個人事業主 病気 休業|傷病手当金がない場合の生活防衛と保険の選び方


この記事のポイント
- ✓個人事業主が病気で休業すると収入はゼロ
- ✓傷病手当金がない国民健康保険加入者向けに
- ✓所得補償保険・就業不能保険・小規模企業共済など2026年版の生活防衛策と確定申告の損益通算まで客観的に解説します
個人事業主が病気で休業した場合、結論から言うと「会社員のような傷病手当金は基本的に出ません」。国民健康保険(国保)には傷病手当金制度がなく、入院しても自宅療養しても、収入は原則ゼロになります。本記事では、病気で働けなくなった個人事業主が直面する具体的なリスクと、所得補償保険・就業不能保険・小規模企業共済などの備え方、休業中の確定申告まで、客観的なデータに基づいて整理します。
正直なところ、開業届を出した時点でこの話を税理士や保険代理店からきちんと聞いている人は3割もいない印象です。だからこそ、いま元気なうちに読んでおく価値があります。
個人事業主が病気で休業したときに起きること(マクロ視点)
まず前提として、日本の就業者数のうち個人事業主・フリーランスを含む自営業者は約650万人規模で推移しています。コロナ禍を経て副業・独立志向は強まったものの、社会保障の手薄さは会社員時代と比べて大きな差があります。
会社員(厚生年金・健康保険)と個人事業主(国民年金・国民健康保険)の違いを、病気で休業したときの観点で並べると次のとおりです。
| 項目 | 会社員(健康保険) | 個人事業主(国民健康保険) |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | あり(標準報酬日額の2/3、最長1年6か月) | 原則なし |
| 出産手当金 | あり | 原則なし |
| 労災保険 | あり(業務上・通勤災害) | 原則なし(特別加入を除く) |
| 雇用保険 | あり | なし |
| 障害厚生年金 | あり(3級まで) | 障害基礎年金のみ(1・2級) |
この表を見て分かるとおり、個人事業主のセーフティネットは「障害基礎年金」「高額療養費」「医療費控除」くらいしかありません。働けない期間が長引いたときの生活費は、原則として自助努力で確保する設計になっています。
ここで、確定申告との関係について信頼できる出典を引いておきます。
個人事業主が病気になり働けなくなると収入がゼロになってしまうことから、「確定申告は不要」と考える人もいるでしょう。 年間所得が48万円以下の場合や副業分の所得が20万円以下なら、確定申告を行う必要はありません。 しかし、病気などが原因で売上げがなかったとしても、確定申告をすることで損益通算や純損失の繰り越し・繰り戻しなどを利用できます。
つまり、休業して収入がゼロでも、確定申告をすることで「翌年以降の節税効果」を残せます。この点は後ほど詳述します。
個人事業主が病気で休業したときの3大リスク
1. 収入が即ゼロになるキャッシュフロー停止リスク
会社員であれば有給休暇や傷病手当金で1年6か月はある程度の収入が確保されます。一方、個人事業主は仕事を受注して納品しなければ売上が立ちません。月商50万円のフリーランスエンジニアが2か月寝込めば、それだけで100万円の機会損失です。
私が見てきた範囲でも、長期入院から復帰した個人事業主の多くが「治療費よりも、その間の家賃と国保料・年金保険料の固定費に殺された」と話します。固定費は休業しても止まりません。
2. 顧客離れ・案件喪失リスク
クラウドソーシングや業務委託は、納期遅延が即「次回発注なし」につながります。継続案件を持っていても、3か月音信不通になれば後任者にリプレースされる傾向が見られます。これは個人事業主の構造的弱点で、企業勤めなら同僚が代わりに業務を回してくれるところを、自分一人で抱えているからです。
3. 社会保険料の負担は続くリスク
休業中でも、国民年金保険料(2026年度は月額17,510円程度)、国民健康保険料、住民税は容赦なく請求されます。所得が下がれば翌年の保険料は下がりますが、当年の請求は前年所得ベースで計算されているため、休業直後の負担はむしろ重く感じる人が多いです。
まずやること:病気で働けなくなったら最初の30日でやる手続き
1. 健康保険関係:高額療養費制度の申請
医療費が高額になった場合、所得区分に応じて自己負担限度額が定められています。一般的な所得区分(年収370万円〜770万円)であれば、1か月の医療費自己負担は約8万円+αに抑えられます。事前に「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口での立て替えも不要です。
国民健康保険の保険者(市区町村)に申請してください。なお、厚生労働省が制度の詳細を公開しています(厚生労働省)。
2. 国民年金保険料の免除・納付猶予
所得が下がった年度は、国民年金保険料の免除(全額・3/4・半額・1/4)や納付猶予を申請できます。免除を受けても、その期間は受給資格期間に算入されるため、将来の年金にも一定額が反映されます。詳細は日本年金機構で確認してください。
3. 国民健康保険料の減免
災害や所得激減に伴う減免制度を設けている自治体が多くあります。要件と減免割合は自治体ごとに異なるため、市区町村役場の国保担当窓口へ直接相談するのが最短ルートです。
4. 障害年金の検討
回復に時間がかかる重い病気(がん、脳血管疾患、精神疾患など)の場合、障害基礎年金の対象になる可能性があります。初診日から1年6か月経過時点の障害状態で判定されるため、初診日を証明するカルテや受診記録は必ず保存しておきましょう。
5. 取引先への連絡
これは制度ではなく実務の話ですが、休業初日に主要取引先へ連絡を入れるかどうかで、復帰後の継続率が大きく変わります。曖昧に放置せず「現時点で○か月の休業見込み、復帰後は引き続きお願いしたい」と具体的に伝えるほうが、案件喪失リスクは下げられます。
個人事業主が病気で休業した時の収入確保手段
ここからが本記事の核心です。傷病手当金がない個人事業主が、休業時に収入を確保する手段を網羅的に整理します。
1. 所得補償保険
損害保険会社が販売する保険で、ケガや病気で就業不能になった場合、契約した月額補償を最長1年〜2年受け取れます。短期型の代表的な備えです。
特徴と注意点を整理します。
- 補償期間は1〜2年と短めだが、保険料も比較的安い
- 免責期間(保険金が出ない期間)が4〜7日程度設定されているのが一般的
- 自宅療養でも医師の診断書があれば支払対象になる商品が多い
- 損害保険料控除の対象外(地震保険のような所得控除は受けられない)
2. 就業不能保険
生命保険会社が販売する長期型の保険で、所得補償保険より補償期間が長く、60歳・65歳までといった設計が一般的です。
- 補償期間が長く、長期療養に対応
- 精神疾患を補償対象とするかは商品によって分かれる
- うつ病など精神疾患のリスクは、特約や別商品で対応する設計が増えている
- 免責期間が60日・180日と長めのため、短期休業には向かない
正直なところ、所得補償保険(短期型)と就業不能保険(長期型)は守備範囲が違うため、両方を最低限の補償額で組み合わせるのが合理的です。月額補償15万円〜20万円あれば、固定費の大半はカバーできます。
3. 小規模企業共済
中小機構が運営する個人事業主向けの退職金制度ですが、貸付制度が休業時の生活防衛に強力に効きます。
- 掛金月額は1,000円〜70,000円の範囲で自由設定
- 掛金は全額所得控除(年最大84万円)
- 加入者は、低金利での貸付(一般貸付・傷病災害時貸付など)を受けられる
- 詳細は中小機構を参照
私が独立直後に見落としていたのも小規模企業共済の貸付枠でした。預貯金とは別に「掛金の範囲内で即日借りられる」枠が確保されるイメージなので、生活防衛のキャッシュ確保手段として効果的です。
4. 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
これは取引先の倒産対策ですが、解約手当金が掛金の100%戻る期間(40か月以上)まで積み立てておけば、休業時の解約原資にもなります。掛金は全額必要経費に算入できる点が魅力です。
5. iDeCo・NISA・預貯金(生活防衛資金)
そもそも論として、個人事業主の生活防衛資金は月固定費の6〜12か月分を預貯金で持っておくのが基本線です。月固定費が30万円なら180万円〜360万円を流動性の高い口座に置いておくイメージです。
iDeCoは老後資金として強力ですが、原則60歳まで引き出せないため休業時の生活防衛には使えません。NISAは引き出し可能ですが、相場下落時に切り崩すことになる可能性があるため、生活防衛と分けて考えるべきです。
6. 民間の医療保険・がん保険
入院日額や手術給付金、診断一時金が出るタイプ。治療費そのものは高額療養費でかなり圧縮できるため、優先度はやや下がります。ただし、がん保険の「診断一時金100万円」のようなまとまった給付は、休業初期のキャッシュフロー確保には効きます。
国民健康保険に傷病手当金がないという現実については、次のような整理もあります。
個人事業主が働けなくなった時のリスクとして、最も深刻なのは事業を運営できず事業収入が途絶えることです。預貯金や家族の協力などがあったり、病気やケガの回復が早期に期待できたりする場合にはまだよいのですが、そうでない場合は生活費が確保されません。社会保障等を含めた対応を考える必要が出てきます。
商工会議所の休業補償プランも選択肢
地域の商工会議所・商工会の会員になっている個人事業主は、団体保険として割安な休業補償プランに加入できる場合があります。一般の個人契約より保険料が10〜30%程度安いケースもあるため、すでに会員であれば必ず比較対象に入れるべきです。
加入要件・補償内容は地域や年度で変わるため、所属する商工会議所のパンフレットを取り寄せるのが確実です。
個人事業主が病気で休業した年の確定申告
1. 売上ゼロでも確定申告は「やる」が正解
冒頭の引用にもあったとおり、所得が48万円以下なら確定申告の義務はありません。しかし、青色申告をしている個人事業主は、申告した方が圧倒的に得です。
- 損益通算:事業所得の赤字と、不動産所得・雑所得の黒字を相殺できる
- 純損失の繰越控除:青色申告なら赤字を3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺可能
- 純損失の繰戻還付:前年が黒字なら、当年の赤字で前年の所得税を取り戻せる
- 国民健康保険料の減額:所得が下がれば翌年の保険料は下がる
- 住民税の減額:同上
つまり、休業中でも記帳と申告を続けることが、復帰後のキャッシュフロー回復に直結します。
2. 経費にできるもの・できないもの
休業中でも事業継続のために発生する家賃按分・通信費・サブスク・サーバー代などは経費計上できます。一方、医療費は事業の経費ではなく、医療費控除(所得控除)で処理します。年間10万円を超える医療費があれば、医療費控除で所得を圧縮できます。
詳細は国税庁の公式情報で確認してください。
3. e-Tax と会計ソフトの活用
療養中に紙の申告書を書くのは現実的ではありません。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトとe-Taxを連携しておけば、自宅やベッドの上からでも申告完結できます。療養を機に紙ベース運用からデジタルに切り替えるのは合理的です。
長期で働けない場合の選択肢
復帰の見通しが立たない、あるいは半年以上の長期療養が確定した場合、個人事業主は次のような選択肢を検討することになります。
1. 事業の一時休止届
税務署に休業届を提出するのではなく、青色申告は継続したまま「売上ゼロ申告」を選択する人が多いです。屋号や事業用口座を残しておけば、回復後に再開がスムーズだからです。
2. 廃業届と再就職
回復後に再独立する見込みがないなら、廃業届を提出して再就職する選択もあります。雇用保険には加入できなかった代わりに、健康保険・厚生年金の手厚さに戻れるメリットがあります。
3. 法人成り後の社会保険加入
体力が戻る前提なら、回復前後で法人成りして自分を役員にし、健康保険・厚生年金に加入し直すという選択肢もあります。これにより、再度病気になったときに傷病手当金の対象になります。ただし、社会保険料負担は重くなるため、年商600〜800万円以上の事業規模が一つの目安です。
4. 在宅・低負荷案件への切替
病気で働けなくなる前にやっておくべき備え
1. 固定費の見直し(最優先)
休業時の生活防衛コストを下げる最大の手段は、固定費そのものを下げることです。家賃・通信費・保険料・サブスクを総点検し、月固定費を2〜3割カットできるかどうかを必ず確認してください。
特に保険料は、必要保障額の見直しだけで月1〜2万円下がるケースが珍しくありません。生命保険・医療保険の見直しの考え方は、生命保険の見直しポイント|ライフステージ別のチェックリストでライフステージ別に整理しているので、独立直後の人は一度確認してみてください。年代別に必要保障額の考え方が変わる点は、20代の生命保険おすすめ|独身・既婚で変わる選び方でも触れています。
2. 保険料の経費計上を整理
個人事業主が払う保険料は、契約形態によって「経費」「所得控除」「控除対象外」に分かれます。社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除を取り違えると、申告漏れにつながります。仕訳と申告書の書き方の具体例は、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で詳しく整理しています。
3. 緊急用キャッシュは「すぐに動かせる場所」へ
預貯金は、ネットバンキングですぐに動かせる普通預金口座に6〜12か月分の固定費を置いておくことが基本です。投資信託や定期預金に全部突っ込むと、緊急時に取り崩しが間に合いません。
4. 取引先の分散
1社依存は構造リスクです。月商100万円のうち1社で80万円を稼いでいる人は、その取引先が「3か月後の発注を保証してくれるか」を必ず確認したほうがよいです。複数案件・複数プラットフォームへの分散は、休業リスクを下げる最も地味で確実な対策です。
5. スキルの言語化と実績の可視化
復帰時にスムーズに案件を再獲得するためには、ポートフォリオ・実績一覧・スキルセットを常にメンテナンスしておくことが効きます。療養中でも、Notionやポートフォリオサイトを更新するくらいなら1日30分でも可能です。
1. ストック型・成果物型は休業耐性が高い
ソフトウェア作成者の年収・単価相場は、案件単位の業務委託が中心です。納品ベースの仕事は「治って復帰した来月から再開」という形が取りやすく、休業からの復帰がスムーズな傾向が見られます。
同様に、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も、記事単位・案件単位で動く性質上、完全休業から部分復帰までの段階を踏みやすい職種です。
2. 月額顧問・常駐型は休業耐性が低い
逆に、月額固定の顧問契約や、現場常駐型の業務委託は、休業=契約打ち切りに直結しやすい構造です。1社依存・常駐ベースの個人事業主は、所得補償保険の補償額を厚めに設計するか、ストック型案件の比率を意図的に上げる戦略をとるべきです。
3. 資格による職域拡張は復帰時の武器になる
休業期間中に取得しやすい資格を1つ持っておくと、復帰後の単価交渉に効きます。たとえば、ビジネス文書検定はライター・編集者の客観的スキル証明として使えますし、IT系ならCCNA(シスコ技術者認定)のような国際的資格は復帰時のインフラ系案件単価を押し上げる材料になります。療養中の時間を完全な空白にしないという意味でも、資格学習は合理的な選択肢です。
4. 「単発・短期・低単価」と「継続・長期・高単価」のバランス
休業リスクに強い案件ポートフォリオは、長期継続案件(収入の安定性)と単発案件(撤退コストの低さ)の組み合わせです。継続案件だけだと休業時の喪失が大きく、単発案件だけだと収入が不安定になります。7:3または6:4の比率で意図的に組み合わせるのが、個人事業主の休業耐性を高める実務的な配分だと考えています。
よくある質問
Q. 所得補償保険と就業不能保険の違いは何ですか?
名称は異なりますが、どちらも「病気やケガで働けなくなったときの収入減少をカバーする」という目的は同じです。保険会社によって商品名が異なる場合や、補償される期間(短期か長期か)に違いがあるため、加入前に必ず約款を確認しましょう。
Q. 所得補償保険の保険料は確定申告で経費にできますか?
個人の生活費を補填する目的で加入する所得補償保険の保険料は、原則として事業の必要経費として計上することはできません。また、生命保険料控除の対象にもならない点に注意してください。
Q. フリーランスになりたてでも所得補償保険に加入できますか?
はい、加入可能です。ただし、前年の所得をベースに補償額を決定する商品もあるため、独立直後で実績がない場合は、加入できる補償額に上限が設けられることがあります。初心者向けの少額プランからスタートするのがおすすめです。
Q. フリーランス向けの就業不能保険は初心者でも比較しやすいですか?
はい。現在は各社からWeb上で簡単にシミュレーションできるツールが提供されており、年齢や希望する給付金額を入力するだけで手軽に比較可能です。
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この記事を書いた人
朝比奈 蒼
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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