シングルマザーが電子書籍の表紙デザインで収入を伸ばすまでの道のり


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この記事のポイント
- ✓シングルマザーが在宅で電子書籍の表紙デザインを仕事にする道のりを整理しました
- ✓最初の1件を取るまでの5ステップ
- ✓著作権やフォントの注意点
「デザインの仕事なんて、専門学校を出た人がやるものだと思っていました」
先日、こういうご相談をいただきました。お子さんを育てながら、在宅でできる仕事を探している方でした。パソコンは持っているけれど、使いこなしているわけではない。デザインの勉強をしたこともない。それでも、電子書籍の表紙デザインという仕事が気になっている、と。
大丈夫ですよ。この仕事は、美大や専門学校を出ていなくても始められます。
電子書籍の表紙デザインは、在宅ワークのなかでも珍しい性質を持っています。制作物が小さく(1枚の画像だけ)、納品がデータで完結し、無料のツールから始められる。そして、実績がゼロでも「作品を見せる」ことで仕事を得られる分野です。
ただし、正直にお伝えしておきたいこともあります。最初の1件を取るまでに時間がかかること。単価には幅があり、安い案件を選び続けると疲弊すること。そして、提案しても選ばれない経験を何度もすること。
この記事では、電子書籍の表紙デザインという仕事の全体像、単価の相場、必要なツール、選ばれる表紙の原則、最初の1件を取るまでの手順、そして続けるための心の持ち方まで、順番にお話しします。
読み終わったときに「今日、これをやってみよう」と決められる状態を目指します。
電子書籍の表紙デザインという仕事は、どこから生まれているのか
まず、なぜこの仕事があるのかを知っておいてください。ここがわかると、どういう人に何を提案すればいいかが見えてきます。
個人が本を出せる時代になった
かつて、本を出すには出版社を通す必要がありました。原稿を書いても、企画が通らなければ世に出せない。表紙は出版社のデザイナーが作るもので、著者が関わることはほとんどありませんでした。
いまは違います。個人が電子書籍を作り、販売プラットフォームに登録すれば、誰でも著者になれます。この仕組みが広がった結果、「本を出したい個人」が大量に生まれました。
そして、その人たちの多くはデザインができません。文章は書ける。伝えたいことはある。でも、表紙は作れない。
ここに、仕事が生まれています。
表紙は「売れるかどうか」を左右する
もうひとつ、重要な事情があります。
電子書籍のストアでは、読者は小さなサムネイル画像を見て、開くかどうかを判断します。書店で本を手に取るときと違って、紙の質感も厚みもわかりません。判断材料は、表紙の画像とタイトルだけです。
つまり、表紙のできが売上に直結します。だから、真剣に本を出そうとしている人ほど、表紙にお金をかけます。
これは、この仕事を選ぶ方にとって良いニュースです。「安く済ませたい」だけの依頼者ばかりではない、ということですから。
実際の依頼は、こういう形で出ている
クラウドソーシングサイトには、こうした募集が並んでいます。
シングルマザーのための在宅ワーク入門をテーマにした電子書籍(Kindle)の表紙デザインに関する仕事・募集案件ページです。クラウドソーシングのランサーズで、装丁・ブックデザインに関する最適な外注/発注先をお探しの方、副業案件・求人をお探しのフリーランスの方はまず会員登録がおすすめです。 出典: lancers.jp
注目してほしいのは、テーマの中身です。「シングルマザーのための在宅ワーク入門」。つまり、あなたと同じ立場の人に向けた本が、実際に作られているということです。
これは、この仕事における大きなヒントになります。デザインの技術だけで勝負するなら、経験者にはかないません。でも「この本を読む人の気持ちがわかる」という部分では、当事者であるあなたに強みがあります。
読者の気持ちがわかる人が作った表紙は、伝わり方が違います。私はカウンセリングの仕事で言葉を扱っていますが、同じ内容でも「わかっている人が書いた言葉」と「調べて書いた言葉」は、受け取る側に届く深さが違うと感じます。デザインも同じです。
単価の相場を、正直な数字で確認する
いちばん気になるところだと思うので、はっきり書きます。
案件タイプ別の単価目安
| 案件の種類 | 単価の目安 | 制作にかかる時間 | 時給換算の目安 |
|---|---|---|---|
| テンプレート活用の簡易表紙 | 1件 1,000円〜5,000円 | 1時間〜3時間 | 700円〜2,000円 |
| オリジナル制作(既存素材の組み合わせ) | 1件 5,000円〜15,000円 | 3時間〜8時間 | 1,000円〜3,000円 |
| オリジナル制作(イラスト込み) | 1件 15,000円〜50,000円 | 8時間〜25時間 | 1,500円〜4,000円 |
| シリーズ本の表紙(複数冊セット) | 1冊 8,000円〜30,000円 | 1冊4時間〜10時間 | 1,500円〜4,000円 |
| コンペ形式(採用された場合のみ報酬) | 1件 3,000円〜30,000円 | 2時間〜10時間 | 採用率次第 |
この表で、いちばん注意して見てほしいのが最後の行です。
コンペ形式というのは、複数の人が提案して、採用された1人だけが報酬を受け取る仕組みです。採用されなければ、かけた時間はゼロになります。
未経験の方がここから始めると、何時間もかけた提案が何度も不採用になり、心が折れます。これは能力の問題ではなく、仕組みの問題です。実績のある人と並べられたら、最初は選ばれにくいのが当たり前なんです。
最初の数か月は、時給換算が低くて当然です
正直にお伝えします。
最初の1件を取るまでに、練習として作品を作る時間があります。応募しても採用されない時間があります。採用されても、慣れないぶん制作に時間がかかります。
この期間を時給換算すると、かなり低い数字になります。ここで「自分には向いていない」と判断してしまう方が多いのですが、少し待ってください。
デザインの仕事は、実績が積み上がると単価が上がる構造になっています。「この人はこういう表紙を作れる」という証拠があるかないかで、依頼される案件の質が変わるからです。
最初の3件と、10件目以降では、まったく違う世界になります。
月の収入として、どこを目指すか
現実的な目標の置き方をお話しします。
慣れてきて、1件8,000円の案件を月に4件受けられれば、月3万2千円。1件15,000円の案件を月5件なら月7万5千円です。
副業として取り組む場合、年間40万円から100万円あたりが現実的なレンジになります。ただし、これは1年から2年かけて到達する数字だと考えてください。
即効性はありません。そのかわり、身につけたスキルは消えません。他の在宅職種と収入の伸び方を比べたい方は、在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングにスキル別の整理がありますので、合わせて見ておくと自分に合う進め方が見えてきます。
必要なツールと、費用の話
「まず何を買えばいいですか」というご質問をよくいただきます。
結論をお伝えします。最初は、何も買わなくて大丈夫です。
無料から始められます
表紙デザインに使えるツールには、無料で使えるものがあります。ブラウザ上で動くデザインツールには、電子書籍の表紙用のテンプレートが用意されているものがあり、文字を差し替えるだけで形になります。
まずはここから始めてください。テンプレートを使いながら「文字の大きさを変えるとどう見えるか」「色を変えると印象がどう変わるか」を体で覚えるのが、いちばん早い学習法です。
無料の画像編集ソフトもあります。写真の加工、切り抜き、色調整といった作業は、これで十分できます。
有料ツールを検討するタイミング
仕事を受けるようになってから、必要に応じて考えてください。
有料のデザインソフトは、月額で3,000円前後かかります。年間36,000円です。案件を受注していない段階でこれを払い始めると、収入がないのに固定費だけが出ていく状態になります。
順序を守ってください。まず無料ツールで作品を作る。応募する。1件受注する。それから、必要だと感じたら投資する。
この順序を逆にして苦しくなる方を、私は何人も見てきました。「ちゃんとした道具をそろえてから」と考える気持ちはよくわかります。でも、道具が足りなくて仕事が取れないことは、ほとんどありません。
素材サイトの使い方に注意
写真やイラストの素材を使うとき、必ず利用規約を確認してください。
「無料」と書かれていても、商用利用が禁止されているもの、クレジット表記が必要なもの、加工が禁止されているものがあります。電子書籍の表紙は商用利用にあたるので、ここを間違えると後で問題になります。
有料の素材サイトを使う場合も、ライセンスの範囲を確認してください。1点あたり数百円から使えるものが多く、案件の報酬に対して十分収まる金額です。素材代は経費として計上できるので、領収書は保管しておいてください。
フォントも同じです。パソコンに最初から入っているフォントでも、商用利用の可否は種類によって違います。無料で商用利用できるフォントは多くあるので、そこから選ぶのが安全です。
選ばれる表紙には、原則があります
デザインのセンスは生まれつき、と思っている方が多いのですが、実際には原則を知っているかどうかの差がかなり大きいんです。
原則1:小さくしても読めること
これが最重要です。
電子書籍のストアでは、表紙が非常に小さく表示されます。スマートフォンの画面なら、親指の爪ほどの大きさです。
だから、パソコンの大きな画面で「きれいにできた」と思っても、それが縮小されたときに読めなければ意味がありません。
作業中は、必ず表紙を縮小表示して確認してください。10%くらいまで小さくして、タイトルが読めるかどうか。これを毎回やるだけで、提案の通過率が変わります。
原則2:文字は大きく、要素は少なく
初めてデザインをする方がやりがちなのが、情報を詰め込むことです。
タイトル、サブタイトル、著者名、キャッチコピー、飾り、背景の写真。全部入れたくなります。でも、要素が増えるほど、ひとつひとつが小さくなり、結果として何も伝わらなくなります。
売れている電子書籍の表紙を20冊ほど並べて見てください。驚くほどシンプルです。多くは、大きなタイトルと、シンプルな背景だけで構成されています。
原則3:ジャンルには型がある
ビジネス書には、ビジネス書らしい見た目があります。小説には小説らしい見た目があります。恋愛小説とミステリーでも違います。
これは「型にはまっている」のではなく、読者が探しやすくするための約束事です。ビジネス書を探している人が、ビジネス書らしくない表紙を見つけても、自分向けの本だと気づけません。
だから、案件を受けるときは、まずそのジャンルで売れている本を30冊ほど見てください。共通している要素を見つける。それが、その分野の「正解の型」です。
型を知ったうえで、少しだけ外す。これが選ばれるデザインの作り方です。
原則4:色は3色まで
色を増やすほど、まとまりがなくなります。
背景の色、文字の色、アクセントの色。この3つに絞ると、それだけで整って見えます。同じ色の濃淡を使うのは、色数に数えなくて大丈夫です。
配色に自信がない方は、既存の配色パターンを紹介しているサイトを参考にしてください。自分で組み合わせを考えるより、確実に整います。
原則5:依頼者の意図を聞く
技術的な話ではありませんが、これがいちばん大事かもしれません。
表紙は、依頼者にとって「自分の本の顔」です。強い思い入れがあります。だから、こちらの好みで作ると必ずずれます。
制作前に聞くべきことは、次の5つです。誰に読んでほしい本か。読者にどんな印象を持ってほしいか。参考にしたい既存の本はあるか。使ってほしい色や、避けたい色はあるか。タイトルのどの言葉をいちばん目立たせたいか。
この5つを聞いてから作ると、修正の回数が明らかに減ります。
私はカウンセリングの仕事をしていますが、そこでも同じことを感じます。相手の話を先に十分に聞かずに提案すると、まず受け取ってもらえません。順序が逆なんです。まず聞く。それから出す。デザインもまったく同じでした。
未経験から最初の1件を取るまでの5ステップ
具体的な手順をお話しします。焦らず、順番にいきましょう。
ステップ1:作品を10点作る(2週間から1か月)
まず、実際に依頼を受ける前に、自分で表紙を作ってみてください。
架空の本で構いません。ビジネス書、実用書、小説、エッセイ、レシピ本。ジャンルを変えて10点作ります。
このとき、売れている本を見ながら「似たものを作ってみる」のが効果的です。そっくりに真似て公開するのは避けるべきですが、練習として構造を分解して作り直すのは、上達がいちばん速い方法です。
10点あると、依頼者に見せる材料になります。実績がなくても、作品があれば「この人はこういうものを作れる」と伝わります。
ステップ2:作品を見せる場所を作る(1日)
作った作品を、まとめて見られる場所を用意します。
画像共有サービス、無料のポートフォリオサイト、SNSのアカウント。何でも構いません。大事なのは、依頼者が1つのURLを開けば全部見られる状態にすることです。
ここで完璧を目指さないでください。凝ったサイトを作ろうとして、そこで止まってしまう方が多いんです。まず公開する。後から直せます。
ステップ3:応募先を探す(1週間)
クラウドソーシングサイトと、業務委託マッチングサービスに登録します。
「電子書籍 表紙」「Kindle 表紙」「装丁」「ブックデザイン」といったキーワードで検索してください。案件は継続的に出ています。
最初は、コンペ形式ではなく、プロジェクト形式(依頼者と1対1で話を進める形)を選ぶことをおすすめします。コンペは、実績のある人と横並びで比較されるため、最初の1件を取るには不利です。
ステップ4:提案文を書く(1件30分)
ここが分かれ目です。多くの方が、提案文で損をしています。
やってはいけないのは、「頑張ります」「丁寧に対応します」だけの文章です。これは誰でも書けるので、判断材料になりません。
書くべきなのは、次の3つです。
まず、その案件の内容を読んだうえでの具体的な提案。「この本は在宅ワークを始めたい方向けとのことなので、不安を和らげる色味を使い、タイトルの『はじめの一歩』という部分を強調する構成を考えています」といった形です。
次に、自分の作品のうち、この案件に近いものを1点か2点示す。全部見せるより、関連するものを絞って示すほうが伝わります。
最後に、対応できる範囲。修正は何回まで対応できるか、納品までにどのくらいかかるか。
この3つが書かれた提案文は、それだけで上位に入ります。多くの応募者がテンプレートを貼り付けているからです。
ステップ5:1件目を全力でやる(案件による)
最初の1件は、時給を考えないでください。
丁寧にヒアリングして、複数案を出して、修正にきちんと対応する。この1件で得られる評価が、次の案件につながります。
そして、納品したら必ず「実績として作品を掲載してよいか」を確認してください。許可がもらえれば、それが次の提案で使える強力な材料になります。
ここまでで、早い方で1か月、多くの方は3か月ほどかかります。時間がかかっても、それが普通です。
トラブルを避けるための実務的な注意点
修正回数を最初に決める
デザインの仕事でもっとも多いトラブルが、修正の無限ループです。
「もう少し明るく」「やっぱり元に戻して」「別のパターンも見たい」。こうしたやり取りが延々と続くと、時給換算が下がり続けます。
だから、契約の段階で「修正は3回まで、それ以降は1回あたり別途費用」と決めておいてください。これは失礼なことではありません。むしろ、依頼者にとっても予算の見通しが立つので、喜ばれます。
納品形式を確認する
電子書籍の表紙には、プラットフォームごとに推奨サイズがあります。縦横の比率、ピクセル数、ファイル形式。ここを確認せずに作ると、作り直しになります。
制作前に、依頼者がどのプラットフォームで出すのかを聞いてください。
著作権の扱いを明確にする
納品後、その表紙の著作権をどう扱うか。これも先に決めておくべき事項です。
一般的には、依頼者が自由に使えるように利用許諾を与える形か、著作権そのものを譲渡する形になります。譲渡する場合は、あなた自身が作品として公開できなくなる可能性があるので、実績として掲載してよいかを別途確認しておいてください。
報酬の支払い時期を確認する
業務委託で働く場合、2024年11月に施行されたフリーランス保護新法によって、発注者は成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払う義務を負っています。取引条件を書面や電子メールで明示する義務もあります。
「口約束で作業を始めてほしい」と言われたら、その時点で条件の明示をお願いしてください。制度の詳細は公正取引委員会で公開されています。知っているだけで、守られる場面があります。
着手前に費用を求める募集は避ける
「デザインの講座を受講してから案件を紹介します」「ツールの購入が必要です」といった条件を出してくる募集があります。
仕事を提供すると持ちかけて、その前提として商品やサービスを買わせる。これは内職商法と呼ばれる手口です。正当な依頼者が、着手前にあなたからお金を取ることはありません。
もしすでに契約してしまった方は、地域の消費生活センターに相談してください。期間内であれば解約できる場合があります。
心が折れないための、いくつかの工夫
ここからは、カウンセリングでよくお伝えしていることをお話しします。
デザインの仕事で辞めてしまう方の多くは、技術が足りなかったからではありません。心が続かなかったからです。
不採用は「否定」ではありません
提案が通らないと、自分の作品が、ひいては自分自身が否定されたように感じます。これは自然な反応です。デザインは自分の内側から出てくるものなので、切り離して考えるのが難しいんです。
でも、実際のところ、選ばれない理由の多くは能力とは関係ありません。依頼者の好み、予算、たまたま先に良い提案があった、担当者の気分。こうした要素で決まります。
私がお伝えしているのは、「不採用の理由を推測しない」ということです。理由がわからないものについて考え続けると、必ず自分を責める方向に行きます。
かわりに、記録だけつけてください。何件応募して、何件通ったか。20件応募して1件通れば、それは十分に機能している数字です。感情ではなく数字で見ると、落ち込みにくくなります。
他人の作品と比べない時間を作る
上手な人の作品を見ることは勉強になりますが、見すぎると苦しくなります。
とくに、SNSで同業者の投稿を延々と眺めるのは避けてください。人は自分より上のものばかりを見てしまう習性があります。そして、比べた相手が何年やっているかは表示されません。
勉強のために見る時間と、見ない時間を分けてください。作業中はSNSを閉じる。それだけで、心の消耗がかなり減ります。
一人で抱え込まない
在宅の仕事は、人と話す機会が極端に減ります。これは想像以上に効いてきます。
こういうご相談、本当に多いんです。「気づいたら3日間、大人と会話していませんでした」と。
対策はいくつかあります。同じように在宅で働く人のコミュニティに入る。週に1回は外に出る用事を作る。子どもの送り迎えのときに、他の保護者と少し話す。
小さなことに見えますが、これが続けられるかどうかを左右します。
作業時間を区切る
デザインは、際限なく手を入れられてしまう仕事です。「もう少し良くなるかも」と思い続けると、深夜まで終わりません。
タイマーで区切ってください。45分作業して10分休む。そして、1日の終了時刻を決める。
疲れた状態で作ったものは、翌朝見ると必ず直したくなります。だったら、その時間は寝たほうがいい。時間の区切り方については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに具体的な手法がまとまっているので、自分に合うやり方を探してみてください。
子どもとの時間との組み立て方
デザインの作業は、細切れの時間には向きません。集中が切れると、また最初から考え直しになるからです。
現実的なのは、工程を分けることです。参考になる本を見て構想を練る作業は、細切れ時間でもできます。実際に手を動かして作る作業は、まとまった時間に集中させる。
子どもが寝たあとの2時間を制作時間と決めて、日中は情報収集とやり取りに充てる。この分け方が、多くの方にとって続けやすい形になります。在宅で働く方の1日の組み立て方は在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開に実例があるので、参考になると思います。
収入が増えてきたときに、確認しておくこと
確定申告のライン
業務委託で報酬を受け取る場合、給与所得がある方は、その所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。給与所得がなく在宅ワークの収入だけの方は、所得が基礎控除額を超えると申告が必要です。
住民税は所得税と判定が異なり、20万円以下でも申告が求められる場合があります。お住まいの市区町村の税務窓口で確認してください。
素材代、フォント代、ソフトの利用料、パソコンの購入費の一部などは経費になります。領収書は必ず保管してください。判断に迷う項目は国税庁の情報を見るか、税務署の相談窓口に聞けば無料で答えてもらえます。
記帳が負担になってきたら、freeeやマネーフォワードのようなクラウド会計サービスを使うと、明細から自動で仕訳が作られます。
社会保険の扱い
業務委託で働く場合、社会保険には加入せず、国民健康保険と国民年金が自己負担になります。デザインの仕事をパートやアルバイトの形で受ける場合は雇用契約になり、条件を満たせば社会保険の対象になります。
加入要件は法改正で段階的に変わってきているので、最新の内容は日本年金機構で確認してください。
支援制度との関係は、必ず窓口で
収入が増えたとき、いま受けている支援制度にどう影響するか。ここは、この記事で断定的なことを書けません。制度の内容も所得の判定方法も、自治体によって異なり、改定もされるからです。
必ず、お住まいの市区町村の窓口で直接確認してください。「在宅でデザインの仕事を始めたいが、収入が増えると現在の支援にどう影響するか」と聞けば、担当の方が答えてくれます。
事前に確認しておけば、受注の量を計画的に調整できるようになります。そして何より、安心して仕事を増やせます。わからないまま進むより、一度聞いてしまったほうが、心が軽くなります。
20年この市場を運営してきた立場からの観察
ここからは、フリーランス・在宅ワークの市場を長く見てきた運営者としての話をします。
運営者として見てきた限りでは、デザインの仕事で長く続いている方には、共通点があります。技術がいちばん高い人ではありません。「次もこの人に頼みたい」と思われる関係を作った人です。
具体的には、こういうことです。依頼者の話を先に十分聞く。納期より少し早く出す。修正の依頼に感情を挟まず対応する。前回の仕事の内容を覚えていて、次のときに活かす。
依頼する側から見ると、デザイナーを探し直すコストは非常に大きいんです。作風を確かめて、意図を一から説明して、品質を見極める。この手間が毎回発生する。だから、安心して任せられる相手が見つかったら、多少単価が上がっても継続したいと考えます。実際、同じ依頼者から繰り返し依頼を受けている方の単価が、初回より上がっている例は珍しくありません。
もうひとつ、20年この市場を見てきた立場から言えることがあります。
デザインの仕事は、仲介する事業者が間に入る構造になりがちです。制作会社があり、その下請けがあり、さらに個人に流れてくる。あるいは、プラットフォームの手数料が何割か引かれる。それぞれの段階で金額が目減りして、実際に手を動かした人の手元に届く額は、元の予算よりかなり小さくなります。
依頼者と受け手が直接つながる形なら、この構造が変わります。手数料0%で直接やり取りできれば、依頼する側は同じ予算でより良いものを頼めるようになり、受ける側は同じ仕事で手取りが厚くなる。どちらか一方が我慢するのではなく、両方が得をする形です。
これは金額の大小の話ではなく、「同じ1枚の表紙を作ったときに、手元にいくら残るか」という質の話です。時間の制約が大きいシングルマザーの方ほど、この差は生活の余裕に直結します。
現場を長く見てきて感じるのは、この構造を知っている人と知らない人とで、数年後の状況がかなり変わってくるということです。最初のうちは経路を選ぶ余裕はありません。まず1件受けて、実績を作ることが先です。ただ、何件か納品して手応えが出てきたら、「この仕事は誰を経由して自分のところに来たのか」を一度考えてみてください。
この仕事の先にあるもの
最後に、少し先の話をさせてください。
電子書籍の表紙デザインで身につく力は、表紙だけに使えるものではありません。
小さな面積で情報を伝える力。ジャンルの型を読み取る力。依頼者の意図を聞き出す力。これらは、バナー広告、SNSの投稿画像、商品パッケージ、資料の見た目づくりなど、幅広い仕事に応用できます。
デザインの隣接領域として、マーケティングの知識を持つと単価が上がります。「どう見せると売れるか」を語れるデザイナーは、単なる作業者ではなくなるからです。この方面の仕事の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事を見ると、どういう職種があるかがわかります。
近年は、AIツールを使いこなして制作の速度を上げる方も増えています。企業側のAI活用を支援する仕事も生まれていて、AIコンサル・業務活用支援のお仕事にその一端がまとまっています。技術寄りの方向に進むならアプリケーション開発のお仕事や、相場を知るためのソフトウェア作成者の年収・単価相場、学習の入口としてのCCNA(シスコ技術者認定)といった道もあります。
文章とデザインの両方ができると、電子書籍の制作を丸ごと引き受けられるようになります。文章の仕事の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できますし、提案書や見積書を整える基礎としてビジネス文書検定のような資格も、遠回りには見えて実務で効いてきます。
ただ、いま全部を考える必要はありません。
まず、無料のツールを開いて、1枚作ってみる。それだけで十分です。今日それができたら、もう始まっています。
焦らなくていいですよ。あなたは一人ではありません。
よくある質問
Q. デザインの勉強をしたことがなくても、電子書籍の表紙デザインはできますか?
できます。美大や専門学校を出ていなくても始められる分野です。まずは無料のデザインツールのテンプレートを使い、架空の本の表紙を10点作ってください。作品があれば、実績がなくても「この人はこういうものを作れる」と依頼者に伝わります。有料ソフトは受注してから必要に応じて検討すれば十分です。
Q. 電子書籍の表紙デザインの単価はどのくらいですか?
テンプレート活用の簡易表紙で1件1,000円〜5,000円、既存素材を組み合わせたオリジナル制作で5,000円〜15,000円、イラスト込みなら15,000円〜50,000円が目安です。1件8,000円の案件を月4件受けられれば月3万2千円ほど。副業として年間40万円〜100万円が現実的なレンジですが、そこまで1年〜2年かかると見ておいてください。
Q. 最初の1件を取るまでに、どのくらいかかりますか?
作品を10点作り、公開場所を用意し、案件に応募して受注するまで、早い方で1か月、多くの方は3か月ほどかかります。最初はコンペ形式ではなく、依頼者と1対1で進めるプロジェクト形式を選んでください。コンペは採用されないと報酬がゼロなので、実績のない段階では不利になります。
Q. 提案しても選ばれないときは、どうすればいいですか?
選ばれない理由の多くは能力ではなく、依頼者の好みや予算、提案の順番といった要素です。理由を推測して自分を責めるのは避けてください。かわりに応募数と通過数を記録してください。20件応募して1件通れば十分に機能している数字です。感情ではなく数字で見ると、続けやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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