生じる典型例です。許可の内容に企業案件が含まれていなければ、許可の範囲外の活動になります。

失敗4:本務が回らなくなる

編集は思っている以上に時間を食います。10分の動画を1本仕上げるのに、撮影と編集で5時間前後かかることは珍しくありません。週1本の更新を自分に課した結果、教材研究の時間が消え、授業の質が落ちる。この順序で崩れていく方を、何人も見てきました。

体調の面からも一言添えます。睡眠を削って続ける発信は、必ずどこかで止まります。私が産業カウンセラーとして関わってきた中で、副業の失敗の多くは「稼げなかったこと」ではなく「休息を後回しにしたこと」から始まっていました。週に何時間なら無理なく出せるのかを先に決めて、その枠の中で企画を組む。順番はこちらです。

失敗5:匿名のつもりで身バレする

過去の投稿、背景の書棚、窓の外の景色、通知音、家族の声。特定の材料はいくらでもあります。匿名を維持したいなら、撮影環境そのものを設計する必要があります。無地の壁の前で撮る、生活音が入らない時間帯を選ぶ、といった地味な工夫が効きます。

始めるなら、どう組み立てるか

ここからは、実際に動く場合の組み立て方をお話しします。

最初の3か月は収益化しない前提で走る

段階1のまま、企画と撮影と編集の型を作る期間に充てます。この期間に確認したいのは、再生数ではなく「自分が続けられるか」です。多くの方が10本前後で止まります。逆に30本を超えて出せる人は、その後も続く傾向があります。

機材は最小構成から

スマートフォンのカメラで十分です。むしろ優先順位が高いのは音声です。視聴者は画質の粗さには耐えますが、音の悪さには耐えません。数千円のピンマイクを1本足すだけで、視聴継続率が変わります。照明は、日中の窓際で撮れば当面は足ります。

編集ソフトは無料のもので始めて、必要を感じてから有料に移行すれば十分です。動画編集や画像加工のスキルは、教材作りにも転用できます。この方向を仕事として広げる場合、Adobe系のツールを扱える証明があると説明がしやすくなります。Adobe認定プロフェッショナル Adobe Expressは、デザインツールの基本操作を証明する資格で、教育現場の掲示物制作にもそのまま生きます。

テーマは「自分が毎週話せること」から選ぶ

伸びそうなテーマではなく、資料なしで10分話せるテーマを選んでください。教科の単元解説、定期テスト対策の考え方、進路指導で繰り返し聞かれること。日々の業務で何度も説明している内容は、すでに整理されています。ネタ切れが起きにくいのは、この領域です。

発信を仕事の形に広げる道もある

教育に関する発信を続けていると、動画以外の依頼が来ることがあります。教材の執筆、学習コラムの寄稿、キャリア相談。こうした業務がどんな形で流通しているのかを知っておくと、判断の材料が増えます。

キャリア・副業・人生相談のお仕事では、進路相談やキャリア面談を業務委託で受ける形の仕事がまとめられており、教育現場の経験がそのまま活きる領域です。文章で発信する方向に進むなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、執筆系の職種がどの程度の単価帯で動いているかを確認しておくと、依頼を受けたときの相場感がつかめます。

副業全般の設計については、副業 フリーランスの始め方!本業と両立して年収を最大化する戦略が、本業と並行する場合の時間配分や税務の考え方を整理しています。作業管理の面では、Notion 副業 タスク 分割 コツ!2026年最新の効率化術が、限られた時間で進めるためのタスク分解の方法を扱っています。動画に声を乗せる作業に関心が向いた方には、声優スキルを在宅副業に活かす方法|ナレーション・ボイスオーバーで稼ぐが、音声表現を仕事にする際の実務を解説しています。

契約や許認可の周辺で疑問が出てきたときは、行政書士の資格ページで、書類作成や手続き代理がどこまでの範囲を扱う専門領域なのかを把握しておくと、専門家に相談すべき場面の見分けがつきやすくなります。

発信を仕事に変えていく市場の見え方

在宅で働く人の市場を20年見てきた立場から、ひとつ観察をお伝えします。

発信を収入につなげられた人と、そうでない人の差は、動画の本数でも編集技術でもありませんでした。差が出たのは、「この人に頼むと説明が楽だ」と思われる関係を作れたかどうかです。教員の方は、この点で大きな強みを持っています。相手の理解度に合わせて説明を組み替える技術は、教育現場で毎日鍛えられているものだからです。教材会社にせよ、企業の研修担当にせよ、発注する側がいちばん困っているのは「作ったものが受け手に伝わらない」ことです。そこを最初から解決できる人は、単価交渉をしなくても継続的に声がかかります。

もうひとつ、額面と手取りの話をさせてください。仲介手数料が乗る取引では、依頼側が支払った金額の一部が中間で差し引かれ、受け手に届く額はその分だけ薄くなります。逆に中間マージンが乗らない直接取引では、依頼側は同じ予算でより多くを頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件は、金額の派手さではなく、この「手取りが薄まらない」という質の違いとして効いてきます。長く続けている人ほど、報酬の絶対額より、この構造を重視して取引先を選んでいる。運営者として見てきた限りでは、これはかなり一貫した傾向です。

技術寄りの発信に関心がある方は、扱う領域によって周辺の仕事の広がり方が変わります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、AIツールの活用や情報発信の設計に関わる業務が扱われており、教育系コンテンツの制作と親和性のある領域です。もう少しインフラ寄りの技術を扱うならサーバー・インフラ構築・保守のお仕事、開発職の相場を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。

最後に、心のことを少しだけ。

教員という仕事は、成果が数字で返ってこない仕事です。だからこそ、再生数や登録者数という明確な数字が返ってくるYouTubeは、思っている以上に強く引きつけます。数字が伸びれば嬉しいし、伸びなければ自分が否定されたように感じる。この振れ幅に飲み込まれて、本業の手応えまで見失ってしまう方がいます。

発信を始める前に、ひとつだけ決めておいてください。「これは何のためにやるのか」です。教科の面白さを届けたいのか、収入の柱を増やしたいのか、退職後を見据えた準備なのか。目的がはっきりしていれば、数字が動かない時期も揺れずに済みます。そして、目的に照らして手続きが必要なら、面倒でも正面から通す。遠回りに見えて、これがいちばん消耗しない道です。

あなたは一人ではありません。同じ場所で立ち止まっている先生は、想像よりずっとたくさんいます。まずは自分の学校の様式を1枚もらってくるところから、始めてみてください。

よくある質問

Q. 公立学校の教員がYouTubeで収益化するには、何の許可が必要ですか?

任命権者(都道府県または政令指定都市の教育委員会)の許可が必要です。地方公務員法の営利企業への従事等の制限により、報酬を得て事業に従事するには許可が要ります。申請は通常、校長を経由して提出します。収益化してから申請するのではなく、収益化ボタンを押す前に手続きを済ませてください。無許可のまま収益が発生した状態は避けるべきです。

Q. 収益化しないで動画を出すだけなら、許可は不要ですか?

報酬が発生しない段階なら、営利企業従事の制限が想定する状況には当たらないと整理されるのが一般的です。ただし信用失墜行為の禁止と守秘義務は収益の有無に関係なくかかります。生徒の顔や氏名、職員会議の内容、特定校が推測できる情報は、無収益でも公開してはいけません。念のため管理職に一報を入れておくと安全です。

Q. 私立学校の教員も同じルールですか?

違います。私立の教員は公務員ではなく、学校法人と労働契約を結んだ労働者です。地方公務員法も教育公務員特例法もかかりません。判断の根拠は勤務先の就業規則だけなので、まず副業条項の有無と、許可制か届出制かを確認してください。規定があっても、厚生労働省のモデル就業規則の改定を受けて容認方向に見直している法人が増えています。

Q. YouTubeの収益はいくらから確定申告が必要ですか?

給与を1か所から受けている場合、給与以外の所得(売上から経費を引いた額)の合計が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。ただしこの20万円ルールは所得税だけの話で、住民税には同じ免除規定がありません。20万円以下でも市区町村への住民税申告は必要です。また税務の申告要否と、服務上の許可の要否はまったく別の制度なので混同しないでください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月16日最終更新:2026年9月6日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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