個人事業主控除 290 万の条件 事業税で損しない考え方


この記事のポイント
- ✓個人事業主控除290万円の対象条件と事業税の仕組みを
- ✓フリーランス向けに分かりやすく解説
- ✓所得を抑える節税ポイントや法定業種の判定
「税務署から黄色い封筒が届いて、開けたら『個人事業税』と書いてあって、心臓が止まりそうになりました」。このご相談、毎年8月になると本当に多いんです。
会社員の頃は給与から天引きで「気づいたら払い終わっていた」税金が、フリーランスになると突然「自分で計算して、自分で払う」ものに変わる。中でも個人事業税は、所得税や住民税と違って「来ることを知らなかった」と驚かれる方が圧倒的に多い税金です。
そして、その個人事業税の話で必ず出てくるのが「290万円」という数字。「所得が290万円以下なら個人事業税はかからない」「290万円を超えると一気に税負担が重くなる」。ネットで検索すると断片的な情報が出てきて、結局自分はどっちなのか分からない、というお声をよくいただきます。
大丈夫です。仕組みさえ理解すれば、毎年の納税スケジュールに振り回されることはなくなります。今日は「事業主控除290万円」とは何なのか、どんな人に適用されて、どうすれば事業税で損をしない働き方ができるのか、カウンセリングの現場で実際にお伝えしている内容を、できるだけ日常の言葉でお話しします。
マクロ視点:なぜ「個人事業主は290万円」なのか
まず、土台となる前提から整理させてください。「290万円」という数字だけが一人歩きしている印象があるのですが、これは個人事業税という地方税の中で事業主控除と呼ばれる仕組みの金額です。
個人事業税は、都道府県が課す地方税です。所得税(国税)や住民税とは別に、一定の業種を営む個人事業主にかかります。会社員にはかかりません。法人にも個人事業税はかかりません(法人は法人事業税という別の税金になります)。あくまで「個人事業主・フリーランスとして特定の事業を営んでいる人」にかかる税金です。
個人事業税は、青色申告であっても「青色申告特別控除」の控除は適用されませんが、事業主控除が一律290万円あります。1年間の所得が290万円以下の個人事業主は納付義務がないということです。なお、営業開始から1年未満の場合は月割額で控除されます。
ここがポイントです。所得290万円以下であれば、計算上は個人事業税が0円になります。だから「個人事業主は290万円までは事業税がかからない」と言われるんですね。
ただ、ここで多くの方が誤解されるのが「290万円以下なら税金が一切かからない」という解釈です。これは違います。個人事業税はかからなくても、所得税と住民税、国民健康保険、国民年金は別途かかります。「290万円ライン」は、あくまで個人事業税の話に限定された数字です。
なぜ290万円なのか、と聞かれることもあります。これは1998年の地方税法改正で270万円から引き上げられたもので、それ以降ずっと据え置かれています。「会社員には給与所得控除があるのだから、個人事業主にも生活費相当を控除しよう」という発想で設けられた控除です。月割すると約24万円。これが「最低限の生活費」として地方税法で認められている、と理解しておくと感覚が掴みやすいと思います。
個人事業税の対象になる業種と、ならない業種
ここがフリーランスの方にとって、実はとても重要な分かれ道です。
個人事業税は法定70業種と呼ばれる、地方税法で定められた業種だけに課されます。逆に言えば、法定業種に該当しなければ、所得がいくらあっても個人事業税はかかりません。
法定70業種は3つの区分に分かれていて、税率が異なります。
第1種事業(37業種・税率5%)には、物品販売業、製造業、運送業、飲食店業、印刷業、出版業、広告業、不動産貸付業、コンサルタント業などが含まれます。一般的な事業の多くがここに入ります。
第2種事業(3業種・税率4%)は、畜産業、水産業、薪炭製造業。フリーランスの方にはほぼ関係しない区分です。
第3種事業(30業種・税率5%または3%)には、医業、歯科医業、税理士業、デザイン業、コンサルタント業、クリーニング業などが入ります。ただし、医業や歯科医業など一部は税率3%に軽減されています。
ここで「自分はどれに当てはまるんだろう」と不安になる方が多いのですが、よく相談を受ける職種の判定を整理してみます。
Webデザイナーは、第3種事業のデザイン業(税率5%)に該当します。これは都道府県によっても確認されていて、ほぼ例外なく課税対象です。
Webエンジニア・プログラマーは、判定が分かれます。プログラム製作そのものは法定業種に明確には含まれていないと解釈する都道府県もあれば、第1種の「請負業」「製造業」とみなされる場合もあります。実務的には課税通知が来るかどうかで判断することになります。
Webライターは、ここが面白いところで、純粋な「文筆業」は法定70業種に含まれていません。だから所得が500万円あっても、文筆業のみであれば個人事業税はかからない、という判定が一般的です。ただし、編集業として案件を請けたり、コンサルティング要素が入ったりすると話が変わってきます。
イラストレーター・漫画家・小説家も「文筆業」「画家」の解釈で非課税になる地域がほとんどです。
コンサルタント業、講師業、占い業、士業(行政書士・税理士・社労士など)は明確に課税対象です。
「私のような相談」のご紹介を一つさせてください。私自身もそうだったのですが、産業カウンセラーとして独立した最初の年に「カウンセラーは法定業種なんだろうか」と気になって都税事務所に電話をかけました。担当者の方は「コンサルタント業に類するもの」として課税対象になります、と教えてくださいました。電話一本で答えてもらえるので、「自分の職種は微妙だな」と感じたら、お住まいの都道府県税事務所に確認するのが一番早くて確実です。
詳しい単価相場や独立の道筋を知りたい方は、職種別データもご参考になります。たとえば、ソフトウェア作成者の年収・単価相場では、フリーランスエンジニアが請負業として個人事業税の対象になりやすい現状や、年収レンジ別の手取り推計が分かります。詳細はソフトウェア作成者の年収・単価相場をご覧ください。文筆業として非課税ゾーンが多いライター職については、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で具体的な単価帯を確認できます。
個人事業税の計算式:290万円控除はどこで効くのか
ここから具体的な計算の話に入ります。最初は数字が出てきて少し気が重くなるかもしれませんが、一度理解してしまえば毎年同じ流れなので、安心してください。
個人事業税の計算式は次のようになっています。
(事業所得 + 所得税の事業専従者給与(控除)額 ー 各種控除額 ー 事業主控除290万円) × 税率(3%〜5%) = 個人事業税
「事業所得」は、確定申告書の収支内訳書や青色申告決算書で計算した、収入から必要経費を引いた金額です。所得税の計算と土台は同じです。
ただし、ここで重要な注意点があります。青色申告特別控除65万円は個人事業税には適用されません。所得税で青色申告特別控除を引いた後の金額ではなく、引く前の所得が基準になります。これは多くの方がつまずくポイントなので、しっかり押さえておいてください。
個人事業税は、所得が年290万円を超える個人事業主にかかる地方税です。個人事業税を抑えるには、3つのポイントがあります。1つ目は「必要経費の計上を徹底する」、2つ目は「損失を控除する」、3つ目は「地域独自の減免制度を利用する」です。この記事では、個人事業税がかかるかかからないか際どい方に向けて、所得を年290万円以下に抑えるポイントを解説します。
具体例で見てみましょう。Webデザイナー(第3種事業・税率5%)として独立した方が、年間の事業所得が400万円だったとします。
事業所得400万円 ー 事業主控除290万円 = 110万円 110万円 × 5% = 5万5,000円
これが個人事業税として、翌年8月と11月の2回に分けて納める税額です。所得税・住民税とは別途、ということを忘れないでください。
次に、所得290万円ぴったりだった場合。
事業所得290万円 ー 事業主控除290万円 = 0円 個人事業税 = 0円
つまり、ぎりぎり290万円までであれば個人事業税は発生しません。ここが「290万円ライン」の魔法のような効果です。
最後にもう一つ、開業1年未満の方への特例です。年の途中で事業を始めた場合、290万円が満額ではなく月割りになります。たとえば7月に開業したなら、開業月から12月までの6ヶ月分として、290万円 ÷ 12ヶ月 × 6ヶ月 = 145万円が控除額になります。これも「初年度は満額290万円使える」と誤解されやすい点なので、注意してください。
290万円の壁を意識した働き方は損か得か
カウンセリングでよくいただくのが「もうすぐ所得が290万円を超えそうなんですが、仕事をセーブした方がいいでしょうか」というご相談です。
結論から言うと、税金を理由に仕事をセーブするのは、ほとんどの場合損です。理由を順番にお話しします。
まず、個人事業税の税率は最大でも5%です。仮に所得が290万円から300万円に増えたとして、増えた10万円のうち、個人事業税で持っていかれるのは5,000円。残り9万5,000円は手元に残ります(所得税・住民税は別途かかりますが、それも合算で考えても増分の半分以上は残ります)。
つまり「290万円を超えたら大損する」というイメージは、心理的なものに過ぎないんです。会社員時代の「扶養から外れる103万円の壁」のような、断崖絶壁的な負担増は個人事業税にはありません。あるのは「超えた分にだけ5%の追加負担」という、シンプルな比例関係です。
ただし、別の意味で290万円ラインを意識する価値はあります。それは「経費漏れがないか」「正しく節税できているか」を見直すきっかけとして使うこと。
たとえば、自宅の一部を仕事場として使っている方なら、家賃・電気代・通信費の事業按分は経費にできます。仕事で使うパソコンやモニター、ソフトウェアのサブスク代も経費です。取引先との打ち合わせのカフェ代、参考図書の購入費、業界セミナーの参加費。こうした「事業のために支払ったお金」を漏れなく経費計上すれば、所得は自然と下がります。
「経費を増やして所得を290万円以下に押さえ込もう」という発想ではなく、「本来経費にできるものをちゃんと経費にする」という姿勢。これだけで、結果的に290万円ライン付近の方は事業税0円になることが多いんです。
私が独立した最初の年も、確定申告の準備中に「あ、これも経費にできるのか」と気づくものがいくつもありました。心理学関係の書籍代、オンライン研修費、カウンセリングルームの賃料、業務用の音声録音機材。会社員時代は意識する必要がなかった支出を、ひとつひとつ仕訳していく作業は最初は大変ですが、半年もすれば慣れます。慣れてくると、レシートを受け取った瞬間に「これは経費かどうか」が反射的に判断できるようになります。
法定業種に該当しない職種という「裏ワザ」
「私はWebライターで、所得が400万円あるんですが、個人事業税は来ますか?」と聞かれることがあります。
答えは「来ない可能性が高い」です。文筆業は法定70業種に含まれていないため、純粋に執筆業務だけで事業を営んでいる方は非課税になることがほとんどです。
これは「裏ワザ」というよりも、制度上の仕組みです。1948年に施行された地方税法が前提としていた事業区分が、現代のインターネット時代の職業に追いついていない、という側面もあります。だからこそ、新しい職種ほど課税判定が曖昧になっているんです。
具体的に、所得290万円超でも個人事業税がかからない可能性が高い職種を整理してみます。
文筆業(純粋なライター、コラムニスト、小説家)、画家・イラストレーター、漫画家、作曲家・作詞家、翻訳家、通訳者、芸術家、写真家、農業・林業従事者。これらは法定70業種に含まれていないため、所得が500万円でも1,000万円でも個人事業税は発生しないのが原則です。
ただし、注意していただきたいのは「業務の実態」が判定基準になることです。ライターを名乗っていても、編集業務やコンサルティング、講師業を兼ねていれば、その部分が課税対象になる可能性があります。複数業種を兼業する場合、メインの業務がどれかで判定が変わることもあります。
判断に迷ったら、繰り返しになりますが、お住まいの都道府県税事務所に直接確認するのが一番です。電話で「私はこういう仕事をしていて、収入の内訳はこうです」と伝えれば、課税対象かどうか、税率は何%かを教えてもらえます。
将来的に複数の仕事を組み合わせて働きたい方には、業務の選択肢を広く見ておくことも大切です。たとえば、AIコンサル・業務活用支援のお仕事はコンサルタント業として課税対象になりますが、単価が高く需要も伸びている分野です。一方、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事はコンサル要素と技術要素の組み合わせで、案件によって課税判定が変わる可能性があります。アプリケーション開発のお仕事は請負業として課税対象になりますが、これも単価帯の高い職種です。「課税対象だから損」ではなく、「単価×手取り×やりがい」のトータルで選ぶことが、長く続ける秘訣です。
個人事業税を抑える4つの具体的な節税ポイント
ここまで読んでくださった方の中には「自分は法定業種に該当するから、現実的に節税したい」という方も多いと思います。具体的な節税ポイントを4つお伝えします。
1. 必要経費を漏れなく計上する
これが最も基本で、最も効果が大きい方法です。
事業所得は「収入 − 必要経費」で計算されますから、経費が増えれば事業所得は下がります。事業所得が下がれば、290万円控除を引いた後の課税対象額も下がり、個人事業税も下がります。
経費計上の対象になりやすいのは、業務に直接使う消耗品、書籍・資料代、業務用ソフトウェアのサブスク料金、自宅兼事務所の家賃・水道光熱費・通信費の事業按分(多くは20〜50%)、業務移動の交通費、取引先との会議費、研修・セミナー参加費、業務用機材の購入費(10万円未満は一括経費、10万円以上は減価償却)。
ポイントは「事業のために支出した」と説明できるかどうかです。プライベートと混在する支出(携帯電話代、自家用車のガソリン代など)は、業務使用割合に応じて按分するのが基本です。
2. 青色申告で控除を最大化する
青色申告特別控除65万円は、個人事業税には適用されません。ただし、所得税・住民税には適用されます。所得税・住民税が下がれば、結果的に手取りは増えます。
さらに重要なのが、青色申告者だけが使える「純損失の繰越控除」と「事業専従者給与」です。
純損失の繰越控除は、ある年に赤字が出た場合、翌年以降3年間にわたって所得から差し引ける制度です。個人事業税の計算でも同じく、前年以前3年間の損失を控除できます。事業を始めた最初の年に赤字になりがちな方は、これを使わない手はありません。
事業専従者給与は、生計を一にする家族(配偶者や親など)を従業員として雇い、給与を支払う仕組みです。事前に届出が必要ですが、家族への給与を必要経費にできるため、所得を大きく下げる効果があります。ただし個人事業税の計算では、所得税で経費にした事業専従者給与は加算(戻して計算)するルールになっているので、注意してください。
3. 地域独自の減免制度を活用する
意外と知られていないのが、都道府県によっては独自の減免制度があることです。
たとえば、災害で事業用資産に被害を受けた場合、生活保護を受給している場合、所得が著しく少ない場合、障害者である場合などには、申請により個人事業税が減免されることがあります。
これは「申請しないと適用されない」のが特徴です。納税通知書が届いたとき、自分が該当しそうな事情があれば、納期限までに都道府県税事務所に相談してください。
4. 開業時期を意識する
事業を始めたばかりの方限定の小ワザですが、開業月を1月にすると事業主控除290万円が満額使えます。逆に、12月に開業すると控除は1ヶ月分の約24万円しかありません。
もちろん、現実的に「いつ開業するか」は仕事の都合で決まるものですから、税金だけで判断するものではありません。ただ、年末近くに開業を検討している方は、可能であれば翌年1月開業にずらすことで、初年度の事業税負担を減らせます。
確定申告と個人事業税の関係
「確定申告は個人事業税にも必要ですか?」というご質問もよく受けます。
結論から言うと、所得税の確定申告(青色申告でも白色申告でも)をしていれば、改めて個人事業税の申告は不要なケースがほとんどです。確定申告書に「事業税に関する事項」の欄があり、そこに法定業種の種類などを記入することで、税務署が都道府県に情報を引き継ぎます。
確定申告を3月15日までに済ませると、都道府県側で個人事業税の計算が行われ、8月頃に納税通知書が郵送されてきます。納期限は8月末と11月末の年2回。納付方法は、銀行窓口、コンビニ、口座振替、クレジットカード、スマホ決済(地域によって対応状況が異なる)など、所得税と似た選択肢があります。
ここで気をつけたいのが、確定申告で「事業所得」ではなく「雑所得」として申告してしまうケース。雑所得には個人事業税はかかりませんが、事業所得として申告すべき規模の収入を雑所得で申告していると、税務調査で「事業所得」と認定されて、過去にさかのぼって課税される可能性があります。
「事業として継続的・反復的に行っているか」「相当の時間と労力をかけているか」「収入が生活の柱になっているか」といった点が判断基準です。フリーランスとして独立して収入を得ているなら、原則として事業所得で申告するのが正しい姿です。
290万円控除と他の税金との関係
個人事業税の話をしていると、他の税金や社会保険料との混同が起きやすいので、整理しておきます。
所得税は、所得から各種所得控除(基礎控除48万円、社会保険料控除、配偶者控除など)を差し引いた額に、5〜45%の累進税率がかかります。個人事業税の290万円控除とは別物です。
住民税は、所得から各種所得控除を差し引いた額に、一律10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)がかかります。これも個人事業税の290万円控除とは別。
国民健康保険料は、世帯の所得や人数によって計算されます。事業主控除290万円は適用されません。
国民年金保険料は、所得に関係なく定額(2026年度は月額17,510円)です。
つまり、所得290万円のフリーランスの方が「個人事業税0円」だったとしても、他の税金や社会保険料は変わらず発生します。「290万円以下なら税金が全部かからない」ではなく、「290万円以下なら個人事業税だけがかからない」と正確に理解しておいてください。
なお、青色申告で経費を漏れなく計上すれば、所得税・住民税の負担も下げられます。フリーランスは「経費の管理」が手取りを最大化する一番のレバーです。「事業税290万円ライン」をきっかけに、全体的な節税意識を高めることをおすすめします。
事業の選択肢を広げるための知識も並行して身につけたい方には、特定分野の資格学習が役立ちます。たとえば、ビジネス文書検定はライター業務だけでなく、士業のサポート業務や事務代行案件にも応用できる基礎スキルです。技術職への展開を考えている方には、CCNA(シスコ技術者認定)のようなインフラ系資格が、案件単価を上げる足がかりになります。
カウンセリング現場でよくある誤解
最後に、私がカウンセリングの現場で実際に「これは誤解されているな」と感じる声を5つ、整理しておきます。
「290万円ぴったりに調整した方が得」という考え方の方が、毎年いらっしゃいます。これは違います。事業税の税率は最大5%なので、300万円稼いだ場合でも、290万円との差額10万円のうち5,000円しか事業税は増えません。仕事を断って所得を290万円に抑え込むのは、機会損失の方がずっと大きいです。
「青色申告すれば290万円控除が増える」と思っている方もいます。これも違います。青色申告特別控除65万円は所得税の控除であって、個人事業税の事業主控除290万円とは別の制度です。両方使えますが、290万円が増えるわけではありません。
「フリーランスは全員、個人事業税がかかる」と思い込んでいる方もいます。先ほどお話しした通り、文筆業や芸術家など、法定70業種に含まれない職種は、所得がいくらあっても個人事業税はかかりません。自分の職種がどの区分か、一度確認することをおすすめします。
「サラリーマンが副業をしても、個人事業税はかからない」も誤解です。副業であっても、その所得が「事業所得」として申告されていて、法定業種に該当し、290万円を超えていれば、個人事業税は発生します。会社員かどうかは関係ありません。
「個人事業税は所得税みたいに源泉徴収されている」と思っている方もいます。これも違います。個人事業税は完全に後払いで、翌年の8月と11月に納税通知書が届いてから支払います。年初に「来年の8月と11月に納める税金がある」と意識して、資金を別枠で管理しておくことが大切です。
ライフスタイル設計と個人事業税
最後に、フリーランスとして長く続けていくための視点を一つお話しさせてください。
私が産業カウンセラーとして相談を受ける中で、税金の不安は「お金の問題」というよりも「先が見えない不安」として表れることが多いんです。「いくら稼げばいいのか分からない」「来年いくら税金が来るのか分からない」「貯金がいくらあれば安全なのか分からない」。
この不安に対しては、シミュレーションを一度きちんとやってみることをおすすめします。事業主控除290万円、青色申告特別控除65万円、基礎控除48万円、社会保険料控除(国民健康保険料・国民年金保険料)など、自分が使える控除を洗い出して、所得別に手取りがどう変わるかを計算してみる。
たとえば、事業所得500万円のWebデザイナー(第3種・税率5%)の場合、ざっくりですが個人事業税は約10万5,000円、所得税は約22万円、住民税は約34万円、国民健康保険料は約50万円、国民年金保険料は約21万円。合計で約137万5,000円が税金・社会保険料の概算負担額になります(自治体・家族構成によって変動)。
手元に残るのは500万円から137万5,000円を引いた、約362万円。月にすると30万円ちょっと。これが「事業所得500万円のフリーランス」の現実的な手取りイメージです。
このシミュレーションを一度やっておくと、「今の収入で生活できるか」「貯金や老後資金にいくら回せるか」が見えてきて、漠然とした不安がぐっと小さくなります。フリーランスの方の働き方は人それぞれですが、税金と社会保険料の合計が手取りの25〜30%程度になることを知っておくと、心の余裕が違います。
働き方そのものの設計についても、参考になる記事をいくつかご紹介します。家事や育児と両立しながらフリーランスとして働く実際のリズムは、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開で具体例を見られます。一人で集中して仕事を進める時間管理に悩んでいる方には、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが役立ちます。これからフリーランス案件を探し始める方は、在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説で求人選びの基本を押さえておくと、最初の一歩がスムーズです。
@SOHO独自データの考察
@SOHOに登録されているフリーランス向けの案件カテゴリを横断的に見てみると、職種ごとの個人事業税の課税傾向には、はっきりした特徴があります。
ライティング・編集系の案件(純粋な文筆業)は、所得規模に関わらず個人事業税が非課税になりやすい職種です。月の単価相場は1文字1〜5円程度で、年収300〜500万円帯の方が中心。事業税0円のメリットを最大限活かしやすい職種といえます。
一方、デザイン系・コンサル系・開発系の案件は、ほぼ確実に個人事業税の対象です。ただし単価帯も高く、デザイン業務だと時給3,000〜8,000円、開発業務だと時給4,000〜10,000円程度のレンジ。事業税5%を負担しても、手取りベースで見れば文筆業より高くなることが多いのが現実です。
@SOHOで案件を選ぶときに「税金が安いから文筆業」「税金がかかるからデザイン業は避ける」という判断は、ほぼ意味がありません。重要なのは「自分が興味を持って続けられる仕事か」「将来的に単価を上げられる方向性か」。税金は結果として後からついてくるものであって、職種選択の主軸にする要素ではない、と捉えていただくのが健全です。
そして、案件をプラットフォーム経由で受注する場合は、手数料も実質的な収入減になります。クラウドソーシングサイトによっては20%前後の手数料が引かれることが珍しくなく、これは経費計上できる支出ですが、手取りベースでは無視できない金額です。@SOHOのように手数料0%のプラットフォームで案件を受注すれば、同じ案件単価でも手元に残る金額が変わってきます。
「290万円ライン」を意識して節税を考えるよりも、「手数料・必要経費・社会保険料のトータルで、手元にいくら残るか」を考える方が、フリーランスの暮らしを安定させる近道です。事業税の290万円控除は、その全体像を把握するための一つの手がかり。控除を活用しつつ、自分らしい働き方を続けていただければと思います。
公的機関・関連参考情報
本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。
よくある質問
Q. フリーランスは必ず個人事業主として開業届を出さなければいけませんか?
法律上、開業届の提出は事業開始から1ヶ月以内に行うべきとされていますが、提出しなくても罰則はありません。しかし、開業届を出すことで最大65万円の控除が受けられる「青色申告」が可能になるため、節税を考えるのであれば提出するのが一般的です。
Q. インボイス制度への対応は、フリーランスと個人事業主で違いはありますか?
呼称が異なるだけで、税務上の扱いは同じであるため制度上の違いはありません。取引先が法人の場合、適格請求書(インボイス)の発行を求められることが多いため、自身の売上規模や今後の取引方針に合わせて、課税事業者になるかどうかを慎重に判断する必要があります。
Q. フリーランスが税務調査に入られる確率はどのくらいですか?
売上規模や業種によって異なりますが、一般的には数パーセント程度と言われています。ただし、不自然な経費計上や売上の急激な変動がある場合は調査の対象になりやすいため、日々の正確な記帳が不可欠です。
Q. フリーランスのふるさと納税の上限額は、売上から計算するのでしょうか?
フリーランスの場合、売上ではなく「課税所得(売上から経費や青色申告特別控除などの各種控除を差し引いた金額)」を基に計算します。会社員向けのシミュレーターでは正確な上限額が出ないため、総務省のサイトにある計算式や、フリーランス・個人事業主専用のシミュレーターを使用し、今年の利益見込みを立ててから寄付を行うのがおすすめです。
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この記事を書いた人
中西 直美
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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